龍の乗り心地   作:パリの民

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どうも、暇人です。




一(はじめ)スリをされる

一とエイルの2人は初まりの森に来ていた。

 

ここは外と違い中にいる生物が以上な発達をしている。それは、この森にあるきの殆どが、ユグドラシルという大木で、神々が作った森とされている。

 

初まりの森という名前がついたのも、この木のせいである。だが、実際はエイルが作った森なのだ。その森は、エイルが枯れないようにと木々に異常な魔力を込めてしまったため、一本一本が、数100mという異常な高さを誇り、硬さも異常な物が出来上がっていた。

 

木々に大量の魔力があるため、そこの付近に住んでいる魔物はかなりの強さになっていて、人間どころか魔族すら近づきたくない場所が出来上がってしまった。

 

そこにいる生物たちは、勿論腕力が強い魔物もいるが、基本はみな馬鹿デカイ魔力を所持している。だから、こいつらを使って一を強化しようとエイルは考えている。いくら強くなろうが、結局エイル程の個体が現れるわけもない。

 

この世界にステータスと言う概念はない。

 

確かに魔物を殺すと多少は強くなるが、それは悪魔で実戦の経験を積んだからであって、経験値を得てレベルアップしたというわけではない。だから、強くなる方法はひたすら訓練、修行、実戦をするとかしかなく、この世界の住民は生まれ持った才能などによって強さが決まる。

 

その才能とは、魔法適正だ。生まれた時から大量の魔力を持った者もいるが、多くは一度に使う魔力量を減らす工夫をする。勿論、魔力を大量に持ってても、魔力なしに負けることもある。それは詠唱などに時間がかかって、その間にやられたりするからだ。

 

魔力量が強さを左右する世界、それがこの世界と言ってもいい。だから、この世界での強さは、生まれた時から決まっている。そこで、生まれた時に魔力量を測る風習もある。

 

一は魔力一般人と比べると、多い方だが、それでも強い人に会うと簡単に殺される。だから、初まりの森で、エイルが魔物をある程度弱らせ、とどめを一がさす事をする。

 

 

 

先ほども言った通り、この世界にレベルアップのシステムはない。

 

ではなぜ、こんな事をするのか、それは一の持っている刀「鎖」の能力を活用した結果だ。「鎖」の能力は、与えたダメージの分、相手から魔力を奪う能力、対象者の魔力量を利用して、相手を封じる能力、の2つだが、それはあくまで一時的に所有権を経た勇者が使った結果であり、「鎖」に選ばれた一が使うとまだ能力が追加される。

 

エイルはそこまで詳しくないため、彼女が知っている能力は1つだけだ。その1つが、殺した相手の能力を自分に上乗せする事だ。

 

これは与えたダメージなど関係なく、ただ単にとどめを刺せば発動する。この能力を利用して、一を強化するとエイルは言っている。因みに、エイルによると能力は後数個あるが、彼女の持っている鑑定のような能力でも分からないと言う。

 

彼女の持っている鑑定のような能力は、賢知の目というもので、見ている物のある程度の知識を得られる。例えば、刀を見るとこうなっている。

 

名「鎖」...勇者、魔王、邪龍の合作で、封印するために作られた物。

 

能力 魔力吸収、封印、魂の吸収

 

因みに、更にそれぞれの詳細も見れる。

 

例えば、封印の詳細は、対象者の魔力を利用し、可視の鎖を使い封印する。対象者の魔力が大きいほど、封印は強力な物になる。と書かれている。

 

因みにこの賢知の目は一も使える。

 

この目は生物を見るとその生物の保持する魔力量を見る事ができる。一般人の平均が、5000で、100万で王国の最強魔道士ぐらいである。

 

魔法は火、水、風、土、光、闇、無の7つの属性がある。これにも適正などがあり、王国最強となると、4つは持っていて普通である。

 

因みに一の魔力量は約1万、一般人より多いが、100万と比べると弱く感じてしまう。歴代のエイルを封印した勇者たちの平均は2000万、化物である。因みに魔王が、14億、邪龍が20億ぐらいである。

 

気になるエイルの魔力量は、8兆だ。一般人16億人分の魔力量を聞いた一は「エイルさんはすごいなー」と思うだけだった。

 

また、賢知の目は自分を見る事が出来なく、これは魔力量を見るのも同じである。魔力を使いすぎると魔力切れを起こし、気絶すると言うのが一般常識だ。

 

だが、一は森の魔物と戦う時は魔力切れ状態を維持しているよう、エイルに言われている。この世界の住民の殆どに出来ない事だが、何事にも例外がいる。

 

それがエイルで、彼女は魔力切れを起こしても平気だと一に会った事により、気付いた。なぜなら一が魔力のない世界の住民だったからだ。一がなぜこちらに来て魔力を持っていたのかは知らないが、来る前は少なくとも魔力がなかった。

 

だから、彼女は自分の勘を信じ、意図的に魔力切れを引き起こした。方法は簡単で、自分の魔力を使って自分にリミッターをかけるのだ。そのリミッターで魔力量を0にする。リミッターは最大自分の魔力を0までに出来る。

 

エイルが魔力切れを起こしてもなんら問題なかった。なので、一に魔力切れの状態で戦うように指示したのだ。いわゆる手加減だ。

 

改めて、初まりの森にある魔物を見て行こう。ここで住む魔物は、魔力により突然変異を起こし、一番弱い者でも魔力が100万以上はあった。邪龍以上の個体も複数生息している。ここの魔物はここが気に入っていて、皆外に出ようとしないため、外の世界は無事ですんでいる。ここで、一はひたすら魔物を殺し、強くなっていった。

 

 

 

 

一がエイルと出会ってから、約一年がすぎたころ、一は初まりの森でひたすら魔物を殺した結果、その森にいる魔物は全滅した。この森は魔物が絶滅しようと、また外から入ってくるため、特に影響はない。

 

 

「いやー、自分結構強くなったと思うんですよね。エイルに比べるとまだまだですけどね」

 

「うむ、まあ、そうだろう」

 

「にしても、絶滅させて本当に大丈夫でしょうか?」

 

「何、一週間もすれば元に戻る。人間がここにくると魔力過多でしぬが、魔物の適応力は半端でないからな。我も驚かされた」

 

 

2人は巨大な木に作った家で昼食をとっていた。肉や野菜は勿論ここで採れた物だ。家はかなり広く、一が自分で作ったキッチンなどもあり、森の中だとは思えない空間が広がっている。料理を作るのは基本一だ。

 

 

「じゃあ、また魔物が来るまで待ちますか。のんびりと」

 

「なあ、一よ。お主、人間の住む街に行かないのか?」

 

「え、なんで行くんですか?」

 

「うーむ、お主も人と触れ合いをだな。うーん」

 

「ああ、なるほど。人々の様子をしっかり知っておかないと、また昔みたいにエイルが封印されるかもしれないから、って事ですよね。じゃあ、2人で人の街に行きましょうか」

 

「まあ、そうだな。行くか」

 

 

エイルは、ため息をつく。自分は自分以上の化物を生んでしまったのだと思うと、龍なのに胃が痛くなる。いや、龍にも胃はあるが。エイルが見た一の魔力量は約20兆、自分の魔力量を遥かに超えている。

 

最初の方はエイルが敵を弱めてから、一がとどめを刺していたが、4ヶ月ぐらい経った頃だろうか?そこから一は自分で出かけて狩をするようになり、今では2週に一度は森の魔物を絶滅させている。その結果、20兆という脅威の魔力量を叩き出したのだ。

 

一はエイルと共に空を飛んで移動している。

 

「一よ、お主、リミッターを自分につけた方が良いと思うぞ」

 

「わかりました。じゃあ、魔力量が1万になったら言ってください。あと、一旦降りましょうか」

 

一は地面に降り立つ。降りた所は砂漠の上だった。

 

「うむ、今一万になったぞ。じゃ、ここからは我の上に乗るといい」

 

最初はエイルに乗ると酔っていた一だが、今ではすっかり慣れてしまった。エイルの飛ぶ速さはかなりの物で、1時間くらいで街の近くの森についた。エイルは龍の姿から可愛いらしい銀髪少女の姿に戻り、透明になる魔法を解き、一と一緒に門まで歩いていった。

 

一は中性的な顔をしており、女性と言われればそう思える程だ。いわゆる男の娘だ。だが、身長は男にしては低くても、エイルよりは頭1つ分くらい高いので、門番から見れば可愛らしい姉妹が来たとなるだろう。

 

「お嬢さんたち、身分証明証とかは持っている?」

 

お嬢さんと言われて、訂正しようとしたが、面倒なので放っておく。因みに、一は最初に召喚された時は中学の学ランを着ていて、ずっとそのままだ。

 

肩にかけるタイプの鞄ももっていて、中にはこの街に来る途中で倒して魔物の魔石が入っている。因みにエイルは真っ白なワンピースだ。

 

門番は一の服を珍しい服だと思ったが、特に気にも止めなかった。

 

 

「いえ、この子と一緒に田舎から来たもので、持っていないです。これからギルドで発行する予定です」

 

 

一は、どうせあるだろうと思い、ギルドの名を出す。

 

 

「わかった。ギルドはあっちの大きな看板がある所だ。それにしても、大丈夫なのか?」

 

「大丈夫ですよ、自分、魔法は得意なんで」

 

「人は見かけによらないって事か、頑張れよ。通行料は特別に、免除して置いてやるよ。と言うか、変な剣持ってるのに魔法か?面白い嬢ちゃんだな」

 

「そうですか?ありがとうございます」「ありがとう」

 

 

2人はギルドに向かって歩いた。

 

 

「やっぱり、その喋り方は難しいですか?」

 

「ああ、我には使いづらいな。やっぱり、自分に合ったものが一番だ」

 

「まあ、無理しないで下さいね」

 

 

2人は一緒にギルドまで歩いて行った。その途中で、スリにあった。男の子がぶつかったと同時に、一の持っていた鞄を奪っていった。

 

 

「あの人の子、いい度胸をしている」

 

「はは、まさか街に来て一番最初がスリですか」

 

「どうするのだ?奪い返して、兵隊にでも渡すのか?」

 

「いやだな、エイルさん。自分がそんな酷い事する訳がないじゃないですか。あの子兵隊に捕まったら、牢屋に閉じ込められ、酷い生活をするに決まってます。なので」

 

「なので?」

 

 

一は、なんの躊躇いも無く、言った。

 

 

「殺しましょう」

 

 

 

 

その男の子は、この頃よくスリをしていた。狙いは基本、街に入って来たばかりの隙だらけの人たちだ。なぜそんな事をしていたのか。それは彼の母親が病気にかかり、治療の為にお金が必要だったからだ。

 

彼の家は貧乏で、ロクに薬も買えなかった。だから、彼は今回のスリの結果に喜んでいた。見た事ない鞄の中には、大きな魔石が3つ入っていた。なんの魔石かは知らないが、これ程大きな物だ、きっと高値で売れる。

 

これでやっと、母の病気を治す事が出来る。そう思っていた。

 

事が起きたのは、彼が街の外れにある自分の家に帰る途中の事だった。自分がスリをした2人姉妹が、目の前に立っていた。

 

その2人を見た瞬間、彼は後方に向かって逃げた。

 

 

「ッ!?なんで、あいつら!」

 

 

男の子は必死に逃げた。捕まったら間違いなく、兵隊に渡され、自分は牢屋行きだと思ったからだ。だが、彼が後ろを振り向くと、姉妹の姉の方が剣を抜いて、自分に斬りかかってきた。

 

 

「なっ!?」

 

 

まさか、子供を躊躇無く斬りに来るとは思っていなかった。死んだと思い、自然と目を瞑った。

 

 

 

キン!

 

 

 

金属と金属が衝突する音と共に、少年は目を開けた。目の前に、金髪の青年がいて、彼が姉の剣を受け止めてくれていた。

 

 

「...」

 

「子供に何してるんだ!」

 

 

金髪は大きな声で言った。

 

 

「僕はアスフェル帝国の勇者!ユウキだ。名乗れ!」

 

「...何をしたも何も、スリにあったから、奪い返しに来ただけだ」

 

 

男の子はとっさに自分の生きる道を見つけた。

 

 

「違うよ!そのお姉さんが僕を騙したんだ!この魔石で売った金を使って親を助けるんだと言って、これを僕にくれたんだ!そして僕が貰ったらスリだと言って襲って来たんだ!」

 

「なんだと!?とんだ外道だな!僕が相手する!」

 

 

本来なら勇者は姉妹の姉の服に疑問を持ち、すぐに自分と同じとこから来たと分かるだろうが、この時はそんな事などこれぽっちも考えてなかった。

 

 

「っく、仕方ない。覚えてろよー!」

 

 

姉は妹を担いで、街の方に逃げていった。

 

 

「あの、助けてくれてありがとうございました」

 

「いや、いいんだ。これも勇者の仕事だしね」

 

「じゃあ、僕はお母さんの所に戻りますね」

 

「うん、気おつけてね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ、さっきのは」

 

「ん、何がです?」

 

「殺しましょうとかお主言ってなかったか?」

 

「ああ、その事ですか。まあ、魔石は魔物倒せばいいし、それにあの子はもうすぐに死にますよ、絶対ね」

 

「ほう、あれを使うとはお主も悪よのう」

 

「突っ込んだ方がいいのかな。んじゃ、ここら辺で魔物倒して魔石手に入れますか」

 

 

エイルは一に手を伸ばし、2人は手を繋いで門番に挨拶してから門を出て、街への道の横に広がる森に入って行った。

 

 

 

 

男の子が家に帰る途中で死に絶えていた。街の中だが、そこそこの草原が広がる場所の上でだ。死因は心肺停止だった。これは一が刀「鎖」で彼の心臓などを封印して、動けなくしたからだ。

 

心臓が止まれば死ぬ。アンデット以外の全生物が共通することだ。もちろん、エイルという例外の事を考えてはいけない。そして、男の子の母も、男の子が死んでから、それを追うように死んだ。

 

勇者カズマ・ユウキはこの事を知らない。

 

また、男の子の死体が発見されたが、特に事件にはならなかった。スリをしていた事はよく知っているし、そのスリで返り討ちにあったのだろうと、誰も気にしなかった。

 

 




うーん、エイルの喋り方がよくわからん。追記:勇者の名前と苗字が逆になってたので、直しました。

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