ソードアート・オンライン一紅き魔剣士と冥界の女神一 作:ソル@社畜やってます
書ければよかろうなのだ
「つまり、そのレースに闇妖精(インプ)代表の一人として出てほしい、と」
「ああ、はい…でも、できればっていうことであって強制はしませんから…」
「別に出ない理由は無いし、いいですけど…そういう話はできたら早めにお願いします」
「ああ!ご、ごめんなさい!」
(なんでこんな人が領主やってんだろ…)
シノンとのんびり過ごしていた時にリクは闇妖精領にいきなり呼び出された。
内心かなり苛立ちつつも、領主直々の呼び出しともなれば無視するわけにもいかないため、やむなく、嫌々、仕方なく領主館に赴くことにした。
そこで話されたのは、近々プレイヤー主催で開催される《種族間対抗アルヴヘイム大陸一周飛行レース》に闇妖精を代表するプレイヤーの一人として出てほしいということだった。
断るという選択肢もあったが、ここで結果を残しておけば領主にそれなりの恩を売っておけるのもあってリクはその場で出場を承諾し、今に至る。
なんだかんだALOに馴染んではいるものの、リクは闇妖精の領主と直接対面するのは初めてだったので、どのような人物なのかと思っていたがその実態は…
ラタトスクなどといういかにも強そうな名前であるにも関わらず、常に敬語+おどおどしてる+見ただけでわかるヘタレっぷり、と何をどうしたら領主の器と判断できるのか不思議なくらいの人物だった。これなら秘書や領主館に駐在しているスタッフの方がよっぽど領主っぽいというのがリクの素直な印象だ。
-閑話休題-
レースの承諾をしたところで領主に案内された部屋に入ると、そこには顔なじみのプレイヤーが二人いた。
「闇妖精代表っていうからまさかとは思ったけど、やっぱり呼ばれてたのか」
「どうも。リクさんも召集がかかりましたか」
「さすがは二つ名で通っているだけはあるな、魔剣士」
「そっちこそ、黒薔薇」
黒薔薇とリクが呼んだプレイヤー…闇妖精屈指の実力者として知られているアシュレイはその二つ名の通りとも言うべき
黒薔薇のあしらわれた鎧に身を包みながら優雅に紅茶を口にする。
「えっと、もう一人参加をお願いしてるから、もう少しだけ待っててください」
領主ラタトスクは相変わらず盛大に名前負けしている態度と口調で部屋をあとにしたのを見て、リクは椅子に腰かけながらため息をつく。
「あんまり悪くはいいたくないけど、なんであんなのが領主なんだ?」
「リクさんはラタトスク…領主についてどのくらいご存知で?」
「名前と、見た目からしてヘタレなくらいだ。直接会ったのも初めてだしな」
「なら知らないのも無理はありませんね」
「詳しい説明プリーズ、ユウ」
リクの隣に座っているプレイヤー…自他共に認める闇妖精随一の魔法特化プレイヤーにして、豊富な知識をもつ通称《歩く魔導書》のユウは少し肩をすくめつつも、ウインドウを操作しながらリクに向かって説明を始める。
「まず前提からですけど、闇妖精領のモットーは知っていますか?」
「実力主義で弱肉強食だろ?数で負けてるはずの火妖精(サラマンダー)や風妖精(シルフ)とほぼ対等に渡りあえてるのもプレイヤーの質で勝っているが故、だったか?」
「少しは勉強しているようだな」
「喧嘩売ってるようなら買うぞ、アシュレイ」
「やめておこう、私もただではすまないからな」
「説明を続けても?」
「悪い、続けてくれ」
「リクさんが言った通り闇妖精は火妖精ばりに強さがものを言う種族になってます。で、領主の決め方なんですが…他の種族では現実での選挙のように決めているのが当たり前ですが、闇妖精だけは何故か毎回ガチンコのバトルロワイヤルで決めています」
「バトルジャンキーしかいないのかよ闇妖精」
「リクさんが言っちゃいますかそれ?あなたも含めてその周りも大概おかしいと思いますけど」
「黒の剣士、凶暴治癒師(バーサクヒーラー)、冥界の女神…揃いも揃って各種族を代表するような戦闘狂ばかりだしな」
「くっそ…否定できねえ…」
「まあその話は置いておいて…結果だけ言ってしまえば前回の領主を決めるバトロワで見事前領主を破ったのがラタトスクさんというわけです」
ユウの言葉に、欠片も納得がいっていないリクは盛大に顔をしかめて言った。
「で、どんな卑怯な手を使ったんだ?武器のすり替えか?猛毒でも仕込んでたか?」
「ズルは一切してませんよ。正真正銘、実力での勝利です」
「嘘だッ!!!!」
「いや、嘘ついてどうするんですか…」
「事実だぞリク。前回の領主決定バトルロワイヤルには私も腕試しで参加したが、ラタトスクに負けた…」
「は?お前が?俺でもちょいちょい負けてるのに?」
あんなヘタレのどこが強いのかリクには全く想像できない。
「なんて言えばいいんでしょうか…あの人は戦闘となると凶暴になるんですよね」
「なんだそのバイクのハンドル握ると正反対の人格になるみたいなのは」
「大体そんなかんじだ」
「…全然想像できない。俺の想像力が足りないのか…?」
「映像があればよかったんですけど、残念ながら無いんですよね。領主という立場上安易にデュエルを申し込むわけにもいきませんし」
「見てみたいもんだな。領主サマのガチモード」
闇討ちでもすれば手っ取り早く戦えるだろうか、と考えていると部屋のドアがノックされてラタトスクがプレイヤーを連れて入ってきた。
「すいません、遅くなってしまって…えっと、最後の参加プレイヤーです」
背後にいるのは闇妖精特有の紫色のロングヘアーに妙に露出の多い装備をしている女性剣士のプレイヤーで、ユウとアシュレイは驚いている。
「………誰?」
専らSAOからの仲間たちと遊んで、自分の種族のことはあまり関わらないため、リクは何者なのか知らなかった。
「知らないんですか?《絶剣》ですよ?」
「ああ、聞いたことはあるな。デュエルで連戦連勝、負け知らずの剣士………って、え?こ、こいつが…?」
恐る恐る指を差して聞いたリクに、ユウとアシュレイは無言で頷く。
「嘘だろ…絶剣ってこんなちんちくりんの奴だったのか…」
「む、ちんちくりんって言わないで!結構気にしてるんだから!」
「え、あ、ごめん」
頬を膨らませて子供のように怒っていたが、リクが謝ると即座に笑みを浮かべて、手を差し出した。
「よろしく、ボクの名前はユウキだよ」
「俺はリクだ、よろしく」
「ん?リク………あ、もしかして魔剣士のリク!?」
「まあ、そう呼ばれてもいるな」
「わー、ボク一回本気で戦ってみたかったんだよねー!このあとデュエルしてくれるかな?」
「丁重にお断りさせていただきます」
軽く承諾するだろうと思われていたにも関わらず放たれたリクの言葉にその場にいた全員がズッコケた。
「えー!なんでー!?」
「俺は早くホームに帰って嫁と二人っきりでいたい。以上」
「お前という奴は…嫁のことしか頭にないのか!」
「いやいや、流石にそんなことはないかと…」
「まったくだ。俺だって嫁以外のこともちゃんと考えてるぞ」
「良かった、リクさんも少しは考えて…」
「嫁のことは常に7~8割考えているだけだ」
「それほとんど嫁さんのことしか考えてないのと同じです」
「…というかちょっと待て。サラッと受け入れていたが、嫁…?彼女ではなくてか?」
「ああ。言ってなかったか」
リクはグローブを外して、薬指に指輪をつけている左手の甲を見せながら自慢げに言った。
「つい先日、シノンと結婚しました」
「なん…だと…!?」
「常日頃から結婚しろとは思ってましたけど、マジでやりますか」
「結婚ってことは、ALOにシステム実装されて初の夫婦だよね!?すごい!」
「お、おめでとうございます!あの、少ないですけどこれ…ご祝儀です」
「これはご丁寧にありがとうございます領主殿」
他のメンバーが驚いたり呆れている中で平然とご祝儀のやり取りを交わす二人。
驚きこそしているが即座にそんなことができるあたり領主はただ者ではない。
「で、帰ってもいいか?」
「待て待て待て」
「なんでいきなり帰る流れになっているんですか」
「顔合わせできたし、これ以上やることなんか無いだろ?」
「作戦会議って言葉知ってます?前回までは完全な個人戦でしたけど、今回は大陸一周の上に種族毎の対抗戦なんですから作戦を立てるのが必然でしょう」
「そうだよ。ボクもっとリクと話してみたいし!」
「なるほど。ユウキはまあともかくとして「え、ちょっと!」そういうことなら作戦会議は必要かもな」
「でしょう?ですからこの場で…」
「だ が 断 る」
「ああうん、なんとなくそう言うかと思ってましたよ」
「いやーみんな仲良いんだね」
「領主殿はなんでそんなに落ち着いていられるんですか!」
「領地内で起こる争い事に比べたら、ね…」
(…苦労してるんだなこの人も)
9種族領地の中でもとりわけ治安が悪く、その度に苦労し続けているのを思い浮かべて領主が肩を落としている側で、リクは平然とドアノブに手を掛ける。
「じゃ、また近い内に」
「え、ちょ、待っ…!」
ユウキの伸ばした手が届くよりも早く、リクはSAO時代からある高いAGIをフルに発揮して部屋から出ていった。
「むー!こうなったら無理やりにでも…」
「追っても無駄ですよ。なんせでALO全プレイヤーで5本の指に入るような人ですし」
「どこにいるとかわからないの?」
「前にホームを知りたくて追跡魔法もやってみたんですが、途中でアッサリ見破られたので僕も知りません」
「相変わらず規格外な奴だな…ユウの魔法は闇妖精トップだというのに」
「まあ、なんせ魔剣士である以上に魔王ですからねあの人」
「「魔王?どういうこと?」」
ラタトスクとユウキの疑問にユウは(知らないんですか…)と少し不思議に思いながら答えた。
「トッププレイヤーの間では結構有名な話ですよ。彼女…いえ、嫁のシノンさんにほんの少しでも手を出したが最後、プレイヤーはトラウマになるレベルでPKされ、モンスターは瞬殺されます」
「「え…」」
「そのことを知らない中堅プレイヤーがシノンにナンパした結果、リクの姿を遠くから認識しただけで恐怖に陥るほどトラウマになるなんてこともあったな」
「「え、え…?」」
「いつだったかシノンさんの片足を吹き飛ばしたモンスターに体術《OSS》の一撃で文字通り心臓部に風穴開けたなんてこともありましたね。あのときのドラゴンは異常な硬さに定評あったんですけど…」
「…もしかして、それって」
「察しの通り、土妖精(ノーム)領の氷雪地帯に出現するヤツです」
「わけがわからないよ…」
「ご安心を、一緒にいた僕たちにもわけがわからなかったです」
(益々戦いたくなっちゃったなー…)
「ワグナス!鬱展開が嫌だからってユウキの病気は完治してることにするとか言ってるぞ!」
「おのれ作者め!二次創作だからと原作設定を根本から覆すなどと!」
「…奴を責めることはできまい。実際マザロザ編の最後はすごい悲しかったしユウキがいなくなるのは俺も辛かった」
「わかっていただろうにのう、ワグナス」
「ボクオーン」
「ヒロイン勢でユウキが2番目に好きという作者が、無条件生存ルートを作らないわけがなかろう」
「では、我々は何にもしないまま、病気が治っていて元気に遊ぶユウキを見ていてほしいということか」
「そうじゃ。それが作者の言う《ユウキを絶対幸せにし隊》の使命じゃ」
「まあ、バッドエンドは誰だって嫌なものではあるしな…」
「ノエルお兄様!オリ主×ユウキ要素を少しだけ出してみたいと申してますわ!」
「…よし!(チャキ」
「何をする気じゃ?」
「カップリング戦争か?」
「参考になりそうな作品紹介してくる」