魔法少女リリカルなのは×銀魂~侍と魔法少女~   作:黒龍

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今回の話はサブタイトルの通りPixivで投稿した2017年の年末年始特別回を少し手直ししたものになります。
時系列的には31話~32話辺りになります。

次話は少し時間を置いて手直しが出来次第投稿します。


特別回編:2017年明け
2017年明け前編:二度あることは三度ある


 ――目覚めよ。目覚めるのだ――

 

「…………んァ?」

 

 突如として頭から響いてくる謎の声を聞き、坂田銀時はゆっくりと瞼を開け始める。

 

 ――悠久なる時に大きな変化をもたらす時がついにやってきた――

 

「…………ん?」

 

 フェイト・テスタロッサの瞼もゆっくりと開け始める。

 

 ――内なる力、秘めし能力を開放し……――

 

「…………んん?」

 

 そして最後に瞼を開けるのは高町なのは。

 

 ――真なる敵を撃ち滅ぼす時がついにやってきたのだ――

 

 銀時、フェイト、なのはの三人は川の字を描くように横に綺麗に並んで寝ており、頭に響く謎の声に導かれるように瞼を開けながら糸に釣られた人形のようにゆっくりと体を起こす。

 

「…………ッ!」

 

 意識が覚醒した銀時が自身の周りの異変に気付き、辺りを見渡し怪訝な表情を浮かべる。

 

「……どこだ……ここ?」

 

 今、銀時のいる空間には一切の光すら見えないほどの暗闇がどこまでも広がる――まさに暗黒の世界だ。

 

「……銀時、おはよう」

 

 フェイトも意識が覚醒し、眠たげに目を擦りながら呑気に朝の挨拶をする。

 

「ぎ、銀時さん!? ふぇ、フェイトちゃん!?」

 

 そして驚きの声を上げるのは左端で寝ていたなのは。

 少女は今現在ジュエルシード争奪の為に敵対関係に近い間柄となっている二人が目を覚まして隣で寝ていることに若干パニックになっているようだ。

 

「よォ、なのは。おはようさん」

 

 しかし銀時はマイペースに手を上げてなのはへと朝のあいさつをする。

 

「お、おはようございます……」

 

 なのはは戸惑いながらも律儀に頭を下げて銀時に挨拶を返す。

 なのはからあいさつを返された銀時は頭をボリボリと掻きながら「さてと」と言って立ち上がり、銀時に続くようにフェイトも体を起こす。

 なのはは二人の行動を見て、何をするんだろう? と言いたげな視線を向けながら観察している。

 銀時はフェイトに顔を向け、フェイトは銀時の顔を見つめ、二人はゆっくりと首を縦に振る。

 

「よし、フェイト」

 

 銀時はフェイトの肩に手を置く。

 

「なんか余計な連中いねェし、なのはからジュエルシードぶん捕る絶好のチャンスだ」

「バルディッシュ!」

 

 フェイトは自身の愛機のデバイスを待機状態から起動させ、黒い戦斧へと姿を変えさせ、更には私服の姿から布地の薄そうな黒いバリアジェケットと黒いマントを羽織った姿へと服装を変化させる。

 

「えええええええええええええええええええ!?」

 

 微妙な空気からの戦闘空間への急な変化になのははビックリする。

 

「ちょッ、ちょっと待ってください!」

 

 なのはは慌てて両手を出してバルディッシュを構えるフェイトを制止させようと声を出す。

 

「今はジュエルシードを掛けて戦ってる場合じゃありません!!」

「なに言ってんだ」銀時は気だるげな眼差しで説明する。「ジュエルシードを持ったおめェは俺たちに言わせれば、旨そうな肉を首にぶら下げてライオンの前に立った子ウサギみてェなもんだ。こんなジュエルシード大量ゲットの千載一遇のチャンスを俺たちが逃すと思ってんの?」

「それお肉いりませんよね!?」

 

 となのはがツッコミ入れるとフェイトはバルディッシュを構え鋭い眼光をなのはに向ける。

 

「怪我をしたくなければジュエルシードを渡せ」

「二人共言ってることもやってることも完全に悪党ですよ!?」

 

 押し入り強盗に近い行動をし始めた二人になのははギョッとする。だがなのはは尚も食い下がる。

 

「ジュエルシード争奪をする前に周りの状況を見てよく考えてみてください! なにか違和感を感じないんですか!?」

「あん? 違和感?」

 

 なのはの言葉を聞いて銀時は肩眉を上げながら再び暗黒の空間を見渡す。そして徐々に怪訝な表情を浮かべ始める。

 

「……そういやァ、なんでこんなに辺り真っ暗なのに俺たちの姿がはっきり見えるんだ?」

 

 しかもどこか見覚えがあったかもしれないようなしれなくもないような光景に銀時はより怪訝そうな表情を浮かべる。

 

「それに、君が私たちと一緒に寝ていたこともよくよく考えれば不可解だ……」

 

 続いてフェイトもなのはを一瞥しながら自分たちの置かれた不可思議な状況に気づいたのか、怪訝そうにあたりを見渡し始める。

 やっと自分から敵意を無くしてくれた二人になのはは安堵したように息を吐き、不安そうな表情で更に言葉を投げかける。

 

「そもそも、私たち全員寝間着じゃなくて私服なんですよ? こんな絶対おかしいですって」

「銀時、どうする?」

 

 フェイトも若干不安げに自分よりも歳が高い大人の銀時の顔を見る。すると銀時は頭をぼりぼり掻きながら口を開く。

 

「まァ、なんだ……。こりゃあもう、やること決まってんだろ?」

「「それは?」」

 

 なのはとフェイトは同時に質問すると銀時はなのはに人差し指を向ける。

 

「フェイトがなのはからジュエルシードを頂戴する」

 

 するとフェイトがバルディッシュから金色の鎌のような刃を出現させる。

 

「バルディッシュ! アークセイ――!」

「なんで!?」

 

 なのははつい反撃の準備ではなくツッコミをする。

 

「なんでそうなるんですか!? まずは私たちの置かれた状況の解明じゃないんですか!? そもそもフェイトちゃん素直過ぎるよ!! 少しは銀時さんの意見に疑問持とうよ!」

「わかったわかった」

 

 銀時はめんどくさそうに頭をぼりぼり掻きながら右の掌を出す。

 

「じゃあ、寝るか」

 

 銀時はそのまま右腕を枕に寝ると、フェイトも銀時の横で仰向けになって寝る。

 

「だからなんで!?」

 

 そしてまたなのはがツッコミ入れ始める。

 

「なんで二度寝!? おかしいですよね!? この状況で寝るってどう考えても正しい行動じゃないですよ!? だからなんでフェイトちゃんは銀さんと一緒に天然な行動しちゃうの!?」

「あのなァ……」銀時は体を起こしてやれやれと言った顔で説明する。「これはアレだ。間違いなく夢だ。だって状況を整理したらどう考えても夢で間違いないだろ? お前が俺たちと一緒に寝ているとか、光源もねェのにお互いの姿見える空間とか、どう考えても夢の世界以外ありえねェだろ」

「た、確かにそうですけど……」

 

 なのはは銀時の最もな意見を聞いて戸惑いの色を見せながら納得し始めている。そして銀時はまた右腕を枕にして目を瞑る。

 

「どうせ夢なんだから何考えても無駄だよ。目が覚めるまで寝て待つだけだ」

「目を覚ます為に寝るってなんか、おかしくありません?」

 

 銀時の矛盾ありまくりの行動になのはは呆れたように腕をだらんと垂れさせる。

 

「とにかくお前も寝ろ。そんで後は時間が解決して――」

 

 ――いくら寝ようが、お前たちはこの世界より出ることはできん――

 

「「「ッ!?」」」

 

 突如として聞こえてきた謎の声に三人は驚きの表情を浮かべ、銀時とフェイトはすぐさま体を起こす。そしてまた謎の声が三人の頭の中に響く。

 

 ――内なる力を開放し、真の敵を(ほふ)らぬ限りな――

 

「だ、誰……!?」

 

 なのはは不安そうに辺りをきょろきょろ見渡し、フェイトはバルディッシュを持つ手に力を込める。

 

「何者だ? 姿を見せろ!」

 

 ――そう慌てずともすぐに姿をみせてやる。さァ、とくと我が姿……拝むがいい!――

 

 突如として雷鳴が轟、炎が舞い上がり、その中をゆっくりと一人の影が歩いてやって来る。

 バイザー型のサングラスを付け、灰色のマントを羽織った長い髭を蓄えた男がゆっくりと歩きながら姿を現したのだ。

 

「お、お前は……!」

 

 銀時が驚きの表情を浮かべ、額に『洞』と言う文字を覗かせる男はニヤリと笑みを浮かべる。

 

「久しぶりだな……我が――」

 

 バァーン! と謎の男に雷が直撃し、更にはゴォォ!! と下から舞い上がる炎が謎の男を包む。

 

「「「…………」」」

 

 現れていきなり演出かと思ってた雷と炎に黒焦げにされた男の惨状を見ていた三人は目を点にする。

 そして真っ黒焦げになり、プシュ~! と言う音を体から立てる男は足を小鹿のようにフラつかせ、涙目になりながら告げる。

 

「…………ひ、久しぶりだな……坂田銀時……。お、俺の姿を覚えているか……?」

「……あのォ……すんません……。こんがり真っ黒に焼きあがって誰だか分からないんですけど?」

「き、貴様と会合を果たすのはこれで三度目だが……お、覚えていないであろうことはこちらも想定の範囲内だ……」

「いや、覚えてないって言うか、誰だか判別つかないんですけど? コナンの犯人のシルエットみたくなってて記憶呼び覚まそうにもできないんですけど?」

「あ、あのぉ……大丈夫ですか?」

 

 さすがに痛み堪えながら喋る真っ黒焦げの男の姿にいたたまれなくなったのか、なのははが心配そうに声をかける。すると謎の男は痛みに声を震わせながら答える。

 

「し、心配いらぬぞ少女よ……」

「いやいや、ホント病院行ったら?」と銀時。

「だ、だから大丈夫だ。問題ない」

 

 と真っ黒焦げの男が答えるとフェイトが小首を傾げる。

 

「本当に?」

「何度言わせるつもりだ? 大丈夫だと何度言えば分かる」

 

 やっと痛みが引いてきたのか真っ黒焦げの男は普通のトーンで話し始める。すると銀時が少し驚いた口調で聞く。

 

「マジで? あんなにダサい登場しちゃったのに?」

「だ、大丈夫だ……」

 

 マントの男の声が震え始める。たぶんその声の震えはきっと痛みによるものではないだろう。

 フェイトはマントの男に少し関心したような視線を向けながら銀時に顔を向ける。

 

「銀時、あの人凄い。あんなの雷と炎を受けて平然と立っていられるなんて」

「あァ、まったくだぜ。あんなマジでダサい登場しといて、俺たちの前に平然と立ったままでいられるなんてよ。ぶっちゃけ、俺なら羞恥で耐えられねェよ」

「あのぉ、それ以上言わない方が……」

 

 なのはが真っ黒焦げの男をちらちら見ながらやんわり二人の会話を止めようとする一方で、真っ黒焦げの男の顔は引き攣り、汗を流し始める。

 なのはの制止が聞こえないのかフェイトは謎の男を警戒するように一瞥しながら銀時に声を掛ける。

 

「それにしても銀時、さっきの雷と炎はあの人が起こしたのかな? なら、あの人は自分で起こした雷と炎であんな酷い姿になったってことだよね? どういう意図があると思う?」

「ばっかおめェ。言及すんじゃねェよ。アレはあのおっさんがカッコつけて演出としてやろうとしたけど、失敗しただけなんだよ」

「えッ? じゃあ、自分で出した雷と炎を自分で受けただけなの? そもそもカッコつける意味は?」

「あ、あの……ホントそれくらいにしてあげた方が……」

 

 となのはが頬を引き攣らせながら二人の会話を止めようとする。チラチラ謎の男に視線を向ければ、真っ黒焦げの男は顔を真っ赤にさせ、年甲斐もなく泣きそうになっている大人の姿が目に映る。

 

「まだあの人名乗ってすらいなのに……たぶんメンタルがボロボロになっちゃってますよ」

 

 やっとなのはの言葉が耳に入ったらしく、「あん?」と銀時が反応をみせ、返答する。

 

「ならいいじゃねェか。肉体もボロボロなら精神だってボロボロにした方がバランスが取れるだろ。俺が通ってた病院の先生もそんなこと言ってたから」

「その人ホントに医者なんですか!?」

 

 となのはがツッコムとフェイトが一歩前に出て、真っ黒焦げの男に話しかける。

 

「あなた、名前は?」

「と、洞爺湖仙人と申すが?」

「えッ? ちゃんとした名前を教えてくれませんか? そんなふざけた偽名じゃなくて」

「……えッ? ……い、いや……洞爺湖仙人は実名なのだが……」

 

 若干フェイトの言葉に汗を流す洞爺湖仙人と名乗った男。するとフェイトは眉間に皺を寄せて訝し気に洞爺湖仙人を見る。

 

「とうやこせんにん? 仙人てなんですか? どう考えても偽名ですよね?」

「いや、厳密には『洞爺湖』と言う名なのだが、仙人はいわば称号のようなものであり――」

「ファミリーネームは?」

「洞爺湖が私のフルネームだが……」

 

 フェイトの質問攻めに洞爺湖仙人は戸惑いを見せながら答え、フェイトはクルリと首を後ろに曲げて銀時に顔を向け、きっぱり言い放つ。

 

「銀時間違いない。この人――中二病だ」

「えッ? お前その歳で中二病知ってんの?」

「うん。前に母さんの使い魔のリニスから聞いたことがある。威力を殺しても派手に見せることができる魔法があって、それを使って自分をカッコよくみせたり、なんか意味不明な異名を名乗り出したりなんか意味のあるかわからないカッコよさげな服装をする人たちが魔法世界には一定数いる。そしてそんな人たちを総じて――中二病と呼ぶって」

「なるほど。なら、そいつは間違いなく中二病だ。つうか俺も薄々感じてた」

「そして中二病の人たちに共通しているのは、結局総じてカッコつけてるのにカッコ悪くて恥ずかしいってこと」

「あァ、雷と炎で自分の登場を演出した上に失敗してんだからそいつは中二病で間違い――」

「止めてェェェェェェ!!」

 

 なのはが思わず二人の会話を遮り叫び声を上げる。

 

「止めてあげて!! 仙人さんを見て!!」

 

 なのはが指を向けた先には、

 

「ぅぅぅぅぅ……!!」

 

 目と鼻から体液を流し、唇を必死に噛んで表情筋を強張らせながら必死に泣くのを我慢する洞爺湖仙人の姿だった。

 

「もう精神崩壊する寸前だから止めてあげて! これ以上追い打ちをかけないであげて!」

 

 なのははあまりにもあんまりな仙人の姿に同情しているが、フェイトは腕を組んでバッサリと告げる。

 

「私たちはただ事実確認をしているだけ。純粋にあの人がカッコ悪いかどうか談義して――」

「フェイトちゃん!!」

 

 となのはが怒鳴ってバシッとフェイトの頭をはたくと金髪の少女は「いた……」と声を漏らす。

 フェイトは叩かれた頭を右手摩りながらなのはにジト目を向ける。すると口元を押えて涙を流す洞爺湖仙人になのははビシッと指を突き付けながらフェイトと銀時に説教をする。

 

「確かにあの人がカッコ悪いのは事実だよ!! だけど言っていいことと悪いことがあるの!!」

「ヂグジョォォォォォォォォッ!!」

 

 と洞爺湖仙人は吠え、ダムが決壊したように涙を流して銀時たちとは反対方向へ駆け出す。

 

「最終的にお前がトドメさしてんじゃねェか!」と銀時がツッコム。「言っちゃダメなことズバリ言っちゃてんじゃねェか!」

「ごめんなさァァァァァい!!」

 

 自分の失言に気づいたなのはが頭を抱えて謝罪した時だった。

 

「逃げちゃダメでしょォォォォォォッ!!」

 

 突如として現れた仙人と同じ格好をしたパンチパーマに髭を生やしたおばさんが洞爺湖仙人の顔面にドロップキックをかます。

 

「グハァッ!!」

 

 と洞爺湖仙人は悲鳴を上げながら吹っ飛び、

 

「「「洞爺湖仙人!」」」

 

 三人は思わず洞爺湖仙人の名を呼ぶのだった。

 

 

「……すまなかった。仙人の身でありながら少々取り乱してしまった」

 

 洞爺湖仙人は右の頬を腫れぼったくさせて銀時、なのは、フェイトの三人の前に立つ。ちなみに今の彼の恰好は真っ黒焦げから通常のマントを羽織った姿へと戻っている。まぁ、元々真っ黒な衣装ではあるが。

 

「いや、それはいいんだけど……」

 

 銀時は少し体を傾けて洞爺湖仙人の後ろで仁王立ちしている彼と同じ格好のパンチパーマに髭を生やしたおばちゃんを見る。

 

「アレ……誰?」

「おか……マザー仙人だ」

「今お母さんて言いかけましたよね!?」

 

 となのはは洞爺湖仙人の言葉を聞き逃さず、すぐに問い詰める。

 

「あの人あなたのお母さんなんですか!? なんで女の人があんな立派な髭を生やしているんですか!?」

「違う、マザー仙人だ。仙人たちの母と呼ばれるとってもえら~い仙人なのだ。言動には気を付けよ」

 

 腕を組んで説明する洞爺湖仙人に銀時はジト目向ける。

 

「すべてのマザーつうか、もろお前のマザーだろ」

「だから違う!」と洞爺湖仙人は怒鳴る。「マザー仙人だって言っているだろうが! 全ての仙人の頂点に君臨するお方なの!! 私が不甲斐ない姿を見せちゃったからこうやって現出してくださったの!!」

「親子揃って中二病……」とフェイト。

「お前ホントいい加減にせんと子供とは言え殴るぞ!!」

 

 洞爺湖は尚も中二呼ばわりするフェイトに怒鳴りながら握り拳を作るが、すぐに気持ちを落ち着け「コホン」と咳払いして腕を組む。

 

「まさかこんなに早くマザー仙人の姿をお前たちの前に晒してしまうとは思わなんだ。ここまで段取りを狂わされるとは思わなかったぞ……」

 

 そこまで言って洞爺湖仙人は鋭い眼光を銀時に向ける。

 

「さすがは我が(マスター)――坂田銀時だ」

「えッ!? ど、どういうことなんですか銀時さん!? 仙人さんのお知り合いなんですか!?」

 

 なのはは驚き銀時に問いかけるとフェイトも銀時の顔を見て質問を投げかける。

 

「この変な人は銀時の使い魔だったの?」

「変……」

 

 と洞爺湖仙人はフェイトの言い草に少しショックを受け、銀時は若干苛立たし気に答える。

 

「ふざけんな。なんで中二病患った気色の悪い髭親父を俺が使い魔にせにゃならねェんだ。こんなおっさん使い魔にするくらいなら定春やアルフを使い魔にする方が数十倍マシだ」

「ちょっと銀時さん! また仙人さん泣きそうになってますから!」

 

 なのはが青い顔して目を右手で覆う仙人を見ていると、マザー仙人が後ろから洞爺湖仙人に近づいて肩にポンと手を置く。

 洞爺湖仙人は涙と鼻水を垂れ流しそうになりながらマザー仙人の顔を見ると、彼の母は笑みを浮かべる。

 

「頑張れ、洞爺湖仙人」

「お、お母さん……」

「今お母さんて言ったよね? やっぱりお前のお母さんだよね?」と銀時。

 

 洞爺湖仙人は唇をギュッと結んで垂れ流しそうになる涙と鼻水を袖で拭き取り、銀時たちに顔を向ける。

 

「――よいか、坂田銀時。貴様はどうせ忘れているだろうし、私の登場回を知らぬ読者の為にあらためて説明しよう」

 

 仙人はカッと目を見開いて銀時にビシッと指を突き付ける。

 

「私は洞爺湖! つまり貴様が持つ木刀――『洞爺湖』の化身なのだ!」

「つまり、あなたはデバイスってことですか?」

 

 フェイトが質問をすると洞爺湖仙人はフッと笑みを浮かべる。

 

「所詮は子供よのう。自身の持つ知識でしか物事を判断できぬか」

 

 意趣返しのように言う洞爺湖仙人の言い草にフェイトは少し不満そうな表情を浮かべ、仙人は更に説明する。

 

「我々仙人は古今東西ありとあらゆる物品に住まう仙人なのだ」

「つまりどういうことですか?」

 

 フェイトが問いかけると洞爺湖仙人は「えッ?」と声を漏らし、金髪の少女は更に問いかける。

 

「なんで仙人がありとあらゆる物品に住んでいるんですか? そこをちゃんと説明してください。あまりにも説明がふわふわし過ぎです」

 

 フェイトの詰問に仙人はすぐには答えられるずに言葉を詰まらせ、

 

「……まァ……その……なんだ……ええ~っと……」

 

 腕を組んで顔をあちこちに向けてああでもないこうでもないとぶつぶ呟く。そんな仙人に銀時、なのは、フェイトはジト目を向ける。

 すると仙人が「つくもがみ……」と呟き、ハッと思いついたように顔を上げる。

 

「――私は銀時の持つ妖刀『星砕き』の付喪神なのだ!」

「今思いつきましたよね!?」

 

 もちろんツッコムのはなのは。

 

「どう考えても今思いついた設定ですよね!? あなた自分の存在をちゃんと認識しているんですか!?」

「うるさい!! 付喪神っつたら付喪神なの!!」

 

 と仙人は逆切れ気味に怒鳴った後、声音を低くして告げる。

 

「そしてありとあらゆる物に宿る我々を人々は仙人と呼ぶのだ」

「結局仙人じゃねェか!! 付喪神設定どこいった!!」

「ええいうるさい!! 詳しいことは原作者にでも聞け!! 私に聞くな!!」

 

 挙句は銀魂の作者に丸投げする洞爺湖仙人に銀時たちは呆れるが、洞爺湖仙人は咳払いして話を軌道修正させる。

 

「とにかく、この私の正体を話すまでに大分行数も文字数も使ってしまったが、ようは私は(マスター)である坂田銀時に用があるのだ」

「んで? その付喪神だか仙人だか分からんお前が俺になんのようなの?」

 

 肩眉を上げて聞く銀時の質問に洞爺湖仙人は静かに告げる。

 

「私はお前に必殺技を教えにきたのだ」

「必殺技ァ? なんでんなもん俺に教えんだよ?」

 

 銀時はすんごくめんどくさそうに言うと、洞爺湖仙人は呆れようにため息を吐く。

 

「分かっていたことだが……まさかここまで必殺技伝授に否定的な奴がジャンプの看板マンガの主人公やっているとは……なんと嘆かわしい。まさに世も末だな」

「んだとこら!! こちとらまともな技もなしに今までジャンプで十年以上頑張ってきたんだぞ!!」

 

 洞爺湖仙人の言い草に銀時はキレるが、なのはは「まぁまぁ」と言って怒る銀魂の主人公を宥め、仙人に顔を向ける。

 

「それで、なんで銀時さんにその……必殺技? を教えようとしている仙人さんは私たちもこの空間に呼んだんですか? そもそもこの空間はなんなんですか?」

 

 なのはの問いを聞いて洞爺湖仙人は目を瞑って説明を始める。

 

「ここは夢と現、二つの空間と次元の狭間にできた仙人世界。ここに坂田銀時を呼んだのさきほど言った通り、我が必殺技を伝授させる為。そして君たちマジカライズエナジーを秘めた少女を呼んだ理由は――」

「銀時、やっぱりあの人は中二病だ。だって言ってることが意味不明」

 

 フェイトが銀時に顔を向けながら洞爺湖仙人を指さす。

 

「黙れ小娘!!」

 

 洞爺湖仙人はキレて怒鳴る。すると銀時が自身の右肩を揉みながら気だるげな視線を仙人に向ける。

 

「もう一々レベルの低い中二病指摘されたくらいで怒んなって。話進まなねェから」

「そっちがいちいち話の腰を折っているんだろうが!! あとレベルが低いとはなんだ!!」

 

 洞爺湖仙人は怒鳴り散らすが、すぐに平常心を取り戻して話を再開させる。

 

「……坂田銀時よ。貴様にはなんとしても我が必殺技を伝授してもらわねばならぬ。それは何故だと思う?」

「えッ? なんでいきなり問いかけてくんの?」

「これも試練だ」

「なんでいきなり修行始まった感じになってんだよ!! 俺まだ必殺技覚える宣言すらしてねェぞ!!」

「あ、もしかして(マスター)である銀時さんに死なれては困るからですか?」

 

 なのはが思いついたように質問すると、洞爺湖仙人は満足気に笑みを浮かべる。

 

「フッ……中々利口な少女だ。だが、半分は正解で、半分は違う」

「おい、なのは。お前別にあの中二髭の茶番に付き合わなくていいからな?」

 

 なんか銀時が言ってるが、洞爺湖仙人は構わず言葉を続ける。

 

「私が必殺技を伝授する本当の理由は坂田銀時――お前……いや、貴様の世界そのものをも脅かそうする〝真の敵〟に対抗させる為」

「真の敵だと?」

 

 銀時の目が細くなり、なのはとフェイトの表情にも緊張の色が見え始める。そんな三人の姿を見て洞爺湖仙人は満足気に笑い零す。

 

「フフ……どうやら食いつてきたようだな。必殺技に否定的な貴様でも、さすがに無視できなくなったと見える」

「おいおい、ぶっちゃけこの回って年明け特別編じゃなかったっけ?」

 

 とかなりメタイ発言をする銀時の言葉を聞いて洞爺湖仙人は顔色一つ変えることなく得意げに告げる。

 

「だからこそ意味があるのだ。〝真の敵〟だけでなく、『どうせ、特別回なんてなんかちょっと今まで違う事して終わりで、本編にまったく関係ないだろ?』的な考えを持つ読者の意表すら突くことができるのだからな」

「どこに意表を突いてんだ!! 余計なお世話にもほどがあんだよ!!」

「それで、『真の敵』とは?」

 

 視線を鋭くさせるフェイトの問いに洞爺湖仙人は目を瞑り、ゆっくりと口を開く。

 

「真の敵――その名は……」

 

 カっと洞爺湖仙人は目を見開いて拳を振り上げながら叫ぶ。

 

「リリカルなのはだァァァァァァ!!」

 

 ゴロゴロピカーンと仙人の後ろで雷鳴が轟く。

 

「「「……はッ?」」」

 

 予想外の『真の敵』の名を聞かされた三人は表情をポカーンとさせ、思考停止する。だが呆けた顔をする三人に構わず、洞爺湖仙人は拳を握り絞めて熱く語り出す。

 

「我々の真の敵の正式名称は『魔法少女リリカルなのは』なのだ!! こやつを倒さぬ限り坂田銀時、貴様だけではない! この小説さへも滅びの道へと突き進むことになってしまう!!」

「マジでなんの話をしてんだテメェは!!」

 

 といの一番に声を上げたのは銀時。

 

「リリカルなのはってなんだ!? リリカルなのはをぶっ倒して俺らになんの得があんだよ!! つうかリリカルなのは倒すってなに!?」

 

 すると洞爺湖仙人は腕を組んで語り掛ける。

 

「よいか? リリカルなのはは魔法少女たちが魔法を使い、少年マンガ顔負けのバトルを繰り広げる作品なのは知っておるか?」

「あ、あァ……」

「そして銀魂は少年ジャンプの看板マンガの一つ。そしてジャンプ作品を占める作品のほとんどはバトルマンガだ」

「だから?」

 

 洞爺湖仙人の言葉を聞いて銀時は何がいいたいんだ? と言いたげに肩眉を上げる。すると仙人は銀時に向けてビシッと人差し指を突き付ける。

 

「ジャンプ看板マンガの主人公がたかだか魔法少女なんぞに戦闘力で劣ってて情けないとは思わないのかァァァァァ!!」

「思わねェよ!!」

 

 と銀時はバッサリ切り捨て、なのはとフェイトは青筋浮かべる。

 

「私たち……かなりバカにされてる気がするんだけど?」

「うん。そんな気がする」

「ごめんなさいね~」

 

 するとマザー仙人と言うか洞爺湖仙人のお母さんがなのはとフェイトの前までやって来て少し頭を下げながら説明する。

 

「あの子ね、最近リリなんちゃらって作品と他の作品を合体させる? みたいな小説をネットに投稿してたらしいんだけど、それが上手くいかなかったらしくて、ちょっとムシャクシャしてるのよ」

「あ”あ”あ”!! ちょッ、おかあ……マザー仙人!! 余計な事言わないで!!」

 

 顔を真っ赤にしながら洞爺湖仙人は母を止めようと声を上げるが、マザー仙人は止まらず、懐からクッキーの詰まった包みを二つ取り出して少女二人に配る。

 

「も~少し、あの子の我がままに付き合ってあげて。これはほんの気持ちだから」

「は、はぁ……」

 

 なのはは若干戸惑いながらも包みを受け取り、

 

「ポリポリ……あふぃがふぉごふぁいまふ」

 

 フェイトはクッキーを食べながらお礼を言い、そんな隣の少女の姿になのははギョッとする。

 

「フェイトちゃん手を付けるの早い!?」

「マザー仙人!! クッキーとかいいから早くこっちに戻って来て!!」

 

 洞爺湖仙人に呼ばれ、マザー仙人はまた定位置に戻ろうとしながら何度も何度もフェイトとなのはに頭を下げる。

 

「もうちょっと……もうちょっとあの子に付き合ってあげてね?」

「お願いだからもうやめて!! めっちゃ恥ずかしいから!!」

 

 洞爺湖仙人は顔を真っ赤しながらマザー仙人が自分の後ろに立って仁王立ちするのを確認した後、銀時に顔を向ける。

 銀時は視線を少し逸らしながら口を開く。

 

「まァ……お前を応援してくれる読者もいるって」

「うるさい黙れ!! とにかくだ!!」

 

 更に顔を真っ赤にさせながら洞爺湖仙人は捲し立てる。

 

「そもそも必殺技もなく、なんか力の強さがあやふやお前たち銀魂組と言うか、坂田銀時! 貴様の強さの基準がかなりふわふわなのだ!! リリカルなのはの魔法に対抗できるくらい強いのか、それとも強くないのか、もうなんかようわからん! とにかく必殺技の一つでもパパッと付けてリリカルなのはの強さに劣らぬ力を身に着けてもらわねば困るのだ!! 俺がどれだけ小説書くの大変だったと思っているんだ!!」

「知るかんなこと!! ふわふわの何が悪い!! つうかこの小説の設定上、俺たちはアニメDVDが原因でリリカルなのはの世界に来てるって建前になってんだぞ! テメェの発言のせいでこの小説の内のリリカルなのはなのか、現実のリリカルなのはなのか区別できなくなって、このままだと世界観が崩壊しちまうだろうが!!」

「いや……銀時さんの発言もかなり世界観を崩壊させてます……」

 

 銀時のメタだらけの発言を聞いてなのはが口元を引き攣らせる。すると洞爺湖仙人が笑みを浮かべる。

 

「フフフ……安心しろ。さきほどここは夢と現の狭間の空間と言ったであろう? お前たちが目を覚ませばここでの記憶は全て忘れる。だからいくらメタだらけの発言をしても問題ない」

「じゃあ必殺技覚えても意味ねェだろうが!!」と銀時はツッコム。

「心配には及ばん。アフターケアもばっちりだ。此処で必殺技を覚えた暁には、貴様は目覚めた後に……」

 

『俺は知らないはずなのに知っている。俺の新たな力を――』

 

「――と言った具合に必殺技を覚えた事実だけが残る」

「マジで中二病だなお前! つうか特別編で覚えた技を使い始めた暁には違和感バリバリだろうが!!」

「そう拒まずに考えてみよ。このまま必殺技を持たぬ上に強さもふわふわなお前が魔法戦士たちと戦わせる展開にまで発展すればどうなる?」

「はッ? 俺一応ちゃんと戦ってきたじゃねェか。なにか問題あんの?」

「このまま話が先に進めば……」

 

 洞爺湖仙人は構わずクワっと表情を変化させて叫ぶ。

 

「作者のモチベーションが一気にダウンしてしまうではないかァァァァァ!!」

「知るかァァァァァァ!!」

 

 銀時はシャウトするが、仙人は構わずに語る。

 

「よくよく考えてみよ。この小説は連載してからもう既に3年以上も経っているのだぞ? それなのにまだ30話をやっと過ぎたばかり。しかし展開はまだ時の庭園突入どころか時空管理局すら登場してないと言う有様だ。この事実をどう捉える?」

「止めて!!」なのはは悲痛な声を上げる。「作者さんはやっとモチベーションや活力が回復して年末特別回や年明け特別回まで執筆できるまでになったんだよ!!」

 

 ついにはなのはまでメタ発言してしまうあり様だ。銀時は頭を掻きながらめんどくさそうに答える。

 

「つうか、そんなに悩むこともねェだろ。クロスオーバーつっても、スパロボとかアレなんて無茶苦茶だぜ。ロボットの強さもデカさもしっちゃっかめっちゃかな連中をちゃんと無謀にもまとめて話にしてるんだからよ」

「銀時さん止めて! 他作品のファンを敵に回そうとしないでください!!」

 

 なのはは思ずツッコムが、洞爺湖仙人は首を横に振る。

 

「アレはプレイヤーが操作して好きなキャラとロボを使って敵を自由に倒せる仕様だから成立しているのだ。だが、これは小説。プレイヤーの自由と言う逃げ道はない」

「逃げ道ってなんですか!?」なのははツッコム。「作り手側が言い訳作りの為にシステム開発したみたいに言わないでください!!」

 

 洞爺湖仙人は拳を握り絞め、悔しそうに声を絞り出す

 

「とにかくこのままこの状況を放置すれば、この小説は終わってしまう……!!」

 

 そして洞爺湖仙人はビシッと銀時に指を突き付ける。

 

「それこれも全ては必殺技を持たぬ貴様がリリカルなのはに勝てるかどうかも分からぬ戦闘力であるのが原因なのだァァァァ!!」

「ふざけんなァァァ!!」と銀時は怒鳴る。「キャラに責任を擦り付けるんじゃねェーッ!!」

「よ~く考えてみよ。貴様がこのまま必殺技を覚えなければ、戦闘描写がたいへん地味なモノになってしまう上に、描写がとてつもなく難しくなってしまう。それに下手に勝てせたり負けさせたりすると物議を醸しだしてしまうお前は大変扱い難いキャラなのだ」

「お前ホント黙ってくんない! つうかそんなもん全てのクロスオーバー作品に言えることだろうが!!」

「これだけ説明してもまだ納得せんか! ならばこれを見よ!」

 

 すると洞爺湖仙人はどこから出したのか、白いボード見せる。そこにはある一文が書かれている。銀時、なのは、フェイトは少し近づいてボードに書かれた文章を見る。

 

 

「ディバインバスター!!」

 

 高町なのはの放った桃色の魔力砲撃が坂田銀時に向かって放たれる。

 だが銀時は寸前のところで躱し、そのまま木刀を持って高町なのはへと肉薄する。すると白い魔導師はいくつもの魔力弾を生成して、銀時に向かって放つ。

 銀時は木刀を2、3度振って魔力弾を切り裂き、捌き切れない魔力弾は体を最低限の動きで捻って躱し、そのままなのはの元へと向かって走る。するとなのはは接近戦を避ける為に空高くへと飛び上がろうとする。

 なのはの行動を見た銀時はすぐさまに足を蹴り上げる。するとなのはに向かって一つの握り拳ぐらいの石がまっすぐに飛んでいく。

 なのはは咄嗟に障壁を張ってガードした直後、銀時はなのはの元までジャンプしており、少女に向かって木刀を振りかぶる。だが、ガキン!! となのはの障壁が銀時の木刀による一撃を防いでしまう。

 

「うォォォォォ!!」

 

 だが銀時は怯まずに何度も何度も残像が生まれそうなほどのスピードで木刀を振り、なのはの障壁にヒビを入れていき――

 

 

「――って長ァァァァい!!」

 

 銀時たち三人が文章を読んでいる途中で洞爺湖仙人は白いボードを膝で真っ二つに叩き割る。

 

「何がしたいんだテメェはァァァァ!!」

 

 仙人の意味不明な行動に銀時はシャウトし、フェイトが不満げな声を漏らす。

 

「……読んでいる途中だったんだけど……」

「私は別にお前たちに小説を見せる為に今の文章を見せたワケではない!!」

 

 洞爺湖仙人は声を張り、新たな白いボードを取り出す。

 

「これは言わば、小説と言う媒体において、必殺技がどれだけ必要な物なのか教える為の例題なのだ!!」

 

 そして銀時たちは三人は戸惑いながらも白いボードに書かれた新たな文章に目を通す。

 

 

「ディバインバスター!!」

 

 なのはが杖から桃色の魔力砲撃を放った時、

 

「か~め~は~め~……」

 

 銀時は合わせた両の掌にエネルギーを蓄積させる。

 その間にも銀時に向かって桃色の魔力の本流は向かってくる。

 そして銀時が魔力の本流に飲み込まれようとした直前、銀時がカッと目を見開き、合わせた掌を前に向けて押し出す。

 

「派ァァァアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 銀時が合わせた両の掌からエネルギーが放たれ、そのままなのはの砲撃を押し返す。

 

「そんな!?」

 

 なのはが驚く間に、少女は一気に銀時の放つエネルギーの本流へと飲み込まれていくのだった。

 

 

「どうだ! これで良く分かったろ!!」

 

 得意げに言う洞爺湖仙人の言葉を聞いても三人は理解できず、微妙な表情を作る。

なのはに至っては自分の負けるシーン見せられたようなもんなので、かなり頬を引き攣らせている。

 

「……お前は何が言いたいワケ?」

 

 怪訝な表情を浮かべる銀時の言葉を聞いて洞爺湖仙人はクワっと表情を変えて言い放つ。

 

「敵を倒すまでのプロセスが簡単になったではないかァァァァァァ!!」

「ただの手抜きじゃねェかァァァァァ!!」

 

 銀時はシャウトしながら膝でボードを叩き割り、仙人は熱く語り始める。

 

「さっきまで長ったらしい地の文で語ってもいまだに少女一人を追い詰められなかったのが、どうだ!! あんな少ない文章で一気に倒す描写まで持っていけたではないか!! これならば作者の作業量も一気に減ると言うもの!!」

「結局必殺技と言う名の手抜き技法じゃねェか!! つうかドラゴンボールの必殺技を手抜きみたいに語るの止めてくんない!! 失礼にもほどがあんだろ!!」

 

 銀時は怒鳴り声を上げるが、洞爺湖仙人は右手を横薙ぎに振って言い放つ。

 

「兎にも角にも! 貴様には必殺技を体得してもらい、今見た文章みたくリリカルなのはのキャラたちをバッタバッタと倒して、リリカルなのはを打ち倒すのだ!!」

「お前アレだろ!! さっきお母さんが言ってた小説失敗したってやつ!! それでリリカルなのは恨んでるだけだろ!!」

 

 ビシッと銀時に指を突き付けられた洞爺湖仙人は図星を指されてらしく「ぐッ……!!」と声を漏らすがめげずに言葉を返す。

 

「と、とにかくお前が必殺技を体得すれば私の気分もスカッとするし皆も笑顔になるのだ!!」

「そんな手抜きした暁には読者の笑顔が消え失せるだろ!!」

「なんて器の小さい人なの!?」

 

 なのはは仙人すら名乗っている大人の癖してここまで狭量な洞爺湖にドン引きしているようだ。

 どうやらこの仙人がさきほど『真の敵』をリリカルなのはと言ったのも、個人的な恨みから来るものからなのだろう。

 銀時が洞爺湖仙人に訝し気な眼差しを送る。

 

「つうかお前なんでなのはとフェイトをこの空間に呼んだんだ? 俺に必殺技教えてリリカルなのはのキャラ倒せって言うなら、コイツらも此処に呼んで必殺技を教えるのって、なんか矛盾してね?」

「た、確かに!」

 

 なのはも銀時の意見は最もだと思ったらしく声を漏らす。

 

「高町なのはとフェイト・テスタロッサをこの空間に呼んだ理由は簡単だ……」

 

 洞爺湖仙人は腕を組み、徐々に口元を吊り上げる。

 

「お前たちに我が(マスター)が必殺技を覚える姿を目の前で見せつけることで、未来の危機に慌てふためく様を拝むためよ」

「本当になんて器の小さい仙人なの!? 仙人じゃなくてただの小物だよね!!」

 

 邪悪な笑みを浮かべながらおもっくそ下らない理由を説明する仙人になのはは呆れかえっている。

 話を聞いていたフェイトは腕を組んで半眼を洞爺湖仙人に向ける。

 

「一つ聞きたいんだけど、そんな下らない理由でジャンプの主人公が必殺技を体得するってどうなんだろ? 必殺技得るにしても……仲間を守る? みたいな大一番で発現したり覚えようとするものだと思うけど?」

「フェイトちゃんどこ目線で話してるの?」

 

 なのはは編集部みたいな発言をするフェイトの言葉を聞いて汗を流す。すると洞爺湖仙人はニヤリと笑みを浮かべる。

 

「フッ……ならば何も問題ないではないか」

「いや、さっきから聞いてても問題しかないけど?」

 

 と銀時はジト目向けるが、洞爺湖仙人は腕を組んで目を瞑り語る。

 

「必殺技を使って作者を文章構成と言う呪縛から……」

 

 そして洞爺湖仙人はクワっと目を見開いて叫ぶ。

 

「――助けるのだァァァァァァ!!」

「コイツ絶対仙人じゃないよね? 作者の回しもんの二次小説作家だよね?」

 

 銀時は呆れた声を漏らし、なのはとフェイトも完全に自分勝手な仙人に呆れた眼差しを向けるが、洞爺湖仙人は尚も銀時を説得しようと語り掛ける。

 

「今からでも遅くはない。これから先の戦闘を単純化させ、作者のモチベーションを維持する為の必殺技を会得するのだ。このままでは作者のモチベーションはどんどん低下し、下手をすれば次の投稿が一年後なんて展開もあり得てしまう。この年明け特別回の次の回がまた年明け特別回なんて未来もありえてしまう」

「怖いこと言わないで!!」となのは。

「おい、あいつホント黙らせないと次なに喋るか分からねェぞ」

 

 と銀時が呆れた声を漏らし、フェイトが問いかける。

 

「そもそも、必殺技必殺技連呼するけど、一体銀時にどんな必殺技を教えるつもりなの? 半端な必殺技じゃ、高ランクの魔導師には太刀打ちできないのは目に見えてる」

「つうかお前の教える必殺技なんてどうせパクリだろ?」と銀時。「どうせ『全解(ぜんかい)』とか『風戦丸(ふうせんがん)』とかパクリ技なんだろ?」

「フフフ……それなら心配ご無用だ」

 

 得意げに笑みを浮かべて仙人が歩き出すと彼が向かった先には巨大なモニターがあり、機械を操作するためのたくさんボタンが付いている。

 

「いきなりモニターが!」

 

 今まで姿を見せなかったモニターが現れたことになのはは驚き、洞爺湖仙人は今まであまり話に介入してこなかった仁王立ちするマザー仙人に顔を向ける。

 

「マザー仙人。頼むぞ」

「承った」

 

 小さく頷いて低い声を漏らし、マザー仙人は扉を開いてどこかへ向かう。

 

「い、異空間に扉が!?」

 

 また驚きの声を上げるのはなのは。少女にはホントにここがどういった空間なのか分からなくなっていく。

 洞爺湖仙人はパネルを操作し始めるのだった。

 一体仙人は何を? それは次回に続く――。

 

「えッ? これ続くの?」




銀時「結局さ、今回の話の1年くらい投稿が空くって下り、やっぱ現実に――」

なのは「そこを言及するの止めましょう!! 色んな意味で!!」

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