一輝と爛の模擬戦の数日後、いつもの通り、朝練をしようとする一輝だが、爛がジャージを着るのではなく、何故かスーツを着ていた。
「爛?」
一輝は、スーツを爛が着ていることに疑問を持ち、爛に聞く。
「悪い一輝。ちょっと黒乃からの頼まれ事があってな。朝練が出来ない。」
「そうなんだ。それで、爛の道具とかがないのが気になるけど。」
「あー、部屋移動でな、俺が隣の部屋になったんだ。」
一輝は、爛が部屋を移動することに、少しだけこんなことを言った。
「って言うことだから、今度から入る人が僕らのルームメイトかな?」
「そうなんじゃないのか?それは分からないからな。もうすぐ時間だ。悪いな。」
爛はそう言うと、部屋を出てしまう。一輝は、仕方ないと思い、朝練に励むことにした。
爛が黒乃との待ち合わせ場所に行くと、待ちわびたかのように煙草を吸い、車に寄りかかっている黒乃が居た。
「今回は、よろしくお願いします。
「どう考えても職権乱用だな。」
と言いつつも、爛は高価な車の運転席に乗り込み、黒乃は助手席に乗り、車のドアが閉まったのを確認すると、爛は車を走らせる。普通ならば未成年でダメなのだが、学生騎士、魔導騎士では、十五で成人の扱いになる。そのため、車を運転できたりするのだ。
「部屋移動のことは言いましたか?」
「言った。今度来る人がルームメイトじゃないかって話しくらいしかしてないがな。」
「そうですか。」
爛は車を運転しながら、黒乃と話しをする。爛は何故かため息をついた。この事に疑問を持った黒乃なのだが、今は聞かない方がいいと思い、聞くことはなかった。
黒乃との世間話をしていると目的の場所に付き、黒乃と爛は、ヴァーミリオン皇国の皇女が来るまで車の中で待つことにした。
目的の場所、空港から一人の少女が出ると、報道陣はその少女に迫る。しかし、SPがそれを阻み、近くには迫れず、それでも報道陣は負けじと迫り、その少女に質問を投げる。だが、その質問に答えることはなく、少女は高価な黒い車の中に乗り込む。それは黒乃と爛が乗っている車であった。
「やあ、ステラ・ヴァーミリオン。私は破軍学園の理事長、新宮寺黒乃だ。よろしくな。」
「よろしくお願いします。理事長先生。」
ステラと呼ばれた少女は、ヴァーミリオン皇国の第二皇女、十年に一人が宿る潜在能力を持っている。いわば、
「留学する理由はなんだ?」
「そうですね。あの国に居ると上を目指せなくなるからです。天才騎士という柵に捕らわれるからです。」
(柵・・・か)
ステラが日本の学園に留学した理由を聞いた爛は、そうかもしれない、と思っていた。すると、爛には驚きのことをステラは口にする。
「それと、幼い時に、アタシの力の暴走を止めてくれた人に、会いたいからです。」
(そう言えば、そんなこと言ってたな。)
なぜ、爛がこんなことを考えているのかと言うと、爛は修行の目的で、ヴァーミリオン皇国に来ていたのだ。その時に、あり得ない量の魔力を感じとり、感じた方に歩いていくと、力の発現に失敗したのか、少女が焼かれていたのだ。爛はすぐに封印の術式を施し、少女の魔力の制限を掛けた。爛が何故こんなことをしたのかと言うと、また、ここに来るだろうと思ったからである。この術式は少女が、この力を使いこなすようになると、術式が徐々になくなり、完全に使いこなすときには、術式が消えるようになる。しばらくすると、その少女を心配したのか、少女の父親が来たのだ。父親に少女に施した術式の事を話し、立ち去ろうとしたときに、父親から、何処の国の出身なのか聞かれた時に、『日本で会える。』と言い、自分の名前と、その少女の名前を聞き、去ったのだ。少女の名前はステラ・ヴァーミリオン。その名前をしっかりと焼き付けていた。
(まさか、こんなところで会えるなんてな。)
爛はそんなことを思いながら集中し、破軍学園に車を走らせる。爛が車の運転に集中しているときに、ステラが車を運転している爛に疑問を持つ。
「彼、若くないですか?」
「まぁな。君と同じ学年で、私の師匠だ。」
「せ、師匠!?」
黒乃の師に会い、しかも、黒乃より若い見た目をしている爛が、黒乃の師だと言うことに、ステラは驚く。
「ちなみに、彼の年齢は?」
「今年で十六で、まだ十五だったはずだ。」
「十五!?」
爛の年齢について、驚きを持ってしまうステラであったが、爛は黒乃に対して、こんなことを思っていた。
(俺の名前まで出さないでくれよ。もし、ステラが知っていたら、大変なことになるからな。)
こんなことを思っていたのだが、他人から見れば、別にどうだっていい話しなのだ。
車を走らせ、破軍学園に着くと、ステラは学園の手続きに学園内に入っていった。
「はぁ、面倒だ。」
「面倒でもいいじゃないですか。」
「俺にとっちゃ困るな。」
黒乃は、空港に向かっているときに、爛からステラのことを聞いたのだ。
「一輝は、アクシデントを起こしそうだし、そのときの仲裁役が俺だしな。」
爛の思っていたことが、本当のことになるのは、まだ知らない。
ところ変わって、一輝はいつも通りに朝練を済まし、一輝の部屋である、405号室のドアを開けると・・・
(あれ、誰か居たっけ?)
405号室の玄関に誰かの靴があった。一輝が知っているなかでは、誰もいない。もし、間違えていたら、注意しようと思っていた一輝が、リビングに着くとそこには、着替えていた少女が居た。
ーーー第3話へーーー
第2話終了です!原作沿いで頑張るのでよろしくお願いします。第3話でお会いしましょう。それでは!