転生したら戦闘力5のオッサン以上にモブだった件 作:大岡 ひじき
ブルマさんちでのバーベキューパーティーにお呼ばれしました♪
…出かける前にちょっと嫌な予感はしてたのに、なんで思い出せなかったんでしょう。
一通り準備終わってあとは焼くだけ♪の段階になったタイミングで、ショッキングピンクのシャツとイエローのパンツを身につけて登場したベジータを見た瞬間に、この先の展開をはっきりと思い出した次第。
「すいません研究室のマシリトケラトプスに水あげるの忘れました帰っていいですか(棒)」
「なに言ってんのよマリン。
研究室ならここから電話すればいいでしょ?
それより見て見て。
アイツの服、あたしがコーディネイトしてやったのよ。
意外と似合ってるでしょ?」
ええ知ってますよ似合ってるかどうかはともかくアタシの前世の世界ではこのシーンがTV放映された後パリコレで全く同じコーディネイトが紹介されてたのも知ってますでもそこが問題じゃないんですうぅぅう!!
ベジータがこれ着てた時のブルマさんちでのバーベキューって、まさにフリーザ様地球訪問のタイミングじゃないですか!!
やめてくださいしんでしまいます。
若干泣きそうになってるアタシを見て、ベジータに怯えていると誤解したらしいヤムチャさんが、
「大丈夫だよマリン。
あいつ確かに目つきは悪いけど、か弱い女の子に意味もなく暴力ふるったりしない…と思うぜ」
とか言いながらアタマ撫でてくれましたが、違う、そうじゃない。
てゆーか中学生の頃から知ってるせいだとは思いますが、ハタチ過ぎてるアタシを未だに子供扱いすんのやめてください。
そんな事をやっているうちにベジータの表情が変わり、一瞬だけ空を見上げた後、何故かアタシに視線を向けました。
「貴様がさっきから怯えていたのは、ひょっとしてこれじゃないのか…?」
…これは壮絶超絶ヤヴァイです。
タイミング的に今ココ、地球に迫ってくるフリーザ様とそのパパの気にみんなが気付いた瞬間でしょう。
人間レベルはるかに超えた戦士達が今気付いたって言ってるのに、気なんか感じ取れないパンピーが一番最初に異変に気付いて怯えてたとか、不自然にもほどがあります。
しかし次の瞬間にはヤムチャさんも、
「な、なんだこの気は……!?」
と明らかに動揺し始め、
「こいつはフリーザだ!ち……!
カカロットのヤロウ…とどめをささなかったな…!」
とベジータが答えた事で、アタシの挙動の不審さは一旦棚上げになったようです。
説明できない上に嘘つくと却ってややこしい事になりそうなのでお願いですからこのまんま忘れてください。
ちなみにアタシ同様気を感じ取れないブルマさんは、男ふたりの会話についてこれず、
「え?なに、なに!?」ってなってます。
そのうちにベジータと、それを追うようにヤムチャさんが飛び立って行き、少しの間呆然としていたブルマさんが、
「フリーザですって!?ちょっとマリン!
呆けてないであたし達も行くわよ!!」
とか言い出してアタシを引っ張ってるんですがいや待ってくださいなんでそうなるんですか。
明らかにヤバそうな雰囲気の中、屈強な男たちが向かってくれてるんですから、か弱い女のアタシたちはおとなしく待ってましょうよ。
…そんな事のできる性格じゃないですよねブルマさん。
わかった行くよ行きますよ行きゃいいんでしょ行きゃあ。
ブルマさんがカプセルから出した自家用ヘリに乗せられながら(何故かプーアルさんがアタシの肩にくっついて一緒に乗ってきた。メッチャ可愛い)、アタシは口から魂が出るのを感じていました。
「なっ、何しに来たんだおまえら!!」
ヘリを着陸させて降りたアタシ達に、(プーアルさんは降りてすぐにアタシの肩から離れ、ヤムチャさんのところにフワフワ飛んでった。飛んでる姿もぬいぐるみみたいで可愛い)ヤムチャさんが叱るように問いますが、それはアタシも聞きたいです。
「アタシはブルマさんに連れてこられ「フリーザってのを見に来たのよ。ナメック星の時だって一度も見た事なかったんだから」
…答えてくれてありがとうございますブルマさん。
その答えで納得いくかどうかはともかく。
「見にきただと!?
あいつがどんなに危険かわかってるはずだろ!」
案の定、納得しなかったヤムチャさんがくってかかりますが、
「わかってるからきたのよ!
フリーザがその気になったら地球ごとドッカンでしょ。
どこにいたって一緒…だったらどんなヤツか知りたいわよ」
…そうでした。
漫画で読んでた時はこのシーン、ブルマさんのくそ度胸にシビれたんですけど。
でも同じセリフなのに自分が巻き添えくわされてる状況で聞いても全然グッとこないのは何故なんですか。
「だ、だからってマリンまで連れてきて…何かあったら親御さんに申し開きが」
お、アタシの存在のせいかヤムチャさん、原作にない台詞で食い下がりました。
そうですもっと言ってください。
「そのガキは、近付いてくるフリーザの戦闘力に一番最初に気付いていた。
そっちの女より確実に状況の把握はできているだろう」
テメエは黙れベジータ。
つかまだ覚えてやがったかこの野郎。
すいませんなんでもないです。
ほんといいからもう忘れてください。
でもガキって誰の事ですか美人で色っぽいブルマさんと比べてんじゃねえぞクッソ腹立つ。
言っときますけど胸のサイズはアタシの方がありますからね。
胸だけは。
そう言ってる間に天津飯さんと餃子さんが来て、そこで少しベジータとの間に険悪な空気が流れましたが、それをヤムチャさんが宥めます。
「貴様ら喋ってる前にさっさと戦闘力を消せ!!
まぬけめ!!奴らはスカウターを持ってるんだ!」
そんな地球組を一喝した後、
「あのナメック星人はとっくにそうしている…さすがだ」
ベジータが前方に目をやってニヤリと笑いました。
ほんと悪人ヅラだなこのM字。
すいません言い過ぎました。
それはともかくベジータが見てる方向には、いつのまにやって来たのかピッコロさんの姿が見えます。
あの緑のイケメン遠くにいてもデカいってどういうことなんですか。
いやどうでもいいけど。
更にクリリンさんと悟飯さんも到着して、それにブルマさんが、
「やっほー」
と緊張感のない挨拶をした直後、
「来たぞ!!!!」
と前方のピッコロさんが振り返って叫びました。
みんなが見上げた上空に、宇宙船であろう飛行物が浮かび、それが少し遠くの場所に、ゆっくりと着陸していきます。
ここまで近付いてくれば、気を感じない筈のアタシにも、肌を刺すような威圧感がビリビリ伝わって来ました。
「はっきり言ってやろうか?
これで地球は終わりだ」
アタシ、この辺実はアニメで見てません。
なのでベジータの服の配色とか、例のパリコレの記事をネットで見て初めて知ったんですけど、あまりのインパクトの強さに思わずネタにしてしまいました。