ソードアート・オンライン一紅き魔剣士と冥界の女神一 作:ソル@社畜やってます
単純に作者が好きなだけですけどね。あれは良作だった
SAOで長年戦ってきたもう一人の自分とも言うべきキャラデータのコンバート作業が終了し、転送される光に包まれていたのが終わったのを確認して目を覚ます。
目の前に広がっていたのは、暗い洞窟内に青や緑と言った落ち着きのある幻想的な光が無数に浮かんでいる空間だった。
「ここがインプ領か…」
様々な種族が存在するALOでリクが選択したのは、暗視と暗中飛行に優れている闇妖精(インプ)。
その特性上闇討ちでのヒット&アウェイが主な戦闘方法だと公式サイトでは言われているが、リクはそんな戦闘をする気などさらさら無い。むしろ高いSTRとAGIを生かしてのガン攻めしか考えていなかった。
「しっかし…あんまり似合わないな、紫の髪って」
近くにあった鏡で姿を確認すると、前髪をいじりながらそうぼやく。
いかにも初期装備だと言わんばかりのシャツ、レザージャケット、レザーズボン、片手剣。現実の姿に合わせて焦げ茶色だった髪は黒がかった紫色に変わっていて、自分でも驚くほど似合っていない。
「SAOのときは髪の色変えるアイテムあったけど、こっちだとどうなんだろうなぁ…」
「ありますよ、髪色変更のアイテム」
「……ん?」
自身の問いかけに答える声がしたのを不思議に思い振り向くと、背丈の小さいプレイヤーがいた。
毛先にかけて紫色のグラデーションがかかった茶色の髪のポニーテール、大きなドクロのレリーフがあしらわれたベレット帽、黒のシャツと白の短パンと黒い靴、全身を覆えそうな鎖のついたマント、両腕のガントレットと思わしきものはさながら悪魔の手のように見える。
そしてなによりも、左手にもつ禍禍しい雰囲気の巨大な石板が一際目をひいている。
パッと見ただけでは果たして少年なのか少女なのか、区別がつきにくい中性的な外見と声をしている目の前のプレイヤーにリクは言った。
「…えっと、どちらさま?」
「おっと、すいません。なにやら困った様子だったので思わず話しかけてしまいまして」
「はあ。で、髪の色を変えられるのか?」
「実際僕の髪を見てもらえればわかると思いますけど、多少は紫色を残す代わりに髪全体の8割はアイテムに応じた髪色に変化させられますよ」
「ふーん…なるほどな」
それなら髪色を変えるときは現実に近い色を選びたいな、と考えているとアラームの音が鳴り、目の前の少年にも少女にも見えるプレイヤーがウインドウを開いて少し操作してから言った。
「それでは僕はこれで。同じインプ同士、機会があったらまたお会いしましょう」
「ああ。わざわざありがとう」
プレイヤーは背中からクリアパープルの4枚の羽を出すと、低空飛行しながら洞窟の外へと飛び去っていった。
「(あれが随意飛行ってやつか)」
リクはALOを始める前に直葉から和人/キリト、詩乃/シノンと3人であれやこれや事前に聞いていたため、コントローラーを使わずに飛行することを知っていたが、こうして間近で見ると自分も早く飛んでみたいという気持ちが高まるのを感じた。
「リク兄~!!」
呼ぶ声がした方向を見ると、リーファが手を大きく振りながら向かってきていた。
目の前に着地したリーファはリクの姿を見るやいなや軽く吹き出した。
「リク兄、あんまりその髪似合ってないね」
「…そんなのとっくに自覚してる。早く髪の色変えられるアイテムゲットしたいから飛び方教えてくれ」
「え?なんで髪の色変えられるアイテムのこと知ってるの?私教えてないのに」
「通りすがりのインプに教えてもらった」
「へぇ~。でもそのアイテムってたしかドロップ率5%のレアアイテムのはずだけど…ま、細かいことはいいか!それじゃあ随意飛行のやり方教えるから後ろ向いて」
「ああ、わかった」
「えっとね、今触っているところから仮想の骨と筋肉が伸びているって想定して………」
-10分後-
「気持ちいいもんだな、空を飛ぶって」
「リク兄の覚える速度おかしいよ…私それなり時間かかったのに…」
あっという間に随意飛行のコツを掴んだリクはインプ領の上空をリーファと共に飛行していた。
戦闘に関してはこれから慣らして行くとして、移動するだけならばリクはもう支障は無いだろうとリーファは判断して言った。
「えっと、じゃあリク兄はあっちの方お願いしてもいい?」
そう言ってリーファが指した先には湿地帯とその先に古代遺跡群が見えた。
それぞれアスナが選択した水妖精(ウンディーネ)領とキリト、フィリアの影妖精(スプリガン)領だ。
元々はリーファ1人が近い種族から順に回って飛び方を教えるつもりだったが、二手に分かれられるならば時間も短縮できてそれに越したことは無い。
「じゃあシノンたちの方はリーファ頼んだぞ」
「うん、任せて!」
リーファと別れて飛行すること数分、ウンディーネ領の上空にきたリクはすでにいるはずのアスナの姿を探す。
SAOからのコンバートをしている以上見慣れている姿のはずなのだが、どうにも見つけられない。
困り果てた末に、降りて聞き込みでもしようかと考えていると背後から声がかかる。
「もしかしてリクくん?」
「え?」
振り向くと、現実の容姿そのままに水色の髪と自身より更に大きく尖った耳のアスナが何故か随意飛行をしながらそこにいた。
「え、アスナ!?なんで随意飛行できてるんだよ?」
「ずっと待ってたら同じウンディーネ女性プレイヤーの人に声を掛けられたの。そしたら飛び方とか色々と教えてもらって…」
「で、そのプレイヤーは?」
「用事があるからってさっき行っちゃったの」
「なんだ、会って俺からもお礼言いたかったんだけどな…」
少し残念そうにしながらリクがそう呟くのを見て、アスナは言った。
「冒険していればきっとまた会えるよ」
「あー…ま、そうだな。さて、キリトたちのところに行くか」
「楽しみだなあ、キリトくんに会うの」
-数分後、スプリガン領-
「ハハハハハ、リク、お前全っ然似合ってないな!」
「思い切ったイメチェンだね、似合ってないけど!」
「………」
「り、リクくん?私はミステリアスな感じでいいと思うよ?」
「私もにぃにの髪そんなに悪くないと思うんですけど…」
「アスナ、ユイちゃん、こういうときは下手にフォローしない方がいいと思うよ?」
スプリガン領でキリト、フィリア、ユイ、ストレアと再会して感動する暇もなく早々にキリトとストレアがリクの髪色を見て腹を抱えて爆笑した。
「……アスナ」
「な、なにかなリクくん?」
「お前の旦那と次女100回くらい殺していいか?」
「ダメ!なにを爽やかな顔しながら言ってるの!?」
「(にぃに完全に怒ってますね)」
「(触らぬ神に祟り無し、と…)」
結局、物理的解決はアスナが許さないためキリトに「今後一切お前の好きな激辛中華料理を作ってやらない」ストレアに「無理やりSAO対策チームの奴に売り渡すぞ」と脅して謝らせて事なきを得た。
「というより、似合わないっていうならフィリアもだろ。パッと見誰かわからなかったぞ」
「あ、やっぱりそう思う?私も今更ながら違和感感じてるんだよね」
「じゃあなんでスプリガン選んだの?」
「もちろん、トレジャーハントするために決まってるじゃない!!」
「フィリアが平常運転で安心した」
「ところで…」
リクはフィリアからストレアに視線を変えて言った。
「お前はなんの種族なんだよ!」
「え?わからない?」
「ごめん、ストレア。私も本気でわからない…」
「フィリアに同じく」
「私も…SAOの時と全然変わってないよね?」
「私は土妖精(ノーム)だよ。よく見て、肌黒くなってるでしょ?」
「言われないとわからねえよ!」
確かにストレアの肌はSAOのときと比べて少し黒くなっているが、それ以外は大して変わっていないため遠目で見たなら確実にわからないレベルだ。
「あとこれだ!」
種族に関する話が終わると立て続けにリクはウインドウを可視化させて、ストレアの前に差し出す。
「なんでこっちでも《属性魔剣》と《魔王化》があるんだよ!」
「え?あ、本当だ!」
「は?俺の《ニ刀流》は消えてたのにか?」
「いやー…それ私が無理やりリクのアバターにそりゃもう刻み込む形で付加したから消えなかったんじゃない?」
「ストレア、投げやりすぎると思います!」
「刻み込むってそれ大丈夫なの?またバグとか発生するんじゃ?」
「う~ん…なんとも言えないけど、とりあえず綺麗にしておきたいからジッとしててくれる?」
「わかった。けどその前に…」
「その前に?」
リクは背中の剣を抜いて、切っ先をストレアに向ける。
「い っ ぺ ん 死 ね !」
-数十分後、央都アルン-
かつてのグラントクエストの舞台になっていた世界樹の根元に広がる街、央都アルンの宿屋の一室に久しぶりに仲間が、全員ではないが揃っていた。
猫妖精(ケットシー)のシノンとシリカ、鍛冶妖精(レプラコーン)のリズベット、風妖精(シルフ)のリーファ、インプのリク、ウンディーネのアスナ、スプリガンのキリトとフィリア、ノームのストレア。
SAOからのコンバートではないキリトとシノンも何の偶然か現実の容姿に近いアバターになっている。
「シリカとシノンかわいい~!!」
「「~~~~~!!」」
そして案の定可愛いものにすぐ抱きつくストレアによる胸囲(脅威)のハグにシノンとシリカが犠牲になった。
すぐさまキリトとリクによって救出された2人は何故かHPが減少していた。
「そんで、これからどうする?」
カップを片手にリズベットが尋ねると、向かいに座ってるリーファが眉間に皺を寄せて唸った。
「うぅーん…今はALOの戦闘に慣れる訓練した方がいいと思うんですけど」
「このゲームってたしかPK推奨だっけ?」
ストレアから解放されて、相棒のピナを頭に乗せながらシリカが言う。
「そのはずですよ。街の中でも別の種族同士で戦闘が起こるって聞きました」
「揚げ足とるようで悪いけど、PvP推奨な」
「あ、すいません間違えました」
「せっかくだし、タイマン戦でもやってみるか?飛行しながら戦う訓練ってことで」
「相変わらずバトルジャンキーだよねキリトくんって」
「やるのはいいけど、まず装備なんとかしたいわね」
「言われて見れば全員初期装備なわけだしね…」
「じゃあ各自装備を整えたら街の入り口に集合な。30分以内で」
「時間制限設けてんじゃねえよ」
-30分後-
「よし、全員揃ってるな」
「で、組み合わせはどうするの?」
「俺とリク、アスナとストレア、シノンとフィリア、シリカとリズ。リーファはこっちでの戦い方知ってるし見学な、ユイも」
「いきなりキリトか…って、単純に俺とやりたいだけじゃないのか?」
「まあ、そうだな。んじゃま、やろうぜ」
街から離れて、広い平原にリクとキリトが向かい合い、それを他のメンバーは静かに見守る。
キリトが片手剣を構えるのと同時リクが武器を構えると、その得物に一同が驚いた。
SAO時代とは打って変わってリクが装備していたのは右手に槍、左手に日本刀だった。
「(リクさんって槍スキル上げてましたっけ…?)」
これから戦う二人には聞こえないように小さな声で隣のシノンに聞いた。
「(いえ、聞いたことないわよ…)」
「(私もリクくんが槍持ってるのを見るの初めてだよ)」
女性誌メンバーの心配をよそに、キリトとリクは互いに武器を交差させる。
「知ってるか?希策っていうのは相手の実力を考えるばかりに本来の強みを無くすことだぜ?」
「どうかな?やってみないとわからないぞ?」
笑顔で話してはいるがどちらも眼差しは真剣そのもので、周りにも緊張感が漂う。
武器を交差させたまま、数秒にも数十秒にも思える時間が流れて…やがて同時にバックステップしたかと思うと次の瞬間二人の武器が火花を散らして激しくぶつかりあった。
お互いに手の内を探るなどという無粋な真似はせず、全力を持って力をぶつけ合う。剣と刀が幾重もぶつかりあい、激しい金属音を辺り一面に響かせる。
斬り合いの中のわずかな隙をついてキリトが正拳突きでリクを殴り飛ばす。
「ぐっ…!」
「まだまだぁ!」
なんとか踏みとどまったリクの右側から勢いよく斬りこむ。
まだ扱い慣れていないのだろう、槍での防御も虚しく、柄の1/3が折られてたところに5連突きから斬り下ろし、斬り上げ、上段斬りの8連撃ソードスキル《ハウリング•オクターブ》を再現したコンボが全段入る。
「う、おおぉぉ!!」
そこへダメ押しとばかり立て続けに単発重攻撃《ヴォーパル・ストライク》がリクの腹部を直撃する。
大きく後方へ吹き飛んだが、まだHPが削りきれていないのを見て追い討ちをかけようとダッシュした瞬間、キリトの背後にリクが一瞬で回りこんだ。
(しまっ…!)
油断したキリトにリクは容赦なく斬り上げと回し蹴りの連撃を叩きこむ。
「斬魔、飛影斬ッ!」
締めの斬り上げで無防備になりながら空中に浮かんだキリトの更に上を随意飛行で位置を取ると、半回転しながら炎を纏った蹴りをキリトに叩きこむ。
「紅蓮襲撃!!」
上空からの落下によって発生しあまりの衝撃にキリトは思わず剣を手から離してしまった。
「ぐあっ!」
すぐさま剣を拾い随意飛行で反撃に転じようとしたキリトに、上空から紫色に輝く巨大な槍が飛来した。
あわや直撃かと思われたが、間一髪のところで回避行動をとり辛うじて直撃だけは避けられたが、左腕が部位欠損してしまった。
「おい、なんだ今の!SAOで見たことないぞ!」
「当たり前だ、さっきストレアに頼んで追加してもらったばかりの技だからな!」
「てへ♪」
「なに余計なことしてるんだストレアー!!」
「よそ見してる暇は、無いだろ!」
そう言ってリクは槍の投擲する動きをして、先ほどの巨大な槍をキリトに向けて放つ。左腕こそ欠損しているが、今は体制が整っていたためキリトはそれを難なく避けて、上空のリクへ一気に加速して飛行する。
リクは左手に持った槍を捨て、刀を両手で構えるとキリトと同様に加速して急降下をし始める。黒と紫の流星は、勢いを弱めることなく互いに直進して………
「ちょ、シノン!3本も同時に打つなんてズルい!」
「いいから大人しくハリネズミになりなさい!」
シノンが放った矢をフィリアはソードブレイカーで斬り落とそうとするも、内2本が直撃する。
そこへ間髪入れず矢が次々にフィリアを襲い、やがてHPが0になりリメインライト化したところでリーファが蘇生アイテムでフィリアを復活させる。
「もー!シノンどんだけ射程長くなれば気が済むの!?」
「んー…200mとか?」
「そんなに射程のある弓無いと思うんですけど…」
タイマン戦を終えたシノンが腕を伸ばしてから腰を下ろすと、隣からポーションの入った瓶が差し出される。
「おつかれ、シノン」
「ん、ありがと」
瓶を受け取るとシノンは蓋を開けて一気に中身を飲む。SAOのときはお世辞にも美味しいとは言えないものだったが、ALOではそれなりに美味しいと感じた。
「それで、槍は扱えそう?」
「まだまだこれからかな。今日だって結局刀だけのほうが戦えてたし」
「試合の結果は満足できた?」
「引き分けじゃなんとも言えないかな…」
キリトとリクの一戦は、鍔競り合いから互いに突きが直撃したことで、同時にリメインライト化した。
「ねえ、リク」
「ん?」
「最初私と一緒にケットシーにするって言ってたのに、なんで変えたの?」
「んー…なんとなくっていうか…ほら、俺魔王だろ?」
「あんまり似合ってないわよ、その髪」
「…絶対に髪色変えてやる」
愛する嫁であるシノンにまで似合わないと言われたことで、リクは改めて髪の色を変える決意を固めた。
■■■■■
-とある中立区域の街-
「どうも、遅れました」
「お前が遅れてくるなんて、珍しいな」
「髪色を変えたがってた新参のインプがいたので助言してたんです」
「あれ?髪色変更アイテムってレア物じゃなかったっけ?」
「そうですね。ドロップ率5%です」
「おいおい、そんなの新参プレイヤーには無理だろ…」
「いえ、相当VRMMOをやり慣れている人だと思いますよ。恐らくはSAO生還者(サバイバー)ですね」
「なんでそんなことがわかる?会って少し話をしただけだろう?」
「チュートリアルを読んでませんでしたし、動きが滑らかでごく自然でしたから。見た目もかなり人に近かったですし。それに普通、初心者なら動きがぎこちない上に多少は戸惑うはずです。なによりも、こっそり解析魔法で見たところインプでも5指に入るほどステータスが高そうです」
「ふむ、SAO生還者とは楽しみっすね」
「師匠、目が怖いです…」
「ったく、もう少しその戦闘狂をなんとかしろよな」
「師匠は戦闘狂じゃないっす。ただ殴り合いが好きなだけっすよ」
「それが戦闘狂っていうんだけど…?」
「つーか、先生はまだなのかよ?」
「あ、先生なら少し遅くなるって言ってましたよ」
「それを先に言えっての!」
「まあまあ、落ち着いてよ。ね?」
「先生が遅くなるのはよくあることだろう」
「というより、リアル先生だし…」
「来るまで暇ならとりあえず適当に邪神でも狩ってるっすか?」
「邪神は適当に狩れる対象じゃねえだろ。せめて2パーティいるならともかく、俺達6人でどうやるんだよ…」
「気合と根性と作業をこなす精神があればなんとかなるっす」
「ねーよ」
「無いな」
「ありえませんね」
「さすが師匠、考えることが違う…」
「いや~照れるっすね」
「誉めてはいないような…?」
中の人繋がりやってみたかったんですけど、種族が決まらないから無理だった
せっかくだしスタメンだった師匠、探偵、姫は揃えたかったんだけどな…
シノン「私に従いなさい!」
○○○○「鼻の穴に火矢ブッコムからね!」