土曜日の昼、ショッピングモールに出掛けた爛達は
「爛~!」
「早いなステラ。」
「それで、話って?」
爛が手帳を開いていてのは、ステラにメールを送るためだ。そして、爛が送ったのは話があるとしか送っていない。
「まあ、一輝のことと、お前のことの話なんだがな。一輝について頼みたいことがある。いや、俺自身の願いと言った方が良いのか。」
「どう言うこと?」
「俺と一輝が模擬戦を結構な量をやっているのを知っているか?」
「ええ、イッキから聞いたわ。ランと模擬戦を大量にやっていたと。」
「それと、一輝が公式戦に一度も出てないのも知ってるよな?」
「ええ。」
ステラの頭の中には、自分が一輝に負けたときに爛がいっていたことを思い出していた。一輝のことは測ることができないと。
『現に、あいつの力は測れるもんじゃない。あいつは、常識を打ち破ってる。常識では考えられないところまで行ってることもあるんだ。一輝の考え方も、戦い方もな。』
爛は、どれだけ一輝が不当にチャンスを奪われ続けていると行っていたようなものだった。
「一輝は公式戦に出るのは当たり前だ。だが、それで一輝は緊張しないとも限らない。そこでだ。ステラに俺の願いを聞いてくれるか?」
「何、かしら?」
「あいつの心の悲鳴を聞いてやってくれるか?」
「心の、悲鳴を・・・聞く。」
「そうだ。俺も聞いてやれるが、俺も一輝の心の悲鳴と同じだ。流石に自分の心の悲鳴と一輝の心の悲鳴を何とかするのは割りと大変なんだ。だから、一輝のルームメイトであるお前に言ったんだ。」
爛は同じように心の悲鳴を感じていた。それは、彼が人ならざる者である以上、爛は周りの人間から隠れるように過ごしていた。だからこそ、爛は出ることは出来なかったのだ。自分が眼帯をしていることもそれに含まれている。
「分かったわ。できる範囲だけど、やってみる。」
「そうか。助かるよ。それと、一輝の心の悲鳴はいつもと違う一輝を感じたときだ。」
「?」
「ありゃ、言い方が悪かったな。一輝の姿勢は分かるよな。一度手合わせをしたから。」
「ええ。わかるわ。」
「なら、その一輝の姿勢と違う姿勢を感じたら、それが心の悲鳴になる。」
爛自身、一輝の姿勢とは違う姿勢を見ていることはない、ただ、一輝のルームメイトだからこそ、分かっていたのだ。だから、爛は一輝のルームメイトになったステラに頼むのだ。自分より長い付き合いになるであろうステラに。
「一輝は表面上、何もないように思うが、内側は脆すぎるんだ。」
常人では、一輝が受けてしまっている物には誰も耐えることができない。常識ではストレスが臨界状態でも、一輝は耐えてしまう。───表面上では。元ルームメイトとしてできることは、ステラに一輝を支えるということをさせること。
「成る程ね。承ったわ。アタシにとって、イッキは格好いい騎士であってほしいからね。」
「それってつまり、一輝のことが好きなのか?」
「ななな、何でそうなるのよ!?」
「一輝にたいしての行動で分かるからな。」
「ええ!?」
顔を真っ赤にして、爛の言ったことに否定をする。爛はため息をつくと、ステラをデコピンする。
「痛っ!?」
「ほい、もう言い訳を止めような。」
「何すんのよ~」
「ま、俺の願いを聞いてくれたしな。何か、聞きたいことでもあるか?」
ステラは少しだけ悩むと、何を聞くか決まったのか、爛に話す。
「アタシの本当の能力を知りたいわ。」
「そうか。じゃあ、単刀直入に言うぞ?」
「分かったわ。」
爛は一呼吸おくと、口を開く。
「ステラの本当の能力は・・・ドラゴンを体現する───そう言う能力だ。」
「ドラゴンを・・・体現する・・・」
「つまりは、自分自身が───ドラゴンになるということだ。本当の能力を使いこなしたとき、お前に施している術式はなくなる。」
爛はそう言いながら、ステラの腕を指で差す。すると、爛は何かに気づいたのか、周りを見渡しながら言う。
「誰だ?隠れてるのは。」
爛はそう言うが、誰も出てこなかった。しかし、爛はあるところを一点に見つめる。
「そこに居るんだろ?誰かは知ってるけどな。」
「え?え?誰?」
爛は一点を見つめ、ステラは爛が何を言っているか、分からなかったが、爛が見つめている方向を見ると、木の陰に誰かが居た。
「おい、そこから出てこいよ。」
しかし、そこから出てくる気配はなかった。爛はため息をつくと、木の陰に居る人間の名前を言う。
「出てきてくれよ。ただ、こんなタイミングで会うのは俺も驚きだ。『エーデルワイス』。」
「バレてしまいましたか。」
そう言いながら出てきたのは、白い鎧をつけている女性が出てくる。その姿はまるで天使のような姿だった。
「ラン、この人は?」
「俺の師であり、世界最強の剣士だ。二つ名は『
「世界最強の剣士・・・」
「ステラ、お前は戻っておけ、ここは俺とエーデルワイスの場だ。」
「わ、分かったわ。」
ステラは爛に言われ、学園内に戻っていく。爛とエーデルワイスは学園を離れ、山の中に居た。
「もう一度聞くけど、何の用で来たんだ?」
爛がエーデルワイスに聞くと、エーデルワイスは空を見る。爛も空を見ると、満天の星が見えていた。
「綺麗、ですね。」
「そうだな。で?」
「ああ、そうでしたね。それは貴方を見に来ようかと。」
理由を聞いた爛は、微笑んだ。そして、エーデルワイスの言った理由に対して、こう言った。
「はいそれ、嘘だろ。」
「何で分かったんですか?」
「寝る場所が無いんだろ?貴女はいつも何処かに居るんだから。」
爛の言ったことに何も言わないエーデルワイス。二人で話をしていると、爛とエーデルワイスは何かに気づいたのか、爛は一言言う。
「一輝、居るのは良いが、そこで居て良いのかな?どうせ居るんならこっちに来い。」
「良いのかな?折角の再会なのに。」
「良いさ。な?エーデルワイス。」
「はい、構いませんよ。」
爛がそう言うと、一輝がこっちに来た。そこにはステラの姿もあった。
「ステラも居たんだな。」
「何よ。」
一輝達が来たのは、ステラが無理矢理連れてきたという感じだったのだ。一輝達も空を見上げる。
「キレイね~」
「そうだね。こっちに来ただけでこんなに違うんだ。」
満天の星空に見とれる二人。爛とエーデルワイスが立つと、爛とエーデルワイスは
「え?え?何やってるの!?」
「弟子の力を見ようかと。」
「まあ、幻想形態だし、
爛とエーデルワイスは霊装を構える。
「っ!」
爛がエーデルワイスに向かって走り出す。エーデルワイスは二つの剣を構え、爛と対峙する。
「ふっ!」
「やあっ!」
二人の振るわれる剣はエーデルワイスが使う剣技だった。しかし、二人の剣は一輝達には見えなかった。それほど二人が振るっている剣は速いということ。
「だぁ!」
「っ!」
爛がエーデルワイスの意表を突く剣の振りをするが、エーデルワイスの霊装は、二つの剣。爛より手数が多いのだ。だから、爛の意表を突いた振りは、止められてしまう。
「流石、俺の師だ。本当に戦いがいのある人だよ!」
「そう言ってもらえて私も嬉しいですよ!」
爛もエーデルワイスも二人とも剣を全力で振るっている。爛はエーデルワイスの二つの剣を捉えるように刻雨を振るう。エーデルワイスは爛の刻雨の振りの速度を越えるように二つの剣を振るう。
「刻雨、全力解放!」
爛は刻雨の能力を全力解放する。すると、刻雨と爛が紫電を纏う。一輝とステラは驚く。自分達と戦っていたときは全力を出していなかったと。
「これが、爛の全力・・・」
「スゴい力ね・・・」
一輝とステラは感嘆の声を出す。爛とエーデルワイスは剣を振るう。一進一退の攻防。剣であれば二人は絶対に負けることのない剣士だ。
「「シッ───!」」
剣の速度が尋常じゃないほど速くなる。剣が見えなくなるだけではなく、己の姿さえ、見えなくなっている。爛とエーデルワイスしか持っていない剣技。これは剣の振るう速度を操れる剣技。爛とエーデルワイスは一から百までの速度を変えられる。二人が一旦距離を取る。
「っ!?」
爛が何かに気付くと、脚に力をため、エーデルワイスの後ろに行く。すると、銃声が響き、爛を貫く。
「ぐあっ!?」
爛は膝を突くが倒れるまでは行かず、立とうとするが、脚が痺れ、動けなくなる。
「しまった・・・!?」
「爛!?」
すると、もう一度銃声が響き、今度は爛の胸を銃弾が貫く。
「かはっ・・・」
「爛ーーーーーーっ!」
爛が倒れると、一輝とステラが爛に駆け寄る。爛はまだ生きているが、完全に胸を貫いており、ほぼ死ぬ間際と言ってよかった。エーデルワイスは爛を撃った人間を探したが見つからず、今は断念せざる終えなかった。一輝達は黒乃にこの事を連絡し、全速力で学園に戻る。
「理事長!」
「取り合えず、
「っ!」
「お前は・・・師匠の一体何の関係だ。」
「師弟の関係です。気になるのでしたら、彼に聞いてみたらどうですか?」
「師匠の師なのか?」
「そうです。」
「今はごちゃごちゃ言ってる暇はないな。今は師匠の無事を祈ろう。」
「そうですね。」
エーデルワイスは爛が目を覚ますまで、学園に居ることになり、黒乃達は爛が目を覚ますことを祈っていた。それも、何時間も彼のそばに居た。
「爛、戻ってきてくださいね・・・私は貴方を待ってますから・・・」
爛を撃ち抜いたのは一体・・・
ーーー第13話へーーー
一輝「爛が撃ち抜かれたのを次の話で分かるかもね。それじゃあ。」