やはり俺が入隊するのはまちがっている。   作:ユンケ

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比企谷八幡は熊谷友子ら同期の訓練生と共にモールモッドに挑む(前編)

「ほいっと」

 

俺は軽く跳び上がり一気にバムスターの顔面に向かう。もう何度も戦っている為、作業をするようになっている。

 

バムスターの顔面に近寄った俺は唇の様な部位に手をかけてぶら下がりながらスコーピオンを肘から出してバムスターの目を破壊する。

 

それと同時にバムスターが崩れるので手を離し地面から着地する。

 

バムスターが倒れこみ活動を停止したのでアナウンスが流れる。

 

『2号室、記録 9秒』

 

そんなアナウンスを聞くと同時に訓練室から出る。

 

もう既に何回もやっている為、バムスターは敵じゃない。

 

「お疲れ様です」

 

すると巴が近くにやってきて挨拶をしてくる。相変わらず礼儀正しい奴だ。

 

「よう。お前はもう違う訓練室で終わったのか?」

 

「はい。今回でようやく20秒を切りました」

 

おっ、伸び代があるな。以前聞いたら初めの訓練では1分って聞いてたし。

 

「やるな。ところで熊谷と照屋知らねーか?」

 

あいつら2人ともいないのは珍しい。徳に照屋にはマフラー返さないといけないし。いつまでも俺なんかが持っているのは申し訳ないしな。

 

「今日は見てないですね。お休みじゃないですか?」

 

まあそうかもな。真面目なあいつらが訓練をサボるとは思えん。大方風邪か家の用事だろう。

 

「そうか。すまん」

 

「いえ。それより次の訓練室に行きましょう。それが終わったらランク戦をして貰ってもいいですか?」

 

「おう。いいぞ」

 

 

そう返しながら次の訓練室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も地形踏破、隠密行動、探知追跡訓練と色々な訓練をこなしたが今回の俺の記録は全ての訓練で1位だった。

 

これについては初めてだったので割と嬉しい。

 

これで4000ポイントまでは後320ポイントだ。これなら目標の2月までにBに上がるのは叶うだろう。

 

 

そう思っている時だった。

 

 

「比企谷先輩!」

 

後ろから声をかけられる。俺を先輩呼びする奴は巴以外には1人しかいない。

 

振り向くと照屋が若干息を切らしながらやって来た。

 

「おう照屋」

 

「照屋先輩こんにちは」

 

「こんにちは。ところで訓練は……」

 

「ん?もう全部終わったぞ。何か用事があったのか?」

 

「はい。学校のグループ課題が少々……」

 

あー、アレか。アレ放課後を巻き込んでやるパターンになるからな。それなら仕方ない。

 

「まあ訓練で稼げなかったポイントはランク戦で稼げ。……それより」

 

俺は近くにある自販機でお茶を買って照屋に投げ渡す。

 

「飲めよ。息を切らす程走って疲れただろ?」

 

「え……あ、ありがとうございます」

 

そう言ってお茶を飲み始める。全く……訓練を休まないよう全力疾走するなんて真面目過ぎだろ?

 

 

 

 

 

 

 

「お茶、ありがとうございました。お幾らですか?」

 

そう言って照屋は財布を出すが……

 

「いや、別に気にしなくていい。奢りだ」

 

別に基地に行く途中で拾った500円で買ったからそれで金を返されても……

 

「いえ。そういう訳にはいきません。……えっと、はいどうぞ」

 

照屋はそう言って130円を差し出してくる。ここで遠慮しても照屋は諦めないだろうから受け取るか。

 

「わかったよ」

 

仕方なく金を受け取る。照屋はそれを見て頷いている。

 

「あ、それとマフラーありがとな。あの後更に吹雪いたから助かったよ」

 

礼を言って綺麗に折り畳んだマフラーを返す。アレはマジでヤバかった。マフラー無かったら首が凍るんじゃねって思ったぐらいだ。

 

「どういたしまして。話は変わりますけどこの後ランク戦をしませんか?」

 

「巴の次になら構わない」

 

「はい。じゃあその後に巴君と戦ってもいいかな?」

 

「もちろんです。よろしくお願いします」

 

そんな風に笑いながら個人ランク戦ステージへと歩き出そうとした時だった。

 

 

 

「比企谷!」

 

前方から熊谷が息を切らしながらやって来た。こいつもかよ……

 

「お前も学校の用事か?」

 

「うん。受験前の最後の面談があって……訓練は終わったの?」

 

「ああ。終わった。とりあえず飲めよ」

 

そう言って熊谷にもお茶を投げ渡す。熊谷は受け取って一気に飲む。

 

「ふぅ、ありがとう。幾ら?」

 

「いや、奢りだ」

 

「本当に?ラッキー」

 

笑顔でお茶を飲むのを再開する。照屋と違って遠慮はないが不思議と不快には思わなかった。

 

「まあ訓練はやれなかったからランク戦で稼げ」

 

「あ、それなんだけど後でやりたい事があるんだけど付き合って貰えないかな?」

 

熊谷以外は顔を見合わせる。何だいきなり?

 

「やりたい事?何だよ?」

 

俺がそう言うと熊谷は予想外の事を言い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦闘訓練なんだけど……戦闘用トリオン兵と戦ってみない?」

 

……?!

 

戦闘用トリオン兵との訓練だと?!戦闘用トリオン兵って確か……

 

「あのサソリみたいな奴だよな?」

 

「うんそう。確か名前はモールモッドだっけ?」

 

「それはわかりましたが……何で急に?」

 

巴の言う通りだ。確かにモールモッドとの戦闘訓練は興味があるが何でいきなりそんな事を言い出したんだ?

 

「さっき基地に入る前に歌川君と会って少し話したんだけど……モールモッドを無傷で倒せたら防衛任務は支障なくこなせるって聞いて興味がわいたの」

 

……なるほどな。確かに防衛任務で速攻でベイルアウトしたら待機している人にも迷惑がかかるしな。その上B級はトリオン兵を倒せば倒すほど金を貰えるし俺みたいな人には防衛任務は支障なくこなしたい。

 

「……話はわかった。俺は構わないが照屋と巴はどうだ?」

 

「俺はいいですよ。一度モールモッドと戦ってみたいですし」

 

「私も大丈夫です。B級に上がる前に学ぶのもアリだと思います」

 

「決まりね。じゃあ早速訓練室に行かない?」

 

そう言われて俺達は了承して訓練室に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訓練室向かって歩いていると入口近くから人が出てきた。

 

「ん?訓練室に忘れ物かい?」

 

そう尋ねてきたのは嵐山さんだった。後ろには他の嵐山隊メンバーの柿崎さんに時枝に佐鳥に綾辻が揃っていた。

 

すると熊谷が話しかける。

 

「あ、すみません。そうじゃなくて訓練室を使用したいんですけど借りれますか?」

 

「借りれるは借りれるが合同訓練じゃないからポイントは入らないぞ?」

 

「いえ。ポイント欲しいんじゃなくてモールモッドと戦う訓練をしたいのですけど……」

 

熊谷がそう返すと嵐山さんは若干目を見開いている。見ると他の嵐山隊メンバーも驚いていた。いや、時枝は驚いていなかったが。つーか表情全く変わってないし。ポーカーやったら無敵じゃね?

 

「理由を聞いてもいいかい?」

 

嵐山さんがそう聞いてくるので熊谷は自分達はもう直ぐB級に上がるから戦闘訓練で体験した事のないモールモッドと戦ってみたくなった事を説明する。

 

すると嵐山さんは笑顔で頷いてくる。

 

「なるほど……わかった。モールモッドの戦闘訓練の為に訓練室を貸そう。綾辻」

 

「了解しました」

 

綾辻はそう言って何処かへ行った。大方コンピュータールームだろう。

 

それを見送った後に4人で頭を下げる。

 

「「「「ありがとうございます」」」」

 

礼をすると嵐山さんは笑って手を振ってくる。仕草が一々爽やか過ぎだろ……。

 

「いや、そこまでやる気のある君達に協力するのは当然さ。ただ後1時間位で俺達は防衛任務だから30分くらいしか使えないけどいいかい?」

 

「はい」

 

熊谷が頷く。まあ貸してもらう立場としては文句は言えないし言うつもりもない。寧ろ訓練生の俺達の為に時間を割いて貰って感謝しかない。

 

 

俺達は訓練室に案内されて中に入る。

 

「じゃあ誰からやるのかい?」

 

嵐山さんがそう聞いてくるが普通に熊谷だろう。元々提案したのは熊谷だし。

 

「じゃあ比企谷、よろしく」

 

そうかい。初めは俺が……ん?

 

今なんか聞き捨てならない事を言われたような気がするんだが……

 

「おいコラ熊谷。何で俺なんだよ?」

 

「だってこの中で1番B級に近いのあんただし」

 

「いや、だからって……照屋や巴が了承するか……」

 

「俺は良いですよ」

 

「私も構いませんよ」

 

「だってさ」

 

「……あいよ」

 

ここでごねて時間をかけるのは嵐山さん達に悪いから俺がやるか。

 

「じゃあ俺からお願いします」

 

「わかった。じゃあ1号室に入ってくれ」

 

「うす……」

 

息を1つ吐いて歩き出す。

 

「比企谷先輩」

 

すると後ろから照屋に話しかけられるので振り向くと笑顔を見せてきた。

 

「頑張ってくださいね」

 

「……ああ」

 

返事を1つ返して訓練室に入る。

 

それと同時に俺の正面から20メートルくらい離れた場所に光が出現して中からトリオン兵が出てくる。

 

そこにいたのは自動車くらいの大きさで白色のバムスターとは違いねずみ色のトリオン兵がいた。

 

(……こいつが戦闘用トリオン兵モールモッドか。思ったより小さいが油断は禁物だ)

 

見たところ4足歩行なだけで武器は見当たらないが何処かに武器がある筈だ。

 

(先ずはどんな攻撃をしてくるか確認。それが終わったら無理な攻めはしないで隙を探す。そんな感じで行くか)

 

 

息を1つ吐いて手からスコーピオンを出して構える。

 

それと同時にアナウンスが流れる。

 

『1号室用意、始め!』

 

綾辻の声が聞こえると同時に俺はモールモッドに突っ込んだ。

 

 

さあ、戦闘用トリオン兵と呼ばれる実力を確認しないとな。

 

 

 

 


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