『ハッピーハロウィン!』
その声と共に、破軍学園でハロウィンイベントが始まった。
その直後に、三人の男が走り出す。
「「「おおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」
爛と一輝、颯真が叫びながら学園内を走る。理由は簡単、好意な女子生徒や恋人が三人めがけて走ってきているからだ。
「待て~~~!」
「マスター~~~!」
「奏者~~~!」
「爛~~~!」
「お兄ちゃん~~~!」
「ご主人様~~~!」
「ますたぁ~~~!」
「待ってください~~~!」
「チョコください~~~!」
「先輩~~~!」
爛に好意を持っている六花たちは、爛を狙って追いかけている。
「イッキ~~~!」
「お兄様~~~!珠雫にチョコを~~~!」
ステラと珠雫は、一輝が爛に教えてもらったシンプルなチョコを作っており、それを求めて追っている。
「颯真~~~!」
「チョコちょうだい~~~!」
颯真の恋人である冬樹イヴと冬樹ノエルは颯真とチョコを狙って追う。
「なぁ!チョコって作るべきじゃなかったのかなぁ!」
颯真が叫ぶように横を走っている爛と一輝に尋ねる。
「黙って走れ!性的に喰われたくなければな!」
「チョコを作ってなくても、僕たちは多分同じように走ってるよ!」
二人もそれぞれで答えるが、叫ぶように言っている。
『まぁてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!』
三人の背後から、恋人たちの叫びが聞こえる。それを聞いた三人は恐怖で体を震わして、それらを振り切るように全速力で走り出す。
「「「イヤァァァァァァァァァァ!」」」
息なんてしてられない。とにかく、逃げ続ける。捕まれば何をされるか分からない。
最悪、爛の言っていた通り、喰われるかもしれない。それだけは避けたいのがこの三人。
恋人たちからすれば、それができれば嬉しい限りなのだろうが。
「捕まってたまるかぁ!全員個別に動いてくれ!」
「「あぁ!」」
爛がバラけて動くことで、行動範囲を広めようと考えたのを察すると、一輝と颯真は階段をかけ上がる。
爛は階段をおり、六花たちから逃げ続ける。
「ステラさん!上ですよ!」
ステラたちは上の方へと逃げていった一輝と颯真を追いに。
「待ってよ~~~!爛~~~!」
下の方に逃げていった爛を六花たちは追う。
(もう捕まりたくない!仕方ない、あれをやるしかないか!?)
爛は階段をかけ降りたすぐとなりにある教室に飛び込み、すぐに窓を開けてとある場所を目指す。
「むぅ……。見つかりませんね……」
爛がかけ降りた先は一階。一階の全てを見て回ったのだが、どこにも居らず、扉や窓を開けた形跡はない。
(ふぅ……。どうやら、まけたみたいだな)
爛は屋上のフェンスに手をかけて、一階の方をみていた。
爛は窓を開け放ち、感知されないほど微弱な雷で空を跳び、雷の分身で窓を閉めたのだ。
ステラたちにも見つからないよう、窓がある場所を避け、屋上まで跳んだのだ。
「ま、なんとかなるか。来たら来たで対策はあるし」
独りでに呟きながらフェンスを登り、中に入る。
「よ、爛」
颯真と一輝が屋上に上がる階段の屋根の上に座っていた。
「お前たちもか。まけたのか?」
「何とかね……。颯真が居なければ、今頃捕まってたと思うよ」
爛は二人の様子から見るに、まけたとは言えるが、完全にまけたとは言えないように見える。
もう少ししたら来るだろう。
「さて、俺は準備をしておくよ」
爛はそう言うと、英霊を憑依させるために、詠唱する。
「サーヴァント憑依。クラス・アーチャー。真名・ロビンフッド」
爛はロビンフッドを憑依させる。準備は完了した。六花たちを完全にまくには、ロビンフッドの力が必要なのだ。
「まだ、来ないかな?」
爛はそう呟く。その瞬間、背後から聞き覚えのある声がする。
「もう来たわよ?」
声を発した者の左手が、爛の頬を触れる。
爛の体温は、急激に下がっていき、凍りついたような体温となる。
「あら、どうしたの?爛」
蛇のようにまとわりついているとしか考えられない。触れられている手を振り払い、一輝と颯真を抱え、屋上から飛び降りる。
「ちょっ!爛!?」
(どういうことだ!?虎じゃないの彼女は!?全く気づかなかった……。アサシンの域を超えている!)
爛は何も答えないが、誰が触れてきていたのかは分かっている。
だからこそ、信じられなかったのだ。
存在感は強いはずの彼女が、自分の警戒の網を通り抜け、自分に触れたことに。
「あら、逃げられちゃった。あっちには、彼女たちがいるから、逃げられないでしょうけど」
爛に触れていたのは、雪蓮だった。
虎と呼ばれ恐れられている彼女が、蛇のように静かに動き、爛の警戒網を突破した。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
酸欠状態に陥ったかのように呼吸をしている。
「だ、大丈夫?爛」
「な、何とか……」
一輝は爛を心配し、颯真は周りを警戒する。
すると、颯真の耳が何かの音を聞く。風を切るような音。それは徐々に、大きくなっていく。
「爛!一輝!そこから離れろ!」
颯真は二人にそう叫ぶと、爛が動けない状態のため、一輝が抱えて避ける。
爛の立っていたところに、矢が放たれていたのだ。
「す、すまない一輝」
「別にいいよ。でも……正直に言っちゃうと女の子を抱きかかえている感じで……」
爛は一輝に感謝すると、一輝は今まで何も言っていなかったことを口にする。
確かに、ほぼ女性とも言える爛を、美少年とも言える一輝が抱えているとなると、恋人のように思われても仕方ないと言うかなんと言うか。
「そ、そうか?」
「うん」
爛は顔を赤くさせてそう言うと、一輝は即答する。
「まぁ、それより。颯真、来てくれ」
「ん、分かった」
颯真は警戒は解かずに、矢が放たれてきた方向を見ながら、爛の方に近づく。
「よし。じゃあ、〈顔の無い王〉!」
ロビンフッドの能力とも言える〈顔の無い王〉を発動し、一輝と颯真、自分の姿を消す。
「それをしても意味がないよ?」
またもや、聞き覚えのある声に、姿が見えないはずの爛をしっかりと捕まえる。
「り、六花!?」
しかし、〈顔の無い王〉を解くわけにも行かず、声を出す。
「解かなくてもいいけど、逃げられないよ?それに、ステラちゃんたちもそこにいるの分かってるから」
六花に全てを見透かされている。
そう察した爛は〈顔の無い王〉を解く。
「はぁ。負けだよ。負けだ。俺たちの負け」
爛は苦笑をしながらそういう。
「そうだね」
「まぁ、楽しかったな。……別の意味で」
一輝と颯真も負けを認め、自分の恋人の方に戻っていく。
「さぁ……爛、行こ!」
六花は爛の手をとり、走り出す。
爛は六花に続いて走り出す。
(全く、六花には敵わないなぁ……)
爛はつくづくそう思うのだった。こういうのに関しては、負けるしかない、と。
自室に戻った爛を待っていたのは、露出度の高い服を着ているリリーたちがいた。
「……はい?」
爛は素っ気ない声を出すしかなかった。
ここまで大た……あぁ、大胆だったか。と思ってしまうが、今回のは流石にその大胆を通り越していた。
「マスター……♪」
吸血鬼のような見た目をしているリリーが爛に近づいていく。
「リ、リリー?」
爛は後ずさりをしようとするが、後ろは扉のため、後ろにいくことができない。
「行かせませんよ?だって、もう鍵閉めましたし。………ですからぁ」
他のみんなが爛の方へと近づく。怖い。何をされるのかは予想できてきたが、今回ばかりはゲッソリするどころか、次の日はずっと寝てなきゃいけないかもしれない。
「一緒に……しましょう♡」
リリーたちに抱えられて、ベッドに連れていかれる。ベッドに強制的に寝かされると、動けないように掴まれる。
「イヤ……」
爛は涙をためる。その事にリリーたちは驚いてしまう。
「イヤ……酷いこと、しないでぇ……」
今にも泣きそうな顔をしている爛を見て、リリーたちの胸はキュンと締め付けられるようになった。
そして、そのまま爛は喰われたとさ(意味深)。
後日、動けなくなった爛を六花たちは介護することになった。
ハロウィンでした!最後にデンジャラスビーストと化した六花たち。
まぁ、爛は喰われるのは確定でしたねw
次回もお楽しみに!