ソードアート・オンライン一紅き魔剣士と冥界の女神一 作:ソル@社畜やってます
わざわざ書くまでもないというか、その辺の流れは他の作品となんら変わらないというか…うむ、まあ、そういうことだ
新たに詩乃が加わった生活のリズムにも慣れて数日。和人に連れられて利久と詩乃は秋葉原にやってきていた。
目的は直葉/リーファがやっている次世代型VRMMOの一つ《ALO(アルヴヘイム•オンライン)》とプレイするのに必要なナーヴギアの後続機《アミュスフィア》を購入することだ。
「人多すぎだろ…あの辺のビルに覇道滅封ぶち込めば少しはバラけそうだな…」
「秋葉原って本当に日本?実は別の国じゃないの?」
「勝手なことばっかり言うな!」
秋葉原に来たことなど一度も無い利久は無駄に多い人の群れがどうしたらバラけるのかを-9割物騒な方法で-考え、同じく詩乃は異様な雰囲気にここは別の国なのではないかというわけのわからないことを言い出した。
「和人、よくこんなところ行ってたな。俺1人でこんな街歩ける自信ないぞ」
「俺も最初は戸惑ったけど、慣れると結構楽しいぞ」
「まあ、住めば都って言葉もあるしね」
「住むのは微妙だけどな、遊ぶならともかく。…ところでさ………いい加減手を繋ぐの止めていただいてもよろしいでしょうか?」
「「嫌だ(よ)」」
自宅を出発してからというもの、利久と詩乃の2人は人目なんて微塵も気にすることなく、ずっと手を繋いでいる。しかも俗に言う恋人繋ぎで。
そのおかげで和人のMP(メンタルポイント)は今も減少し続けている。
「頼むから止めてくれ、これ以上は俺の精神がもたないから!」
「家にいるときは我慢してやってるんだから出かける時くらい別にいいだろ」
「そもそもあんた、一昨日明日奈が遊びに来たときに私たちの前でイチャついてたじゃない。だからこれでおあいこよ」
「こんなことなら明日奈とデートにしておけばよかった…!!」
悲しいかな、今更後悔したところで時既に遅し。過去を知った上で仲間であり親友だと言ってくれた詩乃と明日奈を会わせてあげたいと思ったことがこんなところで裏目に出てしまった。
■■■
時は遡り、12月5日。
まだ和人と利久が体力を取り戻すためリハビリに専念していた頃。東北の実家へ一度帰省して母親と祖父母を説得、無事正式に桐ヶ谷家に住まうことになった詩乃は、まだ少し慣れないながらもSAOで発揮した持ち前の飲み込みの速さで早くも桐ヶ谷家での生活に馴染みつつあった。
この日、詩乃にとっては大切な用事があり、日課の朝練で早起きしている直葉よりも早く起床していた。
たっぷり時間をかけ身支度を整えてから詩乃が向かった先は、所沢にある最新鋭の病院。その受付で通行パスを発行してもらい、胸にクリップで止めてからエレベーターで最上階である18階へと向かう。本来ならば事前に連絡の一つでも入れてから行くべきところだったが、居場所は知っていても肝心の連絡先を知らなかったため、伺う相手からすればあまりに突発的なサプライズ訪問になるため驚くだろうな、と詩乃は思った。
人気の少ない通路を進んで、目的の部屋の前で軽く深呼吸をしてから薄緑色のドアをノックする。
中から「はい、どうぞ」と聞きなれた声がしてから、ドアの横にあるネームプレートのスリットに通行パスをスライドさせると、音もなく静かにドアが開く。
心地よい花の香りに包まれる部屋の中を進んで行き、ベッドにいる綺麗な栗色の髪をした親友にありったけの笑顔を浮かべて言った。
「アスナ、久しぶり」
「ふえ、し、シノのん!?な、なんで!?」
案の定驚く親友に絶えず笑みを浮かべて詩乃は続ける。
「和…キリトに教えてもらったのよ、ここにアスナがいるって」
「そ、そうなんだ…ってキリトくん?シノのんキリトくんに会ったの!?」
「キリトだけじゃないわよ。リーファとリクにも会って、一緒に暮らすことになったの」
「え、えええぇぇぇぇ!?」
混乱し続けるアスナを一旦落ち着かせて、詩乃はここ最近起こった出来事を順に話すことにした。
偶然リクやキリトと再会できたこと、SAO帰還者用学校に通うにあたって一緒に暮らすことになった経緯、自身も含めた現実の名前。
「詩乃のん…私が見ない間に凄いことになってたんだね…」
「改めて話してたら自分でも少し引いたわ…どうなってるんだろう、これ」
「でも、良かったね詩乃のん。利久くんに早く会えて」
「約束は破っちゃったけどね」
少し申し訳なさそうに笑みを浮かべる詩乃に、明日奈は急に真剣な表情になった。
「…ところで詩乃のん」
「どうしたの、明日奈?」
「キリ…和人くんの家で暮らしてるってことは、その…和人くんの部屋に入ったりしたの?」
「ああ。直葉に部屋の場所は教えてもらったけど許可無しに入るのもあれだから入ってないわよ。それがどうかしたの?」
「その、詩乃のんは考えたりしないの?」
「なにを?」
「利久くんが、その…エッチな本隠し持ってないのか、とか…」
明日奈の言葉に一瞬部屋の空気が凍りついつくと、詩乃も真剣な表情になる。
「…考えもしてなかったけど、そうよね…持ってない保証は無いのよね」
「でしょ?やっぱり気になるじゃない?」
「うーん、でも勝手に部屋を漁るのも…どうかと思うのよね」
「なら、リーファ…じゃなくて直葉ちゃんに代わりにやってもらうのは?」
「ええ!?いくらなんでもそんなこと引き受けてくれるかしら…」
「詩乃のん!やっぱり妻としてその辺はキチッと知っておく権利があると思うの!だから無理やりでも探ろう!」
「そうね…そうよね、やっぱり知っておくべきね!」
SAOの頃からアスナに感化されて脳内が若干おかしくなっている詩乃は、特に何かを思うこともなく明日奈に影響され、現在暮らしている川越の桐ヶ谷家へと帰ってくるなり実行に移した。
しかしいきなり無断で部屋を探るまずは気が引けたため、まずは直葉に聞いてからということにした。
「お兄ちゃんたちの部屋にエッチな本ですか?ありませんよ、そんなもの」
そしてあっけなく終了した。探すまでもなく、直葉によってそういう類いのものが無いことが判明した。
「え、ほ、本当に無いの?ベッドの下とか、引き出しの隠しスペースとか、クローゼットの中とかちゃんと見た!?」
「はい。だってこの前隅から隅まで掃除したときに確認してますから」
「そ、そうなんだ…」
なんともいえない微妙な表情をする詩乃に対して、直葉は当然のように言った。
「そもそも利久兄の部屋なんて私もしょっちゅう、それこそほぼ毎日入ってますから、エロ本なんかあったらすぐに見つけて報告してますよ」
「ごめん直葉。エロ本云々よりそんなに高い頻度で出入りしてることに驚いてる…」
「利久兄が言ってたんですよ?部屋入るのに許可いらないから自由にしてもいいって」
「え、そうなの?」
「利久兄って可愛いぬいぐるみ結構持ってますからね、借りてるんです。私のベッドにある大きいにゃ○こ○生のぬいぐるみも利久兄のですし」
「え、あのにゃん○先○って利久のなの!?」
実際直葉のベッドにはカ○バラさんやダッ○ィー等の可愛いぬいぐるみに混じって、一際目を惹く80cmもの巨大○ゃんこ先生が凄まじい存在感を放ちながら堂々と鎮座していたのを詩乃は知っている-忘れろという方が無理だ-が、まさか利久の持ち物だとはこれっぽっちも思っていなかった。
「まあそういうわけですし、なんなら詩乃さんも利久兄の部屋入っていいですよ」
「ごめんね、時間とらせちゃって」
「大丈夫です。それじゃあ私、庭の掃除に戻りますね」
直葉を見送って、すぐ横にある利久の部屋のドアに目を向ける。手作り感が溢れる《Riku》とあるネームプレートの前に立ってドアノブに手を置く。
(利久の部屋。利久の色んな物がある部屋…ってことは…!)
瞬間、詩乃の脳裏を様々なシチュエーションがよぎった。
(不謹慎だけど、利久がいない今なら…あんなことやこんなことしてもいいのよね!?)
ドアノブに置いている手に力が入り、あと少しで開く、というタイミングで詩乃はもう片方の手で抑える。
(だ、ダメ!落ち着きなさい私!そんなことをして利久に嫌われたら…でも、やっぱり利久の服…ああ、でもバレたら…うう…)
周りに誰もいないとはいえ、完全に不審感丸出しになっている詩乃は、その場でおよそ数分間見えない何かとひたすら格闘し続け…
「あれ、詩乃さん寝ちゃったんだ」
直葉が掃除を終えて戻ってくると、そこには巨大に○んこ先生を抱いて気持ちよさそうに寝ている詩乃の姿があった。
■■■
「お、あったあった。ALO」
「パッケージからして本当にファンタジーってかんじだな」
「ねえ、利久。今更だけど本当にいいの?」
利久の袖を軽く引っ張ってから詩乃は申し訳なさそうに言った。
ALOのソフト自体は詩乃自身で購入するが、プレイするために必要なアミュスフィアは利久が詩乃の分も購入すると言ったのだ。律儀にもSAOにとらわれていた期間中の小遣いやお年玉は和人と利久それぞれの口座に翠が貯金していたため、元々の貯金も合わせて年齢にそぐわない額を手にしてこそいるが、さすがにアミュスフィアを2台も購入すればそこそこの金額がかかる。
「どうせ俺大して貯金の使い道無いし、こういうときくらいカッコつけさせてほしいな」
「それに、利久はこういうこと言い出したら止められないのは詩乃がよく知ってるだろ?素直に甘えておけばいいんだよ」
「…じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわね」
レジでそれぞれのアミュスフィアとALOのソフトを会計して、店をあとにする。
さすがに3人分も持って帰るのは邪魔になるため、近い内に配達してもらいことにした。
「他になんか見ておくものあったっけ?」
「んー…無いと思うけど」
「あ、俺PCのパーツ見たいから2人は自由行動でいいぞ」
「ん、わかった。ないとは思うけどスリとかに気をつけろよ」
「俺は小学生かよ!そっちも詩乃をナンパされないようにな」
和人と別れて2人きりになったはいいが、初めて来た秋葉原で何かしたいという要望があるわけでもなく、利久と詩乃は困った。
「うーん…どうする?」
「どうしよっか…」
あてもなくひたすら歩いていると、聞き覚えのある声が耳に入る。
「そんなこと言わないでよ、一緒に遊ぶくらいいいじゃん」
「嫌です!迷惑だからどっか行ってください」
「…この声って…」
「いや、まさか」
声する方向へ向かうと、そこにはいかにもな雰囲気のチャラチャラした男と、栗色の髪を三つ編みハーフアップにしたほんの2日前に会ったばかりの少女、結城明日奈/アスナがいた。
「はあ、やっぱり…」
「どうしてこうなるかなぁ…」
また会えたことを喜べばいいのか、めんどくさい場面に遭遇したのを嘆けばいいのか、なんとも言い表せない表情を揃って浮かべる。とにかく目の前で友達が困っているのを黙って見ているわけにもいかないため、利久はすぐさま切り替えて、詩乃に耳打ちをする。
「詩乃、全力ダッシュの用意しておけ」
「わかったわ」
利久は両手の指と手首をポキポキと鳴らし、軽く腕と足を伸ばすストレッチをすると、自身の前にいる人たちに「すいません、ちょっと道開けてください」と言う。
十分な広さの道幅を確保したところで、なにが起きるのかと詩乃を含めその場の人たちが気になっていると、利久は全力で走り出し
「人の(義)姉に…!」
チャラ男にダッシュで威力をブーストさせた全力のボディブローを打ち込み
「なにしてんだゴルァァァ!!」
勢いそのままにうずくまったチャラ男に渾身の胴回し回転蹴りをぶちかました。
「よし、逃げるぞ!」
「え、あ、利久くん!?」
すぐさま明日奈の手を握りながら詩乃と一緒に体力が底をつくまで全力で走り続け、気がついた時には駅前までやってきていた。
「はぁ、はぁ…ヤバ、死ぬ…脇腹が…」
「無理しすぎよ、利久…」
「あれくらい、しないと、追いつかれそう、だったからな…」
地面に座りこんで肩を大きく上下させながら息をする利久に、詩乃は近くの自販機で買ってきたスポーツドリンクを手渡した。
同様に膝に手をついている明日奈にも渡す。
「大丈夫、明日奈?」
「な、なんとか…それより、助けてくれてありがとう…」
「お礼なら利久に言ってあげて。私はなにもしてないわ」
「あ、うん…ありがとう、利久くん」
「どう、いたしまして」
そういえば助けてくれた時に姉って言ってくれたな、と思い出して明日奈が笑みを浮かべると、利久は不思議そうに聞いた。
「どうしたんだ?」
「なんでもない♪」
-3日後-
「いよいよだな…」
「アスナたちは?」
「さっき連絡したから、もうログインしてるはずよ」
「ほら、お兄ちゃんたち早く早く!」
「それじゃ、行くか!」
「新しい妖精の世界へ!」
「ええ!」
-リンク・スタート!!
ALOだけじゃなくて、GGOもやらせてみたいなーと思う。もちろんオリ主はビームサーベル(多分少し変える)ぶん回す近接特化で。
「俺はこの時を…この瞬間を待っていたんだーっ!!」