龍の乗り心地   作:パリの民

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暇で暇で暇で仕方が無い。


一(はじめ)は虫嫌い。

「今日からいつもの授業とは違って、学年合同授業だ。何人でもいいから、グループを作って置くように。そして、そのグループで今日はダンジョンに入っての実戦訓練だ。なお、死亡した場合は自己責任だ。だから、強い奴と組むと死ぬ確率が下がるぞ。ちなみに、お互いに許可しなければ組むことはできない。ダンジョンに潜る時間は、3日間だ。捜索隊もでないし、助けも来ない。一番大切なのは生きて帰る事だ。ダンジョンの魔物については、授業で習った通りだ。なお、2日より早くダンジョンから出ることは許されない。そして、これが一番重要だが、ダンジョン内での犯罪は多発している。だが、安心しろ。例え捕まり犯されても、仇は闇ギルドの連中が取ってくれる」

 

対化物は、表ギルドで、

対人間は、闇ギルドの仕事だ。

 

「それはさておき!今回の実戦は、持って帰った魔石の量で成績が決まる。全力でやるように!」

 

ダンジョンの付近で、説明を終え、みんながグループを作り始めた。

 

「ハジメさん!同じグループに......いない!?」

 

「一様なら、エイル様のところに行ったハズですよ。せっかく同じグループになれるチャンス、見逃すわけないですね」

 

「なぁ、これハジメについて行ったら、勝ちゲーじゃないのか?」

 

「いえ、それはないでしょう。一様ならば、かなり深くまで潜るので、かえって危険です」

 

「よし、俺もどっかと組んでくる」

 

「全く、弱い男ですね」

 

そう言うや否や、リリィは桜の腕を掴み、一がいるであろう方向に向かって走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カキカキ

《私思う。今こそ部活メンバーで集まる時だと》

 

幽霊部の部員、つまり幽霊部員は一、エイル、桜、リリィ、テレサ、ゆなの6人だ。学園の中でも顔が上位の女の子が集まる部活故に、入部希望者が後を絶たない。特に男子の。そこで、年に1度だけ男子部員交代のチャンスを設けた。

 

トーナメント方式の、個人戦。

 

それが行われるのは、実は僅か数週間後だったりする。

 

「そうだな。どうせハジメの事だ。我と一緒に入りたがろうとするだろう」

 

《あなたと一さんってどんな関係なんですか?》

 

「あいつは我の夫だ」

 

「!?」

 

ゆなは一瞬驚くが、昔見たブラックなんたらのアニメでも、ヒロインが好きな主人公の事を勝手に自分の夫だと言っていたのを思い出し、恐らく彼女もそんな感じだろうと思った。だが、2人が本当に夫婦だと後ほど知る事になるだろう。

 

《あ、噂をすればです》

 

人波を避け、一がマントのように黒のコートをなびかせて、やってくる。

 

「エイルさん、一緒に入りましょう。久しぶりの狩りです」

 

「まぁまぁ、焦るな。今回は部活メンバー全員で入るってうちの部長が言ってるぞ」

 

「なるほど、わかりました。待つのもなんだし、連れてきますね」

 

そう言うや否や、一は2人の前から消えた。

 

《魔力量が????.....また億越えか....》

 

ゆなはメモに書いてから、それを捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョンは、入口が大きな門があり、そこから階段が下に続いている。現在、最も深くまで潜った事があるのが、風神クリード率いるパーティが行った、21層である。そもそも、レベルアップがないこの世界に、ダンジョンに潜る理由はあるのだろうか?利点は沢山ある。まず、訓練より実戦の方が力がつくので、訓練目的で来る人もいる。更に、ダンジョンのモンスターの死体は、特定の物をドロップする。それもかなり有用だ。そして、ダンジョンではたまに宝箱が現れる。勿論トラップもあるが、本物があれば、中身は金銀財宝、たまに王宮で用意される物ほど、もしくはそれ以上に美味しい物が入ってる事もある。

 

「なんで当たり前のように未踏の地に来ているんですか?おかしいでしょ」

 

桜からその言葉が出たのも、無理はない。彼らが今いるのは、23階層である。

 

《さ、流石にここの魔物は勝てるのは1匹もいなさそうです》

 

「足でまといは後ろにいましょう」

 

一とエイルの後ろにいるのは、テレサ、ゆな、リリィ、桜である。このメンツでは、テレサもゆなも足でまといに入るのだ。

 

バキンと言う音と共に、一の使っていた鎌が壊れた。折れたと言った方がいいだろう。

 

「おおお、鎌が折れたと言うことは、まさか!あの刀が!?」

 

「何を言っておる。ハジメは武器が壊れたら拳で戦うのだ。というより、そっちの方が、得意だ」

 

「いえいえ、ここのボスならだ、まだ鎌で行ける範囲にいます」

 

そう言って、服の袖から鎌が出てくる。6つ出てきた。一はそれを片手で五つ持ち、もう片方で一つ持っている。そして、壊れる度に持ち替えて、壊れたのは全て収納されていく。

 

ガキィィン!ガキィィン!キン!ガキィィン!

 

炎はエイルが打ち消し、打撃、斬撃、噛みつき、尻尾による追撃まで全て躱す。ちなみに、この階層のボスは、胴体が長い蜥蜴が、二本足で立ったような感じだ。まあ、蜥蜴より圧倒的に尻尾は長いし、およそ胴体の3倍はあるだろう。身長も4m近くあり、尻尾は10mはあるだろう。

 

そして、攻撃を躱して一は蜥蜴の顎を全力で何度も何度も鎌を使い叩く。本来鎌は切るものだが、あいにく切れないので、ひたすら叩いくことしかできない。いくら装甲が厚くても、衝撃は幾分か伝わるのだ。あわよくば、脳震盪を引き起こせるかもしれない。

 

そして、何度も叩いてる内に、蜥蜴の意識が朦朧として来たのだろう。そして、何度も向かってくる一に僅かに恐怖を抱き、それを紛らわすため、逃げるために大きく吠える。

 

「GYAAAAAA!!!!」

 

「生憎、その威嚇が愚行なんですよね」

 

そう言って一は空いた口に鎌を2つ突っ込み、両側に大きく開き、蜥蜴は口からお腹まで引き裂かれた。いくら表面を硬い皮膚が覆っていても、口の中はどうにもできない。だから、そこを突いての作戦だった。最も、作戦なんてはなから無いが。

 

そして魔物が倒れた。

 

「あぁー、もう一度刀見たかったな〜?今まで勇者の剣を遠目で見たことがありますが、それよりも圧倒的に綺麗でした!」

 

「もっと褒めるがよい」

 

えっへんと桜が我がもの顔でドヤ顔する。

 

「次の行きますよー」

 

「いやー、やっぱハジメは強いなー!」

 

どうやらこのメンツには、一の強さに恐れを抱く者はいないようだ。ただ1人を除いて。

 

《危険......ですね》

 

またも書いて、丸めて捨てた。ちなみに、捨てているように見えるが、全て収納して、後ほど燃やされる。

 

 

 

 

 

25階層

 

「もうこれ外と同じじゃないですか!」

 

「ハジメさんがいなければ、知ることのない世界ですねー」

 

《3日もうすぎたんじゃない?》

 

「いえいえ、部長。まだ過ぎてないですよ」

 

《ん?もう3回は寝てるぞ》

 

「無属性魔法、無限収納の中では時間が流れません。故にそこで寝た部長らは、そう感じているだけです」

 

「そう言えばハジメ、お主寝なくて良いのか?丸1日どころか、丸二日寝てないぞ」

 

「そうですね…ではこうしましょう。引き返しますか」

 

「えー!私もっとハジメさんの戦ってる所見たかったですよ!」

 

「五月蝿い小娘、あんたの意見は聞いてないです。どうします?エイル、部長」

 

《時間が時間ですし、帰りましょう》

 

「ここまで来たんだ、ボスを倒して行ったらどうだ?」

 

「そうですね」

 

外とあまり変わらない明るさで、外だと思わせる広さを有する25階層、その真ん中、森を抜けた先に、巨大な城壁があった。高さは30m以上、全て様々な形をした石で積み上げられている。日本にあるお城のような感じだろうか。

 

その近くまで、一たちは来ていた。

 

知性を持っている者がいるかもしれない。

 

「村と言うより、小さな帝都みたいな感じですね。真ん中にお城ありますし」

 

「そうだね、自分が見てきます。何があるかわからないですので」

 

「我も行こうか?」

 

「皆さんはこちらで待っていてください」

 

そして、一が1人で森から抜け、城に近づいていく。城の門に入ろうとすると声が聞こえた。

 

『それ以上入ると、侵入者として排除します。何者ですか?』

 

「森から城が見えたので、来ました。敵対するつもりはありません。そちらが敵対しない限り」

 

『......やってみますか?』

 

両者一気即発である。そして、その空気は簡単に壊される。

 

『待ちたまえ、メイド!久しい人間だ』

 

『マスター、威厳か消し飛んでしまうので引っ込んでいてくれます?』

 

『気にするな』

 

「じゃあ、様子見したので帰りますね」

 

『まあ、待て。お茶でも飲んで行くといい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《もう時間無いんで早く帰りたいんですが?》

 

「急ぎの用事でもあるのか?」

 

そう言ってるのは、黒のTシャツにグレーのズボンを着た男だ。ちなみに、転生者らしい。顔は中の上程度だろうか。それなりのイケメンだ。歳は20歳後半だろう。名前は不動 皆木(ふどう みなき)。

彼が転生者と言うこともあったので、一は自分もそうだと伝えた。別に隠す必要も無い。

 

《授業でここまで来ているので、後1日以内で帰らなきてはいけません》

 

「ほう、なるほどな、まあ、帰りは私が送っていくから、タイムラグの無いようにな。だから、ギリギリまでここにいるといい。私はそこの転生者に用があるのだよ」

 

「いいですけど、何か話すならエイルさんも一緒に聞いて貰います」

 

「む、別に我は聞かなくとも...」

 

「その方がいいと思いますよ。自分はエイルさんの命で動くので、頼み事ならエイルにした方がいいです」

 

「なぜ頼み事だとわかった?」

 

皆木の声のトーンが先程の軽いものから一変する。

 

「勘です」

 

「それを信じているのか?お前は」

 

「どこかの誰かに教えられた情報よりも、自分の勘を信じますね」

 

まあいいと言って、皆木はエイルとハジメを連れて別室に向かう。ちなみに桜もついて行ったが、転生者だと言われて承諾された。

 

「メイドさん、お茶でも出してあげて」

 

「了解しましたマスター」

 

 

 

 

 

 

「まずは、俺の目的を言おうか。俺の最終目標は、奴隷制度の廃止だ」

 

「.....」

 

「私がここに来たとき、あのメイドさんも一緒にいた。誰かに召喚された訳でもなく、気づいたらメイドと一緒に草原にいた。そして、この国に来た時、奴隷がいることで興奮したよ。これで俺も童貞卒業出来るとな。だが、この国の奴隷に対する差別は酷かった」

 

桜が昔受けていた扱いは、まだマシな方だ。酷い所では、本当に物のように扱われている。性処理道具として扱われたり、人体実験、魔法の被検体、餌、娯楽などなど。様々な扱いを受けていた。まあ、今はそれはややマシになったのだが。原因は主に、アポカリプス学園だ。差別なく実力者を受け入れる制度は、奴隷達にとっては一筋の光で、民には考えを改める者も現れた。だが、それは僅かな数である。今でも人間とは思えない扱いを受けている者も数多くいる。その結果が、勇者ユウキによる奴隷商襲撃事件だ。だが、彼がやったのは僅かな数で、しかも彼は持ち前の優しさで奴隷商たちを1人も殺していない。結果、また奴隷商は増える。さらに、そのことを王に文句が来て、数年収容となった。ちなみに、今も収容中で、魔王級以上の魔物が出現した時以外出れなくなっている。

 

「転生者なら、ゆなも転生者ですよ?」

 

「それは私も知ってる。だがあいつは、勇者だろ?勇者召喚されたんだろ?つまり神に会っている。そこが面倒なのだ」

 

「あー、なるほど、つまりそういうことですか。ですがそれは桜も同じじゃないんですか?」

 

「そいつはお前の奴隷なんだろう?紋章があるぞ?」

 

奴隷は誰しも紋章がある。見えずらい首の後ろにあるのだが、どうやら彼には見えたらしい。

 

「え?状況が把握できないんですが…」

 

「我もイマイチだ」

 

「つまりですね。自分のように直接ここに来た者と、桜のように何者かによる仲介を得てこちらに来た者を区別しているんですよ。仲介がどこの誰か知らない人は信用できないと思っているのでしょう。ですがそれだと、自分も信用できないと思うんですが?」

 

「君も言っているだろ、自分の勘を信じると。まあ、私の場合、別の所から信頼を得ているが」

 

「と言うと?」

 

「それだよ」

 

そう言って皆木は一の胸元にあるアクセサリーを指さす。それは小さな真っ黒な鎌だった。そうこれこそが鎌鼬の武器だ。他にもロングコートの下に数十とある。

 

「「鎌鼬」と言う冒険者を信用していると?」

 

「あぁ、そうだ。他は知らんが、少なくとこお前はお金さえ出せば、裏切らんのだろう?」

 

「エイルさんに危害が無ければ」

 

「そこでだ、君を雇いたい」

 

「もう一つ、あなたはこんな所に城を建てている。それ程の実力があるのに、なぜ自分を雇うんですか?」

 

「私に実力なんてない。全てメイドさんのお陰だよ。本当、恩だらけだ」

 

「で、そのメイドさんにやらせないで、自分を雇った理由は?」

 

「何を言っている。メイドさんよりも強いからだろう。私たちが君の、君達の実力に気づいていないとでも?」

 

「そんな量の情報、一体どこから?」

 

「なに、そう言うスキルだと思ってくれ、メイドさんの。説明するのも面倒だ。1度訪れた場所に監視カメラのように自分の視線と共有できるようになるのだ。では、改めて聞こう。私と協力するか?一緒に戦い、正し、進み、より良い国を作るために私と来るか?」

 

簡単にいえば、私に雇われろ...だ。

 

一は特に考えもせず、さも当たり前のように言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「断る」

 

 

 




作者「やあ、白夜!私と戦争しよう!」

白夜「戦争ってあの?」

作者「多分違うと思うぞ、ほら、あの小学校でよくやる手を叩き合うやつ」

一「ああ、それなら自分も知ってます」

白夜「ああ、あのジャンケンみたいなのして、勝ったら相手の手を叩くやつか」

作者「そうそう、それそれ」

白夜「いいぜ、やろう」

2人は握手した。

数秒後.......

作者「ギャゃゃゃ!!手が折れたァァァ!!付け根から、ポッキリと!」

一「一般人が申し込んでいい相手じゃないと思うんですが…」

白夜「じゃあ、一やろうぜ」

一「上等です。殺る気で行きます」

そして白夜がジャンケンで勝ち、一の手を叩く。

ぽふっ、そんな音が響きそうなくらい軽かった。

作者「ちょっと!その差はなんですか!?」

白夜「仕方ないだろ、見た目が女の子だもん」

そして、次は一が勝った。

バンッ....プシャー....

一と白夜の手が、二人とも千切れて、宙を舞っていた。そしてゴトという音を立て、地に落ちた。

一「まあ、これぐらいは当然ですね」

白夜「流石にビックリしたな」

作者「なんで2人とももう治ってるんですか!?」

一「そんなことは些細な事です」

白夜「そうそう、大事なのはこの戦争でいかに生き残るかだ」


その後、当たりを消すほどの戦争が始まった。

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