魔法少女リリカルなのは×銀魂~魔法少女と侍~   作:黒龍
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第二十四話:散歩

「おい早くしろ」

 銀時は急かすが、アルフは戸惑った声を出す。

「ちょッ、ちょっと待っておくれよ……」

 アルフは今現在ピンチに陥っていた。

「こっちだってお前に付き合ってる暇ねェんだよ。するならさっさとしろ」

 尚も急かす銀時だが、アルフの足は止まったまま。

「だから、その……」

 アルフは正直言ってこのまま生物の本能に任せて事を済ませてはいけないと言う理性と羞恥心が彼女を引き止めている。

「おいおい」銀時は催促する。「いくら辛抱強い銀さんだってこれ以上待つのは無理だからね? ほら、気合入れて早くしろって」
「うぅぅ……」

 アルフは羞恥心のせいで自身の毛並みより顔を真っ赤にする。彼女は最早我慢の限界だった……。

「だから、早くウンコしろって言ってんだろうがァ!」

 銀時はついに我慢の限界のように怒鳴り散らす。

「できるかァァァァァァァッ!!」

 そんで更にデカい声でアルフは怒鳴り返す。
 道の真ん中で野糞するのはいくらなんでも恥ずかし過ぎる、とアルフは内心思うのだった。


「やっぱさァ、犬飼ってる以上散歩は必要じゃね?」

 と言う銀時の言葉を皮切りに地球に着てからアルフの散歩が始まったのである。
 海鳴市内をほんの二、三十分程度歩く散歩だ。
 定春と言うヒグマ並に巨大な犬を飼っている(神楽のペットだが世話しているのは自分)銀時としてはアルフを散歩させた方がいいのではないかとフェイトに提案したのだ。
 「何故散歩が必要なの?」と疑問に思ったフェイトであるが、銀時が「犬を飼う以上散歩は飼い主としての必須事項なんだよ」と説明し、アルフが「あたしは狼だ! しかもペットじゃないし!!」と怒鳴ったのは記憶に新しい。
 ジュエルシード探索も兼ねてと言うことで結局アルフを狼状態で散歩させることになった。
 そして皆さんはご存知であろうか? ペットに何故散歩させるのか。
 もちろん普段運動のできない狭い空間に拘束されているペットに運動をさせると言う目的もあるが、もう一つ大事な目的がある。
 それは、

「だからウンコしろって言ってんだろ!」と銀時は声を上げる。「もう一時間も歩いてるだろうが‼ 便秘なのかテメェは!!」

 糞をさせるためだ。屋内犬は定期的に散歩させないと家の中で糞をするため、そうならいために外で糞をさせるのがベストなのである。

「だから無理だって何べん言ったら分かるんだい!!」

 アルフは顔をタコのように真っ赤にさせて道端で野糞をするのを拒否する。

「おまえなァ、犬の癖して散歩でウンコもできねェとは犬失格じゃねェか」と銀時。
「だからあたし狼!!」

 アルフとしてはジュエルシード探しついでの運動かと思っていたが、途中で銀時「お前いつになったらウンコすんだよ?」なんて聞くもんだからビックリし、この散歩の意図に今頃になってようやく気付いた。
 理性も羞恥心もないただの犬や狼ならいいかもしれないが、元は狼でも使い魔となり理性も羞恥心もある上、人間の姿になれる彼女としては野糞、しかも男に見られながらなど堪ったものではない。
 銀時は肩眉を上げる。

「つうかお前小便もしてねェじゃねぇか。足上げて豪快マーキングしねェ犬なんて俺は見たことねェぞ」
「あたしは雌だし、犬でもねェんだよ!!」

 ちなみに片足上げて小便するのは雄だけだ。

「ホント勘弁してくれよ銀時ィ……」

 涙声でアルフは言う。
 適度に運動した上に散歩する前にご飯食べたお陰ですっかり便意はくるもんだから、正直言って我慢の限界だ。小便だってしていない。もう野糞すらしても良いんじゃね? とか思ってしまっている始末だ。

「あたしもう我慢の限界なんだよォ……」

 アルフは嗚咽を漏らしながら言う。このままで本当に理性も羞恥も捨てて道端を簡易トイレにしなきゃならなくなる。
 銀時は頭を掻く。

「わかったわかった。俺が悪かった。いくらなんでも無神経過ぎたな」

 銀時の言葉を聞いてアルフの顔がパーッと明るくなる。やっと自分の気持ちに彼が気付いてくれたのだ。そしてトイレがある場所まで一緒に歩いていく。

「ほれ、砂場(ここ)でしな」と銀時。
「あたしは猫でもねェ!!」

 公園の砂場を勧めてくる銀時(バカ)。さすがにブチ切れたアルフは思いっきり銀時の頭に噛み付く。

「いだだだだだだだッ!!」悲鳴を上げる銀時。「分かった分かった!! ゴメンてば!! ほ、ほら!! あそこ!!」

 銀時が指を指した先を見ると、大きな公園に一つはある公衆トイレが目に入った。
 それを見たアルフは慌ててトイレに直行した。ちなみにアルフはリードをしているので、それを持っている銀時はそのまま引きづられ一緒にトイレに向かっていく。

「ぬォォォォォッ!!」

 銀時の体を地面に擦り付けながらアルフがトイレに入る。

「いてて……」

 銀時はいたるところに擦り傷作りながら、体の埃を払う。するとトイレに入ったアルフが声をかける。

「おい、リード放しな。それのせいでドアが閉められないんだから」
「安心しろ見ててやるから。銀さんこう見えても犬の糞はちゃんと持って帰る律儀な男だから。お前の一本グソはちゃんと持ち帰って――」
「こ ろ す ぞ?」
「…………はい」

 銀時は顔面蒼白にしてパッとリードを手から離す。するとリードはまるでドアの隙間に吸い込まれるようにトイレの個室の中に入っていった。

「さァて、ベンチに座って待つとしますかね」

 銀時はぼりぼりと頭を掻く。さすがに女子トイレで待って他の女性が来て通報なんてアホな展開にするつもりはない。
 すぐさま女子トイレを出ようとした時、

「銀時、こんなとこに居たの?」
「ッ!?」

 まさかの女性が!? と思って声の主を見ればそこにはバリアジャケット姿のフェイトが立っていた。
 銀時は安堵の息を吐く。

「……脅かすんじゃねェよ」
「? ご、ごめん……」

 フェイトはなんのことだが分からないが律儀に謝る。

「そんで、な~んで俺たちの居場所が分かったんだ? お前」

 訝し気な顔をする銀時の質問にフェイトは律儀に答える。

「アルフと私は魔力で出来たリンク――つまり繋がりのような物があるから相手がどこにいても大体の居場所は分かるの」
「なるほどねェ。相変わらず便利だなァ、魔法ってやつは」

 銀時は感心したように顎を撫でる。するとフェイトは首を左右に動かして辺りを見回す。

「アルフは?」
「まぁ、ちょっとした野暮用をな。――っと、こんなとこで立ち話してる場合じゃねェ」

 自分がどこにいるのか再認識して銀時はフェイトの手を取る。

「ほれ行くぞ。こんなとこで『そんな格好』のお前と一緒にいるとこ見つかったら警察の厄介に――」

 銀時がそう言った時、カタンと何か硬いものが落ちる音がした。
 いやぁ~な予感がして音のした方を見てみれば、出口の前でケータイを落とした女性が青ざめた顔で自分たちを見ている。

「………………」

 今の自分たちの状況を頭の中で整理する。
 スクール水着やタイツのような際どい衣装を着た幼女の手をいい歳した大人が握っている。しかも女子トイレで。

(あ、アウトォォォォォォォッ!!)
 
 銀時は内心シャウトする。
 状況が状況だけにヤバイなんてモンじゃない。事案確定。お縄頂戴で人生終了。
 言い訳とかそんななんしている暇は微塵もない。取るべき行動は一つ。全力ダッシュでこの場を去ることただ一つ。
 状況が何一つ分かってない金髪幼女の手を引いてマラソン選手もビックリのロケットダッシュで逃げる銀時だった。



「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……!!」

 マンションに着いて息を荒くさせる銀時はソファーに腰を下ろす。ずっと全力ダッシュで帰ってきたのだから仕方ない。

「大丈夫? 銀時」

 心配そうな顔で見つめるフェイトに言葉の一つでも掛けたいところではある。
 銀時はなんとか息を整え、喋る。

「だ、大丈夫だコノヤロー……ハァ、ハァ……」

 とりあえず疲れて喉も渇いたので、冷蔵庫にあるコーヒー牛乳を取り出し、コップに入れるてグイっと飲む銀時。大分息が整った。

「ふぅ……」銀時は額の汗を拭う。「たく、さすがに焦ったぜ」

 その時だった。玄関を勢いよく開ける音がし、次にドタドタと廊下を走る音が聞こえてくる。
 バタン!
 ドアが開き、怒った顔のアルフが現れる。

「おい‼ なんで勝手に帰ってるんだい!! あたし一人を置いて帰るなんてさすがに酷いじゃないか!!」
「緊急事態だ。少しは察しろ」

 銀時はめんどくさそうに半眼でアルフを見る。するとアルフは眉間に皺を寄せる。

「まったく。緊急事態ってんなら、あたしを頼ればいいだろうに」
「そう言えば、アルフはあの時なにをしてたの?」

 フェイトの問いに代わりに銀時が答える。

「あん? コイツはあの時うん――」

 言い終わる前に彼の顔面に顔を真っ赤にしたアルフの拳が炸裂した。
 フェイトはなんのことだから分からず首を傾げた。



「んで、ジュエルミートはいくつ集まったんだよ?」と銀時。
「ジュエルシードな、ジュエルシード」

 アルフは名前を間違える銀髪の言葉を訂正して台布巾でテーブルを拭く。
 取り皿や箸を机に置くフェイトが質問に答える。

「今あるジュエルシードは全部で四つ。あの白い魔導師の子とその仲間たちが持っているジュエルシードはおそらく全部で三つ。となると、残りは全部で十四」
「まだまだあんな。しかも競争相手もいんのかよ」

 銀時はコロッケやから揚げなど色々な揚げ物が乗った皿やサラダが入ったボールをテーブルの上に乗せていく。
 フェイトは皿を並べながら言う。

「ロストロギアの回収である以上、敵対勢力が出てくる可能性は少なからずもあるから」
「まァ、古代の超すげェ遺産て奴だから、欲しがる野郎なんざごまんといるわな」

 銀時は箸とフォークを出して言うとアルフは半眼を向ける。

「あんたのそのテキトーな表現だとロストロギアの凄さが伝わらないけどね。あんたロストロギアの重要性を理解してる?」

 あんまりロストロギアと言うものを理解してなさそうな銀時をアルフはジト目で見ながら席に座る。続いて銀時とフェイトも椅子を引いて席に着く。

「アレだろ?」銀時は指を立てる。「ドラゴンボールくらいの価値があるって思っとけばいいんだろ? 俺たちの狙ってるブツも丁度同じようなモンだし」
「そう言うあたしらが理解できない単語で自己完結するの止めてくれないかい?」アルフは呆れる。「あんたがなに言いたいのか分からないんだしさ」
「へいへい。まァ、ジュエルシード回収はちゃ~んと手伝ってやるから、そこら辺だけ頭いれとけばいいから」
「大丈夫かねェ、ホント……」

 アルフはため息を吐く。

「そんじゃま、食うとしますか」

 銀時の言葉を皮切りに両手を合わせるアルフとフェイト。

「「いただきます」」

 そして三人の夕食の時間が始まった。

「てっめアルフ!」銀時は口に食べ物突っ込みながら突っかかる。「なにいきなりから揚げバクバク食ってんだ!! 野菜食え! 野菜! 糖尿病になっても知らねェぞ」
「甘党のあんただけには言われたくないよ! つうかサラダとご飯に掛けてるその黒いのなんだよ!?」
「宇治金時だバカヤロー。甘味だ。スイーツだ。覚えとけコノヤロー」
「いや、サラダとご飯に甘い物掛けるとかあんたはアホか?」
「いいんだよ、俺はこれで。これで美味くねェ野菜もちったァマシになるんだからな」
「いや、そんなことしないと野菜食えないあんたの方が問題じゃないかい!!」

 とまぁ、ご飯が始まると銀時とアルフが言い合いながら箸やらフォークを動かし、フェイトがそれをニコやかに眺めるのが、最近の彼らの食卓の風景だ。

「ゴクゴク…………プハァーッ!」

 アルフは食べるだけ食べた後に喉が渇いて牛乳を一気に飲みして軽快に喉を鳴らした後、満足げな顔を作る。

「ん~……やっぱり飯ってのはこう、ガッツリ食うのがイイねェ」
「私たちだけじゃ、大したご飯は作れなかったもんね」

 フェイトはアルフの言葉に賛同するように笑みを浮かべ、それを聞いた銀時はどことなく満足げな顔を作る。

「ま、せいぜい感謝するこったな。この俺が人様のために飯作るなんざ、中々ねェんだからな」

 するとアルフは呆れた眼差しで、

「偉そうに言うけどさ、あんた今んとこ飯くらいしか役に立ってないじゃないのさ」
「あん?」

 銀時は肩眉を上げる。
 アルフの言葉を聞いたフェイトは申し訳なさそうな顔で彼女を注意する。

「そんなこと言っちゃダメだよアルフ。地球に着てから家事は銀時がやってくれてるんだよ?」
「そうだぞコラ」銀時は腕を組む。「テメェは毎日朝昼晩ご飯作ってくれるお母さんの気持ちを知りやがれコノヤロー」

 アルフは頭を掻きながら言う。

「確かにあたしも地球に来てから毎日飯を用意してくれて、服を洗濯してくれるあんたにはもちろん感謝してるよ? でもさ、ジュエルシードに関しちゃ銀時(あんた)、まったくと言っていいほど活躍してないじゃないか。一応プレシアにはジュエルシード探しも込みで雇われてる身なんだろ? あんた」

 アルフに痛いところ疲れた銀時はバツが悪そうに頬杖を付いて顔を背ける。

「チッ……しょうがねェだろうが……」

 なにせジュエルシード関連に関して銀時がやった事と言えば、アルフを散歩させながらの周辺探索だけなのだ。

「まさかあたしたちが『今居る地球』が『銀時の居た地球』と違うなんてねェ……」アルフはジトーとした眼差しを銀時に向ける。「これじゃああんた、ホントなんであたし達と一緒にやって来たのか分からないね」
「しょうがねェだろうがァァァァァ!!」

 いたたまれなくなった銀時は叫び、汗を流しながら自棄になったように捲し立てる。

「一体どうすればこれから行く地球は『俺の住んでいた地球じゃありません』なんて分かんだバカヤロー!! 地球つったら俺の地球だと思うだろ普通? 地球が複数あるとか思わねェだろ普通!? ソレがなに? やって来てよく見てみたら俺の知ってる地球とは違うって、こしあんかと思ったら実はつぶあんでした、ってか!!」

 銀時はくせっ毛だらけの髪をワシャワシャと掻き乱してより髪のくせを強くしながら泣き言のように溜め込んでいた愚痴を吐き出す。
 そう。ジュエルシード回収のためにやって来たこの星――地球は銀時の住んでいる地球とは外見は同じでもまったくの別物。土地は一緒でも中身がまるで違うのだ。
 町も人も文化も建物も銀時の知っている地球とはまるで違う。
 数日前にフェイトとアルフと共にやって来た銀時は町並みやらテレビで今いる地球を観察している内に自分の知っている地球ではないのか? と言う疑いを持った。
 そしてフェイトに自分が暮らしていた地球とはまるで違うと話しところ、魔法世界関係者であるフェイトから、

『これは私の予想なんだけど、たぶんこの世界――地球は銀時の住んでいた世界の地球とは違う世界の地球なんじゃないかな? だから銀時の言っていたサムライもエドもアマントって言う存在もいない。次元世界は数え切れないほどあるから、同種の星が複数あったとしてもおかしくない思う』

 と言う推論を聞いて、希望の光から絶望の闇に一気に叩き落された銀時。結局自分は世界レベルの迷子のままだと言うことだ。つうかホントに帰れるの? と凄いヘコんだ。
 
「何これ!?」銀時は頭抱える。「ドラ○もんの男と女の生物が逆転した別の地球ってことか!? の○太くんは男の大事なシンボル失った代わりにバカから天才になってるから、こっちの地球の俺もチ○コ無くした代わりにサラサラヘアーになってるって言うことか!?」

 まだまだ泣き言が止まらない。そんな彼を見てさすがに罪悪感を感じたのであろうアルフが申し訳なさそうと言った顔をする。

「お、落ち着きなよ。あたしも意地が悪かったよ」

 アルフの言葉を聞いてやっと我に返った銀時は席に座り直し、さんざん愚痴を吐き出しことで疲れた彼は息を荒くしていた。
 申し訳なさそうに言うフェイトが言う。

「私としては、銀時を元いた世界に返してあげたいけど、広い次元の中にある特定の星の一つを特定するのはとても困難なことだから、たぶん私たちの力だけじゃとてもじゃないけど、銀時を帰してあげることは……できないと思う」

 銀時は手をぶらぶらと振ってなんでもないと言う風に返す。

「別に構わねェよ。下手に希望与えらえるより、事実教えられた方がこっちとしてはいくらかマシだ」
「銀時…………」

 フェイトは悲しそうな表情を作る。そんな少女を見てどっちが気を使っているのか分かんねェな、と銀時は思った。
 すると悲しげなフェイトの表情を見たアルフがすかさず言葉をかける。

「で、でもさ! 管理局に保護してもらえれば遠からずあんたの元いた世界に帰れると思うよ!」
「管理局って、確か俺らで言う警察みたいなもんだろ?」

 銀時の言葉にフェイトは首を傾げる。

「けいさつ?」

 フェイトから前もって聞いた管理局と言う組織を自分なりに解釈して言ったつもりだったが、首を傾げるフェイトに続いて首を傾げるアルフを見ると、どうやら彼女たちは警察と言う組織を知らないようだ。こういうとこでまた地味に世界の違いと言うものが感じられる。

「あ~、警察知らないのか」銀時は頭を指でポリポリ掻いて説明する。「つまり、法律っつうか一般市民の平和と安全守る組織ってことだ。お前らの言う管理局と同じな」

 銀時の話を聞いて彼がなにを伝えようとしているのか分かった二人はうんうんと首を縦に振る。
 その後、ため息を吐く銀時。

「まぁ、俺としちゃあそう言うお堅い連中の世話になんのは気が進まないんだけどな……」
「じゃ、じゃあ! 別に管理局に銀時のことを連絡する必要はないってことだね!?」
 
 アルフは何を勘違いしたのか、身を乗り出して言う。彼女の言葉に眉を潜める銀時。

「いや、なんでそうなる?」
「だ、だって……銀時は管理局の世話になりたくないんだろ?」

 弱々しく言うアルフに銀時は言う。

「いや、だからってこのままだと俺は一生地球に帰れないままじゃねーか」
「そ、そりゃそうだけど……」

 口ごもるアルフに銀時は説明する。

「ちゃんと報酬分の仕事はきっちりこなしてやるから(魔法使えないけど)。とりあえず、管理局に俺の世界を探すように言えば、ジュエルシード集め終わった頃には俺も元に世界に帰れるだろうしな」
「つまり、今すぐにでも連絡を入れたいと?」

 アルフの言葉を聞いた銀時は少々イラつきながら言う。

「だからそう言ってんだろうが。お前ちゃんと人の話し聞いてた?」
「うぅぅ…………」

 アルフは口ごもる。
 彼女の消極的な態度に首を傾げる銀時。管理局と言う組織に関わり合いになりたくないのだろうか? 遠まわしに管理局と接触を避けようとする節が伺える。
 めんどくさそうに銀時は頭をポリポリと掻く。

「なァ……お前らもしかして管理局に『関わりたくない理由』でもあんのか?」
「なッ!? な、なに言ってんだい!?」アルフは汗をダラダラ流しながら明後日の方角に顔を背ける。「そ、そんわけないだろ! そ、それだとあたしたちが何かやましいことしているみたいじゃないか!!」
「おーい。そういう割に目が泳ぎまくってんぞ?」

 銀時はジト目向ける。
 挙句の果てはできない口笛まで吹いているのだから、なにか隠しているのは明白だ。
 するとフェイトが口を開く。

「もういいよアルフ。銀時には正直に話そう」
「でもフェイト!」

 アルフは悲痛な声を出す。

「もし本当のこと話したら銀時は手伝ってくれないよ! それに、下手をしたらフェイトは管理局の連中に――!!」

 アルフが言葉を最後まで言い切る前にフェイトは首を横に振り、使い魔は主の名を呟く。

「フェイト…………」
「正直、ここまできたらたぶん銀時には誤魔化しきれないと思う」フェイトは真剣な表情で言う。「なら本当の事を言って分かってもらうしかない」

 フェイトは真剣な表情で言う。
 銀時はワケが分からず?マークばかり頭の上に浮かべる。なにせ二人がなんの会話しているのかまったく掴めないからだ。
 アルフは諦めたように席に腰を下ろし、フェイトが意を決したように自分に顔を向ける。

「銀時。私たちが今集めているジュエルシードはロストロギアだって覚えてるよね?」
「なんだよ改まって。んなもん、テメェとテメェの母ちゃんに散々説明されたよ。よくわけんねェけど、古代のすげェお宝でいいんだろ?」

 頬杖を付いて、今更なに言ってんだコイツ? みたいな顔をする銀時。だが、アルフは銀時の説明を聞いて「いや、その理解の仕方はアバウト過ぎるだろ」と微妙な顔をしていた。
 フェイトは説明を続ける。

「厳密には古代の失われた超技術の結晶みたいなものなんだけど、それを私たちは集めている」
「ああ」銀時は相槌を打つ。「その回収を俺も依頼受けて手伝ってる。今んとこ俺たちの現状はこうだろ? んで、つまりお前はなにが言いたいんだよ?」

 銀時はフェイトの遠まわしげな会話に業を煮やす。
 するとアルフが呆れたような声を漏らす。

「あんた、感とか鋭いくせにちょっと察しが悪いよね」
「あん?」

 銀時は少々失礼なこと言う狼女に睨みをきかせる。するとフェイトが説明を入れる。

「そう言ったロストロギアには次元そのものを危機に追いやってしまうような危険な物も存在する。だから管理局は次元世界の安全のためにロストロギアの管理、保管も行っているの」

 アルフは説明を補足する。

「そんで、個人がそんな危険な物を保持または使役するのはもちろん禁止されている」
「へ? するってーと……」

 銀時は二人の説明を聞いてやっと彼女たちがなにを言いたいのか察し始めた。
 そして頬杖を付いたアルフはため息混じりに言う。

「管理局員でもなく、許可すら取らずロストロギアを回収しているあたしたちは犯罪者ってことだよ」
「ああなるほどー」

 銀時はポンと手の平を拳で叩いて納得する。そして彼は二人を指さす。

「つまりお前達は犯罪者ってことだな?」
「そうだよ」とアルフ。
「そんでお前達に協力している俺も犯罪者の片棒を担いでるワケだな?」
「そうだよ」
「つまり俺は泥に片足突っ込んじまってるワケだな?」
「ああ、そう言うことだね」

 アルフは律儀に銀時の言葉に相槌を打ってくれる。
 ようやく理解できた。つまり……。

「俺犯罪者じゃねェェェェェェェかッ!!」

 突如大声出した銀時に対し、フェイトとアルフは耳を指で塞ぐ。
 ようやく自身の現状に気付いた銀時は頭抱える。

「ふざけんじゃねェよ!! えッ? なに? つまり俺は既に前科持ちってこと!? いつまにか別世界でも犯罪の片棒を担がされちまったのか!?」
「ま、まァ、落ち着きな銀時」アルフは両手を出す。「銀時はこっちの世界の事情について詳しくなかったんだから、やることやったとしても何も知らない協力者ってことで情状酌量の余地はあるはずさ」
「いや、お前なに最後まで俺を犯罪者のお仲間に加えようとしてんの!? 図々しいにもほどがあんだろ!」

 銀時は声を荒げる。
 フォローするかと思ったら、アルフと言う犬耳女は最後まで協力させようとするし、法律の抜け目を通させようとさへさせる。犬のくせして蛇みたいに狡猾なこと考える恐ろしい奴だ。

「あ、アルフ。銀時を困らせちゃダメだよ」

 主はやんわり自身の使い魔を注意する。ばつが悪そうにぽりぽりアルフは頭を掻く。
 銀時に向き直るフェイト。

「私としては銀時の協力なしでもこのままジュエルシードを回収していくつもり。私だって良い事していると自分でも思ってない……。でも、母さんの為にもジュエルシードはなんとしても手に入れないといけないの」

 ゆっくりと自分の気持ちを伝え続けるフェイト。それに対し銀時は黙って聞いている。

「銀時にはできればだけど、管理局には私たちのことを言わないでくれれば助かる。ジュエルシードが全部揃えば、なんとか私から銀時に報酬をあげるつもりだから」

 フェイトの説明を聞いた銀時は片眉を上げる。

「するってーとなにか? 俺はここで戦線離脱ってやつか?」
「えッ? う、うん。そうなるね」

 フェイトはどことなく不服そうに言う銀時の言葉に意外そうに頷く。
 銀時は背もたれに体重を掛けて天井に顔を向ける。

「なるほど。つまり俺ァ、お払い箱ってやつか」
「ち、違うよ銀時!」
 
 フェイトが否定し、アルフは食って掛かる。

「銀時! あんた、フェイトの気持ちが分からないのかい!? フェイトはあんたにこれ以上迷惑掛けたくなくて――!!」
「なら」銀時が鋭い視線を送る。「最初っから俺抜きでジュエルシード集めやれば良かっただろ?」
「「ッ…………」」

 フェイトとアルフは言葉に声を詰まらせる。彼の言うとおりだと思ったのだろう。
 銀時は言う。

「まァ、あのおっかねェ母ちゃんの命令には逆らえないってのも分かるぜ? 俺を管理局に預けちまったら、あの鬼ババが何しでかすのか分からないもんな」

 おおこわ、と銀時は言って腕を摩る。彼の言葉を聞いて俯いていたフェイトは呟く。

「違うよ」
「……フェイト?」

 アルフは少々普段と雰囲気が違う主に不安そうに顔を向ける。
 フェイトは俯き、スカートの袖をぎゅぅと両手で握りながらぽつりぽつりと呟く。

「確かに、母さんの指示に従わなきゃって思うところはあるよ? ……でもね、私はもっと銀時と一緒に居たいって心のどこで思ってた」
「…………」

 何も答えない銀時。だがフェイトは続ける。

「――短い間だっけど、銀時やアルフと過ごす時間は本当に楽しかった。昔母さんと味わった楽しい時間がまた戻ってきたみたいだった。とっても温かくて、騒がしいけど、楽しい時間……」
「フェイト……」

 アルフは悲しそうな表情でフェイトを見つめる。一方の銀時は黙って彼女の吐露に耳を傾け続ける。フェイトの目には少しづつではあるが、水滴が溜まりつつあった。

「……だから、手放したくなかったんだと思う。こうやって銀時やアルフと過ごす楽しい時間を。銀時がこのまま一緒にいてくれれば……、なんて勝手なこと思ってた」
「そうか」

 素っ気なく返事する銀時。そのままフェイトは気持ちを伝え続ける。

「ダメだよね? わたし……つい、銀時に甘えてた……」

 いつ間にか目に溜まっていた涙の雫を袖でふき取りフェイトは言う。

「でも、もう大丈夫。銀時はちゃんと管理局に言って元の世界に帰ることだけに専念して。私はなんとか母さんに銀時の協力がなくなったことを納得してもらうから」

 と無理に笑みを浮かべて銀時を安心させようとするフェイト。主の意思を汲み取ってか、アルフはアルフで何も言えず、悲しそうな表情でギリィっと奥歯を噛み締めていた。
 そんな痛々しい姿の少女と狼娘の姿に銀時は諦めたようにボリボリ頭を描きながらため息を吐く。

「わかった。わかりました。最後まで付き合ってやるよ、お前達に」
「えッ……!? でも――」
「あ~、とにかく気にすんな」銀時は片手ぶんぶんを振る。「俺は俺の勝手でテメェらに付き合うんだ」

 今度はアルフが意見する。

「でも、これ以上あたしらに付き合ったらあんた犯罪者に――」
「俺は元いた世界でも」銀時はため息交じりに言う。「片足泥に漬かってんだか、全身泥に漬かってんだか分からないような奴だ。今更別世界で泥塗れになろうが、問題ねェよ」

 銀時の言葉を聞いてフェイトは瞳を潤ます。

「銀時……」
「それに」と言って銀時はチラリとフェイトを見る。「おめェみてェなすぐに無茶しそうなガキに世界どうこうするようなモン任せる方が、大人として問題だろうが。とにかく、俺はこれからも協力してやるから、もうとやかく言うな。はい、これで終了」

 銀時はそう捲くし立てるように言った後、自分が食べた分の食器を持って行く。
 照れ隠しするように食器洗い始める銀時を見てフェイトは、

「ありがとう」

 笑顔で答える。



 朝のワイドショーである事件が取り上げられていた。

『昨日夕方未明。白髪の中年男性が女子児童を女子トイレに連れ込み、水着に似た衣装を着せた上で性的暴行を加えると言う事案が発生しました』

 画面が切り替わり、顔にモザイクが掛かった女性が取材陣のインタビューを受けていた。

『本当に驚きました。……ええ。まさか比較的平和なこの町であんなモノ見てしまうなんて思いませんでしたよ。ホントにショックでした』

 ボイスチェンジャー越しからでも伝わる女性の嫌悪と侮蔑の声。
 するとレポーターが質問する。

『容疑者を見た印象はどうでした?』
『ええっと……そうですね……。なんと言うか、不潔そうで、とにかく目が怖かったです。なんと言うか世の中すべてを憎んでいるようなまるで世捨て人のような濁った瞳でしたね、はい。私まで何かされるんじゃないかって、ゾッとしましたよ……』

 女性は二の腕をまさぐって嫌悪を現す。

「どこの世界にもこう言う人っているんですね」

 テレビを見ていた山崎は犯人の情報を聞いて、俺も警察としてしっかりしないとな、と心の中で意気込む。
 するとテレビを見ていた桃子も箸を止め、なのはに真剣な表情で注意する。

「なのはも気をつけなさい。どんなとこにも変質者って怖い人たちがいるんだから」
「ああ、なのはは特にかわいいからな。連中の良いターゲットだ。充分気をつけるんだぞ?」と高町士郎。
「う、うん……」

 両親の言葉に怯えた表情を作るなのは。

「安心しろなのは!」握り拳作る恭也。「もしそんな連中が現れたとしても俺が血祭りに上げてやるからな!!」
「……あの、恭也くん? 目が怖いよ……。パッと見、今の恭也くんの方が犯罪者に見えるんだけど……」

 山崎は頬を引き攣らせて恭也の顔を見る山崎。
 今の彼は恭也と言うより凶也と言う名前の方がピッタリだと思った山崎。


「ぶへっくしょん!!」
「うわッ!? きたなッ!! あっち向いてしなよ!!」

 アルフの顔に思いっきりくしゃみぶっかける銀時であった。