爛は第四訓練場に向かっていた。これから、
「まさか、こんなにいるとはな。」
「そうですね。見させていただきますよ、
「二つ名で呼ぶか。」
爛が訓練場で一輝を待っていると、周りの席から声が聞こえてくる。
「おい、あれが
「そういえば、Fランク同士の模擬戦なんだっけ?」
「そうだ。どんな戦いでも、どうせFランクなんだ。期待しても意味がないぜ。」
爛はその席の話しを聞いていると、一輝がどれだけ悪い評価を受けているがよく分かった。それぞれの席の話しを聞いても、悪い評価しか言っていない。爛はそれに呆れてしまった。そこに、一輝がきた。
「ごめん、遅れちゃったかな。」
「いや、そんなことはないな。始めてもいいか?」
「勿論、いいよ。」
「よし、黒乃、始めてくれ。」
「分かりました。」
黒乃は二人が始めてくれと言ったので、始める合図を出す。
「これから、黒鉄と宮坂の模擬戦を始める。二人は、
「来てくれ、『
一輝は、右手を前に出し、出てきた光を掴み、左手を握ったところに右手を合わせ、鞘から引き抜いたように顕現させるのは、鋼の太刀。
「行くぞ、『
爛は、右手を横に出し、そこに可視化された魔力が爛の右手を包み、光を放つ。そこから、払うように右手を振るうと、顕現されたのは妖刀とうたわれた刀『
『
黒乃の合図と共に走り出したのは一輝。爛に対して、唐竹割りをする。しかし、爛はそれに対応することはなく、まるで斬られても構わないと、言っているようだった。
「正気か!?あいつ!」
「嘘だろ!?」
観客席からは驚きの声があがる。しかし、一輝は何かあると思い寸前で止め、爛から距離を取る。
「よく気付いたな。」
「やっぱり何かあったんだね。」
「まぁ、その通りだ。」
一輝は、爛の周りに何かを感じとり、魔力を展開していることに気づく。それは近くに行かなければ、あまりにも感じ取れない微かな魔力を。
「じゃあ、こっちから行かせてもらうぞ。」
爛がそう言うと、一輝に向かって走るが、途中で爛の姿が消える。すると、一輝の目の前に爛の姿があった。これに驚いた一輝だが、爛の刀の振りを何とか避け、カウンターの要領で刀を振るうが・・・
「それ、見えてるぞ。」
爛は、刻雨を左手に持ち変え、柄で一輝の刀を止める。
「っ!?」
「これは変則ガード、動体視力が極限に高めていればできることだ。」
爛は、一輝から距離を取り、刀を構える。一輝は先程までやっていたのは、準備運動だと言っているように一輝には爛が見えた。
「いつでも。」
爛は一輝にいつでもいいと言い、刻雨を構える。一輝は陰鉄を構え、爛に向かって走る。
「はぁ!」
一輝は右に薙ぐが、爛は後退し、刻雨を構える。一輝は追撃をするために走り出す。爛も、一輝に応戦するために走り出す。
「っ!」
一輝は刃がぶつかり合う瞬間に何かが斬れたのを感じとり後ろに下がると、一輝の学生服の袖が斬れていた。それを見た黒乃は、一つのことに気づく。
(
伐刀絶技は極端に言えば、何でもアリだ。事実、西京寧々は隕石を落とすのだがら。相手を二度と戻ることのできない空間に追いやることもできるし、完全に死ぬしかない状況を作ったり、最悪の場合、この世界を破滅させるなんてこともできてしまうのだ。実際、爛はそんな芸当ができてしまう。それほど伐刀者は国からも重要視され、魔導騎士になるための資格などもあるのだ。裏を返せば、それほど伐刀者は危険な存在なのだ。
爛は、刻雨を構え、微かに出していた魔力を止め、一輝に向かって走る。
(魔力の放出が止まった、なら!)
一輝は爛から放たれている魔力が止まったことを好機と思い、爛に対して刀を振るう。爛は一輝の刀を受け止め続ける。刀を振るう一輝、爛にフェイントで体術を使うが、爛にはそれが見えており、一輝の体術を避ける。一輝は追撃をしようとするが・・・
「っ!?」
爛は一輝が体勢を戻すところを狙い、思いっきりスピンキックを当てる。魔力をのせたスピンキックだったので、一輝は吹き飛ばされてしまう。
「あいつホントにFランクか!?」
あり得ない動きをする爛に驚きの声があがる。爛からすると、これでも自分の師には到底太刀打ちできないと思っている。一輝も体勢を立て直し、爛に向かって走る。爛も走りだし、二人が得意の刀の戦いに入る。
(なんだ、この動き。)
爛の振るう剣術だが、何にも当てはまらない剣術に一輝は、疑問を持つ。爛は自分の剣術に一輝が疑問を持っていることに気付き、一輝とは距離を取る。
「俺の剣術に驚いているのか?」
「そうだね。」
「そうか。これは俺の家の剣術。宮坂流・一の太刀・空の型だ。他にも二の太刀だったり、別の型があるんだがな。」
爛の宮坂流は太刀の分類と型の分類があり、一の太刀と二の太刀の二つの太刀に別れ、空の型、雲の型、そして、雨の型の三つの型に別れる。ただし、宮坂家は有名ではあるのだが、これは表の流派である。裏の流派については別の時に話すとしよう。
爛が一輝に一の太刀・空の型で刀を振るうが一輝は今まで鍛え上げてきた身体能力でかわしていく。
「避けるの、上手いな。」
「いや、それでもギリギリさ。」
「俺の剣は見切れたのか?」
「ああ、見切った。」
一輝は爛に刀を振るうが、その刀の軌道は爛が振るう剣術と同じ剣術であった。
「同じ軌道!?」
観客席も、一輝が振るう刀の軌道が、爛の振るう刀の軌道と同じことに気付き、驚きの声をあげる。
(相手の剣の理を読み、その剣術の欠点を潰し、自分の霊装に最適化した剣術を繰り出す、か。)
一輝は今まで誰にも教わることがなかったため、一輝には剣術がないと言ってよかった。だから、一輝は相手の剣の理を解き、自分の霊装に最適化させた剣術。それは相手の剣術の欠点を潰し、完全な上位互換を即席で作る、ということだ。ようは、相手の剣を見て、盗むということ。普通ならば、一輝のような発想にはならない。いや、なったとしてもやる人はいないに等しいであろう。しかし、一輝はその発想に至ることができ、それをやってのけたのだ。
「さすがだな。」
爛は感嘆の声をあげる。一輝は刀を振り上げ、唐竹割りをし、刀を振るうが爛はこれを避け、振るったところに衝撃波が残る。
「これが僕の剣術、『
「それは、厄介な剣術だな。」
爛は刻雨を振るい、一輝の模倣剣技に対応する。一輝は、模倣剣技で刻雨を捉え、陰鉄を振るう。しかし、少しずつ押され始める一輝。
(剣の振るう速度が速い!)
少しずつ、爛は剣を振るう速度を速くしているのだ。このままじゃ、ダメだと考えた一輝は、爛と距離を取る。
「切り札を切る!《
一輝から放たれるのは、可視化された魔力。これを見た爛は笑みをこぼす。
(まさか、ここまで来るとはな。)
笑みをこぼした後、爛から放たれるのは、一輝と同じ可視化された魔力。その魔力は青く輝いており、まるで、宝石のサファイアを思わせる程の輝きであった。
「俺も切らせてもらう。《
一輝と爛がぶつかり合う、二人の振るう刀の速度はほぼ見えないに等しい。事実、これを見て二人の刀が見えるのは、黒乃と寧々、そして香の三人のみ。
「何してるのか分からねぇ。あいつらFランクなのか?」
観客席からは、二人のあり得ない動きにFランクなのか疑問を持つ人もいた。
「ハァ・・・ハァ・・・」
一輝は、息を切らしながらも、爛に対して陰鉄を振るう。爛は、陰鉄を捉え、刻雨で受け止める。そして、一輝が距離を取ると、膝をつき、肩で呼吸をする。
(ハンデ付だったら、黒乃に勝てるかな。)
爛は、そんなことを考えながら、一輝に対して、刻雨を構える。
「参った。もう体が動かないよ。」
「そこまで!勝者、宮坂爛!」
一輝がギブアップをすると、黒乃は試合を終了させ、爛の近くに行く。
「一輝だが、七星剣武祭の上位に食い込めるな。」
「なら、七星剣武祭の三位までに入れば、卒業させるということにしますか。」
爛は黒乃と話しを終えると、一輝のそばに行く。
「おう、大丈夫か?」
「何とか。」
「そうか。」
爛は一輝を立たせ、部屋に戻るように言い、スマホを見ると、黒乃からのメールがあり、苦笑いをしながら、黒乃のところに戻る。
「まったく、面倒なことを俺にさせるか、普通。」
「師匠は授業に出なくてもいいじゃないですか。」
「これが俺じゃなかったら、職権乱用でアウトだぞ。」
黒乃に言いたいことを言った爛は、一輝が居る部屋に戻る。部屋に戻る途中、爛はこんなことを呟いた。
「まさか、ヴァーミリオン皇国の皇女の送迎とはね・・・」
ーーー第2話へーーー
結構時間がかかりましたが、第1話終了です!
第2話でお会いしましょう。それでは!