落第騎士の英雄譚~世界最強の剣士の弟子~   作:火神零次

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今回のあらすじ。
倉敷の所有物になってしまった綾辻道場へ爛が道場破りに行く。そして、爛と倉敷の戦いで、倉敷は自分の実力を爛に見せつける。すると、爛は倉敷の見せた実力の謎を紐解くことができた。




第37話~剣士殺しの実力~

 ここは綾辻道場の前。そこには爛と絢瀬、六花とリリーが来ていた。

 

「ここが、ボクの思い出だった場所だよ。」

 

 そう言って、階段の先には綾辻道場へと入る門があった。門の周りにはスプレーで下手に作ってあるもの。何が作られているのかはわからない。爛は捨ててあったビニール袋と木刀を持った。

 

「酷い・・・。」

 

 門をくぐった先で、リリーが口にしたのはその一言だけだった。至るところにビニール袋を投げられており、ゴミだらけ。道場とは言えないほどに変わり果てていた。

 

「最低だね・・・。」

 

 爛が見ている先には貪狼学園の制服を着ている生徒達。倉敷の取り巻きだろう。爛はそこの近くまで歩いていく。

 

「おい。」

「あぁ?」

「倉敷のところは何処だ?」

「テメェごときに教えられるか!!」

 

 爛の言葉に目もくれず、すぐに固有霊装(デバイス)を顕現し、爛に襲いかかる。

 

「素直に教えてくれれば良いんだかな。」

 

 爛はそう呟くと、木刀を構え、動き出す。すると・・・

 

「あ?」

 

 一瞬にして、襲いかかってきた取り巻きの霊装を木刀で破壊した。取り巻きは霊装を壊されたことにより、意識を失い、その場に倒れる。

 

「口ほどにもない・・・。」

 

 爛はビニール袋に取り巻きの生徒手帳を入れた。すると、絢瀬が爛に聞いてくる。

 

「どうして、生徒手帳を?」

「どうしてって言われたらな、・・・倉敷は多分、取り巻きを相手にしろと言ってくると思うから・・・かな。大人数を相手にするよりは、各個撃破の形の方が負荷がかからない。そう言うことだ。」

「そう言うことなのか・・・。」

「そういうことだ、次にいくぞ。」

 

 爛は立ち上がると、ビニール袋と木刀を持ち、歩き出す。

 

「あ、待って、爛。」

「マスター、待ってください~。」

 

 二人は急に爛が動き出したことに遅れてしまい、駆け足で爛のところに行く。

 

「・・・・・・」

 

 倉敷は道場内に置いてあるソファに横になっていた。すると、道場の扉が開かれる。入ってきたのは、爛と絢瀬、六花とリリー。倉敷からすれば、リリーは誰かも知らない。

 

「テメェ、あん時の・・・。」

「倉敷、お前に決闘を申し込む。」

「ハッ!道場破りか?」

「今回は俺が相手だ。絢瀬達は見守りってところだ。」

「・・・あの女に何か吹き込まれたか?」

 

 爛が倉敷の言ったことに答えようとしたとき、別の方から扉が開き、倉敷の取り巻きが現れる。

 

「クラウド!」

「どうした?」

「そいつには気を付けるんだクラウド!俺達の仲間がすぐにやられた!」

「・・・ほう?」

 

 取り巻きから聞かされたことに、倉敷は意外そうな顔で爛を見る。

 

「その袋に入ってるやつは何だ?」

「お前の取り巻きのやつらの生徒手帳さ。気になるなら、見ればいい。」

 

 爛はそう言って、倉敷の前に生徒手帳が入った袋をなげる。倉敷はそれを手に取り、ビニール袋を逆さまにすると、たくさんの生徒手帳が出てきた。

 

(こいつ・・・。)

「それに、そいつは『鬼神の帝王(クレイジーグラント)』って呼ばれてるらしいんだ。俺達、相当ヤバイやつに手を出したんじゃ・・・。」

「そいつは面白い。道場破りとして、ルールがある。俺とお前の真剣勝負だ。どちらかが死んだ方が負けだ。」

 

 一般の連盟の監視下に置かれていない道場では霊装の使用は認められていない。しかし、連盟から認められた道場のみ、霊装の使用を許可されている。学生騎士が霊装を使用できるのは学園の敷地内、何かの出来事に巻き込まれたときにやむ終えない場合、そして、道場での使用だ。今回の場合は最後の方だ。

 

「決闘を受け付けてくれて助かるよ。その条件には俺も乗ろう。『剣士殺し(ソードイーター)』。」

 

 爛はそう言うと、霊装の刻雨(こくさめ)を顕現する。倉敷は爛の刻雨を見ると、刻雨は一級品であることに気づく。

 

「なるほど、そいつぁ一級品だ。」

 

 倉敷はそう言うと、爛と同じように自身の霊装を顕現させる。

 

大蛇丸(おろちまる)。」

 

 倉敷は輝きを持たない白い野太刀を顕現する。爛はいつでも始められるように霊装を構えている。

 

「それじゃあ、始めるぜ!」

 

 倉敷はそのまま走り、爛を力任せのスイングで斬ろうとする。しかし、簡単に当たってくれるはずもなく、爛はそれを避けるとすぐに倉敷に反撃をする。

 

「フッ!」

「ハッ!」

 

 攻撃しては防ぎ、防いでは反撃するの繰り返しを二人はし続けた。そして、爛が倉敷の一振りを避けると、完璧なタイミングで倉敷の腹部を右から斬ろうとするのだが・・・

 

「ッ!?」

「ハハッ!残念!」

 

 止めることができない体勢でありながら、倉敷は一瞬にして爛の一振りを受け止めた。霊装の長さが変わった?いや、それは違う。瞬間的に動いたようにしか見えなかった。何にせよ、爛はある一つの考えをする。

 爛はそのまま倉敷に向かって走り出す。日本刀では強い部分である刺突。爛はそのまま倉敷の胴を貫こうとするが・・・

 

「おっと。」

(こいつ・・・、考えたくもないが可能性としてはある。面倒な相手だな。)

 

 倉敷は体を反らすことにより、爛の霊装の刺突を避ける。そのまま体勢を戻すと同時に大蛇丸を振るい、爛を後退させる。

 

「くっ!」

「ハッハー!!」

 

 倉敷が爛をおしているなか、爛は防御に徹していた。そして、倉敷が爛に唐竹割りを繰り出す。爛はそれに対応するように刻雨を操るが、途中で倉敷の太刀が消えた。

 

(マズイ!間に合うか!?)

 

 爛はすぐさま後方に下げていた左足を軸にし、体を一回転させる。半回転したときには爛の背中側では、消えていた倉敷の太刀が爛の左側から、爛を斬ろうとしていたのだ。爛は残りの半回転を倉敷への反撃で、刻雨を袈裟斬りで倉敷を斬ろうとする。

 

「《乱星(らんせい)》!」

 

 爛のカウンター。大きく下げた足を軸にすることで、半回転で相手の攻撃を避け、残りの半回転で相手に袈裟斬りを繰り出す。

 普通ならば倉敷にその攻撃が当たるのだが、倉敷は爛の攻撃を避けたときの同様に一瞬にして爛の攻撃を避ける。

 

(やはりそうか。間違いない。)

 

 爛は倉敷の動きを見たことで、あることへの確信を得ることができた。そして、倉敷が力任せのスイングを振るい、爛がそれを受け止めるが、力任せに振るったため、受け流すために相応の勢いを殺さなければならない。爛はそれを倉敷が振るった方へと滑ることにより、勢いを殺していった。

 

「・・・なるほど。これが海斗さんを破った、お前の得意技か。」

「ん?」

 

 爛は刻雨の切っ先を倉敷に向けて、話始める。それは、先程の攻防で爛が分かったことを話すのだった。

 

「さっきの攻防で分かったことだが、倉敷が攻撃の要にしてるのは反射神経だ。」

「ハンシャシンケイ?」

「反射神経は僕達にもあるものだよね?」

 

 六花が爛に確かめるように尋ねると、爛は頷き、話を続ける。

 

「確かに反射神経は誰でも持っている。しかし、今の倉敷の動きをカウントしてみたら、0・05秒だった。」

「0・05秒!?」

「俺達、普通の人間であれば、どれだけ鍛え上げたとしても0・1秒を超えることはできない。つまり、倉敷にとっては最大の攻撃ってことになる。俺が一つの動きをしている間にはお前は二つ三つの行動ができる。違うか?」

 

 爛は倉敷に切っ先を向けたまま、自分の推測は違うかと、倉敷に問う。倉敷は大蛇丸を縦に向け、爛に笑みを作りながら話す。

 

「俺の《神速反射(マージナルカウンター)》を初見で破ったヤツはテメェが初めてだ。」

「反射神経を正しく言うと、『知覚し、理解し、対応する。』その処理速度のことを反射神経と言うんだ。一般の人間では0・3秒。ボクシングとか、近距離で戦うことをしている一流の選手であれば、その速度は0・15秒。俺や六花、リリーがどれだけ鍛えたとしても、0・1秒にしかならない。そして、0・1秒を超えることは不可能に達している。それは、脳の電気信号(インパルス)がそれを超えることができないからだ。つまり、お前の〈神速反射〉はそれすらを凌駕する反射速度を使うことができる。お前に対抗するためには、お前の〈神速反射〉を先読みするか、それを超える速さで攻撃をするか、変則ガードで対応するかだ。つまり、これは一輝の《完全掌握(パーフェクトビジョン)》でさえ、倉敷の攻撃にはついてこれないというわけだ。」

 

 《完全掌握》は後だしジャンケンに弱いと言うことだ。後から出されてしまったものに対応するには、自分自身でなんとかしなくてはならない。それに、反射神経の速度を0・1秒にするのでさえ、無理が必要になる。今の爛達でさえ、その反射神経の速さは0・13秒程度。爛の言っていた通り、倉敷は爛が一つの行動をしている間に、二つ三つの行動が可能なのだ。つまり、倉敷の反射神経の速さは人を超えている。

 

「その驚異的な速さを持ってすれば、防ぐことができない攻撃も防ぐことができ、太刀の振りを強制的に変えることができる。だからこそ、太刀が途中で消えたわけさ。」

「ハッハッハッハッハ!大正解だ!」

 

 倉敷は爛の言ったことに笑いながら正解と言った。つまり、爛の推測は当たっていたというわけだ。

 

「だけどよぉ、それがどうした?」

 

 倉敷は笑っていた顔をすぐに真剣な表情に変え、爛に話した。

 

「どうにもできねぇだろ?《神速反射》は技じゃねぇ。俺の生まれ持った特性だ。」

 

 倉敷の言う通り、爛は〈神速反射〉を剣だけで攻略することは不可能だ。ただ単に身体能力を上げているだけでは、電気信号の速度を上げていると言うことではない。そう、倉敷が『剣士殺し』と呼ばれるのは、この反射神経があってこそだ。倉敷の剣は技じゃない。ただのむき出しの暴力でしかない。ただの暴力で、彼は速さのすべてを蹂躙することができるのだ。しかし、爛には一つだけ、剣で倉敷に勝れるところがあった。

 

「全てが反射神経に置き去りにされては無意味だ。その結果を、俺の剣技で教えてやる。構えてろ、『剣士殺し』。さっきの俺と思ったら大間違いだからな。」

 

 殺気の籠った声で倉敷にそう言い、今度は爛から攻めに行った。

 

 

 ーーー第38話へーーー

 

 




あじゃぱっぱっぱやぱー。

んん、いきなり失礼しました。倉敷と爛との戦い、いい感じに書けてますかね?これいっつも書いてると思うんですけど、いい感じに書けてるのかな?って思ってくるんですよね。

次回、多分、決着がつくと思います!

次回をお楽しみに!あじゃじゃしたー!


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