ワイルド&ワンダラー   作:八堀 ユキ

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次回、投稿は来月頭を予定。


ボストンコモン (Leo)

 トリニティタワーからの脱出は急ぐ必要があったが、そのための準備は簡単ではなかった。

 

「ストロング モ 戦ウ。ストロング 二 武器ヲクレ!」

 

 レックスと一緒に閉じ込められていたスーパーミュータントがそれを要求する。私は口を閉じ、判断に一瞬だけ迷った。理性は間違いなく言っている「ふざけるな、どうせなら死んでくれ」と。

 だが状況は、戦力になるなら一人だって欲しいところだった。

 

 私は階下で渡した地雷を設置しているマクレディに声をかけた。

 

「マクレディ、戻って来るとき。そこの隅に転がっているのを持ってきてくれ!」

 

 彼は私の指示に従い、それを持って――床の上に引きずって戻ってきた。その顔は「まさか、冗談だよな?」と驚きと不安の色を隠してはいない。

 私はストロングと名乗るスーパーミュータントに言った。

 

「お前の武器はこれしかない。戦うならこれを使え」

「――コレハ フィスト ノ 武器!ストロング 別ノ物ガイイ!」

「他に武器はない。黙って私達についてくるんだ、お前も守ってやる」

「ッ!?」

「どうする、ストロング?」

 

 不満ではあるようだが、相手はミニガンを手にしたので。私は近くにあった――多分、外への持ち運びのために用意されていた――びっしりと中に弾丸が押し込まれているウェポン・ラックを引きずり出すと、それを背負うように顎で指し示した。

 

「こっち、急いで!」

 

 屋上のリフトに乗り、ここから地上へ一気に降りていくことになる。

 

「重いのいるし、人も多くない?大丈夫かなー」

 

 パイパーは不安そうであったが、やるしかない。

 私は乗り込むとすぐにボタンを押した。同時に、駆け上ってきたらしいスーパーミュータントの援軍が地雷原に突入したらしい、炸裂音が近くで続けて鳴り響いた。

 

 

 リフトが音を立てて降りている間も、私たちは気が気ではない。

 

「これ、中から丸見えになることもあるよね?その時はどうする」「最悪だろ?もうわかってる」

「――準備だけはしておこう。吊るしているワイヤーを切られたら終わりだ」

「悪夢が終わりますように。悪夢が終わりますように……」

 

 不安そうな人間たちと違い、ストロングは元気に「カカッテコイ」などと口にして元気にしている――。

 

 

 フィストの命令でタワーの上部で異変があったのだと知った仲間たちは次々とタワーを登っていく。

 その中の一人が――つい足を止めて、視線を動かした。

 別に勘が働いたわけではない。ただなんとなく、そうしたのだ。

 ひらけた壁の向こうに、ゆっくりと地上に向かって降りていくゴンドラとそれに乗る人間たちの姿があった。

 

 そいつは侮蔑をこめた鼻を鳴らしつつ横を通り過ぎていく仲間たちに知らせようと、腕を上げようとした――。

 レオは特別、攻撃命令は口にはしなかった。

 

 ゴンドラの中からタワーの中に向け、容赦ない攻撃が開始される。

 

 

===========

 

 

 一緒にいる人間たちはそうではなかったが、ストロングにとっては久しく感じられなかった強敵たちとの対決に心は踊り、閉じ込められていじめられていた体は、息吹を取り戻すと力強く筋肉の束をふくらませていた。

 

 かつてない、戦闘の喜びの中に彼はいた。

 

 だから気がつかなかった。

 タワーを、ゴンドラを降りて走り続ける彼らの後を追ってひょこひょこと振り向いては追いすがる、かつては仲間であったスーパーミュータントを粉砕していると、自分がいつしか置いていかれたという事実に。

 

 見回すが周りはどこでも見た覚えのある建物が並び、大通りにはまったくといっていいほど人影はない。

 ストロングはもう一度、周りを見回す。

 

(アイツラ ドコ行ッタ?)

 

 

==========

 

 

 建物に入ると、私は中の様子を軽く確認して後ろに続くものたちに入ってこいと合図を送る。

 パイパー、レックス、マクレディと来て。あのスーパーミュータントはそこに姿が見えなくなっていた。

 

 ここはマサチューセッツ州でも有名だった、トリニティ教会。

 しかしその荘厳だった姿の中身は荒れ果ててしまい、廃墟と成り果ててしまった。生物の気配がなかったので、転がり込んでしまった。

 

「ふぅ、困った。誰か、あの緑の巨人がどうなったか見ていなかったかい?」

「冗談!」「いや、そんな理由はなかったぜ」

 

 想像通りの返事が続き、私は仕方なく元凶のレックスの顔をのぞく。

 驚いたことに彼は一息ついて、安心したのか涙など浮かべていたが、私の視線に気がつくと。ようやく会話に参加して来てくれた。

 

「私は――私は知らないぞ。知っているわけがないだろう?」

「――アレが安全だと保障したのは、一緒に閉じ込められていた誰かさんの言葉があったからなんだが?」

「ストロングは問題なかっただろう?だから――いや、そもそもなんで私がアイツの面倒を見なくちゃならないんだっ。そして何で君にそんなに責められている、納得がいかない!」

 

 私は絶句した。

 かわりにパイパーが癇癪をぶつけてくれた。

 

「はぁ!?あんたが馬鹿やらなきゃ、こっちはそもそもあんな馬鹿なところにいかなかったわよっ」

「なっ、なっ!?」

「ブルー!ブルーもおかしいよ?

 あんなのついてこないならそれでいいじゃないの。それより、もっと大切なことがあるんじゃない?ほらっ!」

「あ、ああ。そうだった」

 

 なぜか私も怒られてしまった。

 

「レックス、私は君に聞きたいことがある。探偵のことだ」

「私に?探偵?なんのことだ?」

「探偵のニック・バレンタイン。知らないか?君に会いに来ていたことは、彼女――パイパーが調べた」

「そうっ、そうだよ」

「探偵のニックだって?ああ、確かに会ったのは認める。だが、あれはもう1ヶ月以上前のことだぞ。その後で彼が何をしたかなんて、私にわかるわけがない!」

 

 どうやら間違いではないらしい。

 

「それでいいんだ。ニックはあんたと同じ時期に行方不明になっている。彼はあんたになぜ会いにいったんだ、その理由を聞かせてほしい」

 

――レックスの話はこうだった。

 

 長くWRVR放送局で、この時代を代表する吟遊詩人であり、演奏家であり、役者でもある自分が心に強い衝動のようなものに駆り立てられていた時分。

 いきなり探偵のニック・バレンタインが彼の前に訪れたのだという。

 

 探偵はレックスの出演するラジオのファンガールを探していたらしい。

 最初はだれのことを言っているのか、レックスはまったく思い浮かばなかったが。話を聞いているうちに、一昔前に彼の才能に魅かれてしまった若く、傲慢で、扱いにくいほど夢見がちだったひとりの少女のことを思い出したらしい。

 

 ニックの用はそれで済んだ、はずであったが。なぜかこの変人レックスが逆に食い下がって――。

 

「探偵など、どれほどのものなのかっ。この悩める現代の吟遊詩人、レックスの心を覆う暗雲を(以下略)」

 

 ということで、ニックにこのトリニティタワーまで自分を連れて行けと命令――もとい、懇願したのだそうだ。

 このあたりのことは、正直ほとんど理解不能なので私は聞かなかったことにしたかったが。真面目なパイパーにはそれができなかったようだ。

 

「ねぇ、なんでニックはコイツをあんな場所まで送った訳?」

「ああ?どうせなにを言っているのかわからなくて。本人が行きたいってところまで連れて行ってやったんじゃないの?俺でもそうやって放り出すぜ?」

 

 マクレディは答えは、案外真実をついていたのかもしれない。

 話をレックスに戻す。

 

 

 スーパーミュータントが使わないタワーの裏でニックと別れると、なんとこの愚か者は隙を見て中にもぐりこみ。われわれが脱出に使った、まさしくあのゴンドラを使って直接屋上を目指したのだという。

 その目的は――。

 

「私はあいつらに文化を、芸術を伝えようとしたのだ。暴力や暴食にかまけることしかできない、そんな哀れなあいつらは(以下略)」

 

 いい加減、こいつを救った自分が恥ずかしくなってくる。

 あの脱出路は、こいつが進入する際に使った方法だったのだ――いや、待てよ?そうなると、これはマズイ!

 

 

 私は上機嫌に口を動かし続けるレックスにいきなり平手を食らわして黙らせると、驚いた表情の2人に向かって短く「移動する、ここにはいられない」とだけ告げる。

 

 

 私たちがいた教会の扉が乱暴に蹴り開けられるのに10秒もかからなかった。

 

「ニンゲン!何処ニ、カクレテイル!?」

 

 クソッ、やっぱり嗅ぎ付けてきたかっ。

 

 

 

 教会の奥も荒れ果ててひどいものだった。

 礼拝の場は、床が抜けており。暗い地下へと不気味によれて続く階段の役割を果たしている。

 スーパーミュータント達は入り口からそこまで侵入してきたため、私たちは脇の階段を静かに上の階へと移動することにした。

 

「き、君たちには。まだちゃんと言ってなかったな」

 

 いつの間にか私の後ろについていたレックスが、おどおどしながら小さな声で話しかけてきた。そのタイミングも、やっぱりよくなかった。

 

「君に、君たちには――助けてもらって感謝している。本当にね、私もさすがに今回は懲りたよ」

「一緒にいたスーパーミュータントは、どうして一緒に?」

「ああ、ストロングか。彼は――マクベスの『人間の優しさのミルク』に興味を持った、のだと思う」

「……なに?」

 

 マクベスにそんなことが書いてあっただろうか?

 こちらにしても200年以上前の記憶とあって、すぐには思い出せない。

 

「WRVRに帰りたい。戻ったら、これからは真面目にこの世界屈指の俳優としての人生に精進するつもりだ」

「そうだな、そのほうがいい」

「君には重ね重ね、何度もすばらしいタイミングでの救助にとても、とても感謝している」

「ああ、わかった」

 

 教会の2階は足場くらいしかない上に、追っ手をかわして入り口に降りたくとも地面が地下まで陥没しているのでそれも期待できない。

 

(ここでやるしかない)

 

 私は腹を決めると、仲間に指示を出そうとして――そこで気がついた。

 いつの間にか後ろにいたはずのレックスがいない!?

 

「あれっ?」

「後ろにいたとばかり思っていたんだが――」

 

 階下にはミニガンをぶら下げたスーパーミュータントを含めた4体と、同じく2匹のミュータント犬が見えている。

 足場のよくないこの場所で、不意打ちの先制攻撃をするチャンスを失うわけにはいかない。

 

 私は背中の狙撃銃とコンバットライフルを静かに床の上に並べた上で、狙撃銃にまずは手を伸ばした。

 構えながらスコープをのぞき、パイパーに攻撃までの5カウントを始めるように目で合図を送る。

 

 

 私とマクレディによる静かな狙撃の後、パイパーは威勢よく立ち上がって撃ちながら吠えた。

 

「死亡記事、一本追加!」

 

 こんな時の彼女は、本当に頼もしくてしょうがない。

 

 

==========

 

 

 ただひとりで途方にくれていたストロングだが。

 近くで激しい銃撃戦の音が聞こえると、ハッとしてそれはどこかと周囲を見回す。

 

(アソコ、ナンカ大キナ建物)

 

 近づいていくと道の先を、転がるようにして走り去っていく人の背中が見えた。あれは――レックスだ。

 一緒に閉じ込められたおかげでストロングにはそれがわかった。

 なぜあんな風に、逃げるように走っているのかわからないが。自分もそれについていくべきなんだろうか?

 

 逃げるように自分も走る――そのことに納得ができなくて、ストロングは困惑していると。

 建物の横にある扉が中から押し開けられ、彼が見知った人間たちがぞろぞろとそこから出てきた。

 

「チクショウ、やっぱり裏口があったんだ」

「あいつ、とっちめてやらないと――」

「もうこれ以上のトラブルは――ん?」

 

 埃にまみれて出てきた3人は、目の前にいるストロングを見て動きを止めると……深く、大きくため息を吐いた。

 

 

 状況は混乱しているが、冷静になって整理する必要があった。

 

「えっと、それで?なにがどうなっているんだっけ」

「ニックはタワーでレックスと別れた後、コンバットゾーンに向かったらしい――コンバットゾーンとはなんだ?2人とも、知っているか?」

 

 名前からして不穏なその場所について尋ねると、2人は奇妙な表情を浮かべる。

 やはりなにかあるようだ。

 

「話にはね、聞いてるけど……」

「以前に顔を出したことはあるぜ。だけどあそこはボストンコモンに入る必要がある。今だとマジで危険だぜ?」

「危険?」

「あのね、ブルー。ボストンは危険なエリアだっていうのは知っているでしょ?」

「ああ」

「ボストンコモンはその最激戦地区っていわれてる場所だぜ。何に出くわして不思議じゃない。

 噂で聞いただけだが、なにかあればスーパーミュータントとレイダーが殺しあいしてるって言うし。凄いのだとあのインスティチュートの部隊がそのどちらかとやりあってた、なんて口にするやつまでいる」

「暗い夜道を、ライターの火だけで導火線だらけの中をあるくようなものだよ。本気でいきたいの、ブルー?」

 

 私の選択肢はひとつしかない。

 

「コンバットゾーンとはなんだ、マクレディ?」

「ああ、そこはな。

 要するに闘技場さ、ファイターたちがいて、客の前で戦ってみせる。ただ、そんな場所だからなぁ。今じゃレイダーくらいしか店に立ち寄らないと思うぜ」

 

 そして問題は今、もうひとつ増えようとしている。

 

「ああ――ストロング、だったね」

「ソウ、ストロング」

「君はどうしたいんだ?」

「ストロング ハ 人間ノ優シサノ ミルク ヲ飲ム」

「――何?」

「人間ハ ストロング ト 人間ノ優シサノ ミルク 探ス!」

「うーんと、どういう意味だと思うブルー?」

「あの馬鹿に何を吹き込まれたんだよ……俺がおかしくなりそうだ」

 

 騒ぐ二人ではなく、なぜかストロングはまっすぐ私を見おろしていた。そのしぐさの中に、子供のようなかたくなさをわずかに感じた私もまた、考えていた。

 いや、考えてもこれはきっと答えはないのかもしれない。

 

「わかったよ、ストロング。人間の優しさのミルク、私が一緒に探してみよう」

「ウン、良ク言ッタ人間」

 

 珍しくパイパーとマクレディが意見を同じくして考え直せと私に迫ったが、私はもう決めてしまったのだ。

 自分のことだと意地を張ったせいで、私はアキラとは別の道を歩む羽目になってしまった。このストロングの望みを本当にかなえられるかはわからないが、私はこのスーパーミュータントを見捨てることはできない。

 

 あの経験を無駄にしてはいけないのだ――。

 

 

==========

 

 

 ボストンコモン――かつてこの国のはじまりにあった独立戦争において象徴的な戦闘がおこなわれた土地は、繁栄という都市開発の中で沈む中、最後の日を迎えた。

 それを皮肉るように、公園の中には静かにたゆたう池と木々がその時を凍らせてこの場所に今も残しているかのように私には見えた。

 

「静かだね?」

「まぁ、何もないときはそんなもんさ。ここは逆に――」

 

 一発の銃声が鳴り響き、ボストンコモンに侵入した私たち(一名は除く)はすぐに腰を下ろしつつ周囲を探る。

 

「ドウシタ人間?戦イハ モット ムコウダゾ」

「――そうみたいだな」

 

 私はバックの中からレーザーライフルを取り出した。

 やはり、これは軽すぎる……。好きにはなれないが、選り好みばかりをしていられない。

 トリニティタワーからの激しい戦いで、コンバットライフル用の弾丸は少なくなっていた。

 

 

 公園の中に入ると、すぐに戦場が目の前で繰り広げられているのだと理解した。

 それはまるでアリ同士の殺し合いだった。

 

 数々のロボットを引き連れたレイダーが、町の中から沸き続けるレイダーと、同じく姿を見せるスーパーミュータントとで3つ巴になっている。

 それぞれに犠牲が出ていて、地面の上に倒れる死人の数が増えていく。

 

「ヤバイな、レオ。下手したらこれ、フェラルなんかも引き寄せてしまうかもだぜ?」

「ああ――ところで、なんでレイダー同士が殺しあっているんだ?」

「片方がハイテクレイダーなんだよ、きっと。あいつら、最近は連邦の西側に進出してるって話だったけど。また中央に戻ってこようとしているのかもね」

「ハイテクレイダー?どう違うんだ?」

「へへへ、見りゃわかるだろ?ロボットさ、あの連中、襲撃には必ずロボットを使う。装備も、ロボットからの流用で独自のものをつかっているのが、わかるだろ?」

 

 なるほど、パイパーとマクレディの解説で納得した。

 アキラが手に入れたアサルトロンタイプのロボットが3台、セントリーボットと呼ばれた3脚の足と大型の体を機敏に動かし、両手のガトリングが火を噴けば相手はなすすべもなく倒れていく。

 

「あんなのがいるのか、知らなかった」

「私も話を聞いただけなんだけど、技術屋を多く取り込むことで勢力は増したんだけど、今度はその技術屋の取り合いになっちゃって、自滅したんだって。

 それでも西側へ進出ってことで、巷じゃ言われているけど――」

「実際は叩きのめされて中央から逃げ出したのさ。ロボットがいなきゃ、結局は少数のレイダー集団だからな。このあたりのレイダーなら、余裕の相手さ」

 

 不満そうなストロングの前で、私たちがそんな会話を交わしていると。

 頭上を何発か、ミサイルが飛んでいく。どうやら破壊の限りを尽くすセントリーボットに対抗しようと、スーパーミュータントも武器を取り出してきたようだ。

 

 まずいな、巻き込まれるかもしれない。

 そう考えながら、私は思わず視線を後方へとうつした。

 まさにその瞬間のことであった。あの有名なスワンの池の表面がいきなり隆起すると。これまで見たことのない大きさのスーパーミュータントが立ち上がってきた。

 

 私は声も出なかった。

 逆にむこうは叫んでいた。ただ一声、「スワン」だと。

 

「う、嘘だよね?あれってまさか――」

「ダイアモンドシティでも有名だったろ?そうだ、スワンの池のベヒモスだ」

「ベヒモス?」

「スーパーミュータントをさらに化け物にしちまったような奴のことだ。こっちに気がつかなくて助かったな。ちょうどいいや、ここはあのスワンに任せて俺たちは――」

 

 マクレディの提案が終わる前に、決断を下した声が後ろから上がる。

 

「我慢出来ナイ!ストロング、戦ウ。人間、俺ニ ツイテコイ!!」

 

 目の前の戦場で戦うのが3から4に増えたと思ったが、勘違いだったらしい。

 

「嘘でしょ?あんな――」

「パイパー、いつものを頼む」

「えっ、なに。ブルー?」

 

 私は首から提げたロケットを取り出すと、その中からアキラが用意してくれた錠剤を一錠とりだして口の中に放り込んだ。

 マクレディはため息をつき、パイパーは絶望的な顔をしていたが。私の要望にはこたえてくれた。

 

「いいよ――踊りに行くから、付き合わないかっ!!」

「パーティタイムだ、コン畜生」

 

 私は走り出すと、ただ歯を食いしばり。そのついでに錠剤を噛み砕いてみせた。


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