龍の乗り心地   作:パリの民

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進学とともに、席替え、最後尾以外選択肢はない(`・ω・´)キリッ


一(はじめ)はよく遅刻する

一たちは、まだ戻って来ていない。転移魔法を使えば一瞬だが、どうやら一は徒歩でこちらに向かっているみたいだ。護衛するためにすぐ近くにいた方がいいと思うかもしれないが、一はエイルに危機が迫るとすぐに転移してくるので、その心配はいらない。

 

アポカリプス学園、その学園の生徒は、約2万。3年制で、上に行けば行くほど強いが、それはあくまで学園で学んだことが多いためであり、1年でも3年に勝つことは稀にある。だが、生憎、この学園では学年が上の方が強いと言うのが常識になっている。そのせいで差別が後を絶たない。例えそれが、校則に反していてもだ。ちなみに、この学校には留年も退学もある。では、そこまでして通うメリットは何か?それは上級冒険者になるために必要だ。ランクとは関係なく、上級冒険者になるのは誰でもできる。金をだし、この学校を卒業することが条件だ。上級冒険者になると、同じ依頼でも依頼料は2倍になる。要は、より教育が行き届いている連中を雇うことができるのだ。日本の就職で、例え能力が同じでも、大卒と高卒では、働いた時の貰えるお金が変動するのと大体同じだ。ようは、もっと稼ぎたいからこの学園に来る。ちなみに、Sランク冒険者でこの学園を卒業している者は、まだ1人もいない。この学園はどの年齢でも通えるが、入試を受ける金額は金貨10枚とかなり高いし、入試に落ちてしまえば意味無いし、学園での死者も後を絶たない。他にも様々な理由があり、入学の時は数万人が来るが、卒業できるのはわずか100人程度。それ程までに厳しいのだ。金貨10枚は一にとっては少ないが、それが毎年数万人受けに来るのだ。50万もの金貨が集まる。まあ、50万と言う金額でも、数年もすれば一1人で稼げるのだが。

 

この学園は実力主義で、弱いといじめの対象になることが多い。桜もその例外ではなかった。彼女は呼び出しをくらい、今校舎裏で女性5名に囲まれている。最も、彼女が呼び出され、いじめを受ける原因は彼女が男子にモテ、告白をされそれを断り、それらがあって嫉妬されたのだ。彼女は入学してから、1週間も経ってないのに、3回も告白されたのだ。まあ、中には私の物になれと言う者もいて、それを言ったのがこの学園でモテモテの貴族様と来たら、嫉妬の的だろう。

 

「あんた、弱いくせになんでこの学園に来てんのよ?どうせ卑怯なことしたんでしょう?」

 

「ち、違います!そんなことしてません!」

 

「私知ってるよ。この子、武器が強かっただけで、本人の力じゃないんだって」

 

「へー、最低じゃん。武器に頼るなんて」

 

「武器だって持ってる私の実力に入るんですよ?知らないんですか?」

 

だが、彼女だって元奴隷だ。この程度恐れるに足りないのだ。彼女は懐から白い銃を取り出し、迷いもなく撃った。今更、人を殺そうがなんとも思わないだろう。だが、生憎彼女の射撃の腕はかなり低い。数mしか離れて無いのに外してしまった。だから、彼女は脅すことにする。

 

「次は当てますよ?」

 

「「「「「ヒィ!!」」」」」

 

銃と言うのは、不思議なものだ。持っている者に勇気と言う名の"ゴミ"を与えてくれる。

 

「なんだ、我が出るまでもなかったな」

 

「行きましょう。エイルさん。もうすぐ授業です」

 

 

彼女らのクラスはバラバラだ。エイルがSクラスで、桜はFクラスだ。単純に魔力量で順位別けしている。差別と言う訳では無い、それそれに合った教育をしているのだ。A〜Eクラスの連中の魔力は殆ど変わらない。低くて5万、高くて20万だ。勿論、一と桜を抜いた数字である。ちなみに、桜は銃がないと一切戦力にならない。魔力はあるが、無属性以外使えないのだ。エイルがSクラスに入れたのも、割とギリギリだったのだ。まあ、Sクラス内の格差を気にする者は少なく、Sに入れただけで尊敬の的になる。

 

放課後、エイルと桜は勇者ユウキの妹である、結城ゆなに呼ばれた。と言ってもメモを渡されのだが。彼女は兄とは違い、白髪だ。アルビノと言うのだろうか。肌や髪の色素が足りていない。ゆなは漢字ではないのは、親がテストで書きやすいようにと思いを込めて考えたらしい。ゆなは無口だ。喋るのが苦手なのではなく、大声を出すのが苦手なだけだ。そして、小声で喋っても聞こえないのでは意味無いに等しいので、彼女はメモに喋ることを書いている。紙が勿体無いと思い節約していたが、何故か日本から持ってきたメモは使っても使っても使い切れないので、彼女は気にせず使い続けた。

 

《部活を新しく作ったの、はいる?》

 

「入っても良いが、活動内容はなんだ?」

 

「私運動無理ですよ」

 

《幽霊部》

 

「「は?」」

 

《幽霊、ゴースト、それらを探そう!ただの私の趣味》

 

《本命は、実力を隠している人を集める部活。そっちの女の子は違うけど、あなたは隠してるでしょう?》

 

「ほう、お主もリミッターを使えるのか?」

 

《ううん》

 

《使えない。でも、本来の強さが"見える"》

 

そう言って、メモを見せては捨てている。彼女の持っているポーチは恐らくメモの紙でいっぱいなのだろう。

 

「我の魔力は?」

 

《????どうやら、1億以上は見れないみたい》

 

本来ならその数字に恐怖するかもしれないが、彼女はかなりのポーカーフェイスのようだ。

 

《すごい、多い!》

 

文章では驚いてるが。

 

「まあ、いいだろう。ただし、入るなら我の家族たちもだぞ」

 

《(´・ω`・ )エッ?元よりそのつもりだけど?》

 

顔文字を使い出すゆな。それを表情一つ変えずにやるのだから、笑える。

 

「ぷはは、なんだそれは」

 

「流石の日本人、いや2ちゃん民なのでは?」

 

その数日後、入学式から今まで1度も来てない2人の新入生が、初めて登校した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園長兼理事長室、クリシュナと言う緑色の髪をしたエルフがいる部屋に、一とリリィは通されていた。元Aランク冒険者で、今は実力的にはSにも匹敵すると言われる女だ。身長は149のリリィにも"ある意味"負けず、146だ。しかも、エルフだからだろうか、巨乳である。要するにロリ巨乳なのだ。さらに、白黒のゴスロリの衣装を着ている。まあ、巨乳のせいでエルフのお姉さんを胸を変えずに小さくした感じだ。故に彼女は生徒(主に男子)に人気が高い。魔力量は60万である。そして、この見た目だが彼女は700歳を超えている。

 

「なんで呼び出しされたんですか?」

 

「ああ、お前に私の護衛をしてほしいんだよ。報酬は、1万でどうだ?」

 

彼女が言っているのは金貨1万枚の事だろう。かなりの大金だ。

 

「少ないと思うかもしれないが、お前は何か起こったら駆けつけるだけでいい。別に四六時中一緒にいろとは言わない。それとも、その方がよかった?」

 

「鎌鼬さんに色仕掛けはやめて下さい!」

 

「お前は呼んでないぞ?小娘」

 

「つまり、護衛や用心棒と言うより、ただ単に自分に味方になれと言うことですか?」

 

「理解が早くて助かる。敵に回したくない人第1位だからな。他のSランクよりも」

 

この言葉に、護衛の賢者ノワールがピクリと反応する。

 

「では、断らせて頂きます」

 

「え、な、ななんで!?」

 

「誰かの味方になるのは嫌です。自分はエイルの味方なんで、万が一エイルが敵に回ったら対象できないじゃないですか」

 

「うーん、そうかー。でも大丈夫だよ、私は別に龍神の敵にはならないから」

 

学園長には賢者であるノワールがすぐ側で護衛していたにも関わらず、いつの間にか首に刀が突きつけられていた。この速さに反応できた者は、少なくともこの場にはいない。しかも、ノワールは見えない魔力障壁を貼っていたのに、まるでシャボン玉を刺すように障壁は簡単に貫かれた。

 

「な!?は、速い!」

 

刀を取り出し、抜刀、そして静止。その動きにコンマ1秒もかけていない。これには流石の賢者も驚く。だが、これくらい出来て当然だ。一は身体能力だけでSランクまで上り詰めたのだから。

 

「やはり、強いな。お前は...龍神の護衛をしているだけある」

 

「何故知っている?まさかエイルを封印...」

 

「勘違いしてもらっては困る。私は確かにその時生きていたが、討伐作戦には参加していない。私は、待っていたのだ。あの子が自分に相応しいパートナーを見つけるのを。はぁ、これでようやく、楽になれる。昔から私が彼女の面倒をよく見たものだよ」

 

まるでこれから、死ぬとでも言っているような物言いだった。

 

「エイルに聞くといい。私のことをな。私の本名は、クリシャだ」

 

「それにしても、これでは護衛も意味無いな。ノワールの爺さん、もういいよ」

 

「全く、お前に護衛をしろと言われたから、なんとなく嫌な予感はしてたからのう」

 

「Sランクで最強って、やっぱり鎌鼬さんなんですか!?賢者さん!」

 

「ほっほっほ、お嬢さん。それはわしらに対して失礼じゃないかのう?」

 

ノワールの殺気が、部屋に充満する。

 

「でも、事実ですよね!」

 

伊達に一を扱っていない。精神が常人と比べて明らかにおかしい娘だ、とノワールは思う。

 

「ほっほっほ、元気がいいキチg...小娘だ」

 

((今キチ〇イって言おうとした))

 

クリシュナと一の思っていることが重なった瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

Sクラスでは、魔法陣に関する授業が終わり、休憩時間となった。

 

一はEクラスの授業が終わり、桜と一緒にエイルのSクラスに向かっていた。ちなみに、校舎が違い、かなり歩く必要があるが、一は転移でSクラスの前にすぐについた。

 

Eクラスの設備はまるで寺子屋のような感じだったが、Sクラスは全く別次元だった。バカ〇スでも、成績によっていい設備をもらっていたが、そんなシステムなのだろう。魔法具なのだろうか、それぞれの生徒の広々とした机にスクリーンらしきものが有り、一番前には演説をするような空間があった。恐らく、あそこで先生が授業をするのだろう。豪華ではあるが、勉強に関係ない物は恐らくないだろう。

 

そんな神聖すら感じる空間に、Eクラス、つまり魔力量最底辺の連中が来たら、誰でも違和感を感じるだろう。ちなみに、制服の胸ら辺にクラスがわかるように刺繍が施されている。その上、学園の生徒手帳を持っていれば、頭の上にクラスと魔力量が現れる。何が目的かは知らないが、これではいじめに繋がるのではないのだろうか。まあ、そんなもの一には関係ないのだが。同クラスの連中にいじめられても動じない彼女だが、ここは流石に怖気づいた。

 

「は、一さん。大丈夫でしょうか?めっちゃ睨まれてますよ...」

 

その言葉を無視し、一はエイルのいる所へ向かおうとする。

 

「おいおい、ここはお前みたいなカスが来ていい場所じゃないんだぜ?」

 

そう言って一の前に立ち塞がるのは、金髪のオールバックの髪型をしたイケメンだった。名前はテッド・ノワール。賢者の孫にあたる人物である。そして、彼が桜に自分の物になれと言った張本人である。唯一の幸いな点は、彼はエイルには何も言ってない点だろう。もしエイルに言っていたら、死にたくなるような苦痛を一によって、味合わされるだろう。一の後ろにいる桜から「うへぇ」と嫌そうな声が聞こえてくるが、無視だ。

 

「残念なことに、他のクラスに入っては行けないルールはこの学園にはありません。自分は妻に会いに来ただけですので」

 

「はぁ?妻?誰が」

 

彼がそう言ったとき、一に対してクロネコが盛大に飛び込んでくる。

 

「ハッジメェェェ!!!会いたかったよー」

 

姉とは違って、大きな谷間を持ったテレサが一に飛び込んで、抱きつく。

 

その瞬間、Sクラスの男子全員から嫉妬、敵意、挙句の果てには殺意まで向けられた。テレサは美少女で、巨乳で、成績優秀で、魔力量も150万と2位で、巨乳だ。それ故に、男子から絶大の人気を誇っている。そして、雷帝だと言うことも知られている。この学園では魔力量が高い人ほど尊敬されやすい。1位のゆなも人気はあるが、流石に12歳の子供に好意を抱く者は少ない。極一部の変態(ロリコン)らが、ファンクラブを開いている程度で、それに比べ16歳の美少女なら、注目の的になるのも必然なのだろう。まあ、単純に男共が巨乳好きなだけなのだが。

 

人間1人に抱きつかれると言う事は、体当たりされたようなもので、ある程度体重差や力がないと後ろに倒れてしまう。だが、一はびくともせず、腰にいるテレサを引きずりながら、エイルの席へと向かう。これには、テッドを含めるその場にいた全員が唖然として見ていた。桜とエイルは見慣れた光景なので無視した。

 

「どうした?ハジメ、何か用事か?」

 

「ええ、聞きたい事があるんです。エイルさん、クリシャと言う方を知りませんか?」

 

途端、エイルは昔の事を思い出したのか、ぷるぷると震え出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪神クリシャ、そう言えばお主にも分かるだろう?」

 

一は久しぶりに、驚いた表情をした。




まさか学園長がエイルを封印した人のうちの1人とはね〜

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