活動報告にて次回の話などの方針などが書かれていますので、気になる方は活動報告を確認ください。
「先輩、起きてください。先輩」
爛のことを揺さぶっている桜は、眠ったままの爛を起こそうとしていた。
「ん……桜……」
重い瞼を何とか開けた爛は、桜に抱き締められながらも、起き上がる。
「先輩、今日はどうしますか?」
「ん~? あぁ、もう朝だったんだな……すまない。寝過ごしていたな……」
まだ、完全に目が覚めきっていないのか。少しボーッとする爛を見て、桜を胸を高鳴らせた。何故なら、爛の無防備な顔は見てきているのだが、やはり、爛の顔の無防備に出てくる何とも言えない可愛さに負けてしまうのだ。
「……このまま二度寝しよ~」
爛が桜を抱き締めて、ベッドに横になった。
驚いた桜は、爛に抱き締められたままだ。
「せ、先輩?」
「今日は暖かいし、別に二度寝ぐらいしても罰は当たらないだろ?」
爛の言う通りだ。今日はとても暖かい。寝てしまえそうなほど、暖かいものだった。
爛が眠たそうにしているのも、今までのことを考えれば納得のいくものだった。
「先輩は、毎日お仕事で忙しくしていましたからね。二度寝、しましょうか」
桜も爛を抱き締め、温かさを感じている。爛も桜も体温はそれなりに高く、人肌で温かくすることができるのだ。それが二人となると、とても暖かくなり、爛は既に眠りに入っていた。
「もう寝たんですか?」
爛から返事はない。眠ってしまっている爛には、この声は届いていないのだから。
「眠ってしまったんですね。先輩」
桜は爛を仰向けにし、そこに覆い被さるようにして、爛を抱き締めた。
爛の温かさを感じ、欠伸をしてしまう。
「私も、眠くなってきました……」
段々と睡魔が襲い、最終的には、桜も眠ってしまう。二人とも、抱き締めたまま離さない状態だった。
「んん……」
爛が目覚め、目の前にはまだ眠ったままの桜がいた。桜を抱き締めたまま起き上がった爛は、あることに気づく。
「はぁ……はぁ……先、輩……!」
桜がうなされていたことだ。汗をかき、辛そうな顔をしている。
タオルを持ってこないといけないと考えた爛は、桜を横にしようとするが……
「ダメ……!」
ぎゅうっと桜が強く抱き締めてきたことで、桜を横にさせることができないことだ。
今、桜を安心させなければならない。タオルの準備ができないため、爛のとった行動は───
「大丈夫、俺はここにいるよ」
桜を抱き締め、頭を撫でることだった。桜が一番、安心する方法だった。
「はぁ……はぁ……」
少しずつ、収まっていくのを感じた爛は、このまま頭を撫で続けた。
汗が止まり始めた頃、桜が目を覚ました。
「はぁ……はぁ……先輩……?」
「目が覚めたんだな。うなされていたぞ」
まだ苦しいのか。息を荒くしたままで、桜は少し汗を流した。
「タオル持ってくるから、少し───」
「嫌です……このままでタオルで拭いてください」
待っててくれと言おうとした爛を遮り、桜は足まで使って爛を抱き締めた。
「……分かったよ」
頷いた爛は、桜を抱えてタオルを取りに行く。
タオルを濡らして、桜の顔を拭く。
「大丈夫か?」
「はい……大丈夫です」
桜は爛に拭かれながらも爛の尋ねてきたことに答えた。
首回りを拭くと、爛が手を止めた。
「……………………………」
「?」
手を止めて、顔をジーっと見てきた爛に対して、桜は首をかしげた。どう言うことなのか、分からないようだ。
「……なぁ、このまま全部拭くのか?」
少し顔を赤くした爛が桜に尋ねた。その質問のことに、何を言いたいのか分かった桜は嬉しそうな表情で頷いた。
「はい、拭いてください」
桜の答えを聞いた爛は、少し困った表情を浮かべた。しかし、桜にはその事など気にもしない。
「先輩になら、見られてもいいんですよ?」
爛の耳元で囁く。その事を聞いた爛は、更に顔を赤くした。耳まで赤くしたことに、桜は可愛いと重いながら、更に囁いていく。
「二人っきりなんですから、先輩も大丈夫ですよね?」
「うぅ……それは……」
恥ずかしいのだろう。目線を逸らし、「うぅ~……」
と呻いている。
「早く決めないと脱いじゃいますよ?」
服に手をかけた桜を見て、爛は更に焦っていく。
「わ、分かった! 拭く! 拭くから!」
爛は勢いでやるしかないと、恥ずかしいと思いながらも、やると言った。
「じゃあ拭いてください♪」
抱きついたまま拭けと言うのか。背中の方とかは拭けるかもしれないが、前の方は拭けないだろう。
「降りてくれないか? 拭きづらいからさ」
爛は桜の頭を優しく撫でながら、桜を降ろそうとする。
「分かりました……」
寂しそうな表情をした桜は、爛から降りる時にまだやってほしい。物足りないという目を向けた。
「後でしてあげるからな。今は、我慢してくれ」
「絶対してくださいね」
「はいはい」
タオルを持って、桜の体を拭きながら言うと、桜は爛のことをジーっと見つめた。
苦笑を浮かべながらも拭いていく爛は、服を脱がせることなく、自分の手を桜の服の中に入れることで解決した。
柔らかい感触がし、恥ずかしい気持ちになりながらも、すぐに終わらせてしまえばいいと考え、拭き続ける。
「ふぅ、吹き終わったぞ……」
顔が赤くしながらも、爛はタオルを洗濯機に入れる。服を着替えた桜は、爛の背中から抱きつく。
「……どうした?」
「もう、忘れちゃったんですか?」
プクーッと頬を膨らませた桜は、背中に顔を埋める。
「そこじゃ、埋めることはできないんじゃないか?」
爛が苦笑を浮かべながらも、桜の方へと体を向ける。
「分かってるよ、忘れてないってば」
桜を抱き上げ、ベッドの方へと歩いていく。
窓の方で咲いていた花を爛と桜は一度見る。綺麗に白い花が咲いていた。
「先輩、好きですよね。オオアマナ」
「あぁ、あの色合いが好きなんだ。花言葉とかも素敵なんだぞ?」
爛はオオアマナの花を好んでいる。昔から縁のある花で、花を手向ける時などはオオアマナを持っていくのだ。
「花言葉……純粋、潔白とかでしたっけ」
「あぁ、そうだ。あれだけ綺麗な花にはそれなりの花言葉が込められている」
桜はオオアマナの花言葉を言うと、爛は満足そうに頷きながら言った。
ベッドにつくと、桜は爛を強く抱き締め、爛は桜の頭を撫でる。
「先輩、肌柔らかいです……♡」
桜は、爛の肌をツンツンとつついたり、撫でるように触ったりしていた。
「ッッッ!!」
爛は桜の触り方に、ゾワッと来る感覚を味わった爛は体を震わせた。
「どうしたんですか? 先輩♡」
爛の耳に息を吹きかける。
「や……止めてぇ……」
顔を真っ赤にした爛は、桜の顔を見ながら、懇願するものの、それを止めることはできない。
「嫌です♡」
桜は爛の耳にもう一度息を吹きかける。爛は体をビクッと震わせ、桜はその様子を楽しんでいた。
「桜ぁ……」
爛は目元に涙をためて、桜から離れようとするものの、桜は爛をガッチリと抱き締め、離れられないようにしていた。
「ダメですよ? 先輩。先輩は私が満足するまでこのままですからね」
桜は爛を強く抱き締め、爛の首元に唇を近づける。
「~~~~~~~~ッッッ!!??」
桜は爛の首にキスマークをつけるために、爛の首元に唇を近づけたのだ。爛は、顔を更に赤くする。桜を離そうと必死になっているが、離れることはできずに、桜の思うがままにされている。
「………綺麗につけられました……♡」
うっとりとしたような表情で、桜は爛の首につけたキスマークを見ていた。
「これで、先輩は私の物ですね♡」
「いやいや、これが印なの!?」
桜にとって、このキスマークが自分の物であるという印なのだろう。爛にとっては考えられないもののため、桜に尋ねてきた。
「えぇ、そうですよ。先輩は、私の物……♡」
爛の頬を撫でながら、桜は撫でている反対側の頬に唇を近づけた。
「ちょっと待って! 桜!」
「待ちません、このままさせてもらいますね♡」
桜は爛の頬に唇をつけ、キスマークを作る。
「さ、桜ぁ……!!」
爛は離れることも押し退けることもできずに、桜は爛の頬にキスマークをつける。
「……また、綺麗につけられました……♡」
「うぅ、桜。キスマークをつけるのはいいけど、見えやすいところにつけるのは……」
桜がキスマークをつけていた場所は頬と首。見えやすいところにつけられた爛は、顔を赤くした。
「見えやすいところじゃないと、私の物だって分からないじゃないですかぁ……」
桜は何故かシュンとした表情となり、爛の胸元を指先で触っていた。
「私の物って……俺は桜の側にいるんだからさ、そういうのはつけなくても、ちゃんと桜の側に戻るからさ」
爛が笑みを浮かべて、桜を安心させるように言った。聞いていた桜は安堵の表情を見せた。
「……先輩、先輩」
「何?」
「……寝ませんか?」
「またか?」
「はい、休みなんですから、寝ましょ?」
「……そうだな」
桜はベッドに横になり、ポンポンとベッドを叩いた。爛は呆れる様子を見せず、笑みを浮かべたまま、桜のとなりに横になった。
「キスマークは消しにいかないんですか?」
「家にいるだけだからねぇ。別に消さなくてもいいかなって」
頬と首に残ったままのキスマークを見た桜は爛に尋ねると、爛は別にいいと答えた。
確かに家であれば見られることもなく、二人しかいないため、問題はないだろう。
「取りあえず、寝ようか……桜」
「何ですか?」
爛は桜の頬に触れた。とても柔らかく、少しでも押したら、潰れてしまうような肌を、爛は優しく撫でた。
「愛してるよ、桜」
「……私も、愛しています」
二人は自分の想いを、大切な人に向けて、言葉にして表した。
眠りについていく二人の心は、幸せに満ちていた。
キスマークの件については、洗い落としたものの、桜にまたつけられたという。