落第騎士の英雄譚~世界最強の剣士の弟子~   作:火神零次

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今回のあらすじ~。
爛を襲った伐刀者(ブレイザー)は、破軍学園から出ていき、爛はその伐刀者のことについてある可能性を感じた。そして、爛は減ってしまった体力を回復しようと寮部屋に向かう。そして、破軍学園から遠く離れた場所ではあることをしようとある者達が動いていた。




第32話~闇の中で動く者~

 爛が学園に戻っていくその頃。別のところでは不自然な動きをしている者達が居た。

 

「彼の強さは相当ですね。」

 

 一人の男がそう呟いた。ピエロのような容姿の男は口を歪なまで上げていっていた。

 

「ふん。あいつの相手は俺がする。それと、あの女もな。」

 

 そう言うのは、長身の男。長い黒髪を靡かせ、ピエロの男から少し距離を置いたところで話している。

 

「貴方は彼の相手をするのではなく、彼女の相手をするべきですよ。」

 

 ピエロのような男は長身の男にそう促すのであった。すると、長身の男は疑問を浮かべながら話す。

 

「どういうことだ?」

「言葉の通りですよ。貴方が知っている他にも、仲間は居るのですから。」

 

 すると、暗闇の中にあるドアの方から音がし、入ってきたのは、白みがかった長い黒髪靡かせた少女だった。

 

「やっときましたね。───さん。」

 

 彼がいった名前は、爛がよく知っている名前であり、何よりもここに来たことに悲しむ程の人物がここに来ていた。

 爛は自分の部屋に入り、ベットの方を向く。六花は爛が使っているベットに入り、可愛い寝顔で寝ていた。爛は六花の近くまで行き、六花の頭を撫でる。

 

「六花・・・、お前は・・・離れないよな?」

 

 爛は悲しい顔をしながら、六花に尋ねるように言った。しかし、六花は眠っているため、答えることはなく、眠っていた。だが、六花が起きていたとするならば、六花は離れないと言うと爛は思ったのだ。

 

「ん~、ん?」

「六花?」

 

 六花が急に爛の腕をギューッと掴み、自分の体の方に爛の腕を持っていく。

 

「・・・六花。お前起きてるだろ・・・。」

「あ、バレた?」

「お前が俺の腕を掴んだときに気づいたよ。まったく、大変な幼馴染みを持ったな。俺は。」

 

 爛は六花が起きていることを当て、六花は素直に起き上がり、爛に笑顔を見せた。

 

「ねぇ、何かあったの?」

「特に何もないな。・・・もしかして、お前来てたか?」

「来てないよ。僕は爛の傍に居たいだけ。・・・爛は、そう言うの苦手?」

「いや、苦手じゃないけどな。こんなに積極的だったかな~。と思ってね。」

 

 爛はそう言うと、六花はベットに座っていた爛を無理矢理ベットに倒し、六花は爛の上に乗り掛かる。

 

「爛は、僕から離れないよね?」

「六花?」

 

 六花は爛が自分に言ったときと同じように爛に言った。爛は六花の表情に疑問を持った。それは、六花が悲しい顔をしているからだ。すると、爛の頬に何かが落ちる。

 

「ッ!?六花!?」

「爛は、僕から離れ、ないよね?そうだよね?・・・もう、僕は失いたくないんだ。だから・・・、居なくならないよね?」

 

 六花が泣いていたのだ。六花は爛にそう問いかけながら、涙を流す。何故、彼女がこうなってしまったのかは時を待たなければならない。そうしなければ、話すことはないだろう。爛はその事に思い当たる節があった。

 

(そうか。六花はあれを失ったから、か。)

 

 爛が思い当たっていたことはいずれ明かされるものであるため、そこまで待ってもらいたい。爛はそれを知っていたため、六花の頭をまた撫でる。

 

「爛・・・。」

「六花、俺はどうこう言わないが、甘えてきて良いんだぞ?」

 

 爛は笑顔で六花にそう言うのだった。爛は六花の心の負荷を自分も一緒に背負おうとしていたのだ。

 

「うん・・・、ありがとう。」

「どうってことないさ。」

 

 二人はそのまま、自然に身を任せ、眠りへと入っていった。そして、朝になる。爛が起きると、そこには・・・

 

「おはよう。爛。」

「おはよ・・・、え?」

 

 爛は六花の姿に目を疑った。六花が身に纏っているのはエプロンのみ。詰まるところ、彼女は裸エプロンで爛が起きるまで居たのだ。

 

「ちょっ!六花!?」

「甘えていいんでしょ?だからこうしてるの。爛が僕の体を暖めてよ。」

 

 駄目だ。目眩がしてきた。

 爛は目の前の光景と六花の言葉に目眩を起こしてしまった。

 

「おわぁ!?」

「えへへへ。」

 

 六花は爛を押し倒すように抱きつき、爛はいきなりのことに対応ができず、倒れていってしまった。そして、誰もが思うように六花は爛を押し倒すことが多いような気がする。

 

「・・・暖かい・・・。」

「ああ、確かにこうしてたいな・・・。」

「なら、ずっとこのままで居る?」

「いや、俺はこの後、選抜戦の事がある。・・・そう言えば、六花はどうなるんだ?」

 

 選抜戦の最中に破軍学園に転校してきた六花。武曲学園はランク制で自由参加のため、選抜戦は存在しないはずだ。となると、六花は今年の七星剣武祭には出れないと言うことになる。

 

「僕も途中参加で出場だよ。理事長が僕の経緯を知っていたからね。」

「成程ねぇ・・・。速いもんだ。」

 

 六花が途中参加で選抜戦に出場することになり、爛は黒乃がそれを許可させた速さに感心した爛だった。

 

「さて、六花。しっかり着替えてくれよ。それと、折木のところに行くぞ。」

「え?どういうこと?」

「そのままの意味だ。俺は折木に頼みたいことがあるからな。」

「分かった。」

 

 爛と六花は折木のところに向かうとした。

 第十一回戦が始まる前、爛の生徒手帳にメールが届いていた。

 

「?黒乃・・・、っ!?」

 

 爛はメールの件名を見た瞬間、目を大きく開いた。それは、解放軍(リベリオン)と国の動きを示したメールだった。そして、爛は国の動きのところであるものを見た。

 

師匠(せんせい)、貴方がよく知っている人物が、学園を潰そうとしています。私も見たときは目を疑いましたが・・・。彼女であることは間違いありません。』

 

 その文の下には一つの写真がついていた。そこに写っていたのは、白みがかった黒髪を靡かせた少女だった。それが誰なのか、爛は知っていた。

 

「あの妹が!そっちについて何の特がある!何に引き込まれた!?・・・絶対に連れ戻すからな!」

 

 爛はそう思いながら、生徒手帳を閉じ、試合に集中することにした。第十一回戦、爛の相手は絢瀬。そして、その試合の時間となった。

 

『えーそれでは、お待たせしました!時間になりましたので、これより本日の第六訓練場・第一試合を開始致しまーす!この試合の実況は私、放送部三年の磯貝が。解説は一年一組担任・折木有里先生で担当させていただきます!折木先生、今日は顔色がいいですね~。』

『まだ一試合目だからね~。三試合目にもなればみんなが大好きないつものユリちゃんになるわよ~♪でも大丈夫、血液の予備はリットル単位で用意してるから~。』

『なるほど!本日の実況室にも血の雨が降りそうですね!それでは、皆様お待ちかねの選手入場を行います!』

 

 放送部の磯貝から言った言葉でまず、一試合目の一人の選手がフィールドに入ってくる。

 

『まず青ゲートから出てきたのは十戦十勝のパーフェクトゲームを続ける、今注目の一人!Fランクでありながら、敵を薙ぎに薙ぎ払ってきたこの男!一年・宮坂爛選手です!』

 

 爛がフィールドに上がると、姿を見られるだけで会場の至るところから黄色い歓声が聞こえてくる。『予測不能の騎士(ロスト・リール)』の応援に来た爛のファンだ。

 

『姿を見せたと同時に歓声で会場が沸きます!すごい人気です!』

『爛さんは黒鉄くん同様に女性のファンが多いね!』

『あんなに強いのにFランクって言うのがこう、報われてない感じで応援したくなるんですよね!』

『先生もその気持ち分かるかなー。』

『少し前まではFランクと言うことで誰の目にも止まらない無名の騎士でしたが、七星剣武祭への体制が変わったため、持ち前の実戦力でメキメキと頭角を現してきた宮坂選手!今や七星剣武祭代表候補の一人として数えられるようになってきました!そして今、今日の彼の相手が赤ゲートから姿を現しました!同じく十戦十勝の素晴らしい戦績をひっさげて十一回戦目に望むのは、Dランク騎士、三年・綾辻絢瀬選手です!』

 

 爛に続き、黒い髪を靡かせながら絢瀬が姿を現す。

 

『奇しくも彼女もまた宮坂選手と同じく、今時珍しい剣術家で、これまでの試合を全て剣技のみで勝ち進んでおります。さらには大会実況に協力してくれている『破軍学園壁新聞部』の日下部加賀美さんからの情報によれば、彼女はなんと宮坂選手に剣技のレクチャーを受けている弟子でもあるとか!つまり今日の対決は師弟対決と言うわけですね!弟子はこの強い師匠を超えることができるのでしょうか!』

 

 爛は加賀美がこの事を調べていたことについて、驚いていたが、思い返してみると、加賀美はこれを平然とすることから意外と頭痛はしなかった。すると、どちらもスタートラインに立つと、絢瀬が爛に話しかける。

 

「やっぱり来たんだね。少しは不戦勝も期待してたんだけどな。」

 

 爛は絢瀬の言ったことに何も言わない。あるのはただ絢瀬と真剣に剣を交えることのみ。ならば、爛の今できることはひとつ。固有霊装(デバイス)を顕現すること。

 

「行くぞ、刻雨(こくさめ)。」

「・・・そんなにボクが許せないかい?」

「・・・・・・」

「でも勝つのはボクだ。」

 

 絢瀬はそれを言うと、自身の霊装、緋爪(ひづめ)を顕現する。

 

『さぁ、それでは皆様ご唱和ください。Let' s Go Ahead!(試合開始)

 

 爛は体勢を低くし、足のバネを使うことで推進力を得、絢瀬に向かって走り出す。

 

(かかった!)

 

 爛は絢瀬の近くまで走ってきていると、何かを感じとり、急停止し、バックステップをする。すると、爛の目の前からものすごい量の風を感じた。

 

(かまいたち・・・。やはり仕掛けていたか。)

 

 爛はバックステップをしながら、そう思い、バックステップを終える。

 

「ッ!?」

 

 バックステップが終わったと同時に爛の背中が斬りつけられた。爛はそのまま体勢を崩し、膝をつく。

 

(結構な攻撃力だな。)

『な、な、な、なんだ今のはぁ!?突然宮坂選手の背中が斬りつけられました!?宮坂選手体勢を崩し、膝をつきました!すぐに体勢を立て直すのか!?』

(今だ!)

 

 絢瀬は爛の体勢が崩れると、爛めがけて走りだし、爛に向かって緋爪を振るう。

 

『綾辻選手!宮坂選手が体勢を崩したところに追撃だ!宮坂選手、絶体絶命か!?い、いや、宮坂選手、綾辻選手の猛攻を体勢を崩した状態で耐えています!』

 

 絢瀬は爛の体の至るところから緋爪を振るうが、爛はそれを見切り、最低限の体の動きと霊装の刻雨を振るい、絢瀬の猛攻に耐えている。

 

(あと一歩が・・・遠い。)

 

 絢瀬にとって、爛に一つでも切り傷をつけられればいいのだ。しかし、爛が予想以上に耐え、一つの切り傷をつけさせることはしない。絢瀬は爛の背後を取り、緋爪を振るう。すると・・・

 

「ッ!?」

「玄武結界、発動。」

 

 絢瀬の緋爪を止め、爛はそのまま刻雨を振るい、絢瀬の体を狙う。

 

「くッ!」

 

 絢瀬はすぐに緋爪を自分の方に戻し、バックステップをし、爛の刻雨の攻撃を避ける。

 

「ウォームアップ、手伝ってくれてありがとう。ここからが本番だ。絢瀬。」

 

 ーーー第33話へーーー

 

 




絢瀬との戦いに入りました!六花のヤンデレ理由がこの一つに入りますね。爛自身、六花とかを失ったら発狂するほどでもありますからね。どちらも依存気味・・・。次回、早めに投稿するのでお待ちください!それでは皆様!次回でお会いしましょう!

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