作者は広く読者様の反応に飢えております。評価、感想、推薦、メッセージどれでも構いません。強いて希望するなら、評価と推薦はとても喜びます。
それでは、今後も応援よろしくお願いします。
次回投稿は2日後の予定。
レオさんは僕にダイアモンドシティを見せ、何かを感じてほしかったようだったが。残念ながら僕には――これといって得るものはそこになかった。
過去の正しい姿を知るレオさんにとっては、この場所にはかなりの抵抗を感じるようだが。僕自身には知識はあっても、ノスタルジーに浸れるような情報は持っていないこともあってありのままを受け入れることができた。
その上で――あまり好きな場所ではないな、と感じていた。
バンカーヒルの印象とは違い、ここは僕の考える町のそれにぴったりではあったが。
この場所に魅力を感じるのかといわれたら――疑問が残る。
まぁ、慌てて結論を出す必要もないだろう。なにせ僕たちはあのVault81からようやっとここで一息つくことができるのだから。
Vaultで生まれた不幸な少年は、その命までもは失わずにすんだ。
僕とレオさんの力で、あの場所の隠されたエリアの情報と治療薬を発見し、戻ってくることができた。
住人たちは悲劇を回避したことを大変喜んでくれたし、その感謝の表れとしてわざわざ僕らを新たな住人として迎えたいとまで申し出てくれた。そして部屋まで用意する、とまでも。
だが、こちらにはそのつもりはなかった。
それに200年以上の歴史のある生活の中で、それを守るために人口抑制をしいているという彼等に部屋を2つも新たに用意するといわれるのは、申し訳ない気がした。
とにかくお互いが妥協点を探り、僕とレオさんはここにちょっとした別荘というか。生活の場を提供してもらうことで決着した。
そして僕らは別の問題でも、こちらの願いを彼等に聞いてもらうことにした。
不幸にも破壊されてしまったコズワースと、そして新たに出現して僕らについて外の世界に出て行きたいと希望するキュリーについて、である。
コズワースについてはそれほど深刻な話はない。
彼に必要なのは、安全でそれなりの広い空間と、そこで彼の新しい体を作り出すだけの大量のガラクタが必要なだけだ。それは――レオさんに心当たりがあるらしい。
問題はキュリーである。
調査の結果わかったのだが、彼女はコズワースと同じ200年近く動いており。当時の治療薬を開発するはずだった技術者達のアシスタントとして、広域治療薬と一緒にそこにいた。
キュリーの――彼女の話によると、研究者が死亡した後も開発は続行され。モールラットたちに植えつけた強力なウイルスをついに攻撃する広域治療薬は完成しているのだという。
が、閉じ込められたこともあって身動きがとれず。新たな研究のための環境が必要なのだと訴えて、僕とレオさんにくっついて出ていてしまった。
監督官とセキュリティの怒りはかなりのものであった。
正直に言うと、コズワースと同じMr.ハンディタイプのロボットだし。あんな暴走するロボットを放置していた科学者たちのそばにいたロボットなのだ。本当は打ち捨ててもよかったのだけれど――色々あってこうして一緒にVaultからつれてきてしまったのである。
ああ、そのことについて僕はあんまり口にはしたくない。
とにかくダイアモンドシティだ。
レオさんはパイパーとなにか話があるというので、残りを僕が連れてナットという少女にこの場所を案内してもらうことになった。
最初に見せられたのが、マーケットであった。
「どう?すごいでしょ」
自慢げに少女が胸を張って聞いてきて、喜ばしてやろうとどう返答しようか考えているとマクレディが余計なことを口にした。
「ヘッ、ボスはバンカーヒルに何度も足を運んでるんだぜ?この程度、見飽きてるさ」
なんだ、大人気ないぞ。
「へー、ミスターは旅慣れているんだ。上のミスターとの関係は?」
「ただの友人だよ、ナット。それとアキラでいい。若く見られることが多いからね、君とはだいたい10歳も離れてない」
「わかった、アキラ。思ったよりいい人なんだね」
「ああ――思ったより?」
「目つきとか雰囲気とか、なんか悪そうって感じがあって。ミスターの友人とは思えなかったんだ」
「そ、そうかな。そんなことを言われたのは、ハジメてだ」
本当にショックだった。ナットは可愛い娘ではあったけれど、はっきりと口にする女性であるらしい。正直なところ嫌いなタイプではないけれど、それでもショックだった。
エイダは無言だったが、マクレディは笑い、キュリーはなぜか人相についてのアドバイスとか言うのを始めてさらに気分が滅入った。
気分を取り直すと、僕は周囲を見回した。
(ま、試してみようか)
続いてエイダとキュリーを自分に近づけると、何事かを小さくささやく。そして――
「バンカーヒルと比べてもしょうがないけど、ここは盛況な市場なんだね」
「うん、そうだよ。全然悪くないでしょ」
「レオさんに聞いたけど、武器屋の品揃えがいいと聞いていたんだ。どれか、わかる?」
「トーゼン!このナットさんが、ミスターも最初に案内してあげたんだからね。アルトゥーロのお店だよ」
「そこ、俺でも安くしてもらえるかな?サービスとか」
「うーん、それは期待できないかも。話してみないと、なんとも――」
「そうか」
「アキラはパイパーみたいに丸め込むの得意?雰囲気悪そうだから、普通に話してもだめかも」
「ああ、それなら方法は……」
「ボス!まーた、メンタスか?ヒルで半日を汗ダラダラたらしてたの、こりてないのかよ」
「アキラ!薬使ってるの?それって薬物中毒者
なんだコイツ、ここに来てから急に絡むな。冷たい視線を送ると、さすがにやりすぎたと気がついたのか。マクレディは視線をそらしたので、笑顔を貼り付けてナットに断言した。
「そんなわけないよ」
「子ども扱いしても駄目だよ。もう、このナットさんの目には真実がバッチリ見えてるんだから」
「それは――まぁ、そうだね。確かにメンタスも、ジェットも!サイコも、使ってるけどもっ!……過度に使用しないように細心の注意を払っている。これでいい?」
「そっかー、ミスターと違って残念な人なんだね。アキラは」
なぜか再び、傷つけられてしまった。彼女はサディストなのだろうか?
とにかく、ここで僕は芝居を決行した。
懐から何かが入っていてガチガチに縛られた布袋をとりだすと、それをマクレディの胸に放った。
「ボス、これは?」
「お前はここを知っているだろ?さっき聞いた店に行って、品揃えと弾丸の補充を頼む」
「それじゃ、キャップは?」
「俺たちがレキシントンの仕事で汗をかいてどれだけになった?そういうことだ」
「あんたはあそこでガラクタ拾いが格好良かったよな。思い出したら、また笑っちまいそうだ」
「いいから行って来い」
マクレディがエイダを従えて混雑の中に消える。
ナットはなぜか、急に背中に冷たい汗が流れていることに気がついた。見上げると青年が自分を見て、穏やかな笑みをたたえていた。
「俺とキュリーは知らないんだ。次はどこに?」
「う、うん。いいよ、こっち――」
前に立って歩き出すと、それに続くアキラはキュリーに何事かを小声で囁きあっていた――。
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ダイアモンドシティのマーケットでも、あまり感心しない薬物を供給している業者がいる。
そいつは常習性のある薬物のジェットやサイコを当然のように売っているが、セキュリティがそれをとがめることはない。そこで業者の注文を聞き、自分用のそれを売買していた客の男がいた。
そいつに怪しいものは感じなかったが、アキラがマーケットの入り口に立っているのを見ると。慌てて体を縮めて、その様子に注目していた。
むこうはこちらをしらないとあって、どうやら観光気分で馬鹿話をしているようだった。
(早く通り過ぎてくれよ――)
清算を終えたが、マーケットの入り口に居座る連中のせいでここから動けないでいる。
あとはマーケットの奥からぐるりと町を半周する道があるが、すぐ目の前にマーケットの入り口があり。そのむこうにはダイアモンドシティの出口が見えているだ。そんな苦労は御免だった。
観察を続けているとVaultスーツの男はなにか袋を取り出して、自分の傭兵にむかってポイと投げつける。
「――これは?」と声が聞こえ「……レキシントンの仕事で汗を……」と返すのが聞こえた。
男の腹の底がムズムズした。
あいつがレキシントンと口にしてすぐにピンと来た。
あの袋の中身、あれは間違いないキャップだ!それも音を立てないようにきっちりと封がされていた。だが、あれは拳大ではすまない大きさだった。300だの400だのいう数では足りない。
1000キャップは軽くこえている分量が必要だ。
周りを見回したが、誰もあれがそんなお宝だとは気がついていない。当然だ、”気がつくはずがない”のは自分がよくわかっていた。
傭兵が手に持ったそれを軽く遊びながら歩いていくのを見て、一瞬だがあれをスリに行こうかと本気で悩んだ。
(無理だ、少なくともここでは)
マーケットの中はセキュリティが見張っている。治安を乱せば、すぐに集まってきて攻撃されてしまう。袋をうまく奪ったとしても、あの出口まで走る間に死んでしまう――。
歯噛みをしつつ、マーケットを離れようとするアキラの背に恨めしい視線を送ると。そのままダイアモンドシティの出口を目指した。
外へ出ると、ダイアモンドシティの緑の壁沿いにそって小走りになる。
仕事は終わった――あとは戻って、無事にサードレールで一杯引っ掛ければいい。だが、そんな男の足が突然動かなくなり。小走りになっていたこともあって、地面に派手に転倒する。
「痛っ、なんだよ……あ?血、血だとぉっ!?」
足に穴があけられていた。血があふれ出るが、何をされたのかがわからない。銃声などなかったのに。
だが、それは男の勘違いであったようだ。倒れて巡回しているかもしれない警備に助けを呼ぼうかと周りを見回そうとすると。いきなり襟首をつかまれ、通りの中へと強引に引きずり込まれていく。
「待って、待てって!俺は悪くない、何もしてない。殺すのはやめろ、あんた自分が死にたいのかっ」
通りを歩く人間を攻撃し、人目のない路地へと引きずり込む。この次にくるのは頭に数発叩き込む準備万端のレイダーたちがいる、それが相場だったからそれを口に出した。
それが自分を追いつめるとも知らずに――。
「へぇ、あんたを殺すと俺が死ぬのか。興味がある、理由を教えてくれるよな?」
「あんた、あんたっ……あ、誰だっ?」
男を見下ろすアキラは、攻撃的な笑みを浮かべるとそれに意地悪く答えた。
「ただの通りすがりのレイダーさ、そうだろ?どこかのVault居住者からジャンプスーツを奪っただけの。自己紹介はこれでいいよな?
それで、お前を殺しちゃいけない理由は何だ?教えてくれ、知りたいんだ。間違いを犯す前になぁ」
「そのっ――あんたの情けにすがってるだけだ。そうだ、ここで殺したらセキュリティに気づかれるぜ?」
「銃声もなくお前を撃った相手に言う言葉じゃないだろう」
消音装置をつけた10ミリをこれ見よがしにかざして見せてやる。
男はあせるが、自分の言葉をいまさら撤回はできない。だが、まだ死にたくはない。葛藤が身動きをさせないが、いつまでも続くわけがない。沈黙に相手が飽きれば、その瞬間はすぐに来てしまう。
「理由。理由って何だ?」
「あっ、それはっ。うう」
「兄さん、もうわかってるんだから。さっさと理由ってやつを教えてもらおうか」
アキラは男のことを知っているようだった。そして逃げ道は見当たらない、覚悟せねばならなかった。
「俺を、知っているのか?」
「いやまさか、全然」
「そ、それじゃ――」
「マクレディはダイアモンドシティを知ってる。だからあらかじめ薬物を売る連中のいる場所は聞いていた」
「た、確かに俺はそこにいた。だが、それだけで?」
アキラは無言で銃口を男の額に押し当てると、謎解きを始めた。
「ここに来たら、パイパーって人が現われた。俺達が到着すると情報が入ったって。
それでまず武器商人のクリケットを思い出した。バンカーヒルの商人だ、売れるなら情報だって売る。だが、それだけで俺はお前を撃ったりはしない。
お前がここにいる理由は、あそこでお前が聞いた言葉に反応したからだ」
「え?ええっ?」
「お前は俺の袋に反応し、言葉にも反応した。ちゃんとあの騒音の中でもきっちり聞いていたんだ。『レキシントンの仕事』これが罠だった。
パイパーが聞いた情報にはおかしな部分がある。ミニッツメンと協力した相手が、Vaultスーツを着ていたという部分だ。巷でそこまで正確な情報は流れてないことは確認している」
「なんのことをいっている?」
「あそこであんたが反応してくれてよかったよ。本当は案内された場所全部であんな茶番をやるつもりだったんだ、それって最悪のアイデアだろ?
俺のそばにいたロボット達はな、優秀なセンサーを搭載している。あの時すでにその場に動かず、こちらの様子を探っているかもしれない相手を探していた」
「勘違いだっ」
「いいや、当たりさ。キュリーが言った。反応のある生態データの中で、ただ一人だけだ。お前だけが、俺たちの様子に心を乱されていたってな」
そんなはずはない、男はまだそう思おうとしたが。銃口とこちらを見下ろす冷たい目で、もう取り繕う演技を続けることはできなくなっていた。
アキラは冷酷に問うてくる。
「これが最後だ。だれから頼まれた?なんと命令された?」
「う、うう」
「そろそろ飽きてきたな。死ぬけど、いいよな?」
「わかった!話すよ、全部話すっ」
男は負けたと思ったのだ。
「それで?」
「あんたの言うとおり、ダイアモンドシティに入る時を見ていろって」「それが命令か?」「あんたらとつるんでるのを合わせるようにって。下準備をしてやれって。それだけだ」「どうして?」
「知らない!本当に知らない」
アキラは銃口をようやく頭からはずすが、まだ信用していないのか。
指を顎におくと――
「グッドネイバーだな?そうなると、誰がやったのか……心当たりが多くて5人。いや、6人ぐらいいるが?」
「えっ」「誰だ?もう名前を言えって。それで解放してやるから」
「や、約束だぞ?」
「もちろん」
「三、Mr.マロースキーだ」
「わかった。もういっていいぞ」
スティムを一本、放り投げると大通りへと戻っていった。
「証言は取れたようですね?間違いなかったか、気になっていました」
「正解だった。さすがだ、キュリー。研究者だったとあって、すばらしい観察眼だ」
「ありがとうございます。お役に立てて、うれしいです」
白いロボットがそう答えると、ナットがそれに口を挟む。
「やっぱりアキラ、悪い人なのかも」
「なんで?優しかっただろ?それに――って、ナット!?」「え、そうだけど」
「ここ……ダイアモンドシティの外だぞ?なんでここに?」
「だっていきなり『ここでいい』とかいって、いきなり走り出したんだもん。案内係としては気になるって」
「キュリー、何で止めなかった!?」
「――いけませんでしたか?よく、わからなかったので。それに危険はありませんでした」
「そういうことじゃない。なにやってるんだよ、しっかりしてくれ」
困惑するアキラだが、ナットはまったく気にせずに別のことを気にしていた。
「それにしてもマロースキーって、グッドネイバーのだよね?アキラ、なにかしたの?」
「――さぁ?」
「あ、嘘だ!」「嘘じゃないですから!嘘じゃない、本当に知らないよ」
「えー」
「それにあれは嘘だ。馬鹿だよ、最後の最後でそんなことしなくていいのに」
「そうなの?」「そうなのですか?」
「ハモってる……そうだよ、こんなことをやったのはどうせ市長だ。そのミスターなんとかじゃない」
どうやらあの市長はこっちを気にしているようだ。
ジャレドの一件を怪しんでいる、そういうアピールだと思うが。逆にすぐにも会いにこいというメッセージのようにも聞こえる――。
(行かないさ。だって下っ端の奴、嘘ついたんだもの。しょうがないよね)
とはいえこのままではレオに迷惑がかかる可能性が出てきた。そろそろ楽しい旅も終わりにしたほうがいい。レールロードにはどの道レオを連れて行くつもりも無かった。
(再び――まぁ、そうなってもしょうがないか)
自分という不可解な謎を解かねばならない、空白の過去を取り戻さないといけない。
だがその前に、自分もレオにもっとできることがあるはずだ――。
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武器屋のアルトゥーロを前にして、エイダをつれたマクレディは上機嫌になっていた。
ここの店には前にも顔を出したことがある。貧乏傭兵だと見抜かれ、扱われ、離れる時は小さく罵倒したものである。だが今日は違う――。
「驚いたね、まさか俺の店の奥から品物をもってこいとあんたに言われるとはな、マクレディ」
「風が俺の後ろから来ている、それだけのことさ。アルトゥーロ」
あのジャレドを殺って、奴等のキャップを奪い、マクレディはすでに自分を売った250キャップ以上の分け前をもらっている。だがそれでおわりじゃない。
自分のボスは今この瞬間も稼ぎまくっている。遠い居住地では代表者となって住人から吸い上げ、あのミニッツメンからも少なくないキャップを吸いあげまくっている。
相も変らぬひどいトラブル体質ではあるが、危険に見合うだけのものは懐にちゃんと転がってきている。満足しない理由はない。
「これで全部だ。好きに見てくれ、そんでもって。よければあんたのキャップを、俺の店で使ってほしいね」
「ああ、そうさせてもらうよ。だがまず見ないとな」
「……それなんだがな、マクレディ。よかったらその間、あんたのライフル。見せてもらえないか?」
「俺の?なんで?」
「おいおい、とぼけるなって。ここから見てもわかる。あんたの使っているライフル、依然とは別物だろう?そいつを拝ませてくれよ、こっちに勉強させてほしいんだよ」
どうやらアルトゥーロは目が腐ってしまったらしい。自分が使っているのは、以前と変わらないものでボスがいじくり倒しただけのそれだった。
(近くで見れば、それがわからないか?)
鼻で笑うと、あっさりとライフルを店主の手に委ねる。
店主はしばらく顔をしかめてなめるようにそれを見ていたが、気がついて声を上げた。
「驚いた!お前、これって――」
「ああ、そうだ。あんたが笑った、中古品のそれだ。ちょっと手を加えただけのな」
「いやいや!そんなんじゃ俺はごまかされないぞ、マクレディ」
そういうとレシーバーを、バレルを、ストックを、スコープも。とにかく目に付くあらゆることを口に出しては、よいものだと褒め称え続ける。さすがにそれは、こそばゆく感じて乱暴に相手の手から取り返した。
「カーッ、本当に変わったんだなマクレディ。そいつはいい品だ、あんたが死んだら俺が買い取るよ」
「俺が死んだらこいつはあんたのところじゃなく。殺したやつの手に入るだけさ。無理だな」
言いながらも、45口径用の弾丸とパワーセルを200発分ずつ購入した。
ボスのところへの帰り道を、マクレディは重い足取りで向かっていた。
Vault81で見せたコズワースの姿が、なぜかマクレディを攻め立てていた。
(俺は果たしてボスの――あいつの役に本当に立てているんだろうか?)
確かに銃の扱いは本人も認めているが、たいしたものはない。だがそれだけの男ではないことは、旅の中でちゃんと自分も理解している。だから自分が雇われているのだ、そうでないなら自分はただの――。
それ以上は考えたくなかった。
アキラと合流すると、そっと彼のそばに近づき。思わず聞いてしまった。
「なぁ、ボス?」
「ん?」
「俺、あんたの役に立っているかな?」
「どうした。突然、変だぞ?」
「あんたのせいで散々トラブルにも巻き込まれたが。最近はさ、考えちまうんだよ。俺、もしかして――」
役立たずと思われてないだろうか?それが何より怖かった。
アキラは黙ってマクレディの顔を見つめていたが、しばらくするとまったく関係ないことを口にした。
「俺とレオさんのキャラバンはここが終着点だ、とりあえずな。多分、そうなると思う」
「え?ああ」
「お互い大人で、心に定めた目的を持っている。しょうがないけど、それは事実だ」
「ボス?」
「マクレディ。俺にとってレオさんは特別な人だ。あの人には恩があるし、よくわからない俺みたいなのを大切な友人だといってくれた。俺なんかよりも、何十倍もいい人だ」
アキラの目が真剣だった。口を挟むことが出来なくなっていた。
「お前はガラクタとよく口にするが。コズワースはレオさんにとって大切なロボットだった。きっと家族のように思っていたはずだ。落ち込んでいるだろうし、不安にも思っていると思う。決して口には出さないけれどね。
だから――だからこそ、俺はお前に頼みがあるんだ」
そういうと腕を伸ばし、マクレディの細い肩をしっかりと握ると軽く揺さぶってきた。
「お前にはしばらくレオさんの力になってほしいんだ。キャップは俺が払う。だからかわりにレオさんを守ってくれ、マクレディ」
「ボス!?」
「ここに来るまでどうしようか考えていた。でも、これしかない。
俺はレールロードに戻る約束がある。彼らが言うほどのものかわからないから、それを確認しないといけない。つまり俺はレオさんと一緒には行けない。だが、だからこそお前に頼みたい。やってくれるか?」
これがきっとボスが自分に出す答えなのだ、と思った。
ここまで信用されているとは、考えもしなかった。
「まかせてくれよ、ボス。あのおっさんのことは俺に任せて、あんたも元気にやってくれ」
マクレディはそう自分のボスに――いや、仲間にいって安心させようとした。