お気に入り数が300を超えました。読者の皆様、誠にありがとうございます。
最近思うのが今回で10話なのに……未だにヒロインと入る部隊が全然決まってない事ですね。
マジでどうしましょう?
俺と歌川は距離を詰めてスコーピオンをぶつけ合う。
(歌川は強い。歌川はBに上がってそこそこ戦っているから自分のトリガーの戦術はある程度理解しているだろう。対して俺はぶっつけ本番。この差はでかい)
だがそんな理由は負けて良い理由にはならない。てか負けたくない。
1ヶ月前までは誰からも期待されずにいたから負けてもいいと思っていたが今は負けたくないと思っている。
こんな俺を変えられるなんてランク戦すげーな。
そう思っていると歌川は反対の手からスコーピオンをもう1本出して振るってくる。これがサブトリガーってヤツだろう。
俺はサブにスコーピオンを入れてないので代わりに肩からスコーピオンを出して歌川に向ける。
それと同時にお互いの肩にスコーピオンが刺さる。
「ちっ、開始早々やってくれんじゃねぇか」
「開始早々枝刃使う比企谷先輩に言われたくないですよ」
お互いに苦笑しながら距離を取る。この距離なら……
俺はスコーピオンがない方の手を歌川に向けてトリオンキューブを出す。
そこには手には収まらないくらいの大きさのトリオンキューブが存在した。
生憎と今の俺じゃキューブを細かく分割するのに若干時間がかかる。それは歌川には悪手だろう。
結論、よってそのままぶっ放す。
「ハウンド」
そう叫ぶと同時に俺の手から巨大なキューブが歌川に飛んでいく。
「シールド!」
歌川はそう叫んでシールドを展開する。
それと同時に俺は走り出す。ハウンドが歌川のシールドを壊せば良し。壊せなくても隙を作る事が出来ても良し。
そしてハウンドは歌川のシールドに当たる。シールドは……壊れなかったか。
まあ良い。今から攻めまくればどうにでもなる。
そう思った時だった。
何と歌川の手からもキューブが現れる。そしてそのキューブは3×3×3の27の小さいキューブに分割された。
「ちっ、シールド」
俺は発射される前にシールドを展開しながら前に進む。
「メテオラ!」
歌川がそう叫ぶと同時にキューブは俺の方に飛んでくる。
そしてシールドに当たると同時に大爆発が起こった。
爆風によってトリオンが少し漏れたが戦闘に影響はないだろう。
そう思いながら爆風が晴れるのを待って来た瞬間にカウンターをかます。
方針を決めた時だった。
いきなり俺の左足が失った。
……え?
俺は左足が跳ね上がっているのを見た。え?何があったの今?
そう思って地面を見ると絶句してしまった。
何と地面からスコーピオンが生えて俺の左足を穿っていた。
マジかよ?!地面からも出せんのかよ?!今まで見た個人ランク戦で使ってる奴がいなかったから知らなかったぜ。
驚く中、爆風は段々晴れていき歌川が突っ込んでくる。その手にスコーピオンを持って。
……なるほどな。メテオラの目眩し、地面からの奇襲をして特攻か。かなり慣れているのがわかる。
内心舌を捲く中、歌川は正面から詰め寄ってくる。
俺は迎え撃つ為にあるトリガーを起動する。
そして俺は歌川の真横に現れ、それと同時にスコーピオンを振るって歌川の首を刎ねた。
いきなりの奇襲で歌川も対処出来なくてベイルアウトした。
歌川がベイルアウトすると同時に俺もブースに戻る。
さて次は2本目か……っと、その前に…
俺は歌川のブースに通信を入れる。
「ところで歌川、さっきの地面の奇襲は何だったんだ?」
あれ凄い気になるんですけど。
『アレはもぐら爪って名前の技で風間さんから教わりました』
へぇ、良い技だ。絶対に会得してやる。
『それにしても比企谷先輩はテレポーターを入れていたんですね』
そう俺がサブに入れたのはテレポーターだ。
「まあな。瞬間移動した後の奇襲は効いただろ?」
『そうですね。メテオラで目眩しをしたのは良いですけど、比企谷先輩の視線が見えなかったのが敗因ですね』
あー、なるほどな。確かに爆風は完全に晴れてなかったから俺の視線の向きがわからなかったから対処出来なかったんだろう。
となると歌川は今後テレポーターを警戒してメテオラを乱発してこないだろう。警戒が必要だ。
「じゃあ2本目行くぞ」
『はい』
歌川の返事を貰うと再びステージに転送される。
転送されると同時に歌川は手からトリオンキューブを出して放ってくる。
俺は避けるより防御を取った。
「シールド」
そう呟いてシールドを展開する。
瞬間、爆発が起こる。
それによって爆風が生じるが俺は歌川の意図を理解出来ずにいた。
(……またメテオラ?さっきメテオラが敗因で負けたのに何でだ?)
そう思いながら俺はもぐら爪を警戒して少し下がる。アレで足止めを食らったら面倒だ。
地面を見ているとブレードは生えてこない。マジで何なんだ?
(……とりあえず守り重視にしとくか)
そう思いながら爆風がある方向にシールドを展開する。これなら射撃トリガーの攻撃も防げるだろう。
そう思っていると爆発が晴れてきたので正面を見る。
しかし……
(……あれ?いないだと?)
正面を見ると歌川の影も形もなかった。
(マジでどこ行った?まるで消えたとしか……っ?!)
俺は慌ててレーダーを起動する。
するとマーカーが直線に俺の方向に向かっていた。
(……歌川の奴、まさか…?!)
考えられるのはそこまでだった。
虚空から現れた歌川がスコーピオンで俺の首を刎ねたからだ。
「ちっ……」
俺は舌打ちをしながらベイルアウトした。
マットに叩きつけられると同時に通信を入れる。
「開始早々カメレオン使ってくるとは良い性格してんじゃねぇか」
『比企谷先輩に寄られるとかなり危ないので寄られる前に攻めた方が良いですから』
「その言い方俺が不審者みたいだから止めろ。次行くぞ」
『はい』
今回は速攻で負けたが次こそは……
そう思いながら転送された。
9戦目か終わってマットに叩きつけられる。
今のところ戦績は3ー6と負けが決定している。
しかも俺が勝っている理由はとにかく隙を作ってからのテレポーター奇襲で真っ向勝負だとかなり分が悪い。
剣の腕なら付いていけるが弾丸トリガーの経験の差によって負けている。何しろ俺のハウンドはカメレオン対策以外は余り効果がなくて、歌川のアステロイドとメテオラは俺を倒す立派な武器として活躍してるし。
ラスト1本、最後は勝つ。
(……今の今まで使わなかった最後のトリガーを使えばいけるかもしれん)
「じゃあラスト行くぞ」
『わかりました』
最後の一戦が始まる。
転送されたステージは河原だった。最後の一戦が河原って完全にチンピラの決闘みたいだな。
そう思いながらスコーピオンを出して歌川に投げつける。
歌川はそれを避けると同時にトリオンキューブを放ってくる。それがアステロイドかメテオラかわからないので俺は防がないで避ける選択をした。
そして走りながらメインとサブのハウンドはそれぞれ8分割、計16発のハウンドを歌川に放つ。試合終盤になってようやくマトモに分割出来るようになった。
放ったハウンドは歌川を追尾するように動く。勝手に追ってくれてマジで便利。
歌川はシールドを張って防ぐのでその隙に詰め寄る。
俺は右手からスコーピオンを振り下ろしシールドを叩き割る。そして割ると同時にスコーピオンを跳ね上げて歌川の首を狙う。
しかし歌川も首を少しズラして避ける。マジかよ。ノーダメージは想定外だ。
若干驚いているともう1本にスコーピオンが振るわれてくるので紙一重で避けようとする。しかし完全には避けきれずに肩からトリオンが漏れる。
それを認識すると同時に後退を止めて再び歌川に詰め寄りスコーピオンを振るう。歌川はそれに対してスコーピオンを2本出して受け太刀をする。
1本は折れたがもう1本で防ぐことに成功した。
やっぱり地力の違いがあるな。真っ向勝負じゃ勝てない。
そう思って俺は歌川の腹に蹴りを入れる。
いきなりのトリオンじゃない攻撃で予想外だったのか体勢を崩している。今がチャンスだ。
(……テレポーター!)
内心そう叫びながらテレポーターを起動する。
それと同時に俺は歌川の横に現れる。狙いは首。これでこの勝負は勝った。
しかし……
俺のスコーピオンは歌川の首を刎ねる事は出来なかった。
(……何でだ?歌川の首にはちゃんと狙いを定め……?!)
俺は歌川の首を見て驚いてしまった。
何と歌川の首にはいつの間にかスコーピオンが展開されていて俺のスコーピオンを防いでいた。
「……比企谷先輩はテレポーターを使うと必ず首を狙ってくるから読めましたよ」
ちっ、一撃で仕留める為に毎回首を狙い過ぎたか!
攻撃に失敗してしまった。となると今度は歌川のターンだ。
歌川は膝からスコーピオンを伸ばしてきて俺の左足を斬り落とした。
(……しまった。機動力が落ちた)
もちろんそんな俺を待ってくれる訳もなく歌川はガンガン攻めてくる。何とか頭と心臓は守っているが俺の肩、肘、腹とあらゆる場所からトリオンが漏れる。
(……このままじゃジリ貧だ。こうなったらアレを使うか)
そう思いながら俺は後ろに高く跳んだ。その高さは地面から6メートルくらいだ。
それに対して歌川は手からトリオンキューブを出してくる。この一瞬が勝負だ。
「アステロイド!」
歌川がそう呟くと同時にアステロイドが放たれる。アステロイドは一直線に俺の元に向かっている。
(……今だ!)
俺は内心そう叫びながら口を開ける。
「グラスホッパー」
そう呟いて俺の足元の近くにジャンプ台トリガー『グラスホッパー』を設置する。
それを踏むと同時に俺はアステロイドの真下を潜り地面に向かって一直線に飛んでいく。
歌川を見ると驚いているのが目に入った。まあ今までの9戦で1回も使ってないからな。てか使う前にやられただけだ。
俺はそのまま地面に向かって飛んでいるが思った事がある。
(……アレ?てかこれ速くね?)
というかここまで速いとは思わなかった。これ攻撃に繋げられるかのか?
そして……
俺は勢いを止められず攻撃に繋げられないまま頭から地面にぶつかった。
それによって俺は地面に突っ伏した。
「………」
歌川から視線を感じる。トリオン体だから痛みは感じないが心が痛い。
「……すみません」
歌川から謝罪の言葉が聞こえると同時に俺は首を刎ねられた。
(……最後間抜け過ぎだろ?しかもこれモニターに映ってたら新しい黒歴史の誕生じゃね?)
そんな事を考えながら俺はベイルアウトした。
『10本勝負終了 勝者歌川遼』
こうしてB級に上がって初めての個人ランク戦は何とも言えないまま幕を閉じた。
マットに叩きつけられた俺はため息を吐きながらブースから出た。
すると視界には何とも言えない表情をした熊谷と苦笑している照屋がいた。おいマジか?よりによって顔見知りに見られるとか死ねる。
「あー、お疲れ比企谷」
熊谷が苦笑いしながら話しかけてくる。
「……見てた」
「……うん」
やっぱりな。予想はしていたがはっきり言われるとキツい。
「仕方ないですよ。まだ慣れてないトリガーなんですから。これから頑張って使いこなせるようになりましょう」
照屋はそう言って励ましてくる。ヤバい、優しさが身に染みて泣きそう。
そう思っていると歌川もブースから出てくる。表情は苦笑いだ。
「あー、悪かったな。最後の試合があんな締まらなくて」
対戦相手の歌川には本当に申し訳ない事をした。
「いえ。寧ろ成功していたら負けていましたよ。正直言ってあの速さは今の俺じゃ見切れませんでしたし」
そう言ってくるとは……しかも含むものもないし。やっぱり後輩組は優しいな。
「まあ今回は色々と勉強になった。もう少しトリガーについて理解を深めたらまた付き合ってくれ」
「わかりました。その時には俺も強くなってますから」
「というか比企谷、あんた何時B級に上がったの?」
「今日」
「え?!そうなの?!おめでとう」
「おめでとうございます」
「ああ。サンキューな」
「あ、そうだ。折角だし今から比企谷のB級昇格祝いでもしない?」
「止めろ。あんな負け方した俺に鞭打つな」
あんな負け方をして祝われても微妙な気分になるだろう。
「まあそうね。じゃあ私や文香や巴君がB級に上がったらやらない?」
えー、マジで?俺祝い事とか苦手なんだけど。今までも誘われたから行くと言ったら苦い顔とかされたし。てか俺なんかの為に祝う必要ないだろ?
俺が苦い顔をしていたのか熊谷と照屋が詰め寄ってくる。
「あんた今苦い顔してたけど『どうせ俺なんかが……』とか思ってたんでしょ?私はあんたが来る事に文句なんて一切ないから。てか来なさい」
「熊谷先輩の言う通りです。私は比企谷先輩の昇格を祝いたいですから是非参加してください」
怖い。熊谷さん怖いですから。その『ネガティヴ発言は許さない』みたいな雰囲気は出さないでください。
……まあ2人が本気でそう思ってくれてるのはわかる。
だったらもう一度勇気を出してもいいだろう。
「じゃあ……行ってもいいか?」
不安混じりに聞くと
「「もちろん」」
いい笑顔で返された。それを聞いた俺は本当に嬉しく思った。
こうして初のB級個人ランク戦は終わり、後日祝賀会に参加することが決まった。