龍の乗り心地   作:パリの民

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文字数少なくてすみません。


一(はじめ)の見た目は美少女。

 

 

「断る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉は、やけに部屋に響いた。

 

「理由は?」

 

「自分の予想が正しければ、その方法は....」

 

「あの、奴隷解放して終わりじゃないですよね?」

 

一の言葉を遮ってまで桜が聞く。

 

「まあ、桜。この人に限ってそのような事はないと思います」

 

「え?」

 

「今から説明してくれるでしょう」

 

「あぁ、そのつもりは無い」

 

一が足を組みかえて、ソファーに座り直す。その右にエイル、そしてソファーの近くに立っているのが桜だ。

 

「解放してからが一番問題だ。手っ取り早く反対派の連中を消しますか?」

 

一が皆木に問いかける。

 

「Noだ、この国の法律で許されているんだ。そんなことしてたらキリがないし、恐怖政治になってしまう」

 

「では、演説などをして、民衆を掻き立てる」

 

「Noだ、成功する可能性が低いし、理解してくれない。法律とは常識であり、常識を覆すのはとても難しいことだ。例えその時ついてきたとしても、後から裏切られる運命は目に見えてる」

 

「では、法律を変えるのはどうでしょう?」

 

「Noだ、今の法律を決めた帝王が聞いてくれないだろう。力ずくというのもありだが、それでは恐怖政治、独裁政治と同じだ。いずれ崩れる」

 

「その王や、民を説得する」

 

「Noだ意見の違いならばそれでどうにかなるかもしれないが、思想、思考の違いはいくら言った所では理解して貰えないし、分かり合えない」

 

「では、思想を変える」

 

「法律改変と同じ結果になるのが目に見えてる。当然、Noだ」

 

そして一はわかっていたように言った。

 

「ならもう方法は一つしかないですね」

 

「「奴隷を集めて新たに国を作る」」

 

2人の声が重なる。

 

「わかってるなら、なぜ断る?どこに不満があるんだね?」

 

「だって、国を作った後雇うということは、国の護衛を一時的にやるとかですよね?」

 

「そうなるな。できたばかりの国にそれ程の武力があるわけがないし、ある程度手に入るまで協力してもらう」

 

「それって数日では無く、下手したら数年ですよね?」

 

「そうなるな、で?」

 

「昔なら承諾しましたが」

 

一はもう一度足を組み直し、言った。

 

「自分今学生やってるんですよ?」

 

「あ、忘れてたよ」

 

皆木はふふふと笑い、そして少し間を置いてから言った。

 

「じゃあ、それが終わるまで作戦は保留だ。元々まだ色々準備が必要なのでな」

 

そう言って、彼は金貨が大量に入った袋を出す。

 

「1万枚だ。とりあえずこれで君を学校行っている間雇う」

 

「その間は無理なんですが?」

 

「万が一我々が何かやった時、それに干渉しないための金だ。それに予約金も入ってる。我々が君を雇うまでの間、ほかの人に雇われて我々を攻撃されたら元も子もないからな」

 

「ようは、裏切るなと言う事ですね」

 

「そういうことになるな」

 

「では、絶対に裏切らないようにしましょう。ただし、エイルさんに命令された場合は別です。不干渉と行きましょう。国づくりの手伝いは、お金が手に入るならばやりましょう。ただし、エイルさんが反対すれば自分はそれに従うつもりです」

 

「我は反対しないぞ?」

 

「では、決まりだな。上に戻る時はメイドさんに言うといい。魔法陣を使って送らせよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆木の所で一日寝て、彼らはダンジョンから出た。見つからないように、転移先はダンジョンの入口から少し離れた所にある森の中だ。

 

《素材を換金しに行く》

 

ゆなはかなり疲れているようで、書くのも面倒になって来たのか、段々片言になってきていた。疲れが見えるのは、桜とリリィとゆなだけだ。彼女らの身体能力からすれば、当たり前だろう。一とエイルとテレサがおかしいだけである。

 

ゆなはなんとか魔力を無座使いして保っているが、魔力も少ない2人には無理な話だ。そこでエイルが桜かリリィのどちらかをおんぶして変えろうとしたところ、一が自分がやりますと言って、2人とも今は白夜にしがみついている。リリィをおんぶし、桜をお姫様抱っこしながら、ダンジョン内を数十km歩いた。

 

エイルがいなければ、彼女らは置き去りにされただろう。

 

 

 

「いやー、まさかあのナルシがこんなに凄かったとはね!あいつがいた層、私全然ダメだったよ!多分、あそこで放置されたら10分で死ぬよ!」

 

「風神は対人ではそこまで強くないですが、対魔物ならば最強ですからね」

 

「まあ、それもハジメさんを抜いたらですがね!鎌鼬ですから!」

 

「元気なら、降りますか?」

 

ちなみに桜はぐっすり寝ている。

 

「いえ、結構です!」

 

《ただいま戻りました》

 

「どうする?このまま変えるか?もう夕方だぞ?」

 

この授業は終わった者から帰っていい事になっている。

 

《じゃあ、ここで解散としましょうか》

 

 

 

 

 

 

 

次の日からは、普通の授業に戻った。今回のダンジョン授業での死者は、二桁に登り、皆その覚悟で来ているので授業に支障を出すものは少ないが、それでも怖くなり、学園から去っていく者が数十人現れ、学園の生徒は百以上減ってしまった。だが、これこそがこの学園の本質。ありとあらゆる場所から集められた冒険家達を選りすぐり、彼らを数年通して自分らに、帝国に都合の良いように教育するために。

 

「魔法とはかつて、何にでも変換可能な小さな粒だったという説がありましたが、それでは光属性と闇属性、そして無属性の説明がつかないので今は無くなり、未だに魔法がなんなのかは分かっていません。ですから…」

 

女の教師が黒板に文字を書きながら授業を進める。書きずらそうなノートで、ノートを取っている人もいれば、お金がないせいか頑張って内容を頭に詰め込もうとする人もいる。そして、寝ている人もいる。一はボーッとしているように見えるが、全て頭に詰め込もうとしている。そして、前の席にいた桜が一に話しかける。ちなみに、先生は寝ていようとも生徒を咎めたりしない。進学に落ちて退学になるのは、自己責任なのだから。

 

「一さん、あなたはどう思いますか?この魔法理論」

 

一に桜が話しかける。

 

「簡単な事です。こう考えれば楽だ。闇属性魔法も光属性魔法も無属性魔法も、"魔法では無い"のだと思います。光属性は祝福、闇属性は呪いの類い、そして、無属性はスキルとしましょう。祝福は人を癒し、悪を苦しめる。呪いは何もかも一切合切苦しめる。そして、無属性は理不尽だ。魔力と言う代償を必要としないのだ」

 

「へー、それなら辻褄が合いますね」

 

「まあ、自分独自の考えですが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある日

 

帝都にある城、そこには王がいる。このアスフェル帝国を収める者だ。会見の間で、王女や姫を含めた重要人物がいる所へ、衛兵がノックもせずに駆け込む。この王は、鍛え抜かれた身体が衣装の上からでもわかるほど強い人だ。

 

「すみません!王!アスフェル王!」

 

「無礼者!ノックぐらいしろ!」

 

大臣が怒鳴りつける。そして、豪華な椅子に座っている人物こそが、グルッツ・ヴァン・アスフェル、この国の王である。

 

「で、ですが至急お聞きになって欲しい事が...」

 

「なんだ」

 

「魔王級の魔物が、現れましたが....」

 

「それならもう知っている」

 

「それが!北に魔王級の魔物を倒しに行った勇者ユウキを含める勇者一行が、1人を残して全滅しました!どうやら知らせる為だけに、転移を使える魔法使いだけを逃がしたようです!」

 

「な、なんだと!?」

 

部屋の中の音が消えた。

 

「ま、まずいです王!これで勇者は1人もいません!ゆなは戦うにしてはまだ歳が小さすぎます。後頼りになるのは…冒険者のみです」

 

「しかし、冒険者に強制依頼はできませんよ」

 

「それだけが問題だな...」

 

貴族の話し合いに王も参加する。

 

「だが、我々だけではどうにもならん。本人を呼ぶとしよう。恐らく1人以外は応じるだろう。そして、その1人も最悪の場合、切り札を取っておいてある。ギース」

 

「はい、いかがなさいましたか?王」

 

「ほざけ、聞いていたのだろう。で、あやつを学園に送り込んだ成果は?」

 

「まだ1月もたっていませんので」

 

「やはりダメか」

 

「ただ、彼の使い方をよく知っていそうな人なら知っています」

 

「ほう、ではそいつが最終手段だ」

 

「了解しました」

 

「そして、今日Sランク冒険者を含めた緊急会議を開始する」

 

「金で雇う事になるが…出来るだけ少なく収めなくてはならない」

 

Sランク冒険者を雇う料金は、Aランクを雇った場合の5倍である。勿論、本人が認めればタダでも雇う事が出来るのだが。この価格は当然の事なのだ。Sランク冒険者1人で、Aランクの5人分どころか、50人分もの力を持っている。Aランクを5人雇う料金で、50人Aランク雇えるような物だ。むしろ格安である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼らはまだ来ないのか!?」

 

そう声を荒らげるのは、オールスと言う男だ。彼は軍師はできず、政治もできず、財政にも疎い。何もできずの無能として知られている。まさに家柄だけで今の役職にいるような人だ。

 

「落ち着け、オールス。まだ約束の時間まで時間があるぞ」

 

「ち、違うのだよ。私は彼が遅刻しないか心配なんだ」

 

彼に声をかけたのは、隣に座るベアードと言う者だ。広い部屋の真ん中に10m以上はある長い楕円形のテーブルのお誕生日席に座っているのが、王で、その右から順にベアード、オールスだ。広いテーブルの割には席が少ないので、席と席の間はかなり空いている。

 

貴族は他にもいるが、ここに来ているのはこの二人だけである。オールスは貴族にも、兵士にも人気がない。いや、彼をよく知る人にはかなり人望があるが、彼を知らない兵士や貴族になりたての者から見れば、家柄だけで出世した男は目障りだろう。何故来ているのが2人だけかと言うと、貴族たちが家に帰り、逃亡の準備を始めているのだ。それほどの緊急事態なのである。魔力量300万の勇者を殺った化物が現れたのだ。逃げるのも当然である。

 

そして、数少ないが、ベアードを信頼していない貴族もいる。別に彼らなら倒してくれると考えていない。ベアードがいれば、自分らがいる意味はないような物なのだから。ベアードはかなり優秀な軍師であり、彼自身もかなりの実力者だ。実力でいえば、Bランクあたりだろう。貴族は自分たちの兵を持っているが、彼はその能力を王に買われ、帝国の軍の隊長以上の権限を与えられている。要は帝国軍の最高司令官だ。

 

「(何が心配だよ。お前が心配してるのは、自分の地位とプライドだろ、無能が)」

 

ドアにいる衛兵の1人が小さく言った。

 

「聞こえたぞ!貴様!」

 

「ひぃぃ!」

 

ベアードが席から立って、衛兵に詰め寄る。地獄耳だ。とんだ地獄耳だ。

 

「まぁ、まぁ、ベアード君。本当の事なんだ。私が無能だと言うのは私が一番知っている」

 

「だが!」

 

「いいんだよ…」

 

「だが俺は満足しない!お前!名前は?」

 

「は、はい!アルフレッドです!」

 

「これが終わったらオールスの衛兵になれ、そこでこの男について学んでこい!」

 

「え...」

 

「返事は?」

 

「はい!」

 

こうして、一がまだ来てない間に、とある衛兵の未来が決まってしまった。

 

その数秒後、席についたベアードが静かに言った。

 

「時間だ」

 

その瞬間、当たりに光の粒子が溢れ、入口近くに集まり、4人の人形を形成する。

 

「ん?遅れたかね?」

 

「いえ、時間通りのはずです」

 

「ハジメが時間間違えるわけがないよ!あなたとは違ってね、ナルシ」

 

「ほっほっほ、その通りじゃな」

 

「なんだと、デカぱい!」

 

「何んだと〜!お前も本当はこのおっぱいを好きにしたいんだろ?ほれほれ」

 

「王の前です」

 

ベアードの声で静かになった。最も、彼女と彼はまだ睨み合っているが。

 

その少し後、4人が席についたと同時に、ギースとリリィが入ってくる。

 

「げ、キチ〇イじゃ、キ〇ガイが何故ここに」

 

「私が呼んだんだ。鎌鼬の扱いが一番うまいのがこいつだと聞いてな」

 

「なんですか?それ」

 

「ハジメさん!私エイルさんに鎌鼬の面倒見るように言われました!」

 

「自分は子供ですか?あ、子供でした」

 

「エイルより伝言です。「今回は危険かもしれないと言って連れ出さなかったのはお前だ。だが、我がいないとお前がまた何かやらかすかもしれない。リリィならば信頼できるだろう。我の勘だ。しばらくはリリィの言う事を出来るだけ聞くんだぞ」と言ってました。証拠として彼女の指輪を持っていけと言ってました」

 

「確かにこれは自分があげたもので間違え無いです。では、今からあなたの下につきましょう"出来る限り"ね」

 

「取り敢えず、ハジメ。王の前ですよ」

 

「了解」

 

彼は席に戻り、全員が席につくのを待ってから王は喋った。ちなみに、ギースは用無しなので帰らせた。

 

「では、よく集まってくれた。風神、雷神、賢者、そして、鎌鼬」

 

「ハジメさん、王の前なので、流石に仮面はダメです」

 

「むー、やむを得ないですね」

 

一は静かに仮面を外す。実は、この場にいる人の中で一の素顔を見た者はまだいない。

 

誰もがゴクリとつばを飲む。そして、命令したリリィも同じくつばを飲む。彼女は適当に理由をつけて一の素顔が見たいだけである。ある意味計画的犯罪だろうか。

 

「これでいいですか?」

 

「「「え?」」」

 

「あ、あのー、ハジメさんって女の子だったんですか?でも確かに声は高いし、でも喋り方は」

 

「男ですが?」

 

「「「え!?」」」

 

仮面の中に隠れていたのは、誰が見ても美少女と答えるであろう顔だった。おまけに黒髪も長いので、女の子にしか見えない。

 

「私に相応しい顔の持ち主が、まさか男とは...いや、男でも行ける!」

 

変な趣味に目覚めた雷神だった。

 




今思いましたが、展開早くね:

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