龍の乗り心地   作:パリの民

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お久しぶりです


一(はじめ)は綺麗好き。

邪神たちが集う、アスフェル帝国の北にある小さな島。そこには大量のゴーレムや、様々な魔族が1万以上も集まっていた。魔族に現在王はいない。だが、彼らはここに集まっている。その理由の殆どが、これから人類に対する戦争をする事だ。票的となるのは、アスフェル帝国と、マートン王国だ。彼らがいる島はそこそこの大きさだが、魔族約1万が入る程ではない。詰めれば入るかもしれないが、彼らとて生きているのだ。自分らの住む場所が欲しい。よって、この島は単なる入口になった。魔族による国への。島の森の中に、10m以上の大きさの門がある。そこが、いわゆる魔界への入口なのだ。彼らはそこで暮らし、農業などもし、生活して、着々と戦争の準備を進めていた。彼らと人間の因縁は、遥か昔に遡る事になるので、話すのはまた今度にしよう。

 

その魔界に入ると、まず目に入るのが大きな城である。アスフェル帝国の王城以上に豪華で、大きな城の中には、屈強な魔族がわんさかいて、そこの頂点が、4人の邪神である。と言っても、現在ここにいるのは、その内の2人だけだが。

 

魔族は着々と、対人間の戦争準備を進めていた。

 

だが、彼女らはとある問題を抱えていた。

 

「おいおい、まさか邪神様が、こんなガキとはな...」

 

「ガキの下につくのは嫌だぞ」

 

「おままごとでもやってろ」

 

王城に集まった魔族に、散々に言われる邪神2人。少し大人っぽいのが、ミネ。それより小さいのが、クロンだ。そして、バーロイデが現在転生者の管理をしていて、クリシュナがアポカリプス学園の学園長だ。アポカリプス学園の経営は、単なる資金稼ぎだ。

 

王の座に座っているクロンが立ち上がり、その短い金色の髪を揺らしながら、魔族の前まで歩いてくる。まじかまで来ると、もはや上目使いのようになるが、彼女の目は殺意がこもっていた。

 

「ここは我らが用意した土地であり、戦力の殆ども我らが用意したゴーレムだ」

 

「何が言いたい」

 

「不満があるなら、ここから立ち去れ!我らは人類と戦争するためにここに集った。だが、別にそれに君たちは必要ない。戦争が好きでしている訳では無い。我らは我らの野望の為だけに、戦争をしているのだ。だが、この戦争では、人類を殲滅することもできるかもしれない。だから、それをしたいのならば、我らと手を組めと言っただろう?それが嫌なら、自分で戦争を勝手に初めてろ、ガキ」

 

「な、なんだと!」

 

魔族が彼女に殴りかかろうとするが、ミネの近くに立っていた男らしき姿に止められる。

 

「これが...ゴーレム…だと…?」

 

そのゴーレムは見た目が、人間の青年にしか見えなく、魔力量は驚異の12億。彼女らの最高傑作と言ってもいい。

 

「その行為は、反逆とみなす。1分以内にこの地を門よりでなければ、待つのは死のみだ」

 

「くそ!」

 

男は慌てて逃げていった。

 

「ぁあー、疲れた。なんなのよあいつ!来たのはあっちなのに、私ら見たら不満あるとか。頭おかしいんじゃねーの?あぁん?お前らまだいたのか、出ていくならさっさとしろ。人様と戦いたいなら、軍のところに行け」

 

「お疲れ、クロン。はい、メロンパフェよ」

 

と、ミネがパフェを持ってくる。彼女は喋り方や態度がお姉さんと言った感じだが、身長は150とそこまで大きくない。まぁ、その代わり胸は大きいが。ちなみに、クロンは142と、小学生並みの身長だ。そして、わーいと喜びながらパフェを食べる姿を見ても、子供にしか見えない。700歳をゆうに上回る年齢なのだが。

 

 

魔族と人間の戦争が起こるのは、もうじきのことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一たちが今いる場所は、港である。マートン王国から直接海からスレイ王国に行くつもりである。

 

マートン王国は、自分らの最高戦力を殺され、挙句の果てに船を用意しろとまで言われ、鬱憤が溜まっているが、彼らには従うしか方法が無い。いくらムカついても、力は本物なのだ。ナイトメア討伐は、もはや彼らしか頼れない。

 

それが王らの考えだったが、国民はもっと楽観的な考えで、悪くいえば馬鹿だった。最高戦力を殺されたにも関わらず、憎むどころか、むしろ讃えていた。何しろ、彼らはある意味勇者と同じなのだ。金を払っているのは国であり、彼らでは無いので、国の苦しみなんて全く関係ないように振舞っている。実際そうなのだろう。

 

「アルバの皆さん、頑張ってください!」

 

「アルバのお兄ちゃん、お姉ちゃん。絶対勝ってね!」

 

悪夢(ナイトメア)から覚めるのは、日の出と共に。そういった意味が込められて、夜明けの意味をもつ言葉が、彼らのパーティー名である。それが、対悪夢専用冒険者団、Alba。

 

「はい!余裕で勝手来ますよ!私、帰ったら結婚しますので!」

 

「おい、テレサ。それフラグだぞ」

 

「うっさい!今すぐにフラグをへし折るフラグ建てればいいでしょう!」

 

「なるほど...。俺らが倒す前に、他の人に倒されなければいいのにな(棒)」

 

「ぷははは!カッコ棒って、自分で言うとか、さすがナルシだね!」

 

船はかなりの大きさだが、一般乗客もいる。王としては、唯一嬉しい点は、今回の船旅に護衛がいらない事だろうか。海には勿論魔物がいるし、むしろ陸より戦いずらいこともあり、護衛料が高くなる。だが、彼らがいれば問題ないだろう。と言うか、これから悪夢を倒しに行くのに途中の連中に倒されるようじゃ、もはや世界の終わりである。

 

まさか、Sランク3人のうち2人が船酔いで倒れるとは王も思っていなかったのだろう。

 

「おrrrr.......な、なんだこれ、私、無理おろrrrr」

 

「まさか、美しい僕がこんな醜態をおrrrr」

 

2人のSランク冒険者が、海に色々な物をプライドと一緒にぶちまけていた。

 

「へ、へへ...プライドないのか…おっぱいは...間違えた、お前は」

 

「へっ、なんです?それ食えるんですか?」

 

実は彼女、見かけによらず暴食である。それはもう、どこに入るのかと疑うほど、食べる。その代わり、大量に食べた次の日から数日、あるいは数週間食べなくても平気でいられる。彼女の体は、かなり謎である。

 

2人は船にあるベットで寝ていた。船は魔力を動力にした船で、かなり大きい。100人程度の乗客を余裕で載せられるのだから。

 

ある日の夜、いつも通りの船内。外は雨のせいで音が聞こえにくく、見通しも悪い。

 

船内の一番豪華な部屋に4人が寝ていた。ハジメ、リリィ、テレサ、クリード。その4人が、それぞれのベットで寝ている。ちなみに、賢者ノワールはリリィがいるから来たくないと言って来てないが、彼とはサリエル王国で合流するつもりである。

 

既にほとんどの者が寝静まり、起きているのは船の操縦者くらいだろう。そんな中、4人のうち3人の意識が覚醒する。

 

「!?」

 

「起きたか、おっぱい」

 

「ええ、この気配...魔物?」

 

「...」

 

ハジメはコクリと頷く。

 

「仕方ない、レディーたちに睡眠は欠かせないものだ。僕が行こう」

 

「じゃあ、自分も」

 

「いや、あんたは寝てろ」

 

「?」

 

「あー、ハジメさん、寝ましょう」

 

クリードはテキパキと寝間着の姿から、普段の冒険者としての姿に戻る。Sランク冒険者の殆どが、ソロで活動している。クリードの場合は珍しいのだ。理由は単純で、パーティメンバーがついてこれる人がいないのである。故にSランクは孤独である。それはクリードとて例外ではないが、彼は家族と遊び感覚でダンジョンに潜っている。ちなみに、独身(37)である。

 

今まさに、船に襲いかかる脅威の前に、前人未到のダンジョンの階層に、家族という拘束具付きで潜った超人が立ちはだかる。

 

その名は、風神。風を司る、神とまで崇められた風魔法使いである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

船の周辺は、天気が荒れていた。雨はやがて嵐になる。見通しはますます見えなくなるが、それでも船長の目にはそれがはっきり見えた。理由は単純で、大きすぎたのだ。山と思うぐらいの巨大な影が、嵐の雲の中にそびえ立っていた。高さは、40mはあるだろうか、遠くでは岩に見えたが、今となっては山にしか見えない。

 

「な、なんですか!あれは!」

 

「わ、わからん!とにかく右に旋回しろ!このままだとぶつかるぞ!」

 

「無理です、あれ、動いてます!」

 

「なんだと!?」

 

「魔物だと思われます!」

 

「一旦錨を下ろして船を止めろ!」

 

嵐の中で船を止めるのは、危険である。大きま波が来れば、避けられないからである。だが、今回ばかりは、船長の判断はあっていた。彼の判断に驚く船員もいたが、彼を信頼して指示に従う。彼が船を止めた理由は至って単純。魔物と交戦するためである。そして、運のいいことに、この船には最高の護衛がついている。だが、陸の冒険者が戦うのには、海上で上下に激しく動く船という足場は明らかに不利。だから、彼は船を錨で無理やり止めて、魔物と交戦する足場を提供したのだ。そして、噂をすればなんとやらで、甲板には緑色の長髪を後ろで束ね、茶色いマントのようなコートを靡かせる20代にしか見えない青年がいた。最も、本人は既に30後半なのだが。

 

「雨は嫌いじゃない。髪の毛がいい感じに濡れて、カッコイイからな。そして、嵐はマントがいい感じに靡く」

 

茶色いコート(本人はマントだとしている)は防水加工がしてあるのか、雨で濡れて張り付く事なく靡き、コートにはフードがあるが、彼は被っていないので、彼の緑色の長髪も風に乗る。髪は背中までの長さがある。

 

「.............」

 

海に浮かぶ山が、動きその山から赤い目が見えた。どうやら、山と思っていたものは、単なる頭部に過ぎないらしい。

 

「随分とデカく成長した"カメ"だな。スッポン鍋何杯分だ?最も、あのおっぱいならこの程度、一週間もあれば1人で完食するだろう。と言っても、その後数年は、食事を必要としなくなるのだろうがな…」

 

「.........」

 

カメは何も声を出さない。両者は睨み合う。

 

カメ、シーキング・タートル(海王亀)とは、一体誰が名付けたのやら。

 

先に動いたのは、カメの方だった。クリードを強敵と判断したタートルは、1度船から離れる。勿論、全速力だ。

 

「な、なんだ?」

 

「Sランク冒険者を見て逃げたのか?」

 

「「「おおお!!」」」

 

「いや、これは恐らく....」

 

納得していないのは、船長とクリードだけである。

 

「ま、まずい!逃げた時に生じた波が来るぞ!」

 

「す、数十mはあるぞ!避けられない!」

 

亀の頭よりも高い波が、船を襲う。だが、その波は、まるで上空から"強風"に吹かれたように押しつぶされた。

 

 

 

 

もはや、驚くことしかできない。それが船の操縦室にいる面々の感想だった。

 

「これが、我々人類の希望の1人か...」

 

「なんて力だ...」

 

 

そして、先ほど遠くに行ったカメが、大きいくカーブしたのをクリードが感知する。彼は空気の流れ、つまり風の流れを感じ、物体の位置を大まかに把握する。一定範囲内を常時警戒しているが、大まかなので詳しくはわからない。具体的にいうと、遠くにある物体が動いたり、どの方向に行ったりとかは感知できるが、その物体の形や細やかな大きさはわからない。まぁ、一点集中すればわかるのだが。

 

魔法の発動に、本来詠唱はいらない。想像してる物を一瞬で連想させるために、詠唱があるのだが、Sランクにもなって今更詠唱してる者などいない。

 

「これは...!体当たりする気か!」

 

 

 

 

船内の船長らがいる場所に、クリードの声が響く。魔法を使ってそこの場所の空気を震わせて、声を生み出しているので、声はクリードとはやや違っていたりする。

 

「カメが体当たりしてくるぞ!避けられるか!?」

 

「む、無理だ!お前が戦い安いように足場を固定した!」

 

「わかった、なんとかする...!」

 

 

 

 

全長150m程のカメが、音速以上のスピードでソニックブームを出しながら突進してくる。防御障壁をかければ、こちらが吹き飛ぶのは目に見えている。いくら錨が頑丈だろうが、持っていかれるだろう。ならば、力を逃がすしかない。

 

「...........!!」

 

もう少しで船に当たろうとした時、急に甲に下からの大きな衝撃を食らった。それにより巨体は浮き、猛スピードで突進していたことにより、カメは斜め上に打ち出された。

 

風とは、空気の循環であり、空気そのものである。つまり、風魔法とは空気を操る魔法である。風属性が気体であり、水属性が液体であり、土属性が個体の制御である。そして、火属性は物体自体の運動の強さやその向きの調節だ。

 

そして、先ほどの下からの"爆発"は、水を気体に変えた水蒸気爆発である。何100倍にも体積が膨れたことにより起こる爆発は、カメの巨体を浮かす。本来は、膨大な熱量を持った物が水中に入った時に起こるものだが、彼は熱を使わずそれを起こして見せた。簡単そうに見えるが、魔力はかなり消耗し、おまけに、想像できなければできない。彼は昔、お湯を沸かしていた時に見た、水(液体)が水蒸気(気体)になる現象が、彼の魔法の幅を広げたのだろう。少なくとも彼には、液体が気体になることはわかっている。しかも、それが温度の変化によるものだと言うこともだ。

 

この科学の代わりに魔法が発達した世界では、彼が第一発見者なのかもしれない。普段の何気ない事からでも、魔法の発展にへと繋がる事は沢山あるのだ。

 

「........!?」

 

鳴き声一つ出さずに、カメが船の上を通過する。後からやってきた波は、壁に阻まれたようになにかにぶつかり、相殺される。

 

「次がくるな...」

 

クリードの発言通り、亀はまたこちらに向かってくる。今度は吹き飛ばされないために、なにか仕掛けると思ったが、魔物にそんな思考がある訳もなく、真っ直ぐに突っ込んでくる。

 

「このまま逸らし続けても、やがて魔力量がそこをつくだけか…。というか、先ほどのあれで結構持っていかれた。どんだけ重いんだよ…。仕方ない、まあ、カメは食料だし丁度いいか」

 

亀が船に近づくと、またもや空中に上げられる。だが、先ほどと違う点が一つ。クリードの上を通った亀は左右に真っ二つなって、海に沈んでいった。

 

これには、船内にいた人たちが、先ほど以上の驚いていた。寝ていた筈の人たちも、船の不自然な揺れに起きて見に来ている。今寝ているのは、ハジメら3人だけだろう。

 

ウォーターカッターと言う物がある。と言っても、それを使ってこの芸当をしろと言われれば、無理な話だ。ウォーターカッターは確かにダイヤモンドを砕けるが、それは別に水が凄いのではない。水はあくまでも、熱の発生を防ぐのと、水の中に含まれる石の破片が飛び散るのを防ぐためである。液体や柔らかい物体でも、気体でも、物にぶつかり変形するまでには時間がかかる。その変形するまでの時間を利用し、変形する前に相手を破壊するだけのスピードを持たせれば、なんでもダイヤモンドを砕ける。例えば、柔らかい尖った山のような形をしたグミがある。それにスイカを載せると、当然グミは潰れる。叩きつけても、グミは潰れ、スイカは無傷だろう。だが、スイカを思いっきり叩きつける、グミが変形するよりも早く。するとどうだろうか、確かにグミは潰れたが、スイカには穴が一つ空くだろう。

 

家庭でやるなら、粘土などもオススメだ。

 

彼がやったのは、単純で、自分の上に数mmの幅を上がり続ける風を送っただけだ。しかし、そのスピードが尋常ではない。音速の100倍程の早さ、光速の8分の1程の速さで、空気中にある様々な物質を送り込む。幅数mmしかないが、それに切れないものは、あるのだろうか。そして、そこを通過したカメは、言うまでもない。

 

「さしずめ、風神の剣(エアカッター)だろうか?と言っても、僕には名付けのセンスがないので、どうかは知らないが。て言うか、あれは周りが僕のセンスを理解できないだけだろう」

 

彼の魔力は、もう殆ど残っていない。

 

クリードは自室に帰ると共に、見に来ていた人達にカメが浮いている海面を指して言った。

 

「あれはお前らにあげよう。好きにしろ」

 

 

こうして、風神と怪物の戦いは幕を下ろした。

 




風神つっよ。

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