ソードアート・オンライン一紅き魔剣士と冥界の女神一 作:ソル@社畜やってます
さらに追撃の祖父母要介護でダメージはさらち加速した!
ああ…なんだかとっても眠いんだ、パトラッシュ…
~7月某日~
「ねえお兄ちゃん達、これ見て!」
朝食の最中、唐突に直葉から差し出された薄型タブレット端末を向かいに座る和人がテーブルに落とさないよう慎重に受け取って画面に映った記事を、隣から覗き込むようにしている利久と共に見る。
人気VRMMOゲームのありとあらゆる最最新情報が掲載されているサイト《MMOトゥモロー》のニュース記事であるソレにはデカデカと《初のVRMMO異次元対決!勝つのはALOか?GGOか?》というタイトルで長ったらしい文章が載っていた。
あまりにも長かったので和人は横にいる利久のことを綺麗に無視して高速スクロールでざっくりと記事を読み上げると顔を上げた。
「全く違うジャンルのプレイヤー対決か、面白そうだな」
「でしょ?私早速予選にエントリーしたんだ」
「やる気満々だな直葉」
今までになかった新しい試みである世界観や戦闘法のまるで違うVRMMOのプレイヤー同士の対決は全プレイヤーが参加できるというわけではなく、厳しい予選を勝ち抜いた30名のプレイヤーだけが参加資格を得る形になっており、ALOとGGO共に早くも予選のエントリーにはプレイヤー達が殺到している。
「お兄ちゃんはともかく、利久兄と詩乃さんも当然予選参加するよね?」
「ごめんなさい直葉。私はやめておくわ」
「えっ?なんで!?」
本人は否定しているが、和人や利久にも決して劣らないバトルジャンキーである詩乃が参加しないと言ったことに直葉が驚いている隣で、和人が呆れたように直葉を見た。
「スグ、詩乃のPTSD忘れたのか?」
「…あ。ごめんなさい詩乃さん…私…」
「大丈夫よ。気にしてないから」
小学5年生の頃に起こった郵便局強盗事件での一件以来、詩乃は銃に対しての重いPTSDを患っておりその症状は一目見るどころか、手で拳銃の真似をされるのを見ただけで目眩と吐き気が催されてしまうほどに酷かった。
幸いにも現在はある程度症状が緩和されており、前述の手で拳銃を真似されることや本等の絵で見るくらいなら問題ないレベルになっている。
何十回ものカウンセリングを受けて薬を飲んでも全く効果がなかった詩乃のPTSDが治りつつあるのは、SAOで出会った同じ傷と罪を持つ恋人、桐ヶ谷利久のおかげという他にないだろう。
「詩乃がいたらこっちも有利だと思ったけど、まあ仕方ないよな」
「おい和人。どう考えても弓矢と銃じゃ射程距離に天地の差があるだろ」
「そういえばGGOに氷の狙撃手って異名の人がいるみたいだよ。アンチなんとかライフルっていう武器で一撃でプレイヤーを倒しちゃうんだって!」
「なにそれそわい」
今回のイベントで要注意であるプレイヤーの筆頭だと和人は思った。ALOにおいてのPvPで、一撃で相手のHPを削るなどというのは目の前の魔王以外には決して存在しないため、知らないまま氷の狙撃手にやられるとなったら味方の士気はガタ落ちする上に混乱することは間違いなしだ。
他にも何かしらの異名をもつGGOのトッププレイヤーが存在している筈だと、和人は後で詳しく調べることにした。
「まあ、ともかく予選突破しないことにはどうしようもないけどな」
「利久兄なら大丈夫だよ。いざとなったら魔王様になれば絶対に勝てるし」
「いや、さすがに魔王化は封印しておくぞ。正々堂々やらないとな」
これまでシノンをナンパしたプレイヤーを片っ端から消し炭にしたり、シノンを重点的に攻撃したモンスターを案の定全て消し炭にしたり、シノンをギルドに勧誘しようとしたプレイヤーをやはり全員消し炭にしたりと、自重の欠片もなかった利久が魔王化はしないと言ったことに、和人と直葉は平静を装いながらも内心で驚いた。
~???~
簡素な照明が点いているだけの薄暗い部屋。その部屋のベッドの上に白いキャミソールを着た水色の髪の少女が座り、全身を黒い服に身を包んだ同色に赤のメッシュが入った髪の少年が分厚いゴーグルをかけながらテーブルの上で先程から長時間作業をしている。
少女は真剣な表情をしている少年を見て、集中を乱したりしないよう何も言わずにじーっとその姿を見続けている。
やがて作業を終えた少年がゴーグルを外して一息つくと、少女がまるで猫のような四つん這いの体勢になって少年に声をかえる。
「なに、それ?」
「今度のイベント用に新しく作った装備だよ。向こうは空を飛べるしな」
テーブルの上にはプレイヤーの前後を覆って余りある大きさの、さながらマントのような巨大な紺色の装甲がデカデカと鎮座している。
「…防御用の装備なの?」
「耐弾性とビーム耐性もかなり高いから防御もできるけど、正確には加速用の装備だよ。使い捨てのシェルフノズルを大量に使ってあるから」
「シェルフノズルって…幾ら使ったの?」
「うーん、ざっと50万?」
「ご、50万!?」
目の前の装備にそこまでの金がかかっているのかと、少女はすっ頓狂な声を上げて驚いた。
彼自身が装備一つ一つに尋常ではないこだわりを持つのは良く知っているが、あまり重視していないと思っていた防御用の装備にまで手を伸ばしていたとは少女は考えていなかった。
「それだけ本気ってことなのね」
「ん、まあそういうことかな」
「勝算はあるの?」
「ルール次第ってところもあるけど…問題は向こうの飛行が制限ありか無しかってところかな」
「制限あって当然じゃないかしら?こっちは原則空飛べないんだし」
「だよなぁ。まあ、コレ使えば少しだけなら飛べるけど」
「言ったそばから原則を破ることしてるってどうなの?」
「ほら、偉い人もよく言うだろ?ルールは破るためにあるものだって」
「誰も言ってなんかないわよそんなこと…ところで、私には何かないの?」
「スナイパー用の装備はあまりなぁ…なんなら俺の武器使うか?コレとか」
少年がアイテムストレージから実体化させたのは、9つの砲門がある弓のような見た目の武器だった。
少女はそれを見ると眉間に少しだけ皺を寄せた。
「まさか、私がALOで弓使ってるから?」
「YES」
「…理由はともかく、攻撃範囲が広いから接近の拒否には使えるのよね。それじゃありがたく使わせてもらおうかしら」
「どうぞ、お姫様」
少年から武器を受け取ると、その重みを感じながら少女はアイテムストレージにしまった。
「絶対に勝つぞ、シノン」
「ええ。私達の力を見せつけてやりましょう、リク」
次回はALOvsGGOの本戦…
リズ「なわけないでしょ!!」
シリカ「いい加減私たちにも…」
フィリア「出番を寄越せえええ!」
ルクス「…だ、そうです」
…次回、ガールズ・オプス!夏だ!海だ!水着コンテストだ!!