転生したら戦闘力5のオッサン以上にモブだった件 作:大岡 ひじき
「くっそ──!!ダメだ!!
もうみんなが脱出する時間がねえっ!!!」
「気功砲!!!」
「おいみんな!!!
死にたくなかったらこの穴に飛び込めっ!!
悟空をこまらせるなっ!!」
……こんにちは皆さん、マリンです。
中学生になりました。
あれから、己の要求を通す為の信用を積み重ねるべく日々努力した結果、お勉強もお手伝いも完璧な優等生の称号を勝ち取っております。
そんなアタシが両親に懇願して一泊二日のひとり旅を敢行、無事に天下一武道会の観客席にたどり着きました。
たどり着くまでは無事だったんです。
いや、たどり着いてからもとりあえず決勝戦までは平和に過ぎ去ったんです。
決勝戦までは。
……う、うわーこんなモブに厳しい展開だったっけこの天下一武道会!?
決勝まで勝ち上がった孫悟空さんとピッコロさんの戦いは熾烈を極め、もう試合なんてレベルじゃなくなっていた。
途中で大声で己の正体を晒したピッコロさんに、怯えた観客がほぼ全員逃げ出した後、アタシが1人ぽつねんと残されたのは、単純にタイミングを逃したからだったんだけど、そのせいで今アタシ、生命の危機に瀕しております。
モブなのに。いやモブだからか?
簡単に言うと追い詰められたピッコロさんが最後の賭けに出て、全身からものすごいエネルギー波?を出して、悟空さんばかりか会場周辺一帯吹き飛ばそうとしてるわけで。
天津飯さんが開けた気功砲の穴に、主要メンバーの皆さんは飛び込んでたんだけど、アタシが今いる場所は武舞台を挟んで彼らの位置とは反対側。
多分走って行っても間に合わない。
あー13年の短い人生だったわー。
モブなりに走馬灯駆け巡るわー。
なんて思ってたら、アレ?
他のみんなが穴に飛び込むのを確認しつつ自分も降りて行こうとしてた天津飯さんがなんかこっち向いたと思ったら、ものすごい速さでアタシのところに飛んで来るんすけど。
うわー人生の最後に見るのが三つ目イケメン。
きゃーかっこいい抱いてー(無表情の上に棒読み)。
現実逃避してたら、アタシの目の前に降り立った天津飯さんにいきなり姫抱きされ、これまたすごい速さで飛んで件の穴まで連れてこられた。
うわ、うわ、うわ!
ちょっと待ってよモブだからねアタシ!!
モブのくせになんなのこのヒロイン待遇!!
混乱して固まるアタシをよそに、激しい衝撃波が頭上を通り過ぎる。
ほ…ほんとに死ぬトコだったんですねアタシ。
ほっとして気がついたら、いつのまにか天津飯さんの首にしがみついてる自分に気づく。
「…助かったな。
ところで天津飯、その女の子は?」
「観客席に取り残されてた。
身がすくんで逃げられなかったんだろう。
危ないところだった」
あれ?これってひょっとしてアタシのこと?
てゆーかひょっとしてひょっとしなくても今、この場の全員がアタシに注視してない?
ちょ待って待って待ってなにこの羞恥プレイ。
いやとにかくまずは落ち着けアタシ、呆けてる場合じゃない。
固まってる場合でもない。
アタシは慌てて天津飯さんの首に回してた腕を離しながらまずはお礼の言葉を述べた。
「た、たたっ助けていただいてありがとうごじゃいますっ!」
…しまった噛んだ。その瞬間誰か吹いた。くそ。
その後更なる激闘の末、孫悟空さんが勝利。
三度目の正直で天下一武道会優勝。
仙豆でピッコロさんを回復させ、そのピッコロさんが会場から飛び去った後、「神の後継者に」との神様からの誘いを断って、新嫁と2人筋斗雲で逃亡。
…えーと、下世話な話だけど、天下一武道会って優勝者に賞金出る筈だよね?
振込にしようにも悟空さん口座持ってそうにないんだけど、新婚生活始めるにもお金要るだろうしどうすんだろう。
いやほんとに下世話な話だしアタシ関係ないけどさ。
とにもかくにも天下一武道会は終了したので、皆さんにお礼を言って帰ろうとしたら何故かブルマさんに引きとめられ、
「本人が不在だけど、孫くんの結婚のお祝いよ!
一緒に九死に一生を得た仲間って事で、あんたも一緒にパァーッとやりましょ!」
なんて言われてご飯ご馳走になってしまった。
帰りの便の時間とかあるから途中でお礼と挨拶して皆さんに握手してもらってようやく帰途についたけど、この日の思い出は一生忘れないと思う。
でも帰ってからママにメッチャ泣かれた。
まあ娘が行ってる筈の会場が全壊ってニュースが速報で流れたらしいから当然か。
多分しばらくはひとり旅とか許してもらえないと思う。
アタシが悪いんじゃないけどごめん、パパ、ママ。
ここらで書き溜め分を使い果たしましたので、この先の更新はゆっくりになるかと思われます。
ご了承くださいませ。