突如として天高くから降り立ち、そのまま銀時を襲撃してきた怪物を撃退してしまう桂小太郎とエリザベスのコンビ。
「か……桂さん!?」
まさかの穏健派攘夷志士のリーダー格である桂小太郎の登場に、新八は驚愕の表情を浮かべた。
銀時たちの姿に気付いた桂は驚き気味に声を出す。
「おォ! 新八くんにリーダーに銀時ではないか!! 何故ここに!?」
「いや、それこっちセリフ!!」
とツッコミを入れたのは新八。
どうやら桂の眼中には今の今まで、万事屋や真選組の姿は映っていなかったようだ。
すると銀時たちを見ていた桂は「ん~」と唸り声を上げて腕を組んだかと思えば、ポンと掌を拳で叩く。
「そうか分かったぞ! ははぁ~ん? さては俺たちの仲間になりたくてこっそり後を付けていたのであろう? んん?」
「なに勝手に自己完結した上で外れな納得してんのこの人!? つうか顔も言い方もウザッ!」
新八は露骨に顔をしかめ、
「…………おい、ヅラ」
と銀時が言う。だが、桂はまったく意に返さずうんうん頷く。
「よしよし分かった。銀時もリーダーも新八君も俺たち攘夷志士の同士になりたいことはよく伝わった」
「こっちは何も言ってないんですが!?」
言葉を無視する攘夷バカにツッコム新八。
「……おい、ヅラ」
とまた銀時は言うが、
「ならば入会特典してこの『攘夷バッジ』を進呈しよう!!」
無視する桂はダサいバッジを懐から取り出す。
「入会!? あんたの攘夷グループって会員制なの!?」
『攘』という文字が描かれた低センスのバッジを見せびらかす桂に、新八はまたツッコム。
「無論プレゼントギフトはこれだけではない! この攘夷ハッピもプレゼントだ!!」
桂が次に取り出した物は背に『攘夷志士』と刺繍がしてあるハッピ。それを見た新八はキレ気味に怒鳴る。
「いやいらねェよそんなゴミ!」
「なにィ!? 俺が攘夷志士増員の為に作ったグッズがゴミだと……!!」
ガチで驚愕の表情を浮かべる桂に対し、新八はギョッとした。
「あんたそんなしょぼいアイテムで攘夷志士増えると本気で思ってたの!?」
「おいヅラァ!!」
と怒鳴ったのは銀時。
「ヅラじゃない桂だァァァァァッ!!」
そして桂は旧友の頬に、ドカァ! と拳浴びせた。
「ぶべェ!?」
銀時は悲鳴を上げながらズザザザァー!! と地面を滑る。
倒れる銀時に対し、桂はビシッと指を突き付けた。
「さっきからなんだ銀時貴様! 人の話を邪魔しおって!! ちゃんと話が終わるまで貴様は待てぬのか!? ほら、アレだぞ! 会話によこやり……なんたら的な…………アレ!!」
何かの言葉をど忘れしたようで、桂はしばし腕を組んで黙考を始める。やがて思い出したのか、クワっと目を見開いた。
「『人の話を邪魔しちゃダメ』とお母さんに習わなかったのかァァァ!!」
「さんざん考えて結局出てきた言葉それかィィィィィっ!!」
銀時渾身のジャンプキックが、桂の顔面にドカァー!! とクリーンヒット。
「グハァーッ!!」
桂は勢いのあまり吹っ飛び、地面で背中をズザザザァー!! と滑った。
すかさず銀時は桂の胸倉を掴んでメンチ切る。
「つうかお前なんで異世界いんの? ここはテメェの住んでる江戸じゃねェんだよ。バカは時空の跳躍もできんのか? あん?」
「貴様こそ何を言ってるのだ銀時? 異世界だと? フッ……」
桂は小ばかにしたように鼻で笑う。
「バカバカしい。糖分の取り過ぎでついには脳までスイーツになってしまったか」
「脳味噌ババロアの奴は黙ってろ」
青筋立てる銀時。だが、桂の言葉を聞いて銀時はあることを察する。
「あァ~……なるほどな。どうやって来たか知らねェが、テメェはこの世界に来たばかりってか? なら無理もねェか」
「いや、俺が江戸を離れて〝ここ〟に滞在してからかれこれ一ヶ月以上は経ったな」
と予想外の答えを桂は口にした。
すると銀時は自分が最初にしていた勘違いを目の前の長髪がしているだろうと予想しだす。
「…………なら、ここが別の惑星とでも――」
「ここは地球なのだろう? そんなことも分からんのか貴様?」
「………………」
桂の答えに絶句した銀時は長髪の頭をガシっと鷲掴み、
「じゃーなんでテメェは現状を理解できてねぇーんだよォ!」
顔面を地面に叩き付けた。長髪のバカは「ブバァッ!?」と悲鳴上げる。
地面とキスする桂に銀時はビシッと指をさす。
「バカでもここに数日もいりゃあ、俺たちの世界と違うってちったァ考えるだろうが!! 帰る方法探そうと思って地図とか見るだろうが!! んで、色々調べるだろうが!! そんで気が付くだろうが!! お前アレか! バカ以上なのか! バカ以上のバカなのか!」
最後には自分を散々こきおろす銀時に対して桂は顔を上げて言う。
「バカは貴様だ銀時。俺とてこの町並みを見て何も感じなかったワケではない。とっくに気付いておったわ」
「なら……」
「ここが……」
桂は一旦言葉を溜め、クワッと目を見開く。
「『未来』だと言う事にな!!」
「………………はッ?」
まさかの答えに思わず銀時は間の抜けた声を漏らす。
桂は銀時の様子になど気にも留めずにしみじみと語り出す。
「いやはや。まさか『あの装置』で一瞬にして俺たちの時代から何百年も先の未来に飛ばされていたとは……さすがの俺も驚かずにはいられなかった」
「ちがッ……あー……うん」
この
「まァ、お前がそれで納得してんのなら、もう別にいいや。なんか訂正すんのもめんどくせェし」
これ以上何か言ってもこの
「っで?」
「……っで?」
不思議そうに銀時の言葉を反復する桂に、銀時は質問を投げかけた。
「いや、最初に聞いたけど、なんでお前こんな所にいんの? どうやって
新八は「あッ」と銀時の言葉に反応する。
「さっき桂さん装置とか言ってましたけど、もしかして瞬間移動装置でここまで来たんですか!?」
「ん? ああ、実はな――」
と言って桂は腕を組み、ある出来事を話し始めた。
「最近、エリザベスの姿を見なくなった俺は部下達に命を出し、その消息を追った。すると俺はある時、エリザベスが幕府の者共に連れ去られた挙句、幕府直属の研究者共の実験動物にされそうになっているという情報を得た」
「まさか、エリザベスは――!」
話の流れから瞬間移動装置の実験動物にされそうになったのでは、と新八は予想したようだ。
「エリザベス救出の為、単身研究所に乗り込んだ俺は見た――」
桂が回想に入る。
*
物陰から研究室を覗く桂は驚愕の表情を浮かべた。
「まさかここまでの実験結果が出るとは……」
「ああ。この――新型筋肉増強剤の効力は素晴らしい」
と、マッチョになったエリザベスを見て感嘆する研究員たち。
*
桂は腕を組んで目を瞑り、顔を上げる。
「――そこにはサイヤ人もビックリの筋肉ムキムキのエリザベスが立っていた……」
「いやなにそれェェェェェェェッ!?」
新八は瞬間移動にまったく関係ない話が出てきたので思わず叫ぶ。
桂は涙を流し、拳を握りしめる。
「あのような醜い姿のエリザベスを見た俺は驚愕のあまり言葉もでなかった……」
「新型筋肉増強剤ってなに!? 瞬間移動装置まったく出てきてないんですけど!?」
「まさか、エリーがそんな目に……辛かったアルなヅラァ……」
話を聞いていた神楽は釣られて涙を流す。対して、新八は桂にツッコム。
「いや、悲しいのは分かりますけども! あんたが
「だが、エリザベスに対する実験はこれでは終わらなかった……」
桂は新八の言葉を無視してまた回想に入りだす。
「エリザベス救出の為、俺は機を伺った。そしてエリザベスは、新たな『装置』の実験台にされようとしていた……」
「そうか! その装置が瞬間移動――!」
瞬間移動装置! と声を出そうとする新八に構わず、回想が始まった。
*
物陰から装置を見た桂は驚愕する。
「この装置は凄いぞ!」
「ああ。この――『学習装置』の効力は素晴らしい」
すらすら問題を解くのは、頭になんか鉄の帽子を被ったエリザベス。
その姿にまたまた感嘆の声を漏らす研究員たち。
*
「そこには、赤ペン先生もビックリなくらいメキメキ学力を向上させているエリザベスの姿があった……」
目を瞑って複雑そうな表情で語る桂。
「だからなにそれェェェェェッ!?」
と新八は叫ぶ。
桂は悔しそうに拳を握りしめた。
「幕府の連中は、非情にも俺の大事なエリザベスをあのような醜い化物へと変えていった……!!」
「いや、お前のペット元々化物みたいなもんだろ……」
と銀時はさりげなく言う。
「連中はキュートなエリザベスをあのような見た目はサイヤ人、頭脳は名探偵と言う化物へと変貌させてしまったのだ……」
握り拳を震わせ、涙を流す桂は思い出す。
『オラ腹減っちまったぞぉ……。なんか飯食わせてくれ』
と、丸太のような腕でプラカードを持って話す改造エリザベスのことを。
「結局頭脳もサイヤ人じゃねェか!!」
と新八はツッコム。
桂は歯噛みし、握り拳を掲げた。
「俺の愛するエリザベスをあのような醜悪で下劣な化物に変えた幕府を俺はけっして許さん!!」
新八は半眼で桂を見る。
「いや、その愛するエリザベスをさっきからこき下ろしまっくてるあんたから、どこにも愛を感じないんですけど?」
「つうかさァ……」
と言葉を挟むのは銀時。
「さっきから筋肉増強剤とか学習装置とか、幕府は何考えてそんなアホみたいな研究してんだ?」
なんかよく分からん秘密裏の研究内容を聞いて銀時は呆れ気味に眉を寄せていた。
すると、銀時の後ろの方にいた沖田が横にいる近藤に顔を向ける。
「そう言えば近藤さん。とっつぁんが『うちの軟弱バカゴリラを改造ゴリラにできねェかなァ……』とか言ってましたぜ」
「え”え”ッ!?」
近藤の顔が真っ青になった。
「つうかさっきから瞬間移動装置の話が一向に出て来ねェじゃねェか」
ついに痺れを切らした銀時は桂に問い詰める。
「おめェのことだからどうせ無駄に長い前置きがまだ続くんだろ? もういいから、とっとと瞬間移動装置のとこまで話し持ってってくんない?」
「まったく辛抱のない奴だ……だが、良かろう。せっかちなお前の為にクライマックスの部分を語るとしよう」
呆れた様子を見せる桂は、コホン! と一息入れ、語りだす。
「――俺はエリザベス共々幕府の研究所を木っ端微塵にしてやった!!」
回想には『ふはははははっ!! 天☆誅!!』と爆発する施設をバックに走り去る桂の姿があった。
「いや飛ばし過ぎだろォォォォォォッ!!」
まさかの超展開に叫ぶ銀時は「一体なにがあったァ!?」とツッコム。
「かくして、俺と幕府直轄の研究所との戦いは幕を閉じたのであった……」
桂はうんうんとやり切った顔で頷く。
「いや、まったくこっちは理解できないんだけど!? 一週分読まずに見たジャンプマンガよりワケわかんねェぞおい!!」
銀時がツッコミを入れれば、新八も続く。
「つうかなんであんた研究所ごと愛するエリザベス爆殺してんですか!? じゃああんたの後ろにいるエリザベス誰よ!?」
エリザベスをビシッと指さす新八の指摘。対して、桂はエリザベスの肩に手を置いて答える。
「潜入している途中で気付いたのだが、捕まっていたのはエリザベスのそっくりさんだったようでな、なんかめんどくさくなったから爆弾で奴らの研究を潰す計画に変更した。ちなみにエリザベスは俺に黙って宇宙旅行に行っていたらしくてな、正直マジ羨ましい。俺も連れて行ってくれても良かったと思うのだが、銀時、お前もそう思わんか?」
「知るかァァァァァッ!! それ結局今の話丸々無駄だっただけじゃねぇかァァァァァッ!!」
顔中に青筋を立てて怒った銀時は、桂の顔面に全力キック。
「ブバァッ!?」
ズザザザザッ!! と桂は勢いに乗って地面を滑る。そして倒れる長髪に銀時は怒りの眼光をぶつける。
「結局テメェはどうやって
「ああ、それはだな……」
桂は顔に付いた汚れを拭いながらあっさり喋る。
「――ずっと瞬間移動装置の中でスタンバってました」
源外の作った『瞬間移動装置』の中には銀時。そしてその真上には――ガラスの壁に手と足を付けて、天井の方で待機していた桂とエリザベス。
装置は人一人くらいを入れる広さなので、手足をガラスの壁に付ける事が可能だった。
「って最初からそう言えやァァァァッ!!」
顔中に血管浮かべた銀時は桂の脳天に踵落とし喰らわせる。桂は「グボァッ!!」と地面に倒れ伏す。
頬の筋肉をピクピク痙攣させる銀時は倒れる桂を見下ろす。
「……えっ? じゃあなに? お前とそこの化けモンは俺と一緒に
なんでもなかったように立ち上がる桂は、残念そうに語る。
「まさかこのような奇怪な状況になるとは俺自身も予想だにしなかった。あの時、居眠りしなきゃ良かった……」
「いや、壁に手足付けたまま寝るあんたの方が奇怪だわ!」
と新八はツッコミ入れ、銀時は青筋浮かべて口元を引くつかせる。
「そんでなに? 俺と一緒に飛ばされた挙句別の場所に飛ばされたであろうテメェはたまたま見つけた俺をあのマジもんの化物かたら助けたと? そう言うワケか?」
「化物? 一体なんの話をしているのだ貴様?」
と首を傾げる桂。対して新八は「えッ?」と疑問符を上げた。
「桂さんはあの怪物から僕たちを守る為に撃退してくれたんじゃないんですか?」
「俺が〝ここ〟にいるのは同じ攘夷志士であり、同じ志を持つ同志――『
「はっ? どゆこと?」
銀時は桂の言いたい事がまるで分からず片眉を上げる。すると桂はまた腕を組んで語り出す。
「――こちらにやって来てから住む場所を提供してくれた家主殿の為、俺とエリザベスは買い物帰りの途中だった。帰宅途中、ふと何気なく屋上を見上げた時のことだ。ビルの屋上から俺と同じ穏健派攘夷志士である後藤がビルの屋上に立っている所を目撃した。まさか何百年も先の未来で同志に会えると思わなかった俺は必死で後藤のいるビルの屋上へ向かったのだ」
「いや、何百年も先の未来に同志いる時点でおかしいと思わね?」
ツッコム銀時だが攘夷バカの説明は続く。
「だが、俺が屋上に着いた直後、驚くべきことに奴は飛び降りたのだ!!」
「えッ? って言うか……飛び降りた、人?」
そこまで聞いた新八はあることを察し、。
「まさか……」
銀時の視線が大木に向く。それに続くようにその場にいた人々の視線が倒れた大木に注がれる。
「それを見た俺は居てもたってもいられず屋上を飛び降り――!!」
桂の言葉を聞いた新八は驚きの声を上げる。
「えっ!? あんたビルの屋上から飛び降りたんですか!? なんで無事なの!?」
「――っと思ったが怖いから、五階くらいから飛び降りた!!」
と桂は迫真の声。
「いや、ビルの五階でも充分高いからな? お前よく足骨折しなかったな」
銀時は呆れた声を出し、桂は説明を続けた。
「そして飛び降りてみれば、目の前には銀時やリーダーや新八くんたちや見慣れない者たちがいるではないか。さすがの俺も驚いた。まさか未来で同じ攘夷を掲げた同志に〝二人〟も会えたのだからな」
「いや、人を勝手にテロリストの仲間にしないでくんない? 俺お前みたいな〝バカ〟と同じ志し持った覚えないから」
露骨に嫌そうな顔をする銀時に構わず、桂は語る。
「まー、そんなこんなで今現在俺はここにこうしているワケだ。だから取り合えず――
桂はいつの間にか真選組副長――土方十四郎に手錠を掛けられていた。
一方、桂に手錠を掛けた土方はタバコ吸いながらほくそ笑む。
「よォ、桂ァ~。まさか
「くっ……!」
と、苦虫を噛み潰したような表情を作る桂。
攘夷志士と真選組――犯罪者と警察。
桂は
桂は忌々しそうに土方を睨み付ける。
「まさか今の今まで俺に出番を奪われ、まったく存在が描写されず、出番皆無の立場を利用して俺を捕まえに来るとは、中々の意地汚さだ。さすがは真選組副長だと褒めておこう」
「いや、それ一言たりとも褒めてねェよな?」
土方は額に青筋浮かべるが、あえて流す。
「まァ、俺たち警察はテメェら犯罪者を捕まえるためなら出番のなさだろうが影のうすさだろうが利用するってことだ」
フッと勝ち誇った笑みを浮かべる土方を見て、沖田が山崎に耳打ちしだす。
「うわー……ああ言う出番も影もある奴が言うとただの嫌味にしか聞こえねェよなァ? ジミー」
「は、はァ……」
と気のない返事をする山崎に、土方はチラリと視線を向けた。
「山崎……あとでビンタな」
「ええッ!?」
なんで!? と山崎はビックリ。
なんやかんやで土方に追い詰められた桂だが、すぐに余裕を取り戻す。
「フッ……大した覚悟だと褒めてやりたいところだが、甘いぞ土方」
「なにッ!?」
身構える土方に、桂は声高々に告げる。
「俺にはエリザベスと言う切り札がいるのだ! 我が愛しのエリザベスは俺の事を決して『見捨て』はしない!!」
「お前の愛しのエリザベス――」
と言う土方が指を指した先には、
『食材は責任持ってお届けします。桂さんは安らかに監獄で暮らしてください』
プラカードを振りながら買い物袋を持って去っていくエリザベスの姿があった。
エリザベスの白い背中を呆然と見ていた桂に、土方は告げる。
「とっくにお前のこと切り捨ててるぞ」
「エリザベスゥゥゥゥゥゥッ!?」
桂は世界の終わりのような絶望顔で叫ぶ。それを見た土方はニヤニヤ顔。
「万策尽きたな桂。言いたい事ならたっぷり屯所で聞いてやるぜ」
「土方さん。俺らの屯所は
と沖田はさり気なく言う。
すると桂は「まて土方!」と待ったをかけた。
「この近くには俺と志しを同じくした同志たる、後藤仁がいる! 後藤を見つけ出して差し出すから、代わりに俺を解放すると言う案はどうだろう?」
「どうだろう、じゃねェよ! あんたなにサラッと同志売ろうとしてんですか!?」
と新八はツッコム。
「つうかお前の同志、倒れた木の下敷きになってるけど?」
木を指さす銀時の言葉を聞いて、桂は驚愕の表情を浮かべた。
「なんだとっ!? なぜそれを早く言わんのだ銀時!? 早くひっぱり上げねば!!」
言うやいなや、桂は手錠はそのままに走り出す。
「おい待て!!」
と言って捕まえようとする土方の手よりも早く、桂は後藤の方へと向かっていく。
「いや、トドメさしたのはお前だけどね」と呟く銀時をよそに、桂は必死に後藤を潰している木をどかそうとする。
「つうか止めとけって、ヅラ。そいつ、お前の連れてる化けモンより化けモンだから。下手に刺激しない方がいいぞ」
銀時が止めようとするが、桂は構わずふんばりながら大木を押す。
「ふぅ~~ん!! なにを言い出すのだ貴様! 言うに事欠いて俺の心の同志を化物呼ばわりとは、いくら貴様でも許さんぞ!!」
「いや、心の同志ってなに? ジャイアンかテメェは。兎に角、そいつ助けんの止めろ。後悔してもしんねェぞ?」
「ふん! 下らん! どんな見てくれであろうと、俺は一度友と決めてた男を蔑ろにはしないのだ!!」
そう言った時、ゴロッと木が横に転がり、後藤の上からどいた。
「よし、助けたぞ! 大丈夫だったか、ごと――!!」
桂が持ち上げた後藤は全身血まみれで、足やら腕やらの骨があらぬ方向に折れていた。間違いなく全身複雑骨折どころか生きていることすら不思議なはずの姿。
だが、男の目は血走り、
「テメェ”……!!」
と自身を木の下敷きにした桂を射殺さんばかりに睨み付けた。
「なんだこの化物はァァァァァッ!?」
血相を変えた桂は
「心の同志ぶん投げたァァァァァッ!!」
と叫ぶ新八。
「ぎゃああああああああああああッ!! こっち投げんな気持ちワルッ!?」
と銀時も悲鳴を上げながら、投げつけられた後藤を神楽に投げつける。
「うぎゃああああああああッ!! キモイアル!!」
と神楽は回し蹴りで土方に後藤をパス。
「んな気持ち悪いモン俺に投げんなァァァァァァァァッ!!」
と土方は新八に蹴ってパスし、眼鏡はまた悲鳴上げる。
「ちょっとォォォォッ!? ありない方向に曲がった足とか手がぶらぶらしてめちゃ怖いんですけどォ!!」
阿鼻叫喚と言った具合に騒ぎまくる彼らを見て、魔法少女になった少女達は呆然。
「また変なのが増えた……」
アリサの呟きは彼らの悲鳴に消えていったのだった。