転生したら戦闘力5のオッサン以上にモブだった件 作:大岡 ひじき
あの後。
パパに電話をして2人とも無事だと伝えると、すぐに病院に駆けつけてきてくれて(でも実は電話したタイミング、アタシとママのお葬式やってる最中だったらしい)、その後なんか強引に退院させられて、アタシはママと、パパに連れられて久しぶりの実家に帰宅。
次の日ブルマさんに電話したら、生き返った事を喜ばれた後、やっぱり悟空さんの死を聞かされました。
その日の朝にお葬式があり、それが終わった後でミランクスさんが、ついさっき未来に帰っていったところだったそうです。
わかってた事ですが改めて聞くとやっぱり悲しくて、しばらく言葉に詰まっていたらブルマさんに、
「あんたホント孫くんの事大好きだったもんねぇ」
って、やっぱり涙声で言われました。
自分ではそんなつもりはなかったんですけど、皆さんからはそんな風に見えていたんでしょうか。
そのまま少し話をしていたら突然電話の向こうがやけに騒がしくなり、何事かと思って聞いていたら(『ちょ、ちょっと!あんたいつ来たのよ!』『貴様!ブルマになにを』『いいから代われ!』みたいな会話がくぐもった音声ながら少しだけ聞き取れました)、
「マリンか!?
オレだ、ピッコロだ!今どこにいる!?」
って、ものすごく慌てたような声で叫ばれてメッチャびびりました。
多分今の今まで忘れてた事にこの瞬間気付いたんでしょう。
なんか別な意味で悲しくなりましたが、気のせいと思う事にします。
ようやく気持ちの整理がついて、お線香だけでもと孫家を訪ねたら、顔合わせた瞬間チチさんに抱きつかれました。
「マリンさ!元気そうで安心しただ。
生き返ったってブルマさから聞いてはいただが、顔見るまでは心配だっただよ〜」
なんて言われた瞬間号泣しました。
夫に先立たれてこれから大変な時なのに、なにアタシの心配なんかしてんですかこの人は。
てゆーかアタシが『この世界の物語』を書き換える事ができてさえいれば、この人の旦那さんを死なせずに済んだ筈なのに。
「ホントにマリンさは、悟空さの事が大好きだっただなぁ…」
とか背中ぽんぽんしてくれてますけど、違う、そうじゃない。
アナタの優しさが逆にツライんです。
つかアナタの事も同じくらい大好きです。
もうお姉ちゃんって呼ばせてください。
いや呼ばないけど。
いいだけ泣いてお昼までご馳走になった(すごく美味しかった)後、せめてものお詫びにと悟飯さんのお勉強をみることにしました。
自宅学習なのに、その内容のレベルの高さにびっくりしました。
ちょっと待て。
アタシが中学生の頃ですら、ここまでの事はやってません。
それで優等生とかほざいてた当時のアタシまじで死ね。
うんでも、もう幼少期からずっと、何故かこの方をさん付けで呼んでた自分の判断は正しかったようです。
今日から悟飯様って呼んでいいですかって言ったら、割と真剣に嫌がられました。
ごめんなさい。
「来年の春には、ボク、お兄ちゃんになるんですよ」
通信教育からの今日の宿題を終えて、一休みしてアタシが持ってきたお菓子を嬉しそうにつまんでいた時に、悟飯さんがこっそり教えてくれました。
え…じゃあ、今チチさんのお腹に、赤ちゃんがいるって事ですか?
あれ…でもなんか…
「まだ弟か妹かはわかりませんけど。
でも、できれば弟がいいなぁ。
一緒にお母さんを守れるから」
「…弟さんだと思いますよ。
それも、お父さんにそっくりな」
…よく判らないけど、アタシ、この事知ってたような気がします。
アタシの知る『この世界の物語』は、悟空さんの死で終わっていて、それ以降の事は判らない筈なのですけど、なんとなく。
アタシの方は、パパの、主に精神状態が何かと心配だったので、10日あまり仕事を休んで実家で過ごしていました。
ママと一緒にご飯を作って、3人で食べてる時にパパが、
「そういえばマリンがまだ小学生の頃、料理をしてもらったらすごく美味しくて驚いた」
時の事を語り出しました。
アタシは覚えてないんですが、なんでも見たこともないような料理をちょいちょい作ってて、しかもそれがすごく美味しかったそうです。はて?
更にママが、
「そうそう!
あなたったらそれで、『マリンはすぐにお嫁に行っちゃうなぁ』なんて、さみしそうに言ってたのよねぇ…懐かしいわ」
とかしみじみ言って、それで終わりかと思ったら、
「そういえば!
マリンちゃん、病院で会った時、すごくかっこいい男の子と一緒だったわよね!(この時点でパパがご飯吹きました)
ひょっとしてマリンちゃんの事、あの子が助けてくれたの?
ママお礼言うの忘れちゃったわ!
どこの子なの!?」
とか言い出して、どう説明しようかすごい困りました。
まああの子も『またな』なんて言ってたものの、どうせ二度と会う事はないだろうと思ったんで、
「よく知らない」
と答えておいたんですけどね。その時は。
まさかそれからまもなく、職場で会う事になるなんて思いませんでした。
広大な敷地を誇る王立自然公園内に、アタシの職場である研究所もあるわけですが、一応動物保護区でもあるここに、密猟という深刻な問題が、以前から発生していました。
アタシの専門である爬虫類、特に小型恐竜の被害も深刻で、アタシが産卵から成長の過程を観察していたアカネザウルスの巣が荒らされ、幼生が持ち去られた上に親が2頭とも殺された時に、悔しさと情けなさに歯噛みした事は今も忘れられません。
心臓病発症から入院、死亡(爆)、自宅休養と、合計1ヶ月を経てようやく職場復帰したその日、その自然公園の管理事務所から、新しい保護官が着任したので挨拶に行かせると連絡がありました。
そこでたまたまアタシが対応を任され、来訪を待っていたのですが、そこに現れたのが17号さんだったのです。
「マリン博士…ね。
聞いた事のある名前だとは思ってた」
顔合わせた時にお互い少しだけ固まった後、17号さんは不躾にもアタシの事を上から下までじろじろ見ながら言いました。
何故かこの後すごい頻度でお茶取り替えに来てくれた受付の女の子が目キラッキラさせながら、
「そうでしょう!?
マリン博士はぁ爬虫両生類学界の若きエースって言われてるんですぅ!
翼竜の研究から、Pウィルス(例の心臓病のウィルス。こう命名された)のヒト型への変異を警告して、いち早くワクチンの製造を勧めたのがぁ、このマリン博士なんですよぉ!」
なんて嬉しそうに説明してくれたんですが、お願いだからやめてください。
この人と最初に出会ったタイミングって、自分がそれで発病して死にかけた後なんですから。
研究者としての黒歴史です。
誇れるような事じゃありません。
「爬虫両生類学?
随分色気のない研究をしているんだな」
彼女が一旦去った後、17号さんは何故かニヤニヤ笑いながらそう言いましたが、いやそもそも色気のある研究ってどんなですか。
「オレは、保護区内の管理小屋に住み込みで入る事になってる。
暇だったら遊びに来いよ。
これからよろしくな、『マリン博士』」
って嫌味ったらしく言い残して17号さんは帰っていきましたが、それにしても、一体どういった経緯で保護官の職を得たものか、すごく気にはなりましたが怖くて聞けませんでした。
世の「サタンフィーバー」がある程度沈静化した頃、武天老師様のお家に久しぶりに遊びに行ったら18号さんがいました。
今はこちらに住んでらっしゃるそうです。
何故かクリリンさんが甲斐甲斐しく世話をやいていました。
お茶をいただいていると、なんか18号さんが妙に見つめてきたと思ったら、目があった時に意味ありげに微笑まれました。
一体なんなんでしょう。最近この方の弟さんと会う機会が多いんですが、姉弟そろってよくわからないです。
そして…
まとまらなかった…次で終わります。