「俺は太陽の子!! 仮面ライダーブラ゛ック!! アールエ゛ックスッ!!」
キレッキレの変身ポーズをしながら名乗りを上げる仮面ライダーさん。
それを見て新八は、
「え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙ッ⁉」
倉田て〇をばりの濁音が混じった叫び声を上げる。
現れたRXは、ジュエルシールドでハルク並みの巨漢になった変質者に指をビシッと向けた。
「仮面ライダーパンツ!! ヒーローと言う名を盾に卑劣な行為を繰り返す貴様の勝手な行いは――」
覇気を放つ声で言われた変質者は気迫負けしてか後ずさる。
「この仮面ライダーBLACK RXがゆ"る゛ざん゛!!」
「パンパンパンパンッ!! パンツゥゥゥゥゥゥッ!!」
変質者は雄たけびを上げながら手に持った巨大パンツ振りかぶり、RXに向かって突進していく。
「RXキィーック!!」
摩擦により発熱した足裏によるRXのキックが変質者の胸に直撃。
「パァッ!!」
胸のブラジャーは爆散し、変質者は体を転げまわしながら吹き飛ばされる。
その様をあんぐりと口を開けて見ていた新八は、
「ちょっとォォォォォォッ!? なんかもう絵ずらが銀魂でもリリカルでもないんですけどォォ!? ちょッ!? どういうことこれェ!?」
ついにシャウト。焦り顔をガバっと土方に顔を向けた。
「土方さん!! モノホンのライダーが出てきちゃいましたよ! マジでどうすんですかこれ! どう収集すんですかこれ!」
「知るか! 俺に聞くな!! あんなガチで強ェヒーローどうしろっつうんだよ!!」
新八たちが言い争っている間に、すぐさまRXは次々に変質者に攻撃を当てていく。
「RXパァンチッ!!」
RXは赤く光る拳をジャンプして変質者の顔面に叩きこむ。
「パァァァンツッ!!」
変質者は顔を焦げさせ、体を捻りながら吹っ飛ぶ。
「ずずず…………」
沖田は呑気にコーラ飲む。
「すげェや、圧倒的だぜ。挿入歌まで聞こえてきそうな勢いでさァ」
ヒーローの戦いを観戦しているのは真選組一番隊隊長だけではなく、
「いけおらァ!! そこだぶっ飛ばせェーッ!!」
熱血思考も内包している神楽もまたプロセス観戦するかのように野次を飛ばす。
すずかは戸惑いがちにアリサに意見を求める。
「あ、アリサちゃん。私たちはなにをすれば……」
「とりあえず、様子見でいいんじゃない? ピンチにでもなったらあの黒い人の加勢すれば良いと思うわよ」
「え、えっと……」
冷静なアリサとは打って変わって、なのはに至ってはどうしていいかわからずおろおろするばかり。
「パクパクパクパク……!」
そしてフェイトはたこ焼き頬張りながら観戦。
「――っておィィッ!? あのガキのキャラどうした!? チャイナ娘みたいな感じになってんぞ!?」
驚きを隠せない土方。
なにせ、何くわぬ顔でたこ焼き食べ続ける金髪魔導師の少女が普段と別キャラになっているのだから。
「沖田さんはともかく、フェイトちゃんがあの余裕の態度ってことは……」
新八はフェイトの様子を見て、ハッとあることに気づく。
「もしかしてあのライダーさん、フェイトちゃんの仲間なんじゃないですか!?」
「はァ!? なんで太陽の子があいつの仲間になってんだよ!!」
困惑気味の土方の疑問は当然だ。だが、新八も答えようがない。
「い、いや……それは分かりませんけど……」
そうこう話しているうちにライダーと変質者の戦いは激化していった。
「パァンツ!!」
変質者は両手に持った巨大なパンツでRXに斬りかかろうとする。
すると、RXの姿が突如として変わり、まるで鉄人のような姿に。
肩に振り下ろされた巨大パンツは変身したRXに当たるが、その攻撃はまるで効いている様子がなかった。
まるでロボットのような動きでパンチを変質者の腹に浴びせ、吹き飛ばす。
「俺は悲しみの王子!! ロボライダー!!」
すかさず手に銃を出現させるロボライダー。
「ボルティックシューター」
ロボライダーは引き金を引く。すると、銃から二発の光線弾が発射され、変質者が持つ巨大パンツを破壊した。
「変身した!?」
「かっけェーッ!!」
アリサは驚き、神楽は目を少年のように輝かせる。
「パパパパパッ!!」
変質者は悔しそうに声を漏らし、
「パンツゥゥゥゥゥゥッ!!」
両手を上に掲げ、自分の周りに大量のパンツを出現させると、それらを丸ノコのように縦に高速回転させた。
その様を見た新八は思わず声を上げる。
「なにあの最低なファンネル!」
「ジュエルシードの影響であいつの魔法が強力になっているんだ!!」
ユーノの解説を訊いて、土方はドン引き。
「あいつの攻撃方法はとりあえずパンツ以外にねェのかよ!! 芸がねェな!!」
「でも悪質度で言ったらふんどし仮面より上です!!」
と、新八はツッコミを入れた。
二人が言い合ってる中、敵の攻撃方法の変化を見たRXはまたもや姿を変える。
今度は全身が青色の戦士へとその姿を変化。
「俺は怒りの王子! バイオ! ライダー!!」
まるで爪を立てた鷹のようなポーズを取り、名乗りを上げるライダー。
「パンツッ!!」
変質者は構わず、自分の周りに浮かせた回転するパンツを手裏剣のようにバイオライダーに放つ。
だがしかし、その攻撃は全てバイオライダーには当たらなかった。
「パンツが全部ヤツの身体を突き抜けてしまうぞ!!」
まさかの光景に叫び声を上げる土方。
「ちょっとォ! あいつ絶対チートよ!! あんな変身できる上に能力がいちいち凶悪過ぎるでしょ!!」
アリサは理不尽なくらい強いヒーローにビックリしていた。
バイオライダーは姿を青いゲル状へと変化させ、変質者の周りを飛び回る。
「パッ、パパパッ!!」
変質者はゲル状攻撃に翻弄されてしまう。
そしてゲル状態から人間態へと姿を戻すと、今度は一番最初の黒いRXの姿へと戻っていた。
そして腰のベルトの前に右手の前にかざすと、鞘がベルトから飛び出す。
「リボルケイン!!」
RXが鞘を抜き去れば、刀身が光る剣が出現。
それを見て神楽は目を輝かせる。
「おおッ!! ライトセイバーが出てきたネ!!」
「いやたぶんちげェから!!」
新八は即座に訂正。
RXは地面を叩き、空中へと舞い上がると、リボルケインを変質者の股間――ジュエルシードへと突き刺した。ちなみにそれを見た新八や土方は、股間を抑えて顔面蒼白。
突き刺された股間から一直線上に、尻から火花が飛び散る。
「パァァァァッ……!!」
苦しみの声を上げ、変質者は悶えていた。
「うわァッ! ひでェ絵面……!!」
新八と土方はあまりにもあんまりな光景にドン引き中。
リボルケインが引き抜かれ、変質者は肘から崩れ去り倒れ、爆発した――。
背を向けRをリボルケインで描きながら、爆風を背に受けるRX。
その様を見ていた一同はしばらく言葉を発することができず、立ち去るRXを見続けた。
「――って、爆殺したァァァァァァァッ!?」
開口一番に大声を上げたのは新八。そして頭抱えてしまう。
「色々言いたいことはあるけど、変質者ごとジュエルシード爆殺しちゃったんですけどあの人ォォォ!!」
新八は頭を抱えながらことの重大さに大慌て。犯罪者とは言え死人が出た上に、ジュエルシードが木っ端微塵ではさすがに落ち着けと言う方が酷であろう。
「いや、大丈夫みたいだぜ。よく見てみな」
と、沖田が変質者が爆発した地点を指さす。
「えッ!?」
新八や他の面々の視線が爆風の中心地に向かう。
そこには白目向いて真っ黒焦げの変質者――っと、なんの傷もないジュエルシードの姿。
その光景を見て、新八は驚く。
「えッ!? 魔法で封印してないのに大丈夫だったの!?」
「たぶん、取り付いた対象が撃破されたせいで一時的に抑止されたんだと思います」
冷静に分析したユーノはなのはに向かって声を上げる。
「ジュエルシードはまだ安定していない!! すぐに封印して回収を――!!」
「あ、もう遅いみたいだぜ」
呑気な沖田の言葉に、ユーノは「えッ?」と声を漏らす。
ジュエルシードの傍にはフェイトの使い魔である水着姿のアルフが立ち、地面に落ちた青い宝石を手に掴んでいた。
「ジュエルシード、ゲット、と……。フェイト! そんじゃま、ずらかるよ!」
アルフがジュエルシードを主に投げ渡す。フェイトは頷きつつ、封印処理を施しながらバルディッシュの中に収納。
そして二人はそのまま空中に逃げて行った。
「こら待ちなさい!!」
すぐさまアリサが飛んでおいかけようとするが、フェイトがいくつかの魔力弾を出現させ、放つ。
「くッ!」
アリサがシールドで防ぐと、爆炎が上り、視界が塞がれる。
そして視界が晴れる頃には、二人の姿はどこにもなかった。
「もう!! また横取りされちゃったじゃない!!」
アリサは悔しそうに燃える剣をぶんぶん振り回す。
「フェイトちゃん……」
結局、またお話できなかった……、となのはは残念そうに俯く。
「それで、残ったこいつはどうします?」
沖田が黒焦げになった変質者の髪を鷲掴んで持ち上げ、それを見たユーノが微妙な表情で答える。
「こっちの警察に渡しても拘置できないでしょうし、管理局に引き渡すまでの間は僕たちが捕まえておきましょう」
「そんじゃあ、アリサん家にでも放り込んでおくか?」
「ちょッ!? いくらなんでもそれは止めて!! 気持ち悪くて寝られなくるでしょ!!」
マジで嫌がるアリサに沖田は、
「安心しな。おめェの
ニヤリと黒い笑みを浮かべるのだった。
*
一方、なのはたちから無事に逃げおおせ、ジュエルシードまでゲットしたフェイトとアルフ。
二人はおみやげ(売店の食品)の入ったビニール袋を手にぶら下げて飛んでいた。もちろん水着から普段着に着替えて。
フェイトはバリアジャケットなので分からないし、なんならジャケット自体が水着と似たような恰好ではあるが。
二人は空中を浮遊しながら、下をきょろきょろと見渡す。
「あッ! いたいた!」
アルフは温水プール施設の近く、茂みにいる黒い人物を見つけた――さきほどまで変質者と戦っていた、RXだ。
RXの近くまで降り立つアルフとフェイト。
「いや~、探したよ。あんた、戦い終わったらすぐに姿消すんだから」
アルフは親し気にRXに喋りかけるが、特になにも答えない黒い戦士。
「でもま! 今回はあんたのお手柄だったよ! ジュエルシードに取り付かれた魔導師を倒すなんてやるじゃないか!!」
アルフはポンポンとRXの肩を叩き、フェイトは小首を傾げる。
「まだ変身を解かないの? ――――『銀時』」
するとRXの姿は光だし、光が収まればそこに居たのは木刀を持った天然パーマの侍――坂田銀時だった。ちなみにトランクス水着姿のまま。
水着姿の銀時は目をパチクリさせ、しきりに当たりを見渡した後に口を開く。
「あり? なんかもう終わった感じか?」
「ありゃ? やっぱ覚えないのかい?」
アルフは小首を傾げ、銀時は頭をボリボリ掻く。
「あァ……。完全に『あの後』からの記憶すっぽり抜け落ちてらァ」
「しっかし、あんたんとこの『げんがい』って奴は妙なモン作ったもんだねぇ。あんな姿になっちまうんだから」
アルフの言葉を聞いて銀時は戸惑う。
「えッ? なになに? 俺なんか変なモンにでもなってたの?」
「カッコ良かったよ銀時」
フェイトは微笑み、アルフはニヤニヤしながら銀時の肩を叩く。
「ま、あんたが変身した『カッコいい』姿は後でじっくり聞かせてやるさ」
含みのある言い方でニヤニヤしているアルフに銀時は怪訝な表情を作る。
「お、おい。本当に俺、ナニになったんだ? マジで記憶ねェから不安なんだけど? 版権的にヤベェもんになったんじゃねェだろうな? ハハッて笑うネズミじゃねェよな?」
するとアルフは銀時の肩に腕を回して、笑顔で袋を見せた。
「まぁまぁ安心しなって。あんたの大活躍はこれを食べながら、ちゃーんと聞かせてやるからさ」
「マジで大丈夫なんだな? 信用していいんだな?」
終始不安そうな銀時をよそにアルフとフェイトは帰路へと歩いていく。
ちなみになぜ銀時がRXで、そもそも彼に何があったのか。
それは――。
*
仮面ライダーパンツが現れて暴走していた頃。
「んで? ココでジュエルシード発動してんのか?」
片眉を上げる銀時の質問にフェイトは「うん」と頷く。
「結界が発動したことを考えても、きっとあの白い魔導師の子か一緒にいたフェレットが結界を張った。そしてジュエルシードが発動した気配も感じる」
「つまり、向こうでな~んか起きてんだな……」
銀時は顎を撫でながら、色んな人間の声が聞こえてくる方向へと目を向けた。施設の遊具が邪魔で何をやっているかは見えない。が、あまり穏やかではないことはわかる。
「つうか……『パンツ』……って聞こえね? なんでパンツ?」
微妙な顔の銀時に、フェイトは首を横に振る。
「分からない。行ってみないことにはなんとも言えない」
なんか知らんがある一単語を発する者がいるようだ。かなりデカい声で。
「とにかく、早く回収に――」
急いで行こうとするフェイトの肩を銀時は「待てって」と言って掴む。
「俺もおめェも丸腰だろうが。ばるー……」
と銀時はフェイトのデバイスの名前を言おうとして言葉に詰まるが、すぐに思い出して言う。
「バルバトス。おめェのデバイス、バルバトスがなきゃなんにも始まらねェだろ。もちろん俺の木刀もだが」
「銀時、ガンダムは私持ってないよ」
「そういうツッコミをお前がしちゃダメでしょ。いや、ボケか? まあ、間違えた俺が言うのもアレなんだけど」
と言ってから銀時は頭を掻く。
「ばるなんちゃらがなきゃ、おめェはただの金髪のガキだ。おとなしくペットの犬がおめェの相棒持ってくんの待ってな」
バルディッシュのない自分の無力さを痛感したのか、俯くフェイト。
すると遠くの方から「あたしは狼だァーッ!!」と言う女性の声が聞こえてくる。
「やっと来たか……」
銀時が声をした方に目を向ければ、
「フェイト! 銀時! バルディッシュと木刀持ってきたよ!」
金色の三角形の結晶と、鞘に『洞爺湖』と彫られた木刀を持って現れるアルフ。
「おせェぞバカ犬」
「あたしは狼だって言ってんだろ!! バカ天パ!!」
アルフは怒鳴った後、銀時に木刀を手渡す。
「ほら、言われた通り更衣室から木刀持ってきたよ」
「サンキュ」
と銀時が礼を言い、続いてアルフは金色の三角形の結晶を主に渡す。
「フェイトも」
「ありがとうアルフ」
フェイトは微笑みお礼を言う。
ふと、アルフは思い出したように指を立てる。
「ああ、そうそう。あんたのその……『ぼくとう』だっけ? それの持ち手のさきっちょに、なんかボタンみたいなのあったよ」
「は? ボタン?」
銀時は怪訝な顔をし、柄頭を見る。すると、ホントに赤いボタンが付いていた。
「……え? なにこれ?」
銀時は見覚えのないボタンを見て目を白黒させ、それを見たアルフは首を傾げる。
「あんたも知らないのかい?」
「…………ん? そういえば……」
銀時はその時、あることを思い出す。
そう、それは――この魔法なんてものがある世界にくるちょっと前のこと。
『ああ、銀の字。おめェの木刀ちょっと改造しといてやったぞ。ありがたく思え』
『いや、なに余計なことしてんだクソジジイ!!』
などと言うやり取りをしたような、しなかったような……。
爺の作った不気味なボタンに不安が芽生える銀時。対して、アルフは平然とした顔でボタンを指さす。
「とりあえず押してみたらどうだい?」
銀時は「いやいや」と手を軽く振る。
「あの爺の作ったモンだ。下手したらどんなひでェ目に遭うか――」
アルフは「あ、ごめん」と言って、
「実のところ言うと、持ってくる時に気づいてつい押しちゃったんだよね」
舌を出してテヘペロ。
「おィィィィッ!? じゃあ最初にそれ言えよ!! 俺に渡してから言うんじゃねェよ!! つうかその仕草ムカつくんですけど!!」
青筋浮かべる銀時はハッとあることに気づく。
「あれ? でもお前なんともねェよな? 何も起きなかったのか?」
「いや、特になにも起きなかったね」
眉間に皺を寄せて答えるアルフは人差し指を立てて言う。
「ただ、なんか木刀から爺さんぽい声が聞こえてきて『この改造は、ボタンを押してからエネルギー充填するのに数分時間を要するから気を付けな』とか言ってたね」
「………………」
少しの沈黙の後に、目に影を落とした銀時は口を開く。
「お前……ボタン押してから何分経った?」
「まぁ、ほんの4、5分かな」
「まだ何も起きてないよな?」
「そうだね」
「つまりこれからなにかしら起きるワケだよな?」
「木刀から聞こえてきた声通りならそうなるだろうね」
「ほォ~、なるほどな~。よくわかった」
うんうん頷く銀時は、
「だからそういうことは早く言えェェェェェェェエエエエエッ!!」
慌てて木刀をどこぞに放り投げようとするが、時既に遅し――銀髪は木刀から発せられる光に包まれてしまった
フェイトとアルフはあまりの眩さに思わず目を瞑る。
そして光が収まっていくことを感じて、二人は徐々に目を開ければ、
「俺は太陽の子――」
黒い戦士が立っていた。
「仮面ライダーブラック!! ア゛ールエ゛ックス!!」
キレッキレのポーズを決める仮面ライダーBLACK RX。
「「おぉッ……」」
アルフとフェイトは見事な変身を遂げた銀時を見てパチパチと拍手。
そしてフェイトはRXの腕をポンと叩く。
「頑張ろうね。銀時RX」
無言で頷く銀時RX。
その後はと言うと、変質者を見た銀時RXが「むッ! あれは怪人! このRXがゆ゛る゛ざん゛」と言い出して、そのままジュエルシードで変態した変態に向かって勝負挑んだと言うワケである。
*
ちなみに捕まった仮面ライダーパンツはどうなっているかと言えば……。
「わんわんッ!!」
と吠える定春と、
「ぎゃああああああああああああッ!! だずげでぐれ゛ェェェェェェッ!!」
と悲鳴を叫ぶ変質者。
変態は檻に入れた、定春と一緒に。そしてそのまま犬の遊び相手。
ただし犬の遊び相手と言ってもそんな微笑ましいものではない。ヒグマ並みにでかい定春の相手となるとそれこそ命がけ。
血がでるほど頭を甘噛みされる、皮が引き裂かれるほど爪で体が研がれる、挙句定春が寝る時はその巨体がのしかかってくるなどなど。
なにこれ新手の拷問? レベルの犬の遊び相手。常人では一日も持たない事だろう。
「管理局に引き取られるまでの間はその犬ッコロの遊び相手……いや、おもちゃになってもらぜ」
黒い笑みを浮かべながら変質者を見る沖田に対し、アリサは半眼を向ける。
「いや、言い直し方逆じゃないそれ?」
「管理局ぅぅぅぅぅぅぅぅッ!! 早く来てくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」
変質者は管理局が早くやってくることを願いながら定春の爪で背中を研がれていた。
デバイスを取り上げ、檻に入れ、更には定春の遊び相手をさせるという沖田のアイデア。
そういう条件付きで渋々アリサは許可。バニングス邸の庭(一般人の目に付かず、悲鳴が届かない場所)で次元犯罪者――仮面ライダーパンツは身柄を拘束されることになったのである。
ちなみに変質者のデバイスは彼のブーメラン海パンだった。が、誰も預かる奴などいるはずもないので、アリサが魔法で燃やしましたとさ。
「あれ? みんな、俺のこと忘れてない?」
ちなみにふんどしゴリラが解放されたのは皆が温水プールから帰った後の夕暮れ時だった。
*
「そう言えばよ……」
銀時がおもむろにアルフに問いかけた。
「フェイトが首に下げてる刀みてェな、なんだ……キーホルダーか? アレなに? デバイス?」
「さぁ……? アレがなんだか、あたしもわからないんだよ」
アルフは腕を組んで首を傾げて、フェイトの背を見ながら説明する。
「なんかフェイト、アレを肌身離さず誰にも見られないように、服の下に入れて首に下げてるんだよね」
「ふ~ん。でもよ、普通はああ言うネックレス的なもんて、見えるように首に下げね?」
銀時の疑問は最もなようでアルフも首を傾げながら。
「いやさ、あたしも言ったんだよ? 『なんでわざわざ服の下に入れてんの?』って。でさ、フェイトの奴は、『こっちの方が落ち着くから』って言うしさ。な~んか、ネックレスのこと聞かれたくなさそうだったから、それ以降は何にも聞いてないけどね」
アルフの説明を聞いた銀時はフェイトに顔を向けて、彼女に駆け寄る。
「なー、フェイト」
「なに銀時?」
「お前、刀のキーホルダーみてェなネックレスしてるだろ?」
「ッ!!」
フェイトは目を見開き足を止めた。
銀時は訝し気な視線を少女へと向ける。
「大事なモンなのか?」
「うん……」
と頷き、フェイトは微笑みを作った。
「母さんから貰ったの」
「へぇー……プレシアからねェ……」
銀時は顎を撫でながら微笑むフェイトを見るが、少女は首を傾げて言う。
「気になるの?」
「まぁ、わざわざ服の中に入れてたらな」
「母さんに貰った……大事な物……だから」
フェイトは胸の辺りを握りしめる。たぶん、ネックレスがある場所だろう。
「そうか」
銀時はぼりぼり頭を掻いた後、ネックレスを指さす。
「それ見せて貰ってもいいか?」
「だ、ダメ!!」
フェイトが必死な顔で拒否するので、銀時は少々驚いてしまう。
「こ、これは母さんから人に絶対渡すなって言われてて……」
フェイトはより強く服越しにネックレスを掴みながら不安そうに俯く。
「……わかった。悪かったな」
そう言った銀時は、後ろで二人の会話を怪訝そうに見ているアルフの元へ戻る。
フェイトは銀時が後ろに行った後に呟く。
「まだ……。……大丈夫、だよね」
フェイトは強くネックレスを握り絞めるのだった。