ソードアート・オンライン一紅き魔剣士と冥界の女神一   作:ソル@社畜やってます

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時間が無かったので短めたけど、とりあえず投稿。



イベント バレンタイン

2月12日

「さて、準備はいいか?」

エプロンと三角巾をつけた利久が言うと

「バッチリです!」

と綾野珪子/シリカがツインテールを揺らして元気よく

「もっちろん!」

と篠崎里香/リズベットが親指を立ててグーサインしながら

「よ、よろしくお願いします!」

と柏坂ひより/ルクスが少し緊張した様子でそれぞれ返事をする。

女性が想い人にチョコレートを送るイベント、2月14日のバレンタインデーが目前に迫ってきたこの日、桐ヶ谷家のキッチンには4人のSAO帰還者が揃っていた。

事の発端は数日前のALOで各々自由に過ごしていたときの会話だった。

「そういえば、もうすぐバレンタインだな」

愛刀の手入れをしながらリクは何気なくそう呟くと、直後女性陣から悲鳴のような声が上がった。

「な、なんだよ!?」

「どうしよう!私まだなにも用意してない!」

とフィリアがおろおろし始め

「完っ全に忘れてた…」

とシノンが猫耳と尻尾を垂らしながらうなだれて

「ヤバい…私バレンタインのチョコとか作ったことない…」

とリズベットが頭を抱えて

「うぅーん…キリトさんの好みってどんな味なんですかね…」

とシリカが頬に手を添えながら唸って

「ば、バレンタイン…キリト様に…」

とルクスが意識をトリップさせる寸前になる。

「………」

-揃いも揃ってなにやってんだ!と利久は心の中で盛大にツッコミを入れる。

シノンに関しては一緒に暮らしているだけで十分幸せだからチョコが貰えようが貰えまいが問題ないと思い、置いておくにしてもシリカ、リズベット、フィリア、ルクス。アスナという文字通り最強の壁が立ちはだかるキリトに想いを寄せている面々はこういうイベントに対して、全力で取り組むだろうと思っていたのだが、準備してないわ、そもそも作ったことがないわ、好きな味を事前に調査してないわ…蓋を開けてみれば散々なことになっていて利久は呆れ果てた。

「やれやれ…」

明日から大慌てで準備し始めて苦労するんだろう、と思いながら手入れに専念しようとしたその時、右手をリズベットにつかまれた。

「…なんだよ?」

「リク、あんた料理得意よね?」

「人並み以上にはな」

「甘い物好きよね?」

「まあ、な」

「自分でデザート作ったことは?」

「数えきれないくらいあるな」

「バレンタインのチョコ作るの手伝いなさい!」

「なんでそうなるんだよ!」

「元はと言えばリクが、もうすぐバレンタインだーなんて言い出すからでしょ!」

「わけがわからねえよ!?どう考えても事前に準備してなかったお前が悪いだろうが!」

わーわーぎゃーぎゃー激しい言い争いをしているリクに、今度はシリカとルクスが近づいてきた。

「「リクさん!」」

「な、なんだ…(3対1とかは勘弁しろ…)」

「バレンタインチョコ作るの手伝ってください!」

「お願いします!」

「なんだそんなことか、いいぞ」

「はああぁぁぁぁ!?」

アッサリと承諾したリクに、リズベットは納得がいかない様子で抗議した。

「異議あり!なんでシリカとルクスはOKなのよ!」

「普通に頼んできたなら断る理由もないしな。ただしリズベット、テメーはダメだ」

「………チョコ作るの手伝ってください」

「最初からそう言え、馬鹿」

「うるさいわね!馬鹿ってなによ馬鹿って!」

□□□

そして今、利久による指導のもとでチョコレート作りが始まろうとしていた。

「で、具体的にはどうしたいんだ?」

「あー…私は普通に溶かして苦味調節するくらいでいいや」

経験無しの里香は無理せず簡単な方法を選択していた。

「まあ、それくらいが楽だしな。珪子は?」

「えっと、生チョコ作りたいんですけど」

「ん、わかった。ルクスは?」

「フルーツをチョコでコーティングしてみようと思ったんですけど…」

「チョコフォンデュみたいにしたいのか、あれ美味しいしな。方針は大丈夫そうだし、これでいくか」

「…ところで利久さん?」

「なんだ?」

「なんで利久さんまで材料そんなに買ってあるんですか?」

ダイニングテーブルの上には里香、珪子、ひよりがそれぞれ購入してきたものとは別に、明らかに量の違う袋が置いてあった。

「俺も作るんだよ、アメリカ式バレンタインに習って」

「アメリカ式?」

「父さんに聞いたんだけど、向こうだと性別恋人云々関係無しで親しい人やお世話になった人にプレゼントを送るんだってさ。こっちでいう逆チョコとか友チョコに当たるのかな」

「へー知りませんでした」

「で、誰にあげる予定で?」

「詩乃、和人、直葉、母さん、明日奈…かな」

「うわ、大変そうね…」

5人に送る分を作るのを想像しただけで里香はげんなりしながら言った。

「とりあえず始めようぜ、時間足りなくなっちまう」

「そうですね」

「よーし、じゃあ早速」ガチャッ

「はい里香ストーップ。電子レンジだと焦げるから湯煎でやるんだぞー」

□□□

各々にアドバイスを送りながら自身の分も作業をしていると、ひよりから利久に声が掛かった。

「あの、利久さん。今さらですけど和人さんたちはどうしたんですか?」

「ああ。和人はバイクの免許取りに教習所だ」

「バイク、和人と二人乗り…」

「里香ー帰ってこーい」

「詩乃さんと直葉さんは?」

「2人とも明日奈の家にチョコ作りに行ってる」

ガナッシュを手早く丸めながら利久がそう答えると、珪子から意外そうな声が出た。

「え、詩乃さんもここで一緒に作れば良かったと思うんですけど…」

「俺も最初はそう思ったんだけどな、当日まで秘密にしておきたいって言ってたからさ。ん、我ながら上出来だ」

小さく丸めたガナッシュを味見して満足そうにすると、あらかじめ溶かしておいたチョコの入ったボウルをたぐりよせる。

「それって、トリュフチョコですか?」

「そ、ラム酒入りのな」

「大人の味、ですね」

「いいなー私も欲しいなー」

「材料余った分でおやつに作ってやったから我慢してろ」

「はーい」

□□□

1時間後

4人はそれぞれの作業を終えて、片付けをしてから余りのトリュフチョコを味わいながら談笑していた。お互いの近況や、ALOでのことなど、話題は色々あり、気がつけば17時を過ぎていた。

川越にある桐ヶ谷家から都内の自宅までは移動にある程度時間を要するため、3人は各自作ったチョコレートと共に帰宅することになった。

「ありがとうございました、利久さん」

「本当に助かったわ」

「今度、お礼を持って伺いますね」

「おう、また遊びに来な」

■■■

2月14日

実質貸切状態のダイシーカフェに集まったいつものメンバーはそれぞれ義理や本命のチョコを渡し、賑やかに過ごした。

 

案の定複数のチョコをもらった和人を明日奈がジト目で睨んだり、誰が一番美味しいかを迫られて和人が困ったりと、あの頃と変わらない光景に利久は思わず笑った。

途中でALOにいるユイとストレアに「私たちもチョコを渡したいから早く来てほしい」とログインを急かされてしまい、ダイシーカフェでの集まりは昼頃に解散した。

ALOではユイとストレアが全員にチョコをプレゼントした。クラインとエギルは残念ながら仕事のために後日になってしまったが、2人にチョコを渡されたクラインはそれはそれは嬉しそうな顔を浮かべていたそうな。

ユイとストレアのバレンタインチョコを渡し終えて、いつものように冒険に行こうとしたその時、リクだけがアスナ、シノン、リーファに呼ばれてその場に留まった。

何事かと思ったリクを待っていたのはシノンからの意外なプレゼントだった。

 

「こ、これって…レーヴァテイン!?」

「ええ、いつもいつも頑張ってくれてるお礼よ」

シノンから手渡された槍は、ALOの中でも3本の指に入る槍の一つで、非常に入手難易度の高いものだった。

手にしたそれは、見た目からして今まで使っていたものとは次元が違うのがわかり、SAOからのコンバートでSTR値の高いリクのアバターをもってしても手にかかる重厚感は凄まじかった。

「こんなの、いつ入手したんだ?」

「ほら、この間アスナの家にチョコを作りに行ったじゃない。あの時本当はその槍を入手するためにずっとALOやってたのよ」

「え、あの時か!?」

「本当、苦労したなぁ。だって3人しかいなかったもの」

「シノンさんがどうしてもプレゼントしてあげたいって言うから何回も死に戻りして頑張ったんだよ。ちゃんと大事にしてね、リク兄!」

手にした新たな槍をジッと見つめてから、リクはシノンにありったけの感謝を込めて言った。

「ありがとう、シノン。大事に使わせて貰うよ」

「どういたしまして♪」

 




神槍レーヴァテイン…厨二心をくすぐる名前がたまらなく好きだ。
ありがちなグングニルじゃないくて剣に多いレーヴァテインを槍にしたのも好ポイント

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