ソードアート・オンライン一紅き魔剣士と冥界の女神一 作:ソル@社畜やってます
後書きのほうで解説+α
~音楽妖精領内~
「では、こちらがチェックアイテムになります」
「うむ。行くぞユウキ」
「了解!」
目的の代物がアイテムストレージに入ったのを確認すると二人は助走をつけてから全速力の随意飛行で次の目的地である土妖精領へと向かう。
「…ユウとリク、どうなったかな?」
ユウキが少し不安そうにそう呟くのを訊いて、アシュレイはウインドウを開くと眉間に皺を寄せながら言った。
「既に開始してから25分。さすがに2人とも残ってはいないだろうな」
「そっか…」
「心配している暇はないだろう」
「わかってはいるんだけどさ~…って25分?」
「どうかしたのか?」
「そんなに経ってるのに、誰も来てないよ?」
二人は一旦止まって後方を見渡すが、プレイヤー一人として来る気配が無い。
作戦会議の時点でユウから「おそらく足止めできるのは10分程です」と言われているため、誰かしら追いつくとまでは言わないが接近してきてもおかしくはなかった。
「…どういうことだ…?」
「さあ…?とりあえず進もっか」
なんとも言えない疑問を抱いたまま、二人は次の目的地へと向かった。
~二十数分前、ルグルー回廊入り口~
「うおおッ!!」
切っ先から放たれ弧を描く炎によって三人のプレイヤーが無残にも焼かれ、HPが一瞬で尽きる。
「はあっ!」
上空から勢いをつけて突進するリーファの攻撃を、いとも簡単に防ぐと、すぐさま押し返して回し蹴りで遠くへ蹴り飛ばす。
「うぐっ…!」
咄嗟の回避行動によってなんとか直撃だけは避けることができたが、それでもリーファのHPは一瞬で5割も減少してしまった。
「今の内…!」
戦闘の流れによってリクが入り口のすぐ前から遠く離れたのを見たフィリアは持ち前のAGIをフルに発揮して入り口へと向かった。が………
「忘れたのか…?」
現実は非情だった。
「大魔王からは逃げられない…!」
「で・す・よ・ねー!!」
魔王化しているリクのステータスはプレイヤーはおろか並のボスでさえも秒殺できてしまうほどの高さを持っているが故に、ほんのわずかな隙でさえも意味を為さない。
フィリアは内心-理不尽!と思いながらもソードブレイカーを手にリクの刀と激しい火花を散らしあう。伊達にSAOで最前線の攻略をしていたわけではないが、如何せん相手が悪すぎた。
斬りあいの最中、愛用の武器を真っ二つに切断されたその瞬間にリクの《襲爪雷斬》によってフィリアはやられてしまった。
「さあ、つぎつぎの獲物はどい…つ……」
意気揚々と残ったプレイヤーらへと視線を向けたリクは、その光景を見た瞬間言葉を失った。
なぜならそこには緑のコートを抜いで、インナー姿になっているシノンが、弓を持たない無防備な状態でこちらへと向かってきていなからだ。
「ねぇ、リク?」
頬を赤く染めて持ち前のスタイルを全面に押し出したシノンは、呆然としているリクの腕に胸を押しつけながら抱きつく。
「私だけ、通してくれない?」
「こらー!シノのん!」
「なにちゃっかり自分だけ突破しようとしてんのよ!」
「シノンさん!自分だけズルいですよ!」
アスナ、リズベット、リーファの言葉などお構いなしに上目遣いで飼い猫が甘えるようにしながらリクの返答を待っていると、やがてリクの口から言葉が出てきた。
「シノン、今自分が何をしてるのかわかっているんだろうな?俺がNOと答えたらその瞬間終わるんだぞ?」
「ええ、わかっているわ」
「…わかっていて。その結果どうなってもいいって言うのか?」
「そうね。でも結果は知ってるわ」
シノンの挑発的な笑みに、リクは同じような表情を浮かべて言った。
「行け。俺の気が変わらないうちにな」
「ふふ、それじゃあお先に」
それはそれはいい笑顔のシノンが残ったプレイヤーに手を振りながらルグルー回廊へと進んで行くと、直後にリク以外の全員から「はああああぁぁぁ!?」という声が辺り全体に響き渡った。
「おいリクてめえシノンに甘すぎだろ!」
「うるせえ○○年彼女無しの独身野武士」
「ごふっ…!」
「クラインが死んだ!」
「この人でなし!」
「なにか文句あるか?女子力5の撲殺系女子」
「ぐはっ…!」
「あと元ボッチ引きこもりコミュ症ゲーマーな兄ちゃん?」
「 」
「うわぁ…キリトが固まってる」
「さてと…シリカ!」
「はい!ピナ、ミストブレス!」
「「「………え?」」」
シリカの指示でピナから霧のブレスが放たれると、全員の視界が覆われて誰一人として視認ができなくなる。
「し、シリカ!?」
「うわ、ちょ、シリカなにするのよ!」
「ごめんなさい!でも私たちの願いを叶えるためにはこうするしかないんです!」
「………私、たち?」
「な、何を言ってるの…?」
「え…ちょっと待って…」
「も、もしかして…!」
シリカの言葉に思わずリズベット、ストレア、リーファ、アスナが驚愕して固まっていると、上空から声が発せられる。
「あなたたちの戦闘は素晴らしかった!コンビネーションも、戦略も!」
「だが!しかし!まるで全然!この俺たちを超えるには程遠いんだよねぇ!!」
ユウの高速詠唱によってはるか彼方から無数の隕石が飛来し、シリカを抱えるリクの手から巨大な暗黒の槍が放たれ、霧に覆われた大地を幾重もの爆風が吹き荒れる。
結果、跡には何一つ残ることはなかった。
「ふう…」
「やれやれ、なんとかなったか」
「私、あとでリズさん達になんて言われるか…」
それぞれそう言いながらゆっくりと着地すると、緊張が解けたようにリラックスした体制で座りこむ。
「あとはゆっくり待つとするか」
「しかし、アシュレイさんとユウキさんも騙したようでなんだか気が引けますね…」
「仕方ないだろ。ほぼ即興だったんだからな…」
話は遡ることレースの2日前。
いきなりシノンとシリカに猫妖精の領主館へ呼び出されたリクとユウは「レースで優勝したら何をお願いするの(んですか)?」
と聞かれ、これまた何を血迷ったのかリクがバカ正直に応えてしまった。
「シノンと誰にも邪魔されずにデートしたい」
「リクさん?なんで普通に言っちゃってるんですか?」
「多分シノンも俺と同じだろ?で、ユウとシリカも多分一緒だ」
「え?」
少し驚いたようにユウがシリカを見ると、そこには照れたように
顔を赤くしているマンチカン種のようなシリカの姿があった。
「あ、あの…私、ユウさんと二人きりでデ、デ、デートしたいです…」
「 」
「おーい、ユウーしっかりしろー」
「予想外だったみたいね」
いったいいつからこうなっていたのかはわからないが、シリカとユウは友達以上恋人未満-それでも限りなく恋人-な関係にあり、リクらSAOメンバーの間では専ら三組目のカップルとして認識されている。
「…で、俺たちをわざわざ呼んだわけはなんだ?」
「簡単な話よ。お互いに優勝の願いが一致してるんだから、協力しましょう?」
「優勝はしたいけどさ、協力まですることはないんじゃいか?作戦次第で狙っていけるだろ」
「参加人数やパワーバランスで劣っている以上…他の種族に勝つにはこうするしかないのよ」
「オイオイオイオイオイオイオイオイオイオイ。こうするしかないって、それはつまり種族対抗にも関わらず裏で同盟を結ぼうってことだろ!?」
「ええ、そうよ。私たちのどちらかが優勝さえできればそれで目的達成できるんだから」
「ナアナアナアナアナアナアナアナアナアナア!俺はこれでも勝負は真剣にやりたいんだ!領主たちが忙しい中集まって企画してくれたレースを邪魔されないデートのために裏で同盟結ぶなんて侮辱するにも程がある!ルール上は同盟禁止なんて書いていないけど暗黙の了解っていうものがあるだろ!」
「モラルや体裁なんて知ったことじゃないわ」
「だから気に入った」
「そう言ってくれると思ってたわ」
~現在、ルグルー回廊前~
「…なにをしている」
「疲れたので膝枕してもらってます」
「同じく」
誰一人として後を追ってこないことに違和感を持ちながらもアシュレイとユウキが全てのチェックポイントを回り終えてルグルー回廊を抜けると、そこにはそれぞれシリカとシノンに膝枕をされているユウとリクの姿があった。
「…あとで説明してもらうぞ、色々とな」
「ええ。いくらでも説明してあげますよ」
呆れたようにアシュレイが央都アルンへと向かう傍で、ユウキはしゃがみながらリクに向かって言った。
「すごいメンタルしてるね、リクって」
「それほどでもない」
結果、締まらない形にはなったもののルールに明記していなかったという理由によって闇妖精族の優勝に決まり、それぞれの願いを叶えることになった。
アシュレイは《キリト、アスナとそれぞれ一騎打ち》
ユウキは《リクと一騎打ち》
リクは《シノンと誰にも邪魔されることなくデート》
ユウは《領主館を少しの間だけ貸し切る》
と、ユウだけは当初と違ったものになった。
それに関してリクに聞かれたユウは「デートはALO(こっち)よりも現実でしたいので盗聴無効な領主館でお互いのことを知りたいと思います」と言った。
なんやかんやあったものの、リクの《魔王化》とド派手な《属性魔剣》の数々によって参加プレイヤーだけでなく領主たちも闘志が湧いたおかげなのか、非難が集中することは不思議と起こらなかった。
閉会式も一通り終わったところでリクとユウによる裏での同盟が説明された後、主にクラインとキリトが中心になって複数人で本気で追いかけ回し続けたのは言う間でもない。
・同盟について
敵を騙すにはまず味方から…ということで敵対しているように見せかけた上で奇襲して全滅させるのが狙いだった。
事前にある程度流れは決めていたけど、シノンの色仕掛けは想定なしのアドリブで完全に楽しんでやっていた。
ルグルー回廊に一度入ったのはメテオ+デモンズランスから安全に逃れるため。
さて、先週TVで放送された純黒の悪夢。ここ数年劇場版のコナン作品全然見てなかったんですけど偶然仕事場の休憩室で見て思いついたコナンとのクロスオーバーネタ。
というか多分SAOとコナン好きな人々は一度は考えるんじゃないかと思うネタ。いつかうpする、ということで予告風のものを投下
アメリカのシンドラー社による最新型VRゲーム機《コクーン》。5つのまったく異なる世界を内蔵されたソフト一つのみで体感できるその性能に世界中が注目する中で行われる発表会。その先行試遊会に集められた高校生以下50人の子供たち。
一足先に明日奈と一緒に体感することになった和人、利久、詩乃。
しかし、それは暴走した人工知能《ノアズ・アーク》によってかつてのSAOと同じ過酷なサバイバルデスゲームへと変貌した。
一度でも攻撃を受けてしまえばゲームオーバーになってしまう極限状態の中、SAOを解放させた英雄たちは再び命をかけて19世紀末のロンドンへと向かう………
というわけで思いついたのはベイカー街の亡霊とのクロスオーバーネタ。
ある意味あの作品を見たからSAOが好きっていうのもあるんですよね。VR設定が好きになった発端というか。
でも冷静に考えたらコクーンはあの大きさであれだけの世界観を完全に再現できるってオーバースペックにも程があると思う。本気でどうなってんだあれ…