ソードアート・オンライン一紅き魔剣士と冥界の女神一   作:ソル@社畜やってます

15 / 35
キリトの千夜一夜物語を読んでたら思いついた話。
アラジン衣装のシノンさん可愛いすぎてヤバい。黒毛和牛先生GJ!( ・ω・)b


第11話 一夜限りの小さな逃亡

~アインクラッド96層~

 時刻は午後10時。辺りはすっかり暗くなり多くのプレイヤーが寝静まっている頃、キリトはひたすら街の中をうろうろしていた。

 理由は手軽にクリアできるクエスト探しだ。もう少しでレベルが上がるというタイミングでアスナから攻略終了の声がかかってしまいレベルアップできなかったため、こうして夜遅くにこっそり抜け出して簡単にクリアできるクエストを攻略しようとしたのだが、なかなか見つからない。

「(んー…どうするかな。この際だしモンスターを倒して、いやでも少し疲れてるからあ…かといってこのまま何もしないで戻るのもなんだし…)」

 腕を組んで悶々としながら足を進めていると、背後から「あれ、キリト?」と声がかかった。振り返るとそこには攻略時の姿をしたリクが不思議そうな表情で立っていた。

「え、リク?お前何してるんだよこんな時間に」

「それはこっちの台詞だよ。俺はレベルアップするために簡単なクエストこなそうかと思ってあちこち見て回ってたけど、キリトは?」

「俺も同じだよ。なんかこう、あと一歩でレベルが上がるのに!ってもどかしくてさ」

「なんだ、そうだったのか。じゃあせっかくだし一緒に探そうぜ」

「ああ、いいぞ。案外複数人じゃないと受けれないクエストもあるかもしれないしな」

 リクとパーティを組んだキリトは適当な話をしながら、クエストを見つけては内容の予測を立てて受けるかどうか相談…をただひたすらに何度も何度も繰り返す。

 一体何十分が経ち、何回クエストを断ったのかもわからないようになってきたそんに時、リクがキリトと肩を叩いた。

「キリト、あれクエストじゃないか?」

 リクが示した先の路地裏にポツンと看板が置いてあり、《魔法実験協力者募集!報酬は弾みます!》と書かれている。

 普段のキリトたちだったならばこんな怪しげな看板に釣られることなどないのだが、襲いかかる睡魔と早くレベルアップしたいという気持ちが強くなりすぎた結果…

「行ってみるか」

「うん」

 なんの疑いも持つことなく看板に描かれている矢印の方向へと向かった。

 やがてキリトとリク辿り着いたのは一件のボロい家だった。やはり看板に続いてどう見ても怪しいのだが、二人は大して気にする素振りもなく、ドアをノックしてから中に入った。家の中はフラスコやビーカーなどの現実の理科の授業でもよく見かけたものや、パッと見よくわからないものまで様々な実験器具で埋めつくされている。

 キリトたちの来訪に反応してか、奥の部屋からボサボサの髪で眼鏡をかけた女性が出てきて看板にあった実験の説明をした。

 内容は至って簡単なことで、失われた魔法を再現するための実験の一つとして、長年かけてようやく生み出した一時的に魔法にかかる薬を飲んで一晩過ごせば報酬を貰える、というものだった。

 これくらいなら簡単だな、と二人はその場でクエストを受領して依頼主の女性から渡された薬を一錠飲み、そのままボロ家を後にした。一時的に魔法にかかるとは言われたものの、ステータスや視覚的に何の変化も起きていないため-楽なクエストだな。と思いながら意気揚々と76層へ転移したところにユイが二人へと走ってやってきた。

「パパ、にぃに、なにしてたんですか!?ママとねぇねが心配して…ま、し…」

「やっぱりこっそり抜けだしたのはマズかったか…」

「シノン、怒ると怖いんだよな…」

「パパ!にぃに!」

「「は、はい!」」

 自分たちよりもずっと小さいユイにいきなり大声で呼ばれた二人は無意識に背筋を伸ばして返事をした。

「二人ともクエスト受けたんですか!?」

「え、なんで知ってるんだ?」

「…いいですか、落ち着いて聞いてください。パパとにぃにが受けたクエストはとんでもないものなんです」

「と、とんでもないもの?でも俺達別になんの異常も…」

「キリトくん?ちょっといいかな?」

 声がした方向には、腰に吊されている細剣に手をかけてニッコリと笑顔を浮かべているキリトの妻、アスナの一見すると優しそうな姿があった。が、キリトとリクはその笑顔を見た瞬間、アスナがかなり怒っていることを察知してすぐにでも謝ろうとした次の瞬間、アスナの口から思いもよらない言葉が放たれた。

「その女の子、誰かな?」

「?誰ってユイだろ?」

「違うよ、その隣にいる茶髪の女の子」

「隣って…リクしかいないじゃないか」

 いまいち話が噛み合っていないことに疑問を持っていると、いきなりアスナが細剣を抜いてキリトに突きを繰り出した。

「うおっ!危なっ!」

 間一髪のところで攻撃を回避したところで、アスナに声をかける。

「アスナ、いきなりなにするんだ!俺がなにかしたのか!?」

「浮気相手がいるのによくそんなとぼけたこと言えるのね!」

「は?う、浮気って俺が!?」

 本気で浮気した覚えがないキリトが困惑していると、ユイが袖を引っ張ってアスナには聞こえないように小声で話しかける。

「(パパ、にぃにと一緒にひとまず逃げてください。詳しい説明をしないといけません)」

「(…わかった)」

 キリトはアイテムストレージから名称のない野球ボール程の大きさのアイテムを実体化させると、それを振りかぶってアスナへと投げた。アスナは謎のアイテムを細剣で突くと、ボールから小さな火花を散ってバクハツを起こし、辺り一面に煙が広がった。

 煙が晴れると、そこにキリトたちは既におらず、アスナは怒りの表情を露わにしながら細剣を強く握りしめて走り出した。  

~路地裏~

「それでユイ、どういうことなんだ?」

 以前ふざけて燃えやすい素材や鉱石等を纏めて作りっぱなしにしておいた疑似魔法アイテムを利用してアスナを撒いたキリトたちは、人気のない路地裏の一角に身を潜めてユイから現状についての話を聞くことにした。

「はい。全てはパパとにぃにが受けたクエストが原因なんです。お二人の受けたクエストは結婚している男性プレイヤー二人以上だけでパーティを組んでいる時にのみ発生するものなのですが」

「(ずいぶんと限定的な発生条件だな!?)」

「あのクエストで薬を飲んだプレイヤーはフィルターがかかってしまって仲の良い女性プレイヤーからは姿が違って見えてしまうんです」

「んーと…つまり?」

「今のにぃには、ママからはこう見えているんです」

 そう言ってユイが二人の前に出したウィンドウには、パッチリとした大きな瞳とサラサラとした長い茶色の髪に鮮明な紅い唇の美少女の姿が映っていた。

「いや待て誰だこれ!?」

「今のママから見たにぃにです!」

「これ俺なのか!?別人ってレベルじゃないぞ!自分で言うのもなんだけどすごい美少女だぞこれ!」

「ちなみに、ねぇねからはパパがこう見えるはずです」

 切り替わって映し出されたのは、髪と瞳の色が黒色に変わった、案の定超絶美少女の姿だった。

「やっぱりか!」

「さすが双子だけあってそっくりですね!」

「こんなところだけ双子要素あっても嬉しくもなんともない…!」

 一体なにが悲しくて超絶美少女フィルターをかけられて、さらに浮気疑惑まで持たれなければならないのか、二人はクエストを受けたことを今になって心の底から後悔した。

「で、具体的にこのクエストはどうすればいいんだ?」

「追いかけてくる仲の良い女性プレイヤーから捕まることなく夜明け逃げきれればクリアです。ただし結婚相手、つまりママとねぇねがすごい追いかけてくるので注意してください」

「ちなみに、捕まったらどうなるんだ?」

「…できなくなります」

「え?ごめんユイちゃんもう一回言ってくれ。よく聞こえなかった」

「パパとにぃには、二度と結婚できなくなります」

 ユイの言葉を聞いた瞬間、キリトとリクに電流が走り、これまでの結婚生活の全てが走馬灯のように脳内を流れ、やがてお互いに固く手を握りあった。

「リク、何が何でもクリアするぞ!!」

「ああ。結婚できなくなってたまるか!」

 そんな二人の目は、今までのどんな戦いの時よりも力強く輝いていたと後にユイは語った。

 クエストクリアのため、二人は装備していた防具を防御よりも回避優先かつ索敵にかかりにくい補正のあるものへと変更して、ユイ連れて街を出ることにした。幸い誰にも見つかることなく街を出た後、より逃げる確率を上げるために広い森の中へと足を踏み入れる。

 そこそこの高さがある樹木を登って、太い枝に座ると、ひとまず安心とばかりに全員で一息つく。

 今こうしてやっていることを何も知らない人が見たらステルスアクションゲームか何かかと思われるかもしれないが、これはれっきとしたVRMMORPGであって、「スネェェェク!」と叫んだりはしないし、無線で「らりるれろ」と言うわけもないし、半裸かサンタの服を着てサルのお面を装着というわけのわからない格好で松明持ってその場でグルグル回ったり壁に張り付いて変な動きをしたりもしない。絶対にない。

 そんなこんなで樹に登ってから何十分が経った頃だろうか、いきなりリクが何かに反応してよりかかっていた樹の幹から体を起こした。

「どうした?」

「シッ、何か聞こえる…」

 リクに言われるまま口を閉じてキリトとユイは耳をすませると、微かに誰かの声が聞こえてきた。始めは誰の声かわからなかったが、徐々に近づいてくるとそれが誰なのかハッキリとわかった。

 黒のインナーと緑の皮防具に身を包んでいるその姿は、リクの妻であるシノンだ。

シノンは武器も持たずにしきりに辺りを見回しては不安そうな表情で心細そうな声を発しながら歩き続けている。

「リク、リク…どこにいるの?いるなら返事して…」

 そんなシノンの姿を視界におさめてしまったからか、今にも飛び出しそうなリクをキリトとユイは不安定な枝の上で必死に抑える。

「にぃに落ち着いてください。ここで捕まったらねぇねと結婚できなくなってしまうんですよ?」

「離してくれ!あんなシノンを見て放っておけっていうのか!」

「いや、どう見てもアレおびきだすための演技だろ。とにかくここからいなくなるまで…」

「いいから離せ!HA☆NA☆SE!」

 二人がかりでなかったら確実に力ずくで飛び出していきそうな暴れているリクを見て、キリトは呆れた表情を浮かべた。

 最前線の攻略組として日夜命をかけて戦っているリクは、その部分だけを見れば素直にカッコいいのだが、それ以外の実態はシノンにデレッデレで四六時中シノンのことしか考えておらず、シノンのことになると周りの見えなくなる生粋のシノンバカである。

 そんなシノンバカがひたすら枝の上で暴れるのを抑え続けること十数分、シノンの姿と声が認識できなくなったところで「あぁ…」とうなだれてリクはようやく大人しくなった。

「リク、お前なぁ…あんなの罠に決まってるだろクエストの内容的に見ても」

「あんなシノンをただ黙って見てろとか鬼!悪魔!鬼畜!人でなし!サディs…」

「(無言の腹パン)」

「ごふっ…!」

「少し落ち着け。じゃないとこれから先…」

「パパ、にぃに。また誰か近づいて来ましたよ」

 ユイの言葉にキリトと腹を抑えているリクが再び下を見ると、そこにはアスナがリズベット、シリカ、リーファ、フィリアを引き連れてやってきていた。しかも明らかに全員怒りの表情を浮かべており、パッと見でもヤバいのをキリトとリクは察知した。

 おまけになにを血迷ったのか全員武器を手の平に打ち付ける、漫画でよくあるような不良がガムを膨らませながらバットを手の平に打ち付けているような仕草をしながら歩いている。これまた何も知らない人から見たら色々と誤解されかねない光景である。

「(なにあれ怖い…)」

「(リズの武器がメイスなだけに無駄に合ってる…)」

「(ママ、すっかり荒れちゃったんですね…)」

 特に何も言葉を発することも無いまま周囲を探索し続けているアスナたちは、キリトたちが隠れている樹を取り囲むように立つと、大きな声で叫んだ。

「そこの浮気者ー!さっさと出てきなさーい!」

「うわ、バレてる…!」

「どうする。逃げるにしたって周り囲まれてるぞ…」

「さっさと出てきなさい…つってんでしょうが!!」

 リズベットが両手に持ったメイスで樹を力強く叩くと、大きく揺れてキリトたちは落ちないように枝や幹に必死でしがみつく。しかしこのまま樹に攻撃を加え続けられれば、いずれは倒れて姿を露見させることに変わりはない。

「なあユイ、何か攻略法みたいのは無いのか?」

「一つだけ、方法が無いこともないです」

「本当か?どうするんだ!?」

「あくまでもこれはクエストなので、フィルターなどの外部操作を受け付けているとはいっても、ママたちは根本的なシステムそのものに逆らうことできないはずです」

「つまり?」

「新しく宿屋の部屋をとって籠もりさえすればあるいは…」

「絶対的なシステムロックならたとえフィリアがいても破られないってことか」

「けど、その前にここから逃げなきゃならないんだけどなぁ…」

 話をしている間にも樹が攻撃によって段々と削られていき、揺れはどんどん大きくなっている。まだ辛うじて樹は倒れてはいないが、もう時間の問題といえる。

「…キリト、ユイちゃん」

「なんだ、リク?ってうわっ!」

「いきなりどうしたんですかにぃに!?」

 リクは手に持った刀で自身を思いっきり貫いてからいきなり二人を脇に抱えると、一番強度の高そうな太い枝に片膝立ちの姿勢で乗った。

「あんまりこんなことに使いたくはないんだけど、事態が事態だからコレで行くぞ」

「え、ちょ、お前コレどんだけ速いと思って…」

「に、にぃに?できれば私もう少し安全な方法が…」

「二人とも舌噛まないように気をつけておけよ…アクセスッ!!」

 言葉と共に樹木の葉を一気に撒き散らしながら吹き上げる紫色のオーラに身を包んだリクは、キリトとユイを抱えたまま力強いダッシュで飛び出すと樹の枝から枝へと目にも止まらない超高速で飛び移り続ける。抱えられていたキリトとユイはジェットコースターの比なんかではない衝撃に、終始目を思い切り瞑って口を絶対に開かないように固く閉じる。

 あっという間に森を抜けて息をつく暇も無く街へと到着すると、近くにあった宿屋に駆け込んで部屋をとり、変わらない超高速のままヘヤに駆け込んで勢いよく扉を閉める。システムロックがされたことを確認すると、リクが二人を降ろしてから一斉に一息ついた。

「ヤバい、ちょっと気持ち悪い…」

「にぃに、《魔王化》の無駄使いもいいところですよ…」

「いや、うん、ごめん。他に方法が思いつかなかったから」

「うぅ…悪い、俺寝る…」

「私も横になりたいです…」

 魔王直々のジェットコースターですっかり酔ったキリトとユイが備え付けの簡素なベッドに横になったのを見て、リクは心の中で土下座をした。

 その後、すっかり眠りについた二人をよそにリクは夜が明けるまでの間部屋の扉を万が一にでも破られないかと注視し続け、ようやくクエストクリアを迎えたところで一安心して気が緩み、そのままキリトとユイと一緒に眠りについた。

 数時間後、クエストのことなど何も覚えていないアスナやシノンによって二人はまた追いかけられることになった。




なんだかんだでお気に入りも200人突破…なんか、記念回でも書いた方がいいのかなこういうのって?
それとS☆A☆王少し前から投稿し始めたから良かったら読んでみてください。中身スッカスカで相変わらず駄文だけどな!(まさに駄作!)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。