爛「おい、作者ーー!反省しろ!」
作者「する気なんてありません。」
爛「いっぺん死んでみっか?」
作者「お待ちください!」
爛「だが断る。」
作者「いやーーー!!!」
「ぼ、ボクは
(三年生か。意外だな。)
前書きの茶番は置いて、絢瀬は自己紹介をした。爛はこの少女が年上だとは思わなかった。おどおどしている感じで、ドジをしていたため、一つ上かも分からなかった。しかし、爛は先輩にため口で良いのかと思ってしまうのだった。
「話すときは・・・ため口で構わないかな?俺は敬語が苦手でね。」
「う、うん。ため口で構わないよ。年上扱いされると、ちょっとダメだから。」
意外とシャイなんだなぁと思っている爛が絢瀬を見ようとしていると、絢瀬の顔は、後ろの方にまで向いていた。壁に何かある訳じゃないだろう。何かあって見ようとしたらそんなことになるはずはない。見たいものがあれば、そっちの方に体も向くはずだ。しかし、そんなことはなかったため、爛は絢瀬に聞いてくる。
「どうして、後ろ向いてるんだ?目線じゃなくて首ごとそっぽ向いてるけど。」
「き、気にしないでっ。大したことじゃないからっ。」
「いや、誰もいない壁の方を向きながら話されたのは初めてだよ!?目を逸らされているならまだしも。」
挙動不審な絢瀬に耐えかねずツッコミを入れてしまう爛。すると、絢瀬はそっぽ向いている理由を話す。
「だ、だって・・・、恥ずかしい・・・から。」
「・・・・・・え?」
蚊のなくような声でそんなことを言い、爛は素っ気ない声をあげる。
「し、知らない男の子と、目と目を合わせて会話するなんて・・・恥ずかしいよ。」
よくよく見れば、絢瀬の顔は耳まで火が出そうなくらい真っ赤になっていた。
「宮坂君は、なんでそんな会ったばかりの異性と目を見て会話できるの?」
絢瀬の意外な質問に爛は頭を掻きながら絢瀬に話す。
「まあ、なんでと言われても・・・ねぇ・・・。話すときに相手の顔を見るのは普通なんだが。」
「ふ、普通・・・・・・、そうなんだ。すごいや・・・・・・。ボクには無理だよ。失礼だとはわかっていても、そんなに見つめられたら恥ずかしくて前を向いていられない・・・」
普通のことが感心されるとは思わなかった。だが、確かに絢瀬の視線は何度も窺うようにチラチラと爛に向けられているのだが、爛が絢瀬の視線に合わせようとし、絢瀬と視線が合うと、絢瀬はすぐに瞳が逃げてしまう。本人も爛の顔を見ようとして、努力しているのだが、恥ずかしさが勝ってしまい、それどころではなかった。
(参ったな・・・。ん?もうそんな時間なのか。そう言えば、一輝の試合があるはず・・・。)
爛はそんなことを考え、一輝に聞いてくる。
「一輝、そろっと試合じゃないのか?」
一輝が爛に言われ、医務室にある時計を見ると、一輝の試合の時間が迫っていた。一輝はそれに気づいた。
「あ、もうそんな時間なんだ。じゃあ、爛。僕は先に行ってるよ。」
「ああ、分かった。それじゃあ。」
一輝達は医務室から退室し、部屋に残っているのは爛と絢瀬の二人だけ。爛は絢瀬にストーカーしてきたことの理由を聞いてくる。
「じゃあ、絢瀬。俺は貴女が跡をつけていたことの理由を聞きたいんだが・・・、良いか?」
「うん、良いよ。ボクは剣術でどうしても上達しなくなって、スランプ気味なんだ。」
「なるほどね。で?俺をつけていたことは?」
「そんなときに、宮坂君と黒鉄君の噂を聞いたんだ。今時珍しい剣技の使い手が一年生に居るって。だから、宮坂君と黒鉄君に相談できれば、もしかしたら何か掴めるかも・・と思ったんだけど───」
爛は絢瀬の話を聞きながら、あるところを見ていた。そのところは、絢瀬の手。爛は絢瀬の名字である綾辻に思うところがあった。そして、爛は絢瀬の話を止めるように話す。
「ちょっと良いか?」
「何かな?宮坂君。」
「手を見せてくれ。気になることがある。」
「う、うん。分かった。」
絢瀬が爛に自分の手を見せると、爛は一目で分かった。絢瀬の手は、竹刀を何千回、何万回と振るってでしかできないたこができていた。爛はその事にあることに気づいたのだ。
(綾辻・・・、そしてこのたこは・・・。)
「もしかして・・・、絢瀬は海斗さんの娘さん?」
「た、確かに海斗はボクの父さんだけど・・・ど、どうしてわかるの?」
「絢瀬の手のたこだよ。それは剣術家の手だ。それに、俺のジョギングについていけなくとも、一輝とステラのジョギングについていくには相当鍛えてないとついていけない。・・・それに、絢瀬の名字である『綾辻』にちょっとピンと来たものだからね。」
そう言いながら話す爛に、絢瀬は爛をつけていたことの目的を詳しく教える。一方一輝達のところでは一輝の試合会場に向かいながら、綾辻について話していた。
「綾辻海斗さんの娘さんなのかな?」
「アヤツジカイトって誰?」
一輝の呟いたことが聞こえたのか、ステラは一輝に海斗のことを聞いてくる。すると、珠雫がそれに答えた。
「『
そう、珠雫の言った通り、『最後の侍』である綾辻海斗は様々な功績を残している。
『
かつて剣の世界の名だたるすべての大会で優勝し、その栄光を欲しいままにした稀代の天才剣士。全盛期には非伐刀者でありながら、数多の能力犯罪者鎮圧に尽力した記録もある。
そんな功績を残している海斗だが、一線を退くと同時に海斗の行動がどのようなものなのか、それが一切だされることもなくなった。爛達の年齢で言えば、まだ小学生の頃か、それよりも下だろう。
「普通、魔力に守られた伐刀者相手に拳銃の弾ですら軽い打撲程度の傷しか与えられません。でも彼の太刀はそんなハンデをものともしなかったとか。おそらく、この世界で一番伐刀者でなかったことを悔やまれている人間でしょうね。・・・・・・もっとも、非伐刀者であるのに強すぎたことは魔導騎士達の不興を買って、その勇名が騎士の世界に轟くことは無かったようですが。」
「でも、シズクは知っているのね。」
「黒鉄家は多くの魔導騎士と違い、武道の有用性をちゃんと認識してますから。」
黒鉄家は数多くの魔導騎士を育成し、それを世界に出している。そのため、生半可な鍛え方ではなく、しっかりとした鍛え方をさせるためには武術も必要になってくると、黒鉄家は考え、それを叩き込んでいるのだ。しかし、珠雫は最愛の兄を追いやった黒鉄家に嫌気が差して、だいぶ前に黒鉄家が行う武道の授業を受けなくなっていたのだが、『最後の侍』の勇名は記憶に残っている。ならば、彼女以上に直向きに剣の道を歩んできた一輝と爛がその偉大な先達の名を知らないわけがなかった。
「僕も子供の頃はよく海斗さんの試合の映像を見て剣の勉強をしていたよ。中学の頃は、直接道場に行って試合を申し込みに行ったこともあるしね。」
「え、そうなの?」
「うん。断られちゃったけどね。そういう野良試合はやってないって。服の襟を掴んでクルッと向きを変えさせられてね。」
思い出話のように話す一輝。どれだけ海斗のことを慕っているかがよくわかる。爛の方では絢瀬が爛をつけていたことの話を聞いていた。絢瀬のことについて思わず口に出してしまった爛は少し反省していた。
「噂を聞いたは良いんだ。だ、だけどボク、男の人とは父さんを除けば子供の頃から一緒にいる門下生しか話したことがなくって・・・その、何て話しかけたら良いのか分からなくて・・・・・・」
「それで、一週間も俺の跡をつけていたと。」
「お恥ずかしながら・・・。」
こくん。と顔を俯きながらうなずく絢瀬。爛はどうしたものかと考えてしまう。
(やっぱり、シャイかぁ。)
そんなことを思ってしまう爛だった。爛が時計を見ると、一輝の試合が始まる頃だった。爛はこの試合を見に行くべきなのだが、絢瀬も放っておくことはできない。そこで、爛は考えたのだ。絢瀬も連れていこうと。
「絢瀬、一輝の試合が始まる頃だ。良かったら見に行かないか?」
「黒鉄君の試合を?」
「ああ。」
「うん。ボクも行くよ。黒鉄君の剣術を見てみたい。」
絢瀬の言ったことに爛は少し苦笑をした。それは一輝の試合相手が一輝の刀を振らせてくれるかどうか。それとも一輝は刀を振るのかどうか。その二つに一つ。爛はその事も踏まえて絢瀬に話す。
「それは・・・、微妙なんだが、振らないかもしれないぞ?」
「それでも構わないよ。ボクは黒鉄君の戦い方も見てみたいから。」
「勉強熱心な子って。ああ、それと良かったら一緒にトレーニングでもしないか?一輝だって、綾辻流を見たいだろうしな。」
「ホント!?」
爛は絢瀬にそう言うと、絢瀬は目をキラキラさせて、爛の手を握る。
「嬉しいよ!二人に剣を見てもらうなんて!・・・あっ。」
つい勢いでやってしまったと思った絢瀬はすぐに爛から放れ、顔を赤くさせる。
「ゴ、ゴメン!勝手に手を取っちゃって。気安く触れちゃダメだよね。」
「い、いや・・・、別に大丈夫なんだが・・・。」
恥ずかしい絢瀬を見て、爛はどうしたものかと考えてしまった。まあ、日に日にそんなことは無くなっていくだろう。爛は絢瀬と一緒に一輝の試合会場に向かった。
ーーー第24話へーーー
作者「ちょっと短め。」
爛「今度からはしっかり書いてくれよ。」
作者「分かった。」
爛「意外と素直だな・・・」
作者「な訳ないでしょ!じゃあね~」
爛「ちょっ!?おい!?待て!」