爛、一輝、ステラ、珠雫、アリス、明、颯真の七人で、破軍学園の近くにある、ショッピングモールに出掛けていたが、そこで、世界規模の犯罪組織、
一輝とアリスは、影の中から顔を出す。爛は自身の異能である雷を使い、脳の電気信号を掌握し、自身の姿が見えていないようにした。
「アリスの異能は便利だな。」
「影を扱うなんて、逃げに良いね。」
「あたしの
すると、爛が歩き出す。歩きながら、二人に話しかける。
「一輝、黒乃に霊装の顕現の許可をとっておけ、俺は学園内の霊装の顕現の許可しか持ってない。学園外では、黒乃に頼んでくれ。俺は周りの警戒に行く。」
「分かった。」
爛が警戒に行くと、一輝は手帳を取りだし、黒乃に電話を掛ける。
「理事長。」
『ああ、状況は分かっている。相手は解放軍で間違いない。数は二十人から三十人辺り、奴等が定期的に行っている資金集めだ。弾を撃ったが、死傷者は0。人質はフードコートに集めている。』
「フードコートは、あたし達がクレープを食べたところね。」
「理事長、霊装の顕現の許可をお願いします。」
『分かった。誰だ?』
「黒鉄一輝、ステラ・ヴァーミリオン、宮坂爛、黒鉄珠雫、有栖院凪、宮坂明、音無颯真この七人です。
『・・・分かった。それと、一般人の安全が第一だ。後もう一つ、
「どうしてですか?」
普通ならば、黒乃達より実力が上の爛を戦いに出すはずだ。その一輝の考えを打ち壊す答えを言う。
『師匠は、完膚なきまで叩き潰すほど、解放軍を良く思っていない。そして、師匠の家族が解放軍に殺されている。』
「なっ───!」
一輝は黒乃から帰ってきた返答に、驚きを隠せなかった。爛の家族が解放軍に殺されているということは、爛は少なからず復讐心を持っている可能性がある。黒乃は、それを承知で爛の霊装の顕現の許可を出したのだ。
「分かりました。」
黒乃の意思を汲み取った一輝は、返事をする。
『ああ、頼む。』
そう言うと、電話をきり、手帳をポケットの中にしまう。
「一輝、許可を貰ったか?」
「ああ、勿論。」
「じゃあ、アリスと一輝は、フードコートに行ってくれ、俺は単独行動で各階に居る解放軍をやる。後は下に行ってフードコートで注意を引き付ける。二人は人質の安全を確保と、解放軍を統率しているヤツを捕らえること。良いか?」
「ええ、分かったわ。」
「じゃあ、俺は行く。」
爛はそう言うと、霊装を顕現し、一輝達の前から姿を消す。
「ちょっ、間に合わなかった。」
「仕方ないわ。フードコートなら、あたしの《
「なら、見つからないところから様子を探ろう。そこにステラ達も居るだろうしね。じゃあ、行こうか。」
「おまかせあれ。」
一輝は、アリスの手に触れると、アリスは《日陰道》を発動。二人は影の中に沈んでいく。
三階に居る爛は、見つからないよう隠れながらこの階を巡回している解放軍を探していた。
「居たな。」
爛が見つけたのは二人一組で巡回している解放軍。その二人の装備は、防弾チョッキにガスマスク、そしてアサルトライフルとショッピングモールを襲うには充実した装備だった。
「資金を急いで集めないとは、大変だな。」
「でも、ノヴァの力を手に入れれば、俺たちの目的を達成される。ここは我慢をすることだ。」
巡回している二人が、立ち止まった瞬間、右側にいた一人が後ろに引きずり込まれる。それを見たもう一人は銃を構える。
「誰だ!」
「誰だと言われて、お前らに答える筋合いはない。」
右側の一人を引きずり込んだのは、少年。少年から感じられるのは殺気。逃げなければ殺さんとしているようだった。
「っ!?動くな!動かなければ───」
銃を構えた一人が、少年に言おうとすると、少年は引きずり込んだもう一人の銃を掴み、構える。
「俺を殺すぞと、言わんばかりの顔だな。お前らの言う名誉市民あろう者が、下等市民に怖じ気づくのか?」
少年がいった言葉は、まさしく名誉市民である自分達を見下している言い方だった。
「っ!ガキがぁぁ!」
後ろに引きずり込まれた解放軍の一人が、少年の拘束から抜け出そうとするが、少年は大の大人の力に負けることなく、拘束していた。
「うるさいんだよ、静かにしてろゴミが。」
少年は吐き捨てるように言うと、構えていた銃を拘束から抜け出そうとしている人間の頭へ向け、引き金を引く。人を殺すことに怖じ気づかない少年を見て、少年に銃を構えていた人間は、この少年のことをこう思った。『人を殺すことに慣れている。』と。少年は殺した人間を、自分に銃を構えている人間に押し付けるように蹴り飛ばす。死体が飛んできていることに驚いたが、なんとかそれを避け、少年に銃を向け、引き金を引こうとするが、そのときには遅かった。
「何が名誉市民だ。自分達がどれほど馬鹿なのか、身をもって知れ。」
少年はそう言うと、銃の引き金を引く。この少年に殺されていった解放軍は少年のことを化け物だと恐れていった。そして、いつしか解放軍が滅びるときには、この化け物に滅ぼされると思った。
「銃声だ!」
三階を巡回していた別の組が、銃声に気づき、こちらに向かってくる。少年はその場から離れ、見つからないところに身を潜めていた。そして、別のところからもう一組が来ると、その少年が殺していた人間の死体に近づく。
「誰かが、こいつらを殺したのか?」
「まだ、周囲に居るはずだ。探すぞ!」
別の組は、殺された仲間の復讐心にかられ、殺した人間を探そうと躍起になる。それが、少年の仕組んだ罠だと気づかずに。二人がバラバラになり、殺した人間を見つけようとしているなか、少年は暗躍する。
「くそっ!まだ、見つからねぇのか!」
仲間を殺した人間を見つけ、殺そうと復讐心を燃やすなか、目的の人間が見つからず、苛立っていた。少年はその人間の後ろまで来ていた。
「もしかしたら、まだ、見てないところがあるのか?それとも、あいつが行ったところに居るのか?」
苛立ちを抑えながら考え、自分と組んでいたもう一人と合流しようと後ろを向いたとき、少し離れたところに少年が立っていた。少年は青いパーカーを着ており、フードを被っているため、誰かは分からなかったが、彼は気付いた。こいつが仲間を殺したと。それが分かると銃を構え、引き金を引く。
「死ねぇぇぇぇぇ!」
雄叫びをあげながら、引き金を引き、少年を殺そうとするが、少年は姿を消し、彼の前から姿を現さなかった。
「チッ!どこだぁ!」
復讐心にかられていく、さっきより、もっと、強く、標的を潰そうとしている。
「居たか!?」
離れて探していた彼と組んでいたもう一人が、彼に声を掛ける。しかし、彼は反応することはなかった。彼が反応する頃には、もう一人を見る目は殺気に満ち溢れていた。
「お前かぁ!」
「なんのことだ!?」
「お前がぁ!俺達の仲間を!」
彼はそう言いながら、組んでいたもう一人に向かって、銃を突きつける。
「今度こそ、地獄へ沈んでいけぇぇぇぇぇ!」
「待て!俺はーーー」
そして、彼は引き金を引いてしまった。
「あ?」
彼が、自分の理性を取り戻すと、彼の目の前には自分と組んでいたもう一人が血を吹き出しながら倒れていた。
「ああぁぁぁぁぁ!」
彼は自分のやったことが、フラッシュバックのように頭の中を駆け巡る。自分が彼を殺したことも。自分が行った行動次第では、彼は死ぬはずじゃなかったことを。記憶とは実に残酷なものだ。覚えていることをすべてを見せるからだ。残酷であればもっと残酷になっていく。そんな彼の側に一人の少年が近付いてくる。そして、彼へ銃を向け、引き金を引く。
「本当に現実は残酷で、心の怒りや復讐は人を殺めることになる。まあ、実際に俺もそうなんだがな。」
そう言いながら、少年はフードを取ると、素顔を見せる。少年の名は、爛。爛はフードコートを目指して歩いていった。
一輝とアリスは、アリスの《日陰道》を使い、フードコートから見られない位置に姿を現す。そして、柱からフードコートの様子を見ていた。
「一輝、あれ。」
「珠雫とステラ、明ちゃんと颯真君だ。三人はステラを見つけないようにしているね。」
「ステラちゃんは顔が知られているから、バレたら大変なことになるって爛も言ってたわよね。」
「そうだね。」
一輝とアリスは、フードコートの様子を見ていたが、一輝が思ったことを口にする。
「人質と解放軍との距離が近すぎる。安全を確保したいところだけど、人質を危険な目にあわせることができない。それに、見張りの数と理事長が言っていた人数と合わないね。」
「それは多分、別のところを巡回しているのかもね。」
「ここは、爛に任せた方が良いかも知れないね。」
二人は、爛に任せることにし、フードコートが見れる位置で、身を潜めることにした。
人質の見張りとして居た解放軍の一人が、近くに居るもう一人に話しかける。
「三階の連絡が途絶えた。」
「何?警察か?」
「いや、ちがう。中に
「ああ、分かってる。」
二人が話しているなか、別のところから大きい声が放たれる。
「お母さんをいじめるなーーーーーーっ!」
人質として捕らわれていた子供が、持っていたソフトクリームを解放軍の人間に投げつける。その投げたソフトクリームが見事に当たる。ソフトクリームを当てられた解放軍の人間は、その子供を蹴り飛ばそうとする。
「こんのガキがあぁぁぁぁ!」
それもそうだ。自分達は誇り高き名誉市民。その自分が、下等市民に汚されてしまったことに名誉市民の名が傷つくことになり、それは、解放軍の誰もが許さないことだ。子供を蹴り飛ばそうとするなか、強い風が吹きはじめる。その風に吹かれ、バランスを保てなくなり、風に連れられていき、壁に打ち付けられる。
「ぐあぁぁぁぁぁ!」
「伐刀者か!?」
風を操った伐刀者とは───!
ーーー第11話へーーー
作者「後書きをどうしたら良いのか分からなくなっちゃった♪」
爛「何気に音符マークをつけるんじゃない。」
作者「それは置いといて、第11話も読んでくださいね。」