魔法少女リリカルなのは×銀魂~侍と魔法少女~   作:黒龍

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2017年明け後編:究極の必殺技

 洞爺湖仙人はパネルを操作しながら説明する。

 

「坂田銀時よ。私は貴様に必殺技を教える今日この日の為に、古今東西の必殺技を持つ者たちを集めた。いわば、これから貴様の師匠となるかもしれん者たちだ」

「はァ!? こんな茶番に付き合ってる連中がいるの!? つうか何勝手に俺の了承も得ないうちに必殺技教える方向で話進めてんだよ!!」

 

 銀時は文句言うが、洞爺湖仙人はパネル操作を続けながら説明する。

 

「無論、私とてお前の意思はできるだけ尊重するつもりだ。だからお前がコレと思った究極の必殺技を選ばせる為に一度、必殺技の会得の為の修行風景をリアルタイムで見せる」

「えッ?」となのはは声を漏らす。「じゃあ、必殺技の師匠を揃えるだけじゃなくて弟子も用意しちゃったんですか?」

「その通りだ」

 

 と洞爺湖仙人は答えた後、モニターの操作パネルを弄っていると映像が映り出す。そこには真選組の制服を着た男が腕を組んで馬に跨っていた。

 

「土方さん!?」

 

 なのはは今自分の仲間となっている男の顔を見てその名を口にし、一方の銀時は怪訝そうな表情を浮かべる。

 

「おいおい、あのマヨネーズ。一体なにやってんだ?」

「奴は第一の師。伊達仙人の修行を受けている」

 

 洞爺湖仙人の言葉を聞いて銀時は肩眉を上げながら怪訝そうな表情を浮かべる。

 

「伊達仙人? 伊達政宗か?」

「伊達政宗って……あの歴史の偉人ですか!?」

 

 なのはは有名な歴史の人物の名を聞いて驚きの声を上げる。

 

「おいおい、なんでおっちんだ独眼竜が出てくんだよ?」

 

 銀時の言葉を聞いて洞爺湖仙人は鋭い眼差しを向ける。

 

「仙界を甘く見るな。古今東西あらゆる必殺技を持つ者を集めることなど造作もない。それが例え歴史の偉人であってもだ」

「いや、伊達政宗は必殺技なんて持ってねェけど?」

 

 と銀時が指摘すると、フェイトが更に問いかける。

 

「そもそもなんで仙人て呼ぶの? 銀時の師匠になるなら、伊達師匠って呼ぶんじゃないの?」

「仙界では必殺技を伝授させる者を仙人と呼ぶのだ」

「仙人の定義ぶれぶれじゃねェか!!」と銀時はツッコム。「付喪神つったり、仙人でもなんでもねェ歴史の偉人を仙人呼ばわりしたり!」

 

 銀時のツッコミをよそに、洞爺湖仙人はモニターに顔を向ける。

 

「伊達仙人。どうだそっち様子は?」

 

 するとモニターの横から、青い兜と服に身を包み六本の刀を腰に差して右目に眼帯を付けた男が現れる。

 

『Hey、洞爺湖仙人。コイツは中々に良いsenseを持ってるぜ』

「ってBASARAの伊達政宗じゃねェか!!」

 

 と銀時は仰天。

 

「歴史の偉人どこから他作品から師匠連れて来たよコイツ!!」

「では、もう必殺技を会得したのか?」

 

 と洞爺湖仙人が質問を投げかけると伊達政宗――もとい伊達仙人は首を横に振る。

 

『NO。だが、中々の上達ぶりだ』

 

 伊達仙人は眼帯をしてない目で馬に乗った土方を見る。すると土方はカッと目を見開く。

 

『――ヒィアウィゴォォォォォ!! レッツパーリィィィィィ!!』

 

 と土方が叫び、馬が「ヒヒィ~ン!!」と(いなな)き前足を上げる。まさにそのワンシーンはかの欧州筆頭に勝るとも劣らない覇気を放っていた。

 そして洞爺湖仙人は手を上げて叫ぶ。

 

「オッケェェェェェイ!!」

「なんの修行をしてんだァァァァァァ!!」 

 

 銀時がシャウトすると洞爺湖仙人は顔を向けて話す。

 

「キャラを強くする為の修行だ」

「必殺技は!? 必殺技どこにいっちゃんですか!?」

 

 なのはがツッコミ入れると、洞爺湖仙人は腕を組む。

 

「いくらなんでも、キャラが弱い奴が強力な必殺技使うのはバランスが悪いからな。だから師匠たちには自己判断に敢えて任せ、各々の強さとキャラを強くしてもらっているのだ」

「土方さんキャラ弱くありませんよ!? 寧ろ強い方です!!」

「つうかあんなのただの中の人ネタじゃねェか!! 絶対作者がやりたかっただけだよね!?」

 

 銀時がツッコミを入れていると伊達仙人は土方を叱責する。

 

『もっと舌と唇をうまく使え!!  Let's English!!』

『レッツパーリィィィィィ!!』

 

 と土方は馬の上で若干流暢じゃない英語を叫ぶ。その光景を見て銀時は声を荒げる。

 

「これただの英会話の授業じゃねェか!! 全然強くなってるように見えねェんだけど!? 一体おめェらは真選組副長をどこに向かわせようとしてんだ!!」

「あんな凄そうな人をよく呼べたね。これも仙人の力?」

 

 フェイトは腕を組んで訝し気に片眉を上げると、洞爺湖仙人はフッと笑みを浮かべる。

 

「マザー仙人とファザー仙人の――財力(ちから)だ」

「それようはただ出演料払っただけじゃねェか!!」

 

 と銀時がキメ顔作る洞爺湖仙人にツッコミ入れる。

 

「ファザー仙人て……もしかしてお父さんですか?」

 

 なのははマザー仙人と言う名の母だった女性を思い出し、たぶんファザー仙人は彼の父なのではと予想する。

 洞爺湖仙人は銀時にドヤ顔を向ける。

 

「どうだ坂田銀時よ。伊達仙人の修行を受けてみる気になったか?」

「なるワケねェだろ!! なんで俺があんな安っぽい英会話教育受けなきゃならねェんだ!!」

「そうか。伊達仙人がお気に召さないのなら、次は聖剣仙人だ」

 

 洞爺湖仙人はそう言ってパネル盤のボタンを操作して映像を切り替え始める。そして銀時は新たな仙人の名を聞いて肩眉を上げる。

 

「聖剣仙人? なんか今度は凄そうだな」

「あ、もしかしてアーサー王さんですか!」

 

 と言ってなのはは両手をポンと叩いて若干興奮しながら語る。

 

「聖剣と言えばアーサー王のエクスカリバーが有名ですし!」

「それ完全にFateフラグじゃねェか!! BASARAの伊達政宗の次はセイバーかよ!!」

 

 銀時はなのはの予想を聞いて次も他作品キャラであると予想する。

 やがて映像が切り替われば、モニターに映っていたのは腕を組んで目を瞑り立つ近藤勲の姿だった。

 モニターの映像を見てなのはが驚きの声を上げる。

 

「近藤さん!? 近藤さんがエクスカリバーを受け継ぐんですか!!」

「まさかのゴリラ!? 嘘だろおい! セイバーの弟子があのストーカーかよ!!」

 

 と銀時が顔を顰めながら言った直後、近藤はカッと目を見開いて後ろに走り出し空中で一回転、そして緑色の土管の中に頭から入り込む。

 一体何を? と三人はモニターを覗いていると、近藤が土管から這い出てくる――しかも何故か赤いMのトレードマークが付いた帽子を被り、配管工の恰好をして。

 土管から這い出て配管工の姿となった近藤は自身の修行を眺める仙人に顔を向ける。

 

『どうですか? 着替えのタイム、かなり縮まったと思いますけど?』

 

 黒いスーツ姿に赤い帽子を被った仙人は親指を立て、それを見た近藤は嬉しそうに声を上げる。

 

『マジっすか!? ありがとうございます!! 安部まり――!』

「って聖剣じゃなくて政権じゃねェかァァァァァァ!!」

 

 と銀時は食い気味にシャウトし、更にツッコミ入れる。

 

「つうかネタが古ィんだよ!! コレ本当に大丈夫!? 他作品使うより危なくない!?」

「これは一体なんの修行なんですか!? 最早ただのコスプレの技磨いてるだけですよ!!」

 

 なのはの疑問に洞爺湖仙人は答える。

 

「奴には必殺技を身に着けてもらうついでに組織のトップとしての力も身に付けさせている」

「そもそもあのマリオは必殺技持ってねェよ!!」

「後、聖剣仙人てさっきあなた言いましたよね?」

 

 とフェイトが指摘すると洞爺湖仙人はパネルを操作しながら謝罪する。

 

「すまん、ちょっと間違えた。こっちが本当の聖剣仙人のセイバーさんだ」

「しかもFateの方も呼んでるんかい!! つうかセイバーって認めてるし!!」

 

 と銀時がツッコムとモニターの映像が切り替わり、金髪のアホ毛が頭頂部に生えた少女の姿が映り込み、声を荒げる。

 

『まだだ! もっと手を動かすのだ!!』

『おっす!!』

 

 と返事をするのは神楽。彼女は汗を流しながら再度手を動かす。

 

「神楽ちゃん!?」

 

 映像を見て最初に声を上げるのはなのは。

 

「おいおい、神楽に騎士王の必殺技伝授させようとしてんのかよ。あいつは聖剣つうか正拳じゃねェの?」

 

 と銀時が言った直後、修行風景全体の映像が映し出される。

 セイバー――もとい聖剣仙人は、竹刀を床に叩きつけて神楽を叱責する。

 

『もっとチャーハンを口に掻き込めェェェェ!!』

『うォォォォォ!!』

 

 神楽はレンゲを持つ手を更に早めて口に中華ライスを入れていく。

 そしてチャーハンを食べ、椅子に座る神楽の前にある回転テーブルにはありとあらゆる中華料理が置かれていた。

 

「ってただのフードファイターの修行じゃねェか!! セイバーの無駄遣いも甚だしいわ!!」

 

 銀時がツッコムと聖剣仙人は神楽の横に座って言い放つ。

 

『甘い!! そんな食い方ではまだまだだ!! もう見てられん!! 私が手本を見せる!!』

 

 と言って聖剣仙人まで中華料理を食べだす。

 

「お前はただ単に食いたいだけだろッ!!! もう修行でもなんでもねェよ!!」

 

 と銀時がツッコミ入れると、洞爺湖仙人が振り向く。

 

「どうだ坂田銀時。この修行を受けてみたく――」

「なるワケねェだろ!! 胃袋強大にしても強大な敵には勝てねェんだよ!!」

「ウマイ」とフェイト。

「そうか、それは残念だ。では次の仙人だ」

 

 と言って洞爺湖仙人はパネルを操作し出すが、銀時は呆れた声を掛ける。

 

「なァ、もういいだろ? 三つ見せられたけど、ぶっちゃけ碌な修行がねェよ。キャラとしちゃスゲェけど、まったく必殺技を体得できる気がしねェんだけど?」

 

 洞爺湖仙人は銀時の言葉を受けて振り返り「ほほォ?」と言って目を細めると、またパネルに向きに直ってボタンを操作し出す。

 

「ならば次の仙人は凄いぞ。興行収入700億を叩き出した雷仙人だ」

「興行収入700億!?」

「なんで雷の仙人が興行収入700億を出せるんだよ!! 電機会社の社長か!?」

 

 なのはは驚き、銀時はツッコミ入れる。すると映像が切り替わり、突如仙人の声らしきモノが聞こえてくる。

 

『ピッピカピカチュー!』

「雷じゃなくて電気ネズミだろうがァァァ!!」

 

 銀時が大声を上げているうちに修行風景の全体像が映し出されると、ピカチュー――もとい雷仙人の前には定春がお座りをしており、鳴き声を上げる。

 

『ワン!』

「定春くんが弟子なの!?」となのはは驚く。

「つうかもう師匠も弟子も人間すらなくなってんじゃねェか!」

 

 銀時がツッコミ入れる中、雷仙人がまた鳴き声を上げる。

 

『ピカッ! ピカピカ!』

「ワ、ワン!」

 

 と定春は戸惑いどながらまた鳴く。すると雷仙人はより強い鳴き声を出す。

 

『ピカカッ! ピッ! ピカッ!』

『ワン! ワワン!』

 

 すると定春は気合を入れて鳴き声を上げるが、雷仙人は満足していないらしい。

 

『ピかッ! ピカチューッ! ピッ!!』

『ワン!! ワンワン!!』

『ピカピカ!! ピカッピ!!』

『ワン! ワ、ワン!!』

『ピカピカピッカカ!! ピカチュー!!』

『ワォーン! ワンワン!!』

『ピカカ!! ピッカ!!』

「ピカピカワンワンうるせェェェェェ!!」

 

 さすがに我慢できなくなった銀時がシャウトし、モニターに指を突き付ける。

 

「こいつら一体なんの修行をしてんだよ!! アニマル共が喋ってるだけで全然なにやってんだか理解できねェよ!!」

「よし、ならば翻訳機能発動だ」

 

 ポチッと洞爺湖仙人が一つのボタンを押す。

 

『ピカカッ! ピカチュー!!(頑張れ! 君ならできるはずだ!)』

「モニターの下に字幕が!」

 

 なのはが言った通り、雷仙人が鳴き声を上げると同時にモニターの下には字幕が出現する。これで雷仙人と定春がなにを喋っているのか一目瞭然だ。

 定春が弱々しく鳴き声を上げる。

 

『ワゥン……。ワン……。(無理です師匠……。これ以上僕にはできません……)』

『ピカァァァァッ! ピカチュー!!(弱音を吐くなァァァァ!! ピカチューと鳴いてみせろ!!)』

「なんの修行をしてんだテメェらはァァァァァ!! つうか無理難題にもほどがあんだろ!!」

 

 と銀時がシャウトすると雷仙人は定春を鼓舞する。

 

『ピカカ!? ピッピカ!!(君は僕みたいなマスコットになりたくないのか!? 夢の国のネズミを超えるマスコットになるのではなかったのか!!)』

「なれるワケねェだろ!! チョッパーさんだって無理だぞそれは!!」

 

 ツッコミ入れる銀時をよそに映像に映った定春は下顎を地につけて前足で頭を抱える。

 

『ワン! ワゥ~ン……! ワン!(やっぱり無理です! だって僕はポケモンじゃなくて犬なんですから……。ピカチューにはなれません!)』

 

 字幕の文字を見て銀時は仰天する。

 

「ホントになんの修行してんの!? キャラ強化するどころの別キャラになる修行じゃねェか!!」

『ピッカッ! ピカチュー!!(10万ボルトはできたじゃないか!! ならピカチューと鳴くことだってできるはずだ!)』

「10万ボルトはできたんかい!!」

 

 銀時は驚き、洞爺湖仙人はやれやれとため息を吐く。

 

「どうやら、こちらの修行はまだまだ難航しそうだな……」

「どこが!? 寧ろ必殺技体得できてんじゃねェか!!」

 

 ツッコム銀時に構わず、洞爺湖仙人はボタンを操作し出す。

 

「では、次は必殺技の成功例がいないかマザー仙人に聞いてみよう」

「いや、さっきの定春とピカチューペアはもろ成功例だぞ!! 定春の10万ボルト見せろよ!!」

 

 銀時の言葉は聞こえてないのか、洞爺湖仙人は映像を切り替える。するとさっきこの空間をドアから出て行ったマザー仙人がモニターに映る。

 

「マザー仙人よ。今、必殺技を体得できた者はおるか?」

『あァ。私は四人確認した。ファザー仙人が担当している者も既に必殺技を体得しているらしい』

「なんと! この短期間で計五人も必殺技の体得者か!」

「後、一匹もね」

 

 驚きの声を上げる洞爺湖戦の傍ら銀時はサラリと言葉を付け足す。

 

「さっきから時折聞く、ファザー仙人て?」

 

 フェイトの質問を聞いた洞爺湖仙人は振り向いて得意げな笑みを浮かべる。

 

「ファザー仙人とは、マザー仙人と対となる存在。彼女の相棒的な存在だなのだ。とってもえら~いお人だから言動には気をつけよ」

「ようは夫だよね? 棒的な意味での相棒だよね? つまりお前のお父さんだよね?」と銀時。

「お父さんじゃない! ファザー仙人だ!!」

 

 と洞爺湖仙人は苦しい訂正をすると、銀時は訝し気に質問する。

 

「つうか、お前のご両親は一体なにやってんだよ?」

「ご両親じゃない!! 二人は仙人のトップに立つビック仙人なの!!」

 

 なおも指摘されたことを認めない洞爺湖仙人はゴホンと咳ばらいをし、真剣な表情を告げる。

 

「マザー仙人とファザー仙人のお二人には、今回の修行の統括者として監視役をお任せしている」

「お前のご両親も大変だな。いいお歳なのに息子の我儘に付き合って」と銀時。

「うるさい!! とにかくお前たちに必殺技体得者たちの映像を見せてやるからちょっと待ってろ!!」

 

 洞爺湖仙人は切れ気味に吐き捨てて、再びモニターに顔を向けると低い声を出す。

 

「マザー仙人よ。まずはあなたが担当している必殺技体得者たちと師匠たちのデータを送ってくれ」

『了解した。そちらにデータを送る』

 

 するとマザー仙人もモニターの向こうで手を動かしているところを見ると、洞爺湖仙人と同じようにボタンを操作しているのだろう。

 

「ほほォ、この者達か……」

 

 洞爺湖仙人はパネルの操作盤に設置されている小さなモニターを見て目を細める。そしてパネルを操作しながら銀時たちに顔を向ける。

 

「ではまずは、忍者仙人の様子をお見せしよう」

「忍者仙人?」とフェイトは首を傾げる。

「忍者さんを見れるんですか!」

 

 となのはは少し興奮したように両手を合わせるが、銀時はなんだか嫌な予感を覚え始めていた。

 モニターの映像が切り替わり、忍者仙人とその弟子が修行しているであろう場所の映像が映し出される。

 

「忍者仙人よ。そちらの様子はどうだ」

 

 するとうずまきの模様が彫られた額当を頭に巻き、オレンジと黒が基調のジャージのような服を着た青年が腰に左手を当て、右手を上げて合わせた二本の指をビシッと振る。

 

『よォ、洞爺湖仙人。ちょうどこっちは山崎の奴に分身の術をやらせる最中だってばよ」

「やっぱりナルトかい!!」

 

 銀時はやっぱり嫌な予感が的中して声を上げ、山崎の名を聞いてなのははまた驚きの表情を浮かべる。

 

「って言うか今度は山崎さんですか!?」

「つうか、あんな新八並みに地味な奴になに超使える技教えてんだよ!!」

 

 ちょっと酷いこと言う銀時をよそに洞爺湖仙人は忍者仙人と話を続ける。

 

「では、忍者仙人よ。お主の弟子の影分身を見せてはもらぬか?」

『いや、それがよォ……』

 

 忍者仙人は申し訳なさそうに頭を掻いて後ろに目を向ける。

 そこには三人に増えた山崎の姿があった。しかもなんか山崎本体と分身山崎はそれぞれ、桃太郎と浦島太郎と金太郎の恰好をしている。

 

『なんか山崎の奴、影分子つうか分裂しちゃったんけど……やっぱダメか?』

「ナルトじゃなくてドラゴンボールになってんじゃねェか!! 天津飯か!!」

 

 銀時がツッコミ入れ、なのはが山崎の恰好を見て汗を流す。

 

「って言うか、山崎さんの恰好変じゃないですか!? なんでおとぎ話の人たち恰好をしているんですか!?」

「つうか三太郎じゃねェか!!」と銀時「A〇だよな!? 絶対〇Uだよな!?」

「忍者仙人よ、なぜ弟子にそのような恰好をさせたのだ?」

 

 洞爺湖仙人の質問を聞いて忍者仙人は困ったように頭を掻く。

 

『いや……技教えるついでにキャラを強くしてくれって言われてもコイツちょっと地味過ぎて悩んだ結果……三太郎つうかザキ太郎にしてみたんだけど』

「ザキ太郎!? って言うか言い方がちょっと酷くありませんか!?」

 

 なのはは忍者仙人のあんまりな言い草にちょっと悲しそうな表情を浮かべ、洞爺湖仙人は眉間に皺を寄せる。

 

「すまぬが、私は携帯会社のCMはともかく三太郎についてはあまり詳しくなくてな……」

『じゃあ、やっぱ失敗か?』

 

 忍者仙人は残念そうに告げると洞爺湖仙人は腕を組む。

 

「できたものは影分身でもないし、キャラも強くなったとは言い難いしな。残念だが、お主の修行は今のところ失敗と言う他あるまい」

「なんでだ!!」と銀時は怒鳴る。「寧ろ成功も良いとこだろ!! 影分身じゃなくても十分凄い技会得してんじゃねェか!! どんだけ影分身覚えさせてェんだよ!!」

「キャラも十分強いと思いますよ!!」となのは。

「次の仙人に行こう」

 

 銀時となのはの言葉をまたもスルーして洞爺湖仙人はモニターの映像を切り替える。

 

「次の仙人は、プリキュア仙人だ」

「少しは名前捻れよ!! 映像見る前から丸わかりじゃねェか!!」

 

 銀時はツッコミ入れるが、なのはは嬉しそうに両手を合わせる。

 

「えッ! プリキュアさんに会えるんですか!」

 

 絶賛9歳の現役小学生のなのはとしてはプリキュアに映像越しとは言え会えるのは嬉しいらしい。

 

「ぷりきゅあ?」

 

 しかし、一方のなのはと同い年くらいのフェイトはプリキュアを知らないようで首を傾げる。

 すると映像が切り替わり、長い金髪の少女が現れる。彼女はピンクを基調としたフリルとリボンに飾られたふんわりした衣装を着こなしている。

 なのはは「あれ?」と首を傾げる。

 

「私の知らないプリキュアさんなの」

 

 不思議そうに自分を見るなのはに対してプリキュア仙人は笑顔で手を振る。

 

『どうも、なのはちゃん。キュアミラクルです!』

「キュアミラクルじゃない!! プリキュア仙人だ!!」

 

 と洞爺湖仙人は慌てて声を出すとキュアミラクル――もといプリキュア仙人はしまったと口に手を当てて頭を下げる。

 

『ご、ごめんさない! プリキュア仙人でした!』

「いや、別に謝る必要ないからね? 頑なにこのクソ仙人に付き合う必要ないからね?」

 

 律儀なプリキュア仙人に銀時はちょっと関心してしまう。すると今度はモニターの横から紫色の髪の少女が出てくる。

 

「あッ! また知らないプリキュアさんだ!」

 

 紫を基調とした衣装を身に纏ったプリキュア仙人を見てなのはは驚きの声を出し、もう一人のプリキュア仙人は少し笑みを浮かべて手を振る。

 

『私はキュアマジカルって言うの。よろしく』

「おい、プリキュア仙人何人いんだよ? アイツなに仙人なんだよ?」

 

 銀時の言葉を聞いてもう一人のプリキュア仙人はうんうんと腕を組んで頷く。

 

『ホントよ。なんて名乗れば良いのか私、あなたのお母さんから聞いてないんだけど?』

 

 話を聞いた洞爺湖仙人は頭抱えて焦る。

 

「お母さん! ちゃんとプリキュア二人呼ぶなら呼ぶって言っといてくれよ!! 元々こっちは一人だと思ってたのに!!」

「おい、もうなんだよこれ。ぐだぐだ過ぎんだろ。仙人設定ホントにいんの?」

「よ、よし!! ならばお前は今からプリキュア仙人二号だ!」

 

 洞爺湖仙人はビシッともう一人のキャアマジカル――もといプリキュア仙人二号に指を突き付ける。

 

「テキトーにもほどがあんだろ!! ちょっとは名前捻れよ!!」

 

 銀時がツッコミ入れると、プリキュア仙人二号はすんごく嫌そうな顔をする。

 

『えェー……ホントにそう名乗るの? 果てしなく嫌なんだけど?』

「いやホントだよ!」と銀時も同意する。「他の連中にも言えたことだけど、なんでお前らこのアホにここまで付き合ってんの!? そんなにお金欲しいの!?」

『い、いや……別に私もミラクルもお金が欲しくて師匠とかになったワケじゃないのよ?』

 

 プリキュア仙人二号が困ったように両手を出すと銀時は怪訝な表情を浮かべる。

 

「えッ? じゃあなんの為にこの髭に付き合ってんの!?」

 

 すると洞爺湖仙人がある物を両手に持って取り出す。

 

「言う事を聞かねば、このクマの人形がどうなるか分からんぞォ!」

「みらい! リコ!!」

 

 とクマのぬいぐるみが不安そうなそうな表情で声を上げる。

 

『『モフルン!!』』

 

 プリキュア仙人の二人は画面に張り付き、心配そうにクマのぬいぐるみ――モフルンを声を掛ける。

 

「フハハハ! 早く師匠として弟子に必殺技を伝授しなければ……」

 

 と洞爺湖仙人は邪悪な笑いを浮かべた後、クワっと表情を変化させて言い放つ。

 

「――このクマの人形から綿を全部抜いてやるぞォーッ!!」 

『『止めてェェェェ!!』』

 

 プリキュア仙人の二人は必死な声を出し、

 

「いやお前もう仙人じゃなくてただの悪党じゃねェか!!」

 

 銀時はプリキュアの悪党組でもそうそうしない手段を取る仙人にドン引きする。すると洞爺湖仙人は銀時に顔を向ける。

 

「しょうがないだろ!! 一回アプローチした時、『いくらなんでもちょっと……』とか言ってお金や物で動いてくれなかったんだから!! こうやってこんなクマの人形なんぞを誘拐する羽目になったんだぞ!!」

「当たり前だろ!! むしろこんな馬鹿馬鹿しいことにあれだけのキャストを総動員させられた方がすげェよ!! つうか一回断られたなら諦めろよ!!」

「とにかくプリキュア仙人たちよ!! 我々に成果を見せて貰おう!!」

 

 と言って洞爺湖仙人は血走った目でモフルンをずいっとモニターに近づける。

 

「でないとこのクマがどうなうなるか――!」

『分かった! 分かったから!!』

 

 プリキュア仙人は両手を出し、プリキュア仙人二号は洞爺湖仙人を睨み付けながら言い放つ。

 

『でもコレが終わったらちゃんとモフルンは返して貰うわよ!!』

 

 すると銀時はなのはとフェイトに耳打ちする。

 

「おい、俺たちでアイツぶっ飛ばさねェか? これ以上変なことする前に」

「そうですね」

「うん……」

 

 なのはは待機状態のレイジングハートを握り絞めバリアジェケット姿となり、バリアジェケット姿のままだったフェイトも戦斧状態のバルディッシュを握りる手に力を込める。

 そして銀時は木刀を抜き、なのははレイジングハートを構え、フェイトはバルディッシュを構え、三人が洞爺湖仙人におしおきしようとにじり寄ったその時。

 

「では、お前たちの弟子の成果を見せてもらおう」

 

 洞爺湖仙人の言葉を聞いてプリキュア仙人二人はすんごい顔を顰め、お互いの顔を見つめ合った後、渋々と言った顔で、

 

『『ど、どうぞご覧ください……』』

 

 モニターの端まで下がる。すると画面の少し奥にはとんがり帽子に黒いローブを着た二人組が手に孫の手を持っている。その顔は帽子の大きなふちによって隠れている。

 やがて二人組は手に持った孫の手で帽子のふちを押し上げ、顔を覗かせる。

 

『さァ、出番だよキャサリン』

『ハァイ、オ登勢サン』

 

 皺だらけのババアと堀の深い老け顔の女が顔を見せて怪しく笑う。

 

「「「えッ?」」」

 

 洞爺湖仙人に攻撃する直前でモニターの映像を見た三人の表情が固まる。

 その間にお登勢とキャサリンはお互いの手を握り、

 

『『キャア! タマタマ!』』

 

 握り合っていない方の手を天高く上げる。

 すると突如としてジャスタウェイが現れ、

 

『『ゴールド!』』

 

 その胸の中心に金の玉がはめ込まれる。そして二人はジャスタウェイとお互いの手を握り、空中でくるくる回りながら呪文を唱える。

 

『『ミラクルタマクル! カネヨコセ!!』』

 

 二人の衣装が徐々に変化していく。

 お登勢は髪が黒から金髪となり、髪が伸びるだけは飽き足らず髪型も変化し、服装はピンクを基調としたフリルとリボンに飾られたふんわりした衣装――簡単に言えばキュアミラクルと同じ髪と服装になる。

 そしてキャサリンの髪も紫に変化して髪型も変わり、服も紫を基調とした衣装へと変化する――ぶっちゃけこっちもキャアマジカルまんまである。

 変身し、地面に降り立つ二人。

 お登勢が人差し指を振り、

 

『二人で――!』

『――家賃回収ゥ!』

 

 続いてキャサリンも人差し指を振る。

 そして二人はまた手を握り、手を合わせてハートマークを作る。

 

『『痴呆じゃねェよ! タマキュア!』』

 

 そして背中合わせにポーズを取る『痴呆じゃねェよタマキュア』。

 

「「「「「オ”ェェェェェェェ!!」」」」」

『『オ"ェェェェェェェ!!』』

 

 銀時、なのは、フェイト、洞爺湖仙人だけでは飽き足らず、モフルンも本家のプリキュアお二人も凄まじい嘔吐感に苦しむ。

※七人が口から出た物は皆さまのご想像にお任せします。

 

「な”ん"な"の"あ”の”お”ぞま”じい”プリ”ギュア"は"ァァァ……!!」

 

 なのはは涙と涎を垂れ流しながらモニターに映ったタマキュアの二人を見ると、

 

『『うふ♪』』

 

 タマキュアの二人はウィンク――バタっとなのはは地面に倒れ伏す。

 高町なのは撃沈!

 

「お"ィィィ……!! 仙人テメェェェ……!!」

 

 銀時は凄まじい嘔吐感に襲われながら洞爺湖仙人を睨み付ける。

 

「アレはなんだァァァ……!! どう言う必殺技なのか説明しろォォォ……!!」

 

 洞爺湖仙人は両手両膝を付いて息も絶え絶えになりながら銀時に顔を向ける。

 

「あ、アレは……敵と味方だけではない……果ては作品そのものを……終わらせる最凶の必殺技なのだァァァ……!! オェ”!」

 

 そう言って洞爺湖仙人は口からまた何かを吐き出す。

 

「銀時……私……疲れちゃったよ……」

 

 地に伏したフェイトは力の籠ってない瞳で声を出す。

 

「おい、しっかりしろォ……!」

 

 銀時ははいずりながらフェイトを介抱しに向かう。

 

『ね、ねェ……マジカル……』

 

 モニターの向こうでは、両手両膝を付いたプリキュア仙人が口から涎を垂らして息も絶え絶えに、生気の籠ってない瞳で告げる。

 

『ワクワクしないことも……世の中にはあるんだね……』

 

 プリキュア仙人二号は自嘲気味に笑みを浮かべる。

 

『フッ…………そうね』

 

 そしてバタリ、とプリキュア仙人二人は地に倒れ伏すのだった。

 

 

 

「――さて……次の仙人と必殺技の紹介に移ろう」

 

 やっとタマキュアショックから立ち直った洞爺湖仙人と銀時たち三人。

 反省の色のない洞爺湖仙人に銀時が青筋浮かべて憤慨する

 

「つうかふざけんな!! 新年早々おぞましいモノを見せやがって!!」

「プリキュアさんたちは大丈夫なんですか!?」

 

 心配そうになのはが言うと、洞爺湖仙人は変然とした顔で告げる。

 

「まァ、大丈夫であろう。クマの人形もさっきプリキュア仙人たちの様子を見に行ったし」

 

 モフルンさんは解放されてプリキュア仙人二人のところに急いで向かいました。

 洞爺湖仙人は操作パネルのボタンを操作し出す。

 

「次の仙人は聞いて驚け! ライダー仙人だ!」

「次はライダーかよ! ニチ〇サタイムに突入か!! どうせ魔法の次はエグゼイドとかなんだろ!」

 

 銀時が捲し立てるように言った後、モニターが切り替わり、バッタの姿を模した改造人間がモニターに映る。

 

『こちら仮面ライダーあらためライダー仙人だ』

「クソッ! 初代だったか!」と銀時は右手を振る。

「いや、なんで悔しそうなんですか?」

 

 なんか銀時が人当てゲーム的なことを始めているのでななのはは汗を流す。

 洞爺湖仙人はライダー仙人に質問を投げかける。

 

「ライダー仙人。あなたにお弟子として預けた志村新八がライダーキックを会得できたとマザー仙人から聞いたのだが?」

「今度はぱっつぁんかよ!!」と銀時。「なんで地味キャラがことごとくすげェ技覚えてんの!?」

「銀時さんは山崎さんと新八さんに恨みでもあるんですか!?」

 

 地味キャラ二人に対してちょっと意地悪な発言する銀時になのはは悲痛な声を上げる。

 洞爺湖仙人の質問を聞いたライダー仙人の表情は仮面で伺えないが、少し困ったような声を出す。

 

『いや、ちょっと問題があってな……』

「っと、言うと?」

 

 洞爺湖仙人の質問を聞いてライダー仙人は言いづらそうに答える。

 

『実は、彼にライダーキックを覚えさせたまではよかったのだが……ライダーキックを放ったと同時に右足が複雑骨折してしまってな……』

「「ゑッ……?」」

 

 まさかの情報に銀時となのはは口をポカーンと開け、洞爺湖仙人は腕を組んで険しい表情を作る。

 

「やはり……ライダーキックはライダーにしかできぬか……」

「じゃねェだろォォォォ!!」と銀時はシャウト。「うちの従業員の足が使いモンならなくなったらどうしてくれんだテメェら!!」

「し、新八さんは大丈夫なんですか!?」

 

 なのはの声を聞いてライダー仙人は腕を組みながら力強く頷く。

 

『安心しろ少女よ。こんなこともあろうかと……』

 

 ライダー仙人が赤い瞳を後ろに向けると、そこには手術台に手足を拘束されて貼り付けにされた新八がいた。

 ライダー仙人はグッと親指を立てる。

 

『――これから彼を改造手術して正真正銘の改造人間にするつもりだ。これでもうライダーキックで足を怪我することもない』

 

 その光景に唖然とする銀時となのはをよそに顔面蒼白にさせいた新八が銀時たちの姿に気づく。

 

『ぎ、銀さァァァァん!! な、なのはちゃァァァァァん!! たすけ――!!』

 

 プツン、と映像が切り替わり、洞爺湖仙人はボタンを操作しながら告げる。

 

「必殺技を見れなかったのは残念だが、概ね順調そうだ」

「「どこがァァァァァァァ!?」」

 

 と銀時となのははシャウトし、二人は捲し立てる。

 

「ちょっと待てェェェェ!! アレあのままにしたらマズイ!! ぱっつぁんが完全に別のナニカなって帰って来るぞ!!」

「新八さんを開放してあげて!!」

 

 銀時となのはの言葉を聞いた洞爺湖仙人は後ろを振り返り、真剣な表情で告げる。

 

「よいか。強い必殺技とは艱難辛苦を乗り越え、初めて手にできるものなのだ。求める必殺技の力が大きければ大きいほど、犠牲にするモノも大きくなるのだ」

「思いっきり新八さん助けを求めてましたよね!? 必殺技を求めていませんでしたよね!?」

 

 なのははツッコミ入れるが、洞爺湖仙人は無視してボタンを操作して次の映像へと移り変わる。

 すんごい不安そうに新八の安否を心配するなのはの肩にフェイトが肩を置いて告げる。

 

「今度から彼のことは仮面ライダーエイトと呼んであげよう」

「フェイトちゃんホントにどこに向かおうとしてるの!?」

 

 自分の知っているキャラからどんどん遠ざかっているフェイトになのはは汗を流す。そして映像が切り替わり、洞爺湖仙人が新たな仙人の名を告げる。

 

「さァ、次の仙人はロボ仙人だ」

「ロボ仙人? ガンダムとかスーパーロボットとかか? まァ、もう何が来ても驚かねェけど」

 

 もう流れ作業をするかの如く、銀時は切り替わるモニターを眺める。すると、映像が切り替わり、頭も胴どころか手と手の先も丸く、色が青い人が登場する。

 

『こんにちは。ぼくドラえもんです』

「あァ……そっちのロボね……」

 

 銀時は疲れたような眼差しで青い猫型ロボットを見る。

 

「ドラえもんじゃない!! ロボ仙人でしょ!!」

 

 洞爺湖仙人が訂正するとドラえもん――もといロボ仙人は丸く白い手を使って頭を掻いて謝る。

 

『あァ~、ごめんごめん。こんにちは、ぼくロボ仙人です』

「銀時さん! 凄いですよ! ドラえもんですよ!」

 

 なのはは興奮したように銀時の袖を引っ張るが銀時は「あァー、そうだね。凄いね」と力の籠らない返事を返した後、洞爺湖仙人に向けて気だるげな眼差しを向ける。

 

「つうかよォ、ドラえもんには必殺技はねェだろ。秘密道具はあるけど」

「ドラえもんではなくロボ仙人だ。まァ、そう急くな。すぐに分かる」

 

 洞爺湖仙人が腕を組んで言った時、

 

『助けてェ~!! ロボ仙に~ん!!』

 

 とおっさんの声のようなダミ声、もといおっさんのダミ声が聞こえてきたかと思うと、横からグラさんかけたおっさん――つまり長谷川泰三が現れ、ロボ仙人に抱き着く。

 

「のび太よりもダメな大人(マダオ)が現れやがった!!」

 

 銀時は現れたのび太よりもマジでダメな大人の登場に声を上げ、長谷川に抱き着かれたロボ仙人は彼の頭を撫でながら困ったような笑みを浮かべる。

 

『も~、はせ太くんは本当に〝マジで脱糞(だっぷん)よりもダメなおっさん〟、略してマダオだな~』

「ドラえもんめちゃくちゃ辛辣なんだけど!?」銀時は汗を流す。「原作でも言ったことないくらいキツイ言葉を笑顔で吐いてんだけど!?」

『それで? 一体なにがあったんだい?』

 

 ニコリとロボ仙人は笑顔で問いかけると長谷川は顔をバッと離して涙を流しながら話す。

 

『聞いてくれよロボ仙人! 就活うまくいかねェし、家ねェし、金ねェし、毎日公園のベンチで段ボールを布団にして寝てるし、誰も金貸してくれねェし、世の中みんな意地悪しだし、もうこんな生活嫌なんだァ~……!!』

 

 そう言って長谷川はまたわんわん泣いて涙を流しながらロボ仙人に抱き着く。猫型ロボットはその丸い手を使ってよしよしとはせ太くんの頭を撫でる。

 長谷川の生活の有様を聞いてなのはとフェイトは口を手で覆って瞳を潤ませる。

 

「「か、悲しすぎる……!」」

 

 あまりに惨い生活を送る長谷川に二人は同情を禁じえなかったようだが、

 

「いや、そもそも必殺技はどうした!?」 

 

 銀時だけはツッコミ入れ、洞爺湖仙人に顔を向けながらモニターに指を突き付ける。

 

「あいつらに至っては修行じゃなくてただの安っぽい三文芝居じゃねェか!! 必殺技のひの字も出てこねェぞおい!!」

「なにを言っている。既に必殺技は発動しているのだぞ」

 

 洞爺湖仙人の言葉を聞いて銀時は「あん?」と眉を顰め、洞爺湖はモニターに映る長谷川とロボ仙人にビシッと指を突き付ける。

 

「アレこそ必殺――『助けて~! ドラえも~ん!』なのだ!」

「それのどこが必殺技だ!! つうかロボ仙人呼びじゃなくなってんじゃねェか!!」

「まァ、見ていろ。ここからがこの必殺技の本領発揮だ」

 

 腕を組んでモニターを一瞥する洞爺湖仙人に言葉を聞いて銀時は訝し気に肩眉を上げ、モニターに目を向ける。

 

『もうこんな世の中いやだッ!!』と長谷川は吐き捨てる。『ロボ仙人!! こんな糞みてェな世界をぶっ壊す道具を出して!!』

「なにサラッと超病んだブラックな発言してんの!? この超絶ダメのび太!!」

『任せて!!』

 

 とロボ仙人は胸をポンと叩いてお腹にくっ付けたポケットからテテテテッテテーン!! と言う音と共にある道具を取り出す。

 

『地球破壊爆だ~ん!』

「ぎゃァァァァ!? なにとんでもねェ秘密兵器取り出してんだ!!」

「止めてェェェェ!! 私たちの世界を壊さないでェェェェ!!」

 

 銀時となのははロボ仙人の出した巨大なミサイルのような物を見て顔を真っ青にさせるが、洞爺湖仙人は得意げに語り出す。

 

「みたかッ!! これが必殺技――『助けて~! ドラえも~ん!』の威力よ!!」

「言ってる場合か!! つうかただの他力本願じゃねェか!!」

 

 銀時はツッコミ入れ、なのはは「あわわわわ!」とあたふたする。

 

「あの大きさの爆弾で星を壊せるの?」

 

 とフェイトだけは腕を組んで小首を傾げながら冷静な分析をする。

 

『やったァ~! これで嫌なこと全部消し飛ばせるぞ~!』

 

 長谷川はロボ仙人の出した道具を見て両手を上げて万歳し、その姿を見たなのははドン引きする。

 

「朗らかな声ですんごく怖い発言してるよあのサングラスの人!!」

「抱えてる闇デカすぎんだろ!! 生粋のサイコパスじゃねェか!!」

 

 さすがの銀時も顔面蒼白にさせている。

 このままでは地球滅亡してしまう事態に銀時となのははあたふたするが、相手が画面の向こう側ではどうすることもできない。

 そしてロボ仙人は『地球破壊爆弾』を持つ両手を振りかぶる。

 

『さァ~、これで君の悩みは全て解決だ!』

「ちょっと待てドラえもん!! さすがにそこまでやれと言ってない!!」

 

 顔を青くした洞爺湖仙人が慌てて止めようとし、フェイトは「あ、ドラえもんって言った……」と呟く。

 洞爺湖仙人の制止など聞かず、ロボ仙人の腕は止まることはなかった。

 

『いっくよォ~!』

「「ちょっと待て(待って)ェェェェェェ!!」」

 

 銀時となのはは手を出して叫んだその時、横から放たれた火炎放射によってドラえもんと長谷川の姿は爆弾を残して消え去る。

 

「「「ッ!?」」」

 

 まさかの展開に驚く洞爺湖仙人と銀時となのはだが、すぐに爆弾が支え失い地面に落ちようとしていることに気づく。

 

「「「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」」」

 

 もうダメだ!! と思った三人は叫び声を上げながら頭を抱える。

 だが、その瞬間だった――。

 画面の端から手が伸び、掌の先からブラックホールのような暗黒空間を作ったと思ったら、凄まじい吸引力で地球破壊爆弾を吸い込んでしまったのだ。

 

「「「「ッ!?」」」」

 

 驚く洞爺湖仙人、銀時、なのは、フェイトをよそに、謎の手は掌を握ってブラックホールを消し去る。そして手の主であろう人物の声が画面外から聞こえてくる。

 

『もォ~、ダメですよ長谷川さん、ドラちゃん。地球を壊したりなんてしたら』

「……えッ?」

 

 銀時だけがモニターから聞こえてくる朗らかな声に反応して声を漏らす。そして画面の横からゆっくりと歩いて来る人物が一人。

 その人物はTと言う文字がトレードマークの赤い帽子を被り、赤いシャツの上に青いオーバーオールを着た女性が画面の外より現れる。

 

「だ、誰……!?」

 

 なのはは見覚えない人物に困惑の表情を示すが、銀時には現れた女性が誰であるのかすぐに分かった。

 

「お、お前は――志村妙!!」

「志村妙って……新八さんのお姉さんですか!!」

 

 なのはは現れた人物の名を聞いて驚きの表情を浮かべ、銀時は洞爺湖仙人の胸倉を掴んでお妙に指を突き付ける。

 

「おい! なんだアレ!! お妙に一体どんな修行を付けやがったんだ!? さっきの一場面みただけでも戦闘力がおかしなことになってんぞ!!」

「し、知らん!! 私もあやつに師匠が付いて必殺技を体得しているなど聞いてない!!」

 

 洞爺湖仙人は腕をぶんぶん振って否定していると、モニターから別の声が聞こえてくる。

 

『いや~、洞爺湖~。危ないとこだったな~』

 

 すると現れるのはセンターがハゲ、頭にネクタイを巻いたスーツ姿の男だった。しかも男は若干酔っているのか、顔がほんのり赤い。

 モニターに映った男の姿を見て洞爺湖は驚きの表情を浮かべる。

 

「おと……ファザー仙人!!」

「お父さんだろ! アレお前のお父さんなんだろ!」と銀時。

「つまり、あなたが志村妙って人に必殺技を伝授してあそこまで強くしたってこと?」

 

 フェイトがファザー仙人に質問すると洞爺湖仙人の父は軽い口調で答える。

 

『いや~、俺はただの監視だよ~。あのキャバ嬢に必殺技を教えたのは~、この人たち~』

 

 モニターの映像が動き、一人の人物が映り込む。

 

『どうも、M仙人です』

 

 お妙と同じ格好をした髭を生やした配管工が右手を上げてあいさつする。

 

「マリオじゃねェか!! 妙の恰好でうっすら予想はしてたけども!!」

 

 するとマリオ――もといM仙人は何かを持ち上げて、モニターに移り込むようにする。それはピンクの丸い生物であり、謎の生物は小さな手を上げる。

 

『ポヨ!』

『こっちはピンク仙人です』とM仙人。

「カービィじゃねェか!」

 

 銀時は現れた仙人二人の本名をズバリ言い当て、なのはとフェイトはカービィを見て「かわいい……」と言いながら頬を誇ろばせる。

 一方、洞爺湖仙人はすかさず声を上げる。

 

「おと……ファザー仙人! 一人の者に師匠が二人付くなど私は聞いていないぞ!!」

『いやね、師匠を雇ったまではよかったんだけど~、この二人がちょっと余っちゃったからさ、俺のお気に入りのキャバ嬢の師匠にしちゃおうかな~って思って』

「なるほど、理由は分かった」

 

 洞爺湖仙人は腕を組んでうんうんと頷く一方で銀時はツッコミ入れる。

 

「いや、わかんねェよ!! なんでマリオとカービィから修行受けたらただのキャバ嬢が手から豪炎出したり、ブラックホール生み出せたりするんだよ!!」

「そこのところどうなのだ? ファザー仙人」

 

 洞爺湖仙人が聞くとファザー仙人は軽い口調で答える。

 

『いやさ~、なんかこのキャバ嬢飲み込みが早くて~……』

 

 チラリとファザー仙人がお妙に視線を向ける。

 

『お妙さァァァァァん!! あなたも修行を受けていたんですねェェェェ!!』

 

 すると突如としてゴリラマリオが登場し、お妙に向かって行く。その光景を見て銀時は頬を引き攣らせる。

 

「げッ! ゴリラ!」

「近藤さん!!」

 

 なのはが近藤の名を呼んだ直後、

 

『イヤッフゥゥゥゥ!!』

 

 とお妙は右手から全てを消し炭にせんほどの豪炎を近藤に向かって放ち、

 

『しかもペアルックなんて俺とあなたはやはり運命の赤い帽子で――!!』

 

 喋るゴリラマリオはGと書かれたトレードマークの帽子だけ残して跡形もなく消滅し、残った帽子も妙が左手から出現させた全てを飲み込むブラックホールへと吸い込まれていった。

 ファザー仙人は頭を掻きながら話す。

 

『スーパーサイヤ人くらい強くなっちゃったんだけど大丈夫かな?』

「なんでだァァァァァァ!?」

「近藤さんが消し炭になったァァァァァァ!?」

 

 銀時となのはがシャウトし、

 

「なるほど。右手で炎を左手で吸い込む力を使えるのか……」

 

 フェイトは冷静に分析する。すると映像が突如として切り替わり、マザー仙人の顔が映る。

 

『た、大変よ洞くん!!』

「ど、どうした!? おか、マザー仙人!!」

 

 洞爺湖仙人は母からの切羽詰まった声を聞いて汗を流し、マザー仙人は顔に焦りの色を浮かべて説明する。

 

『仙人戦争が勃発してしまったわ!!』

「せ、仙人戦争だとォォォォ!!」

「仙人戦争?」

 

 フェイトは首を傾げ、洞爺湖仙人は振り向いて説明する。

 

「仙人戦争とは、仙人同士の意見の食い違いや不一致から起こる仙人同士での戦いのことだ!!」

「それようはただの喧嘩だろ!! 聖杯戦争みたく言うな!!」

 

 銀時のツッコミを背に受けながら洞爺湖仙人はモニターに顔を向ける。

 

「マザー仙人よ!! 一体誰と誰が仙人戦争を!?」

『伊達仙人と聖剣仙人よ!』

「伊達政宗とセイバーが喧嘩してんのか!?」

 

 汗を流す銀時をよそに洞爺湖仙人はボタンを弄って映像を切り替える。

 すると聖剣仙人と伊達仙人が腕を組んで睨み合っている場面が映し出され、その光景を見て銀時は訝し気に目を細める。

 

「おい……あの二人なに喧嘩してんだ?」

「伊達仙人! 聖剣仙人! お前たちは何をしておるのだ!」

 

 洞爺湖仙人が声を掛けるが睨み合う両者の耳にはまったく届いてないようだ。

 伊達仙人が口元を吊り上げる。

 

『あんた確かセイバーだったか? 実物がこんなsmallなGirlとは思わなかったぜ』

「セイバーじゃなくて聖剣仙人ね!」と洞爺湖仙人。

『貴様は確か、伊達政宗だったか?』聖剣仙人は目を細める。『まぁ、私にはさして重要なことではいが』

「伊達政宗じゃなくて伊達仙人ね!」

 

 洞爺湖仙人がいちいち訂正する中、銀時はモニターの様子を見て口を開く。

 

「おいおい、なんかプチ聖杯戦争が始まりかけてんじゃねェか。喧嘩の原因はなんだ?」

 

 聖剣仙人はビシッと伊達仙人に指を突き付け、涎を垂らしながら吠える。

 

『貴様の弟子のマヨネーズと部下が持っている立派な野菜を私に寄越せェェェ!!』

「お前騎士王じゃなくてただの盗賊じゃねェか!」

 

 と銀時がツッコミ入れてると彼女の弟子の神楽も涎を垂らしながら横に立つ。

 

『そうアル!! 野菜にとってマヨネーズは最高の相棒ネ!! 私も師匠も腹ペコなんだヨ!! とっとあるだけの野菜もマヨネーズも全部寄越すヨロシ!!』

 

 すると伊達仙人の横に土方が並んで異を唱える。

 

『俺のマヨネーズはテメェらの胃袋を満たす為にあるんじゃねェよ。とっと帰りなファッキュー』

 

 土方が親指を下に向ける。

 

「つうかおめェはそのエセ英語止めろ!! 聞いててイラっとくるんだよ!!」

 

 銀時は怒鳴り声を上げると、聖剣仙人はエクスカリバーを出現させる。

 

『よかろう。ならば我が剣の錆にしてくれる。続け! 神楽!』

『うっす! 師匠!』

 

 神楽も手の平に拳をバシ! と叩きつけて気合を入れる。

 するとどこからともなくプリキュア仙人が現れ聖剣仙人を宥めようとし、更にプリキュア仙人二号も現れて神楽を止めようとする。

 

『まぁ、まぁ、落ち着いてください』

『そうよ。お野菜なんていつでも食べられるでしょ?』

「どっから出て来たプリキュア共!!」

 

 銀時がツッコミ入れると聖剣仙人と対峙していた伊達仙人が六本の刀の柄を指の間に挟んで引き抜く。

 

『俺のDiscipleの持ちもんと小十郎の野菜を奪いおうなんざ良い度胸だ。いいぜ? 龍の逆鱗に触れようとする行為がいかに恐ろしいか教えてやる。それに、一回騎士王って奴と勝負してみてェと思っていたところだ』

『俺のマヨネーズを奪おうするとは、お前たちにはデットエンドがお似合いだ』

 

 土方も伊達仙人の横に並んで刀を引き抜く。

 すると今度はどこからか現れたのか忍者仙人が伊達仙人と土方を止めに入る。

 

『伊達の兄ちゃんも土方の兄ちゃんも落ち着けって。別に喧嘩する必要はねェってばよ』

 

 続いてその弟子である桃太郎山崎と浦島山崎と金太郎山崎が出てくる。

 

『まっまっまっまっ、落ち着てください。副長も独眼竜さんも』

『あの二人もお腹が減って気が立ってるだけなんですし』

『そ、そうですよ。ここは穏便にいきましょう』

「気持ちワリーんだよ太郎共!! 必殺技駆使して止めに入んな!!」

 

 ところせましとわらわら出てくる山崎太郎たちを見て銀時は怒鳴り声を上げる。

 

『離せニチアサの化身! 貴様らのように良い子ちゃんぶった連中に我ら深夜枠の気持ちなど分かるまい!!』

 

 プリキュア仙人に止められている騎士王がその手を振りほどき、

 

『そうアル!! お前らみたいに見た目だけ着飾ったヒロイン共に私たちは止められないネ!! 深夜に移ったアニメを舐めんじゃねェぞ!!』

 

 神楽も声を荒げてプリキュア仙人二号の手を振りほどく。するとプリキュア仙人二号は頬を膨らませる。

 

『ひっどい! そんな言い方ないでしょ!』

『そうですよ! プリキュアを見た目だけで判断しないでください!!』

 

 相棒のプリキュア仙人も少しばかし怒りを見せ始める。

 その様子を見ていた銀時は場の雰囲気が悪くなっていく様子を見て汗を流す。

 

「おいおいおいおい。なんか朝と夜のヒロインが喧嘩始めそうになってんぞ」

「よすのだプリキュア仙人!! 聖剣仙人!! 朝枠と深夜枠の喧嘩など誰も望みはしない!!」

 

 洞爺湖仙人が止めようとするが聖剣仙人も神楽も止まりそうにない。

 

『独眼竜の前にまずは貴様ら着飾った小娘共を叩き切る!!』

 

 聖剣仙人がプリキュア仙人たちにエクスカリバーの切っ先を向け、神楽に顔を向ける。

 

『神楽よ!! 私が与えた〝必殺の剣〟でこやつらをねじ伏せるぞ!!』

『おっしゃァァァ!!』

 

 神楽が気合の咆哮を上げて何かを手に持って構える。それなんとギルガメッシュだった。

 

「なんで英雄王を武器にしてんだァァァァ!!」

 

 銀時がシャウトし、神楽に足を持たれながら腕を組んで直立不動のギルガメッシュは口を開く。

 

『騎士王よ。この小娘の剣になれば、(おれ)と一回〝でーと〟してくれるのだな?』

「嘘だろ!? お前たかだかそんなことの為に剣になったの!?」

 

 銀時はビックリし、聖剣仙人はジト目で返事する。

 

『あぁー……はいはい。〝一応〟考えておきます』

『よし小娘!! (おれ)を存分に使うがいい!!』とギルガメッシュは気合を入れる。

「お前それでいいの!? ホントにそれでいいの!? その邪悪な騎士王絶対お前とデートする気ねェぞ!!」

 

 だが銀時のツッコミなど連中の耳にはまったく届きはしない。

 聖剣と英雄王を構えたエロゲヒロインとゲロインに対抗せんが為、少女たちに夢と希望を与えるヒロインたちも構えを取る。

 

『行くぞォォォォ!!』

『死ねおらァァァァァ!!』

『『はァァァァァ!!』』

 

 深夜枠のヒロインと朝枠のヒロインたちがぶつかり合おうとしたその時、

 

『――よすのだ少女たちよ!!』

 

 突如として現れたライダー仙人が両陣営がぶつかるであろう地点に降り立つ。

 

『『『『ッ!?』』』』

 

 プリキュア仙人たちと聖剣仙人たちの四人は突如現れたライダー仙人に驚き、動きを止める。

 そして突如現れたライダー仙人は聖剣仙人とプリキュア仙人たちに向かって両腕を突き出す。

 

『これ以上無益な争いは止めるのだ!! 決して何も得られはしない!!』

 

 ライダー仙人の雄姿を見て伊達仙人を止めていた忍者仙人はガッツポーズを取る。

 

『さっすが初代ライダーだってばよ! 歳の甲は違うぜ!』

『そうですよ、神楽ちゃんもプリキュアちゃんたちも争いは止めましょう』

 

 するとライダー仙人の弟子となり改造手術まで受けそうになっていたはずの新八の声が聞こえてくる。

 

「あ、新八もいたのか」

「無事だったんですね!」

 

 銀時とはのはは安堵する。

 そして現れたのは、

 

『もォ~、神楽ちゃんだって僕と同じで中の人がプリキュアに出てたんだからそんなにつっけんどんしなくてもいいでしょ?』

 

 浮遊する眼鏡。そしてその眼鏡から新八の呆れたような声が聞こえてくる。

 

「「…………」」

 

 浮遊する眼鏡が喋る光景を見て銀時となのはの表情が固まる。そしてライダー仙人は嬉しそうに握り拳を作って声を出す。

 

『よく言ったぞ新八! いや、仮面ライダーグラス!!』

『いえいえ。僕だってもう〝仮面ライダー〟の一人ですから』

 

 アハハハ、と浮遊しながら笑う眼鏡。

 銀時は真顔で声を漏らす。

 

「…………あのォ……なのはちゃん」

「…………なんですか?」

「……俺にはー……眼鏡から〝新八の声〟が聞こえてくる気がするんだけど……気のせいかな?」

「あ、銀時さんにも聞こえますか? 実は私もあの眼鏡からはっきり新八さんの声が聞こえます」

「そうかー……やっぱ聞こえるかー……」

「えぇー……聞こえますねー……」

 

 などと生気の籠ってない声で会話を続ける二人の後ろでフェイトが告げる。

 

「眼鏡の人、体を眼鏡そのものに改造されたようだね」

 

 フェイトの言葉を聞いて銀時は頭を掻き、なのはは息を吐き、

 

「「なんだ(なに)あれェェェェェェェェェェェ!?」」

 

 同時にシャウトする。

 そして銀時となのはは捲し立てる。

 

「おィィィィィィ!? アレどうなってんだ!? アレホントにどうなってんだ!?」

「なんで体が眼鏡しかないのに生きてるんですか!? 生物の法則すら超越しちゃってますよ!!」

『あ、銀さんとなのはちゃん。さっきぶりですね』

 

 と朗らかな声でモニター越しに挨拶する新八(めがね)の言葉を聞いてなのはは心配そうに声を掛ける。

 

「新八さんなんでそんな平然としていられるんですか!? 体を眼鏡だけにされてなんでそんなに穏やかに会話できるんですか!?」

『なのはちゃん……僕は分かったんだよ。眼鏡は僕であり、僕は眼鏡だってね』

「なんか改造されて悟り開いてるゥゥゥ!!」と銀時。

「新八さん帰って来て!!」となのはは訴える。「あなたは普段から本体は眼鏡じゃないって訴えたじゃないですか!!」

「安心してなのはちゃん。眼鏡と一心同体となった今――眼鏡が本体かどうかなんて今の僕には関係ないんだ!!」

 

 とキッパリ告げる新八の言葉を聞いて銀時は顔を真っ青にさせる。

 

「ごめんね!! 普段眼鏡が本体とか言ってホントごめん!! だからいつものツッコミが得意な新八くんに戻って!!」

「安心してください銀さん! 今の僕は戦力的にも問題ありません! レンズからビームだって発射できます! この特別回が終わったら一緒に万事屋として頑張りましょう!」

「嫌だァァァァァ!! ビーム発射する眼鏡と一緒に万事屋なんて俺絶対ゴメンだからな!!」

 

 銀時は頭を抱えて叫んだ後、

 

「おい! うちの従業員になんつう改造手術施してくれてんだこのショッカーライダー!!」

 

 ライダー仙人に怒鳴り散らすが、相手はスルーしてプリキュア仙人組と聖剣仙人組に交互に顔を向ける。

 

『今一度お互いによく話し合え。話せばきっとわか――』

『黙れよバッタじじい』

 

 神楽の辛辣な一言にライダー仙人は言葉を閉ざし、その仮面に影が差す。するとプリキュア仙人たちも言い放つ。

 

『昭和の人は話に入ってこないでください!』

『そうよ! これは平成アニメヒロインの問題なの! 予算カツカツの特撮の出る幕はないの!』

 

 辛辣な言葉をぶつけられる度にピクッ、ピクッ、とライダー仙人の肩が動き、より仮面の影が濃くなる。そしてライダー仙人はゆっくりと両手を下ろして、空を見上げる。

 

『…………新八よ。分かっているな?』

『えェ、師匠。もちろんです』

 

 新八(めがね)は神楽と聖剣仙人にレンズを向け、

 

『夜の時間を制し……』

『朝のキッズタイムを制し……』

 

 ライダー仙人はプリキュア仙人たちにファイティングポーズを取り、師弟は同時に言い放つ。

 

『『――全ての時間をライダー一色へと変える!!』』

「いい歳した大人がキレんの早すぎだろ!! 少しは耐えろよ!!」

 

 銀時がツッコム中、まず最初に動くのは新八(めがね)だ。

 新八(めがね)は神楽と聖剣仙人にその目と言うかレンズを向ける。

 

『神楽ちゃん!! セイバーさん!! 深夜の時間は僕たちライダーがもらいうけます!!』

『ふざけんじゃねェゾ!!』

 

 と神楽はギルガメッシュを構えながら怒鳴る。

 

『深夜は大きなお友達がヒロインのエロシーンを見て聖剣を発動する時間なんだヨ!!』

「ふざけんてんのお前の意見!!」

 

 と銀時がツッコミ入れると聖剣仙人もエクスカリバーの切っ先を新八(めがね)に突き付ける。

 

『その通りだ! 深夜と言う枠はヒロインの枠なのだ!! 男キャラはお呼びではない!!』

「んなワケねェだろ!! 偏見を生むような発言するんじゃねェ!!」

 

 銀時がツッコミ入れると眼鏡は荘厳な口調で話し始める。

 

『ならば! ライダーの技を持ってして、その枠を貰い受ける!』

「そもそも今のお前のどこにライダー要素があるんだよ!!」

 

 銀時がツッコミ入れる一方でライダー仙人とプリキュア仙人たちも対峙していた。

 

『8時半以降を手に入れ、ニチアサキッズタイムをニチアサボーイズタイムにさせてもらう!』

 

 とライダー仙人がフェイティングポーズを構えながら言い放つと、プリキュア仙人とプリキュア仙人二号が言葉を返す。

 

『そっちがその気なら……』

『あなたを倒して8時以降をニチアサガールズタイムに変えてみせる!』

「いや、そいつ倒しても8時は手に入らないからね?」

 

 と銀時がさり気にツッコムと同時にヒロインとヒーローの火花が切って落とされる。

 まず眼鏡がレンズにエネルギーを溜め、ライダーは空高くジャンプする。

 

『ライダービィィィィム!!』

『ライダーキィィィィク!!』

 

 仮面ライダーグラスはレンズがからエネルギーを開放して聖剣仙人たちに放ち、ライダー仙人は十八番の蹴り技をプリキュア仙人たちに向けて放つ。

 すると攻撃を受けた者たちも反撃の技を放つ。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)ァァァァァァ!!』

英雄王は投げる矢(ギルガ・アーチャー)ァァァァァァ!!』

 

 聖剣仙人はエクスカリバーから輝く一撃を放ち、神楽はギルガメッシュをぶん投げる。

 プリキュア仙人たちもリンクルステッキを取り出し、杖の先端構える。

 

『『プリキュア! ダイヤモンド! エターナル!!』』

 

 プリキュア仙人たちは杖の先端から巨大なダイヤを作り出して放つ。

 三組が各々の必殺技を一斉に放ち、ぶつかり合い、光が明滅し始める。

 その光景を見て銀時は焦り、頭抱える。

 

「おィィィィ!! ついに番組時間枠を賭けた決戦が勃発しちまったぞ!! どうすんだコレ!!」

「皆さん落ち着いてください!!」

 

 なのはも焦り、声を出して止めようとする。

 すると今度は別の二組が突如として乱入してくる。それは雷仙人と定春にM仙人とピンク仙人だった。

 

『ピカッ! ピカチュー!(定春くん! 彼らを倒してニチアサと深夜をマスコットタイムへと変えるんだ!!)』

「おめェはゴールデンタイム確保してんじゃねェか!!」

 

 銀時はツッコミ入れ、雷仙人の鳴き声に呼応してピカチューのような耳と尻尾を生やし、全身が黄色くなった定春が鳴く。

 

『ワンワン! ワゥーン!!(時代はヒーローでもヒロインでもない!! マスコットたちの時代なんだァァァァ!!)』

「つうかお前になにがあったァァァァ!?」と銀時は定春の変容を見て驚く。「ポケモンなのか!? ネズミなのか!? 犬なのか!? うちのマスコットがただのバケモンになっちゃったんだけど!?」

 

 すると現れたもう一組のM仙人とピンク仙人も声を張り上げる。

 

『待て待てェェェ!! ポケモン放送枠拡大ではなく、アニメマリオを放送させるんだ!!』

『ポヨォ!!(アニメ復活させて!!)』

「同じ会社のキャラで争うなァァァァァァ!!」

 

 と銀時がシャウトする。

 

『ピカチュゥゥゥゥ!!』

『ワゥゥゥゥン!!』

 

 と雷仙人と定春は体から電気を放電させる。するとM仙人は手から炎を放ち、ピンク仙人は口を大きく開けて吸い込みを始める。

 他作品同士での必殺技合戦になってしまい、忍者仙人が止めに入っていた伊達仙人の闘争心にまで火が付く。

 

『おもしれェ!! こんな多種多様な連中とPartyが出来るとは思わなかったぜ!! もう黙って見ていられるか!!』

 

 伊達仙人は指に挟んだ六本の刀で構え、忍者仙人たちの振りほどき駆け出すと、弟子の土方も刀を構えて後に続く。

 

『マヨネーズパリィだ!!』

『止めてください!!』

 

 突如としてお妙が両手を出して伊達仙人と土方の前に立ちはだかり、争いを止めようとする。

 

『奥州筆頭がそんな少年マンガみたいな動機で争いの炎を広げてどうするんですか!! 少しは大人になってください!!』

 

 しかし、お妙の制止で伊達仙人は止まらない。

 

『なら力づくで止めてみな!! 一度火が付いた俺のheartはそう簡単には止まらねェぜ!!』

『いい加減にしろコラァァァ!! 私が止まれつったら止まんだよ歴史捏造ゲームがァァァ!!』

 

 とお妙は青筋浮かべて右手に巨大な火球を作り出し、左手にブラックホールを作り出す。

 

「お前が大人になれェェェェ!!」と銀時はシャウト。「つうか最後のセリフは銀魂キャラのおめェが言えたセリフじゃねェからな!!」

 

 伊達仙人は六本の刀を構え、

 

『WAR DANCE!!』

 

 青い電撃を放ちが振りかぶる。

 そして土方も刀を構え振りかぶる。

 

『マヨネーズドラゴン!!』

 

 すると振りかぶった刀から大量のマヨネーズが吹き出し辺りに飛び散る。それを見て銀時はツッコミ入れる。

 

「マヨネーズドラゴンってなんだ!? ただ単にマヨーズ周りにまき散らしてだけじゃねェか!!」

 

 お妙は出現させた火球さらに大きくし、

 

『マンマミィィアァァァァアアアアアア!!』

 

 手の先から全てを焼き尽くさんばかりの豪炎を繰り出す。

 

「おいヤベェよ!! さっき見たマリオのファイアボールが超ショボく見えるんですけど!!」

 

 銀時は完全に戦闘力が別次元へと到達したお妙に戦慄する。

 もう戦いを止められないと感じたのか忍者仙人は拳を握り、山崎に顔を向ける。

 

『仕方ねェ!! 山崎太郎たち! 俺たちだけでも技を使って皆を止めるぞ!!』

『ええええ!?』 

『ちょっと待って下さい師匠!』

『俺分裂しかできないんですけど!!』

 

 顔を青くする山崎三太郎たちに構わずナルトは影分身を使い、風の性質変化を利用して一つの玉を作り出す。

 

『螺旋丸!!』

 

 そして乱回転する玉を構えながら駆け出す。

 

『『『こなりゃァやけくそだァァァァ!!』』』

 

 山崎三太郎も激戦地へと駆け出す。

 全キャラ総出の乱闘騒ぎを見て銀時は顔を真っ青にさせ、頭を抱える。

 

「おィィィィィィ!? マジでこれどうすんだ!? 聖杯戦争なんて目じゃねェよこれ!! どう収集つけるつもりなんだよ!!」

 

 モニター内で行われるのは光と爆発と叫び声がミックスされたまさに紛争地帯も真っ青な激戦だ。

 洞爺湖仙人はモニターの映像で繰り広げられる最終戦争に絶句するが、やげて操作盤に両手の拳をバン! と叩きつけ、拳と声を震わせる

 

「…………おしまいだ……!  一人一人のキャラのアクがあまりにも強過ぎたんだ……!!」

「おめェらがあのオールスター共を呼んだんだろうが!!」と銀時。

「早く皆を止めて下さい!!」

 

 となのはが必死に頼むが、洞爺湖仙人は首を横に振る。

 

「もう手遅れだ……! 仙人戦争が始まってしまった以上……必殺技伝授も『リリカルなのは』討伐も、全ては水泡に帰す……!! 我々に止める手段はない……!!」

「あなたの持つ必殺技でなんとかならないの?」

 

 フェイトが冷静に問いかけると洞爺湖仙人は汗を流しながら声を絞り出す。

 

「無理だ……! そもそも連中と私とでは必殺技のレベルが違う!!」

「どんだけ使えない上に無責任なんだよおめェは!!」と銀時が文句言う。

「だってしょうがないじゃないじゃん!!」

 

 洞爺湖仙人はガバッと振り向いて涙を鼻水を垂れ流しながら喚く。

 

「強くて凄くてカッコいい必殺技伝授させたかったんだもん!! だから特別回利用してあいつら呼んだのに、あんなに融通の利かない連中だなんて思わなかったんだもん!!」

「もんじゃねェよ!! 仙人の癖に泣き言言うな!!」

「俺はもう仙人じゃありませーん!! ただのネット小説作家です!! だから責任は発生しません!!」

「テメェ……!!」

 

 さすがの銀時も堪忍袋の緒が切れて洞爺湖仙人に掴みかかろうとした時、

 

『――諦めるのはまだ早いわよ洞くん』

「「「ッ!!」」」

 

 突如モニターから聞こえてきた声に洞爺湖仙人と銀時となのはは反応し、画面に視線を向ける。

 

『私たちにはまだ希望が残っているの。この仙人戦争(ラグナロク)を止める為の希望が』

 

 映っていたのはパンチパーマのマザー仙人だった。その姿を見て洞爺湖仙人は涙を流しながら声を上げる。

 

「マザ……お母さんんんんんんん!!」

「ついにお母さん言っちゃよ!!」

 

 と銀時がツッコミ入れ、モニター映ったお母さんは優し気な表情で告げる。

 

『洞くん。私たちにはこの不毛な戦いを止める為の最後の必殺技が残っているじゃない』

「どうするつもりなんだお母さん! まさか、あのバケモノ共を止めに行くつもりなのか!!」

「紛いなりにも有名作品の主人公たちをバケモノ呼ばりってどうなの?」

 

 と銀時はジト目向け、洞爺湖仙人は母の覚悟の決まった顔を見て必死な声で説得する。

 

「無茶だ! いくらなんで相手が悪過ぎる!! こうなったら荷物まとめて家族全員で別の仙界に逃げる以外に我々に道は残されていない!!」

「清々しいまでに無責任ですね、この人……」

 

 となのはは洞爺湖仙人の言動に呆れ果てる。

 すると画面の横から別の人物が現れる。

 

『洞爺湖。お前は必殺技のなんたるかをまだ理解していないようだな』

「お父さん!!」

「ついに直球でお父さんつっちゃったよ。ファザーのファの字も言わなくなったよ」

 

 銀時がツッコミ入れる中、現れた洞爺湖仙人のお父さんは真剣な表情で語り掛ける。

 

『よいか洞爺湖。必殺技とは、凄いだとか、派手だからとか、カッコいいだからとか、強いとかだからで手に入れる物では決してない』

『まして誰かを倒す為の物でもないの』

 

 と洞爺湖の母は語ると息子は必死に問いかける。

 

「では一体なんの為に必殺技は存在するのだ!! バトルマンガの主人公にとって必殺技はなくてはならない代物なのだぞ!!」

「これ小説なんだけど?」とフェイト。

『いい、洞くん。よく聞いて』

 

 と洞爺湖のお母さんは優し気な口調で語り掛ける。

 

『あなたは必殺技の威力や見た目だけじゃない、キャラの強さと言う概念に囚われ過ぎていたのよ』

 

 すると洞爺湖のお父さんは首を横に振って告げる

 

『必殺技を身に着けたからと言って、全てが思い通りになるワケでも物事が上手くいくワケではない』

「ねェ、なんの話してんのこいつら?」と銀時「必殺技談義している暇あったら後ろでドンパチやってる連中止めてくんない?」

「で、では……一体必殺技とはなんなんのだ!?」

 

 と洞爺湖仙人は狼狽えながら問いかける。

 

「必殺技とは我々に――主人公に何をもたらすものなのだ!!」

 

 洞爺湖の必死な問いかけに対して母と父は薄っすらと笑みを浮かべて口を開く。

 

『そんなことは決まっているじゃない』

『〝大切なモノ〟を――守る為さ』

 

 暖かな目で自分を見る両親の言葉に洞爺湖仙人は目を見開き、

 

「おかあ……さん……。おとお……さん……」

 

 涙と鼻水を垂れ流す。

 

「ねェ、なんでドラマチックな感じになっての? 元はと言えば、全部コイツらのせいだよね?」

 

 と銀時は冷たく告げる。

 やがて仙人夫婦はカっと目を見開く。

 

『私たちの大切なモノを守る為!』

『この無益な争いを終わらせる為!』

『『ここに見せよう!! 究極の必殺技を!!』』

 

 二人はバッと画面外へと飛び退き、モニターには二つの影が映り込む。

 

「「「「あ、あれは……!!」」」」

 

 モニターを見ていた四人は二つの影を見て驚きの声を上げる。そして画面外の外から夫婦仙人たちは力強いく言い放つ。

 

『力も派手さを持たぬとしても!』

『誰からも望まれぬとしても!』

『『この必殺技は全ての戦いに終止符を打つ!! その名は――!!』

 

 二つの影はゆっくりと前へと歩き、

 

『『タマキュア!!』』

 

 初代プリキュアの恰好をしたおぞましいババア共がポーズを取る。

 すると戦闘を行っていた連中の動きが一斉にピタリと止まり、黒と白のタマキュアを見る。

 

『やっぱり原点回帰こそ!』

『一番デスネ!』

 

 そしてタマキュアはうふっとウィンクする。

 

『『『『『オ”ェェェェェェェェェェェェ!!』』』』

 

 まるで噴火でも起こったかのようにその場に居た連中全員が嘔吐感に襲われ、地面に両手両足を付いて苦しみ出す。

 

『『オ”ェェェェェェェェェェェ!!』』

 

 タマキュア登場させたお父さんとお母さんも苦しみ、

 

「「「「オ"ェェェェェェェェェェ!!」」」」

 

 モニターを見ていた四人も苦しみ悶えるのだった。

 

 

「えェ……色々騒動もあったが、なんとか一件落着したようでなによりだ」

 

 と腕を後ろ組んだ洞爺湖仙人が少し後ろに父と母を立たせ、今まで出て来た仙人や弟子たち、そして銀時たち全員の前に立って語る。

 

「私も色々と学んだ。必殺技がなんたるか、必殺技がいかなるものなのか」

 

 ちなみに一部だが消えちゃってる仙人と弟子がいるが、彼らのことは追及しない方がいいだろう。

 

「私は改心した。今の私にはリリカルなのは討伐の野心も、カッコいい必殺技に拘る心も捨て去り、新たな心境でこの究極の必殺技を皆にも平等に伝授させるべきだと決意した」

 

 洞爺湖仙人は立っている仙人たちの間を歩き、一番後ろで聞いてた銀時の元まで歩く。そして銀時の肩をポンと手を乗せる。

 

「さァ、みなで覚えるぞ。究極の必殺技――『タマキュア』を」

 

 銀時、なのは、フェイトだけではない、その場にいたお登勢とキャサリンを抜いた仙人や弟子たちも瞳を赤くギラつかせる。

 

「「「「「いるかァァァァァ!!」」」」」

 

 そして全員が洞爺湖仙人に飛び掛かるのだった。

 

 

「ッ!」

 

 銀時はパッと目を覚ます。そしてゆっくり上半身起き上がらせ、周りを見る。今、自分が寝ているのはリビングのソファーであり、日付変更線を超えているらしく、外は真っ暗だ。

 おもむろに頭をボリボリ掻くと、突如として嘔吐感が銀時に襲い掛かる。

 

「うッ!」

 

 銀時慌てて立ち上がり、電気も付けぬままにトイレに駆け込む。

 廊下の途中でトイレから出て来たのかアルフとすれ違うが、今の銀時にはあいさつをしている暇はなく、トイレの便座に手を付いてオェオェと口から吐しゃ物を吐き出す。

 そんな銀時の様子を眺めていたアルフはボソリとジト目で呟く。

 

「飲み過ぎだよ……」

 

 

 

 時刻は朝になり、なのはは海鳴公園にユーノを連れてやって来ていた。

 公園のソファーに立つユーノは訝し気になのはに質問する。

 

「なのは、どうして急に技の練習したいなんて言い出したんだい? 一応学校でもレイジングハートと一緒に〝あの技〟のイメージトレーニングはしてるんだよね?」

「アハハ……ちょっとね」

 

 ユーノの言葉を聞いてなのはは頬を掻きながら苦笑した後、赤い宝石の姿のレイジングハートを握り絞めながら空を見上げ、呟く。

 

「やっぱり……大事な事をやり抜く為にはちゃんとした切り札が必要だと思ったの……」




ちなみにこの話を投稿した理由としては、当時はこの特別回ハーメルンに投稿すべきかどうか迷っていたんですが、まー良いかなーっと考え方が緩やかに変わって来たので、余裕がある今頃投稿した次第です。

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