ソードアート・オンライン一紅き魔剣士と冥界の女神一 作:ソル@社畜やってます
ところで、やっぱり成長してるよね?シノン/詩乃さんのむn♯♯♯この作者はヘッドショットされました♯♯♯
-ピピピピッ
と音が耳に入るとゆっくりとした動作で体を布団から起こし、脇から体温計を引き抜く。そしてそこに表示されていた数字に利久は顔を思いっきりしかめた。
「38度7分、か…」
体温計の電源を切ってケースにしまうと、再び布団に潜って深い息をつく。
タイミングの悪いことに、今日はダイシーカフェでSAO帰還者によるオフ会という名のパーティーが開かれることになっており、当然利久も行く気満々だったのだが運悪いことに退院したばかりの体でトレーニング等をした無理が祟って体調が悪化してしまった。
翠は当然ながら帰宅しておらず、和人、直葉、詩乃の3人は看病すると言って聞かなかったところを利久が無理やり帰還パーティーに行かせたため、今は1人寂しく留守番も兼ねて横になっている。
誰もいない静まり返った家の一室でひたすら時が過ぎるのを待っているが、さすがになにもせずにいるのは辛いものがある。風邪をひいたのなら大人しく寝たほうがいいのは理解しているが、利久はどうしても寝れない…否、寝たくはなかった。
世間一般でもよくあることだが《風邪をひいている時に怖い夢を見る》というのが利久の寝たくない理由だった。たちの悪いことにその怖い夢の内容がよりにもよって、家族が殺されたり、逆に家族に殺されるような、例え夢でも心臓に悪すぎるようなものばかり。
「……暇だな」
こんな状態でALOはおろか、読書すら出来る筈もなく、ただ天井か床を見つめるしかできない。
嫌でも何でも寝るしかないのか、と思っていると枕元のスマホから聞き慣れた着信メロディーが流れる。テレビ電話機能で画面に表示されている名前を見て即座に通話を開始する。
「もしm「利久、大丈夫!?熱は?症状は?」ま、待ってくれ詩乃…大きな声だと頭に響く…」
「あ、ごめんなさい…」
電話を掛けた相手、詩乃は焦った様子で利久にまくし立てたのを即座に謝る。
「熱は大体39度。頭痛少々、喉は痛くない…あと暇すぎる、寝れない」
「………」
「…詩乃?」
「待ってて、今すぐ看病しに帰るから」
「……は?」
何を言っているんだと利久は思った。
「ちょ、待て詩乃。俺のことはいいから…」
「いや!利久が苦しんでるのに楽しむなんて出来るわけないじゃない!」
「いや、そこまで重い症状でもないし…」
「重いじゃない!熱が39度もあるんだから!」
こんなことなら少しサバを読んで38度と言っておけば良かったと後悔したところで既に遅かった。
「とにかく、今すぐかえ……」
「はーい、詩乃は抑えといたわよ」
「ごめんね詩乃のん?まだ色々聞き足りないから、ね?」
「んんー!んー!んんんー!」
急に画面から詩乃が消えたかと思うと、次の瞬間には明日奈と、ヘアピンをつけた茶髪の少女が画面に映っていた。
「その声…リズか?」
「当ったり~!画面越しであれだけど初めまして、篠崎里香よ」
「あ…どうも、桐ヶ谷利久、です」
「うわ、詩乃と和人から聞いてはいたけど明日奈と同じで本名なのね…なんとも捻りの無いこと」
「ちょっと里香!それどういうこと!?」
隣にいる明日奈が頬を膨らませて里香に掴みかかると、詩乃のスマホが宙を舞った。
「「あ…」」
「……お前らな…」
-これはアカン…と思いつつどうしようもない出来事に利久は来るべき衝撃音と落下画面に備えて目を瞑ったが、ソレは来なかった。
「ふう…ギリギリセーフ」
画面には逆さまにだが、オレンジ色の髪の少女が安堵の表情で映っていた。
「もしかして、フィリア?」
「うん、久しぶりだねリク。あ、わたしの名前は竹宮琴音だよ」
「ご丁寧にどうも…ところで大丈夫か?」「大丈夫だよ、詩乃のスマホ無傷だから」
「そっちじゃなくて、フィリ…琴音の方がだよ」
「え、ああ、私も大丈夫だよ。ありがとね」
にっこりりと笑う琴音の手から次の人…というよりも残っているのは1人しかいないのだが、最年少の少女に渡る。
「初めましてリクさん、綾野珪子です」
「こんな形でごめんな…」
「いえ、お気になさらず。それよりしっかり休んで早く治してくださいね」
相変わらず礼儀正しく接してくれるのは珪子だけだと利久は思う。見るからに最年少だからというのもあるかもしれないが、ナンパ好きのクライン、キリトに並びイタズラ好きなフィリア、ちょいちょいわけのわからない暴走をするリズベット、アスナもどちらかといえばまともだが最近はあの手この手でリクに「お姉ちゃん」と呼ばせたがっている。
「あ、解放されたみたいなので詩乃さんに代わりますね」
「ああ、悪いな珪子」
珪子から代わって画面に映った詩乃は、何故か少し涙目になっていた。
「利久…」
「大丈夫だから、な。俺の分も楽しんできてくれ」
「…わかった。なるべく早めに帰るから」
「ん…待ってる」
「じゃあ、無理はしないでね」
□□□
「ん……」
目を覚ますと段々と意識がハッキリしていった。あれからしばらく眠っていた利久は不思議なことに怖い夢を見なかった。
内容は覚えていなかったが心地よい夢だったのは感覚でわかっている。
「…水」
眠っている間に喉が渇いたので水分補給をしようとすると、水の入ったコップが差し出される。
「はい、水」
「ありがとう…」
あまり胃に刺激を与えないようにしてゆっくりとコップの中の水を飲み干すと、差し出した手が手早く回収した。
「………」
シャツが吸収しきれなかった分の汗が体にまとわりついてべたついているのに気持ち悪く思い、利久はパジャマのボタンに手をかけてシャツと一緒に脱いだ。
「わあああああ!いきなり脱ぐなあああああ!!」
「………?」
なんだかおかしな声がしたと思いそちらを見ると、そこには何故か寝る前に通話して本名を知ったばかりのリズベット/篠崎里香が目を腕で覆っていた。
「……え?」
「里香、どうしたの…ってきゃあああ!」
「大きな声しましたけど…あ、ごごご、ごめなさい!」
先ほどの声を聞いて部屋にやってきた明日奈とシリカ/綾野珪子も同様に目を覆った。
「………!?」
ようやく意識が完全に覚醒して事態を理解した利久は布団を被って、そのままの姿で言った。
「な、なんで家にいるんだよ!」
「さすがに心配だったからお見舞いにきてやったんでしょうが!」
「じゃあなんで看病してるのがお前なんだよ!詩乃は!?」
「し、詩乃のんなら雑炊作ってるよ」
「……と、とりあえず出てってくれ。体拭きたいから」
「う、うん。大声出してごめん…」
足音と扉が閉まる音がしたのを聞いて、おそるおそる布団から出ると誰もいないのを確認する。
ホッと息をついてから小型テーブルに手を伸ばして水で濡らしたタオルで体全体を拭くと全身がサッパリした。
下着を替えて、パジャマを着ているとドアが軽くノックされる。
「利久、雑炊作ってきたんだけど、入ってもいい?」
「うん、いいよ」
部屋に小さな土鍋をお盆に乗せて入ってきた詩乃の姿は、出掛けた時の珍しいミニスカート姿の上からエプロンを着用していた。
テーブルにお盆を置いてから椅子に座った詩乃はおもむろに利久の額に手を当てた。
「やっぱり熱は下がってないわね…」
「そんな簡単に熱が下がるなら苦労しないよ…」
「それもそうね」
少し笑ってから雑炊の入った鍋の蓋を持ち上げると、出汁のいい匂いが部屋中に広がる。
一緒に持ってきたお椀によそって食べやすい量を蓮華にとると少し冷ます。
「利久」
「ん?」
「はい、あ~ん」
蓮華を手にそう要求する詩乃に、利久は抵抗する。
「いや、食べられるから大丈夫」
「あ~ん」
「だから、1人でも」
「あ~ん」
「……あーん」
満面の笑みで迫る詩乃に観念したのか、利久は少し恥ずかしそうにしながら雑炊を口にする。
「あ~ん」ができたことがよっぽど嬉しいのか、詩乃は嬉しそうに絶えず笑みを浮かべている。
「ん…美味しい」
「そ、良かった」
利久の感想を聞き終えると、詩乃は先ほどと同じように蓮華に一口分掬って少し冷ましてから差し出す。
「えっと…詩乃?」
「なあに?」
「ぜ、全部?」
「勿論♪」
利久の問いに答えた詩乃は、それはそれはいい笑顔をしていた。
□□□
雑炊を食べ終えて薬を飲み終えると、食器の片付けに行った詩乃がいなくなったことで再び何もない暇な時間が到来していた。相変わらずひたすら天井を見続けているだけなのかと思い数分経った時、詩乃が早くも部屋に戻ってきた。
話を聞けばあまり帰りが遅くならないように明日奈達は既に帰って、和人と直葉は風呂の準備をしているらしい。
「…で、詩乃はなんでここに?」
「一緒にいたらいけない?」
「…風邪うつるだろ」
「平気よ。もし風邪になったら利久が看病してくれるでしょ?」
「まあ、そうするけど…」
さすがにずっと詩乃の顔を見ているのが気恥ずかしくなり、利久は少し視線を逸らす。
すると何を考えたのか、詩乃が布団の上から利久に抱きついた。
「詩乃、本当に風邪うつるぞ…」
「………」
「おい、詩乃?」
「離さない」
「…?」
「利久が寝るまで、絶対に離さないから」
風邪のせいでいつもより力が入らないことを利用しての大胆な行動に驚いたが、利久は素直に受け入れた。
「ごめん、やっぱりずっと心配だったよな…」
「…うん」
「正直言うと、俺も寂しかったんだ」
「なら、そう言いなさいよ…言ってくれればずっと傍にいたのに」
「………」
「利久?」
「ごめん、なんか急に眠くなってきた…」
「寝なさい。早く寝て治しなさい」
「ん…おやすみ」
「…おやすみなさい」
そのうちGGOの別作品投稿することになると思う。
ガンゲイル・オンライン-魔剣士と女神外伝-みたいなかんじで