落第騎士の英雄譚~世界最強の剣士の弟子~   作:火神零次

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綾辻絢瀬編に入るので章を追加します!


思いの章~七星剣武祭代表選抜戦~ 戦いに餓えた獣 全てを失った少女
第21話~変わった日々~


 桐原との戦いを終わらせた爛は試合会場から立ち去る。桐原は以前、爛の精神介入《天国の名の地獄(アウター・ヘブン)》により精神をズタボロに攻撃されていた。爛から感じるのは自分に対する復讐心と悲しみ、絶望・・・様々な暗い感情と共に精神を喰らっていた。まるで感情を刈り取る兵器のように。いや、実際彼がそうなのかもしれない。フィールドに爛が立つと何もかもが変わって見える。まるで自分達など相手にならないと。其れほどの威圧を爛は相手に流し込んでいた。桐原は一日は目を覚まさず、目を覚ましたときには爛が行った精神攻撃は何もなかったが、爛に出会った瞬間に、フラッシュバックが起こり、絶望にうちひしがれていた。その後桐原は七星剣武祭代表選抜戦のエントリーをはずしてもらうよう実行委員会に頼んだ。

 爛はいつもの通りだった。しかし、爛はもうただの『予測不能の騎士(ロスト・リール)』には戻れることはなかった。それもそうだ。破軍学園の生徒ではかすり傷でさえつけることが叶わなかった『紅の淑女(シャルラッハフラウ)』・・・生徒会の会計、三年の貴徳原カナタを破り、去年の七星剣武祭ベスト5、『麒麟』の東堂愛華を破り、黒鉄一輝との戦いでは敗北を喫してしまったが、なおを勢いを止めない、一輝達の超新星(スーパールーキー)、無傷の完勝をあげる『狩人』、桐原静矢からダメージをもらわずに完勝をした爛は戻れることなどないのだ。そして、一輝同様に学園、ネットのスレ・・・いや、世界中に名を馳せる強者へとなっていくのだった。そして、名付けられた新たな二つ名は・・・

 

鬼神の帝王(クレイジーグラント)』。

 

 爛から放たれる気は例え相手でなくとも、動画であっても迫力が違った。その立ち振舞いから『帝王』が付けられる。爛の戦い方・・・相手を圧勝するのだが、桐原戦で見せた一輝と同様の動きをし、相手の動きを誘うこと。そして、何もかもを切り裂く姿からは『鬼神』と言われた。それが爛の新しい二つ名。『鬼神の帝王』だ。

 そして、爛と一輝はいつもとは違う日常を過ごしていた。それは、爛と一輝の周りには女子がたくさん居たのだ。

 

「教えてくださいよ~、先輩のこと。」

「あのなぁ・・・俺は教える趣味なんて無いんだけど・・・」

「良いですからぁ、教えてください。ダメですか?」

 

 日下部にとりつかれ、日下部の言ったことを却下する爛だったが、日下部のショボンとした顔に上目遣いをされた爛は内心で「うぐっ・・・」となった。

 正直言って、俺は教えても良いんだけれど・・・

 そう思いながら一輝の方を向くと、一輝も爛と同様に女子にとりつかれていた。そして、それを離れた場所で見ているのは嫉妬心を抱いて一輝を見ているステラと呆れながらステラを見ている珠雫。そして、クスクスと笑いながら見ているアリスが居た。爛は「はぁ」っとため息つき、日下部に話す。

 

「俺で良ければなんだが・・・その代わり、一輝から相手を俺に移してくれ。一輝が困っていると言うか・・・ステラが怒りそうだから。」

 

 爛は苦笑しながら日下部に話す。これ自体は事実だ。ステラが嫉妬心を抱きすぎて一輝が燃やされないようにしないといけないと思っている爛の気遣いだ。

 

「わかりました~、それでは、言ってきますね。」

 

 日下部がそう言い、一輝にとりついている女子に爛がOKを出したことを言いに行こうとすると・・・

 

 バン!

 

 と机が叩かれた音が聞こえる。爛達は音のした方を向くと、そこには爛達を見ていた五人の男子生徒が居た。このとき爛は、まだ自分と一輝のことを信用していない人間達だとすぐに気づいた。爛はすぐ女子に離れてもらい、男子グループと対峙する。そして、そのグループのリーダーであろう少年、真鍋が爛に挑発するように話す。

 

「俺達にも教えてくれませんかねぇ?大先輩達のことを。」

 

 そういうと、全員が固有霊装(デバイス)を顕現し、爛に向ける。しかし、爛は動じることもなくグループ達をただ普通に見ていた。すると、日下部が爛にこんなことを話す。

 

「私達、見ているので、霊装を顕現しても良いのでやっちゃってください!」

 

 日下部は爛にそう言うと、爛と一輝の周りに居た女子達が爛に「やっちゃって!先輩!」と言うのだが・・・爛には霊装を顕現しなくても対処は可能だ。

 

「いや、霊装は顕現しない。安全なところまで下がってるんだ。一輝。」

「わかった。みんな、こっちに来てくれ。」

 

 爛は全員が安全な場所まで下がるように言い、一輝の名前を言う。一輝は爛の意図が分かったのか、女子達を安全なところまで下がらせる。すると、爛は右足に体重がかかるように立ち、コインを取りだし、右手に持つ。そして、今度は爛から真鍋達のグループを挑発する。

 

「んなこと言ってる暇があったら鍛練でもした方が良いぞ?ま、お前らに鍛練と言う言葉があるのかないのかと言われれば、ないというだけじゃないのか?」

 

 爛はコインに雷の力をためながら真鍋達を見ている。完全に伐刀者(ブレイザー)からすれば酷い物言いなのだが、魔力だけで補おうとするから体が鈍ると言うことから言ったことだが、真鍋達はそれを別のことで受け取ったのか痺れを切らす。

 

「なんだとぉ!?やっちまえ!てめぇら!」

「「「「おおー!」」」」

 

 真鍋の号令と共に爛に走っていく近接戦闘の霊装を持っている四人。爛は目の方に集中し、相手がどう来るのかと見ていた。

 

(速いが・・・見え見えだ。)

 

 爛は呆れながら前から走ってくる日本刀の霊装を持っている少年に狙いを定めた。正に抵抗がないと思い込み、爛に向かって跳躍し、爛を斬ろうとする。その刹那、刀は何かの衝撃を受け、爛の隣に降ろされることになった。

 

「っ!?」

「何っ!?」

 

 爛に向かって走っていた三人と真鍋は驚いた表情をしていた。爛が刀をそらし、当たらないようにしたのは、右手に握り持っていたコインに雷の力をため、斬りかかってきた時に、コインを親指で弾き、魔力制御でコインの軌道を変え、日本刀に当てたのだ。雷の力を使っていたのは、ただのコインでは弾かれて刀が降ろされる軌道を変えることができないのだ。だから、雷を使い、軌道を変えることにしたのだ。

 

「反応が遅い。」

「うわぁぁぁぁぁ!」

 

 爛はすぐさま日本刀を持っていた少年の日本刀を叩き落とし、少年の腕を掴んで高速で背負い投げをする。勢いをつけて投げられた少年はあまりの衝撃に気を失った。

 

「さて、次にやられたい奴は誰かな?」

「三人で行くんだ!やっちまえ!」

 

 爛は三人を威嚇するように殺気を向ける。三人は爛の圧倒的な強さに一歩退いてしまう。しかし、真鍋は三人に行くように大きな声を出す。

 

(動かない奴ほど何もできないってね。)

 

 爛はもう一枚コインを取りだし、親指で弾くことができるように構える。そして───、

 

「余所見してると危ないぞ!」

 

 爛は親指を弾き、雷の力をコインにため、真鍋に向かって弾く。そして、軌道は真鍋ではなく、真鍋の霊装であるリボルバーの銃口に向かってコインが行く。そして、コインがリボルバーの銃口を無理矢理入っていく。

 

「こっちも見ないで良いのかよ!」

 

 爛はそのときには行動に移していた。三人は霊装を縦に振るっており、どれも爛の頭を斬るようになっていた。爛は最小限の動きで避ける。そして、日本刀、鉄棍、斧と言う形で降ろされていく。しかし、降ろすのを間違えた。斧を持った少年は日本刀、鉄棍を砕きながら地面に叩きつける。そして、日本刀と鉄棍を持った少年は霊装を破壊された影響で気を失う。

 

「くそぉ!」

 

 斧を持った少年は斧が食い込んだせいで、抜けることがなかったため、拳で爛に殴りかかる。しかし、見え見えの拳は目を閉じながらでも避けることができる。爛は体勢を低くし、一気に懐に潜り込む。そして、拳で腹に一発。そのまま腕を掴み、背負い投げ。少年は爛の力で気絶をする。

 

「全く、単純な動きしか出来ないんだな。お前らは。」

 

 爛は頭を掻きながら、真鍋にそういう。先程の威勢はどうしたものかと思うほど爛に怯えていた。

 

「な、なめるな!」

 

 真鍋はリボルバーの引き金を引こうとするが引くことはできたが弾が撃たれることはなかった。それは、爛がコインで塞いでいるからだ。爛はすかさず、真鍋の目の前まで行き、真鍋を殴ろうとするが、真鍋の目の前で拳を止める。真鍋は気絶し、仰向けで倒れる。

 

「ふぅ・・・さて、こいつらを運ばないとだな。」

 

 爛が真鍋達を連れていこうとすると教室のドアが開けられ、そこから現れたのは・・・

 

「それは私がやっておくよ。」

「香姉!?どうしてここに?」

「それはまあ・・・調度監視カメラで見てたからね。」

「成程ね。」

 

 爛は日下部達のところに戻っていく。しかし、一年の教室ではギクシャクした空気になっていた。まあ、体術で伐刀者を倒すことなど常識外れなのだ。相手が弱かったと言うのが正しいのだが。

 

「で、どうするんだ?加々美、何もなければ俺は鍛練に行くぞ。」

 

 爛が逃げるような口実を作るが、加々美は爛の腕にとりつく。そして、爛の耳元で甘い声で、吐息で爛に話す。

 

「先輩のこと・・・教えてくださいね。」

「あ、ああ。」

 

 爛はこの事に頷くことしか出来なかった。爛自身、沙耶香が甘えてきていたので耐性等はあったのだが、加々美のするようなことはなかったため、頬を少し赤くしていた。一輝の周りについていた女子も爛の方に行き、爛はそのまま、自室へと連れていかれた。因みに一輝達は止めることはせず見ていた。

 

「僕達の方もトレーニングしようか。」

 

 そして、一輝達は何事もなかったようにトレーニングをしに行った。一方、爛の方では爛の自室に入り、質問を受けていた。いや、女子が爛のかっこいいところなどを話していた。爛は加々美に至近距離で質問攻めを受けていた。

 

「先輩は何で破軍学園に入ってきたんですか?」

「それは、黒乃が入ってくれと言ってきたからだな。」

「じゃあ、何でFランクで居るんですか?」

「良い意味で目立ちたくないし、陰口を言われるのが一番嫌だからかな。それに俺の両親もFランクで居たからね。」

「成程・・・因みにご両親のお名前は?」

「宮坂双木と宮坂華楠・・・いや、川南華楠って行った方が良いか。」

 

 爛はこの通り質問攻めを受けていた。そして、女子達の話が終わると、爛を挟むように隣に座ったり、爛の膝の上に座ったり、爛を後ろから抱き締めたりするのだった。因みに爛はそれなりに性欲はあるのだが、耳元で甘い声で呟かれたりしたため、爛の理性が異常なまでに減っていくのだった。そして、爛から離れたところで見ている少女はため息をつくのだった。

 

 ーーー第22話へーーー

 




因みに爛から離れたところで見ている少女は絢瀬のことです。

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