ワイルド&ワンダラー   作:八堀 ユキ

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書き終わってみたら予定の2倍になってしまった。

情報が古かったし気分一新ということで作者名を変更しました。これからもよろしくお願いします。
次回投稿は20日前後を予定。


鳴動する連邦

 連邦――。

 

 パラディン・レーンと81のナンバーが入ったVaultスーツを身に着けた商人、ライリーを先頭にした部隊は目的としたルカウスキーズの缶詰工場が見えてきたあたりで一旦足を止める。

 

「アレか?」

「そう。あそこにいけば、まだクソったれのセオドア・コリンズがいる。逃げて無けりゃね」

「案内に感謝する――これ以上の案内は必要ない」

「でしょうね、もう帰るわ。ああ、セオドアのクソ野郎に『あの世にキャップはもっていけない、そうおばあちゃんから習わなかったのかい』と言っておいて」

 

 ライリーの言葉に、レーンは困惑の表情を浮かべる。

 

「それが案内した理由?必要なこと?」

「あいつのせいで商売を台無しにして、信用も失った。払い戻しにも応じなかった。銃の腕に自信があれば自分でカタをつけたいけど、もうそんな余裕もない。でも今回はあんたたちがやってくれそうだったから」

「商売はできなくなるのか?」

「ギリギリよね――やっかいな時期に大きなトラブル。自分の力で何とか出来ると思ってVaultから地上に出たけど間違っていたみたいね」

「……確実に約束できる話ではないが。君も知っている私の友人は、ミニッツメンの将軍と親しい間柄だそうだ。レオと呼ばれていた、彼を頼ってみてはどうだろう?」

「ミニッツメンね、確かに最近は勢いがあると聞くけど。名前を出しただけでなんとかなるかな?」

「その友人――パラディン・ダンスの話によると彼は善人で、頼れる友人たちも多いと聞いている。私も会ったことがあるが、その通りかもしれないと思った。なんなら私の名前を出してくれてもいい、役に立てるといいのだけれど」

「ありがとう、美人のナイトさん。それじゃそっちも気を付けて」

 

 笑顔と共に吹っ切るようにして背中を向けるライリーに「我々と契約するという手もある」と声をかけたかったが、レーンはその衝動を飲み込んだ。そんな権限をレーンは持っていないし、果たせない約束を口にすることはパラディンとしてやってはならないこと。

 

 何よりこちらも彼女と同じ。今回のことで大きなトラブルに見舞われているのだ。

 

「よし、2人は私と共に中へ。残りの4人は、外から工場の周りを見ろ。

 エルダーより容疑者、セオドア・コリンズはできるだけ生かして捕らえろとは言われている。だが抵抗するなら容赦はするな」

「了解」

 

 レーンだけではなく兵士たちはにわかに殺気立ち始めた。

 ライリーの言葉は決して他人事じゃない。この時期に大きなトラブル、ダンスは任務で留守で、おかげでレーンがこの任務をやらされる羽目になってしまった。

 

 

 数日後。

 プリドゥエンでは2週間ぶりにパラディンに会議に集まるよう指令が下った。

 パラディンたちは部屋に入ってくるが、その数は以前よりもずっと少なく。椅子は半分近くが空席だ。

 

「……となり、ルカウスキーの缶詰工場オーナーのセオドア・コリンズは死亡。後はスクライブ・ネライアとスクライブ・フォスターの調査から全容が明らかにされました。

 

 セオドア・コリンズ――容疑者は、以前は自分の育てたモールラッド。またはローチ牧場、マイアラーク牧場などと表現する相手と取引をして缶詰を売っていたようです」

 

 ウェッ、誰かはわからないが小さくない声が上がる。

 

「ところが最近、ミニッツメンの活動が活発となり。これらの業者との取引が消えました」

「なら!なぜそいつは多くの缶詰を売って、用意もできたんだ」

「はっきりとした証拠はありませんが。代用品でまかなおうとした結果、工程にトラブルが発生し。なぜか大量の缶詰が作れるようになった、とだけ記録されていました」

 

 険しいマクソンの顔がさらに厳しいものとなる。

 

「セオドアは原因を究明しなかったのか?」

「そうです。しかし、何が原因だったのかはわかっていたかもしれません。なぜなら彼はすぐにバンカーヒルの商人たちに取引できる缶詰が大量にあると知らせ、手元にほとんど残さなかったようなので」

「結論を聞こう。セオドアとやらは何をしたと思う?」

「――パラディン・レーンとの捜査の途中、工場内で”ひどい状態”のフェラル・グールと遭遇しました。

 人の形は残してはいましたが、あのキャピタルのケンタウロスに似た症状を発現させたフェラル・グールです。サンプルは回収、スクライブ・ネライアが培養を開始して、解析結果が出るにはまだ時間が必要です」

「缶詰の中身はグールだっていうのか!?」

「パラディン・レーンと相談の上、危険であると判断して調査はそこで切り上げました。

 推測ですが、容疑者が無理に作業を続けたために。工場内のどこかが破損、地下をまだ徘徊し続けているフェラルがそこから地上を目指そう入り込んだことで。大量の缶詰を吐き出すことになったと思われます」

 

 事件は1カ月ほど前にさかのぼる。

 プリドゥエン内で突如として兵士たちが倒れ始めた。

 

 彼らはひどい嘔吐と下痢に苦しみ。中には頭痛、腹痛、幻覚を見るまでに悪化。

 防疫の観点からすぐにナイトキャプテン・ケイドの指示で調査が開始された。

 

 元がアメリカ正規軍から派生したB.O.S.では、当然だが飢えや渇きに対処する知識と実践が訓練にはある。

 タフな肉体と精神を維持するために、強い胃もまた必要とされるものなのだ。そんな兵士たちがバタバタと並んで倒れたのだから、敵からの攻撃ではないかと疑う必要があった。

 

 情報が集められると、事態はより深刻なものであることがわかってきた。

 どうやら任務中に回収された”地元の味”を兵士たちが艦内の裏市場に流し。個人的な楽しみとして口にしていた。その中に最近、地元の商人から売りつけられた大量の肉の缶詰が人気となり。時期的にそれが原因だとわかったことでマクソンはパラディン・レーンに命じて外部からの調査を開始させた。

 

 軍隊などでのこうした裏市場は兵士たちにとっての取引材料にもなる必要悪として認知されていたが。

 こうした騒ぎが起こると厳しい取り締まりが始まってしまう。兵士たちの不満は高まり、殺気立ってしまう。捜査は迅速に、正確な全容の解明が必要とされていた。

 

 レーンはさっそくバンカーヒルに向かい、調査の協力を求めるが断られてしまう。

 代表のケスラーは噂から缶詰の危険性はあったのだろうと認めつつも、冷酷にそれを買う貧乏くじを引くのもまた商売だと言い切ってみせたからだ。

 

 だが、以前に旅をしたとダンスから聞いていた元Vault居住者のライリーに会うことができた。

 彼女もこの缶詰で大損させられていてセオドアを深く恨んでいたことで大きな進歩を見せることになる。

 

 逆転からのスピード解決は喜ぶに十分値する結果ではあったが。事件の傷跡は深く残されてしまった。

 

「事件発生前、部隊の損耗は2割。大半が怪我人でした。

 程度にもよりますがほとんどが長くかからずに部隊に復帰できる状態だったと言うことです」

 

 ケイドはそう口にすると、次の行を読み上げる。

 

「ですが現在、状況はより深刻なものとなっています。

 症状に苦しむ患者数は全体の4割をこえており。それぞれの部署での作業効率は悪化、連邦への調査も難しくなってきています。当然ですが士気の低下も」

「状況が状況ですが、エルダー。ここに出席していないパラディンたちの処分を――」

「待ってください、艦長!

 調べによれば缶詰を口にしたパラディンはいません。彼らは感染して倒れてしまったのです。それで処分は厳しすぎます」

「ああ、例のトイレの話か」

 

 プリドゥエンと空港には共同のトイレがある。

 医務室に駆け込む前、症状に苦しむ患者たちは当然そこを利用していた。今は患者用の簡易トイレを別に用意させて使わせている。

 

 ケイドに止められてもキャプテンの考えは変わらなかったようだ。

 

「そうは言っても、この件だけで我々の活動は半分まで後退してしまっている。なんらかの綱紀粛正は必要ではないだろうか」

「プロクター・クインランの意見は?」

「はい、エルダー。スクライブをまとめる側からの意見としては、その必要を感じません。

 それどころか本音を言えば大助かりですよ。調査のたびに山のような資料が入ってくるのに、スクライブはその数を減らしていっている。

 大騒ぎになったとはいえ、食いしん坊へのおしおきより。資料の整理と人員の補充の方が遥かに重要です」

「プロクター・ティーガンはどうだ?」

「みっともない話ですなぁ!

 地元の姑息な業者にしてやられるとはね。そういうのはプロの仕事ですよ、小遣いのキャップを握りしめた間抜けなカモがやることじゃない」

 

 ティーガンの言葉にパラディンたちの怒りが集中して向けられるが。本人はどこ吹く風だ。

 むしろこの場で憎まれることを楽しんでいる風にも見える。

 

「私に言わせりゃね。その、一匹狼な商人。

 彼女を生贄にすることでこちらの本気を連邦の奴らに教えてやったらいい」

「ちょっと待ってください!」

 

 ティーガンの言葉にレーンは怒りの声をあげた。

 彼はあろうことかケスラーを詐欺のひとりとして裁いてしまおうと言いだしたのだ。

 

「彼女は協力者であって、我々に缶詰を売りつけた業者ではありません!」

「そうだ。ケスラーだったかな。捜査の協力ついでに自分の恨みも果たせたそうだから、そのままこちらの役にも立ってもらおうじゃありませんか。手元に転がり込んできた駒に新しい活躍の場を与えてやるってわけです」

「そ、それはあまりに暴論だと思う。プロクター・ティーガン」

 

 レーンに続き、パラディン・ブランディスも反対の声をあげる。

 

「我々は連邦へ来た意義を思い出してほしい。我々は暴虐な支配者では――」

「そんな寝言はいってられんのですよ、パラディン!

 我々が地元の業者にだまされた、なんて噂はすでに巷に流れてる。いや、必ずそうなるんです。ここで重要なことは、こうした”攻撃に対して我々が何をしたのか”それだけなんですよ。

 

 我々をコケにしたクソ野郎をぶち殺す必要があるんです。徹底的にね。

 ナントカいうのは死んだそうだが、それだけじゃ足りない。死体袋がもういくつか必要なんです」

「滅茶苦茶だ!」

「カモにされたなんていわれたら、それこそ滅茶苦茶にされるのはこっちなんだよっ」

「そこまでだ、ティーガン」

 

 マクソンまでもが不機嫌になりかけていることを察知し、キャプテン・ケルズは強引に議論を打ち切った。

 その後、会議では建設的な意見だけを交わし。続きは後日ということで解散する。

 

 

――――――――――

 

 

 パラディンたちは退出したが、マクソン、ケルズ、ディーガンが残っていた。

 

――率直に聞こう

 

 マクソンはケルズに問う。先ほどの会議では明かされなかった情報について。

 ケルズの顔表情は変わらなかったが、口から出てきたのは驚くべきものだった。これまでの問題は消耗する武器とスクライブが問題であったが。防疫に失敗し、大勢が倒れたこと。闇市場を閉鎖するような措置を行ったことで兵士たちの間に不満が高まっている。

 

 そのせいで短期間の間にこの組織の力は半減、どこかで決着をつけないとこのまま低下を続けるかもしれない。

 

 続いてマクソンはティーガンを睨みつける。

 この男はまさに先ほど野蛮な解決法のひとつを口にしながら、その問題の重要性を暗に見せびらかそうとしたことに怒りつつ。しかしそれこそがこの男の価値であると認めなくてはいけない、腹立たしさを堪えなくてはならなかった。

 

「エルダーは先ほどの計画はお気に召しませんでしたか」

「好きではないし、不愉快に感じたな」

「でしょうなぁ。だからわたくしめに”言わせた”のでしょう」

「……だが別の代案があるのだろ。今度はそちらを聞こう」

 

 ティーガンの口元に笑みが浮かぶ。

 

「待ってましたよ、その言葉」「さっさとしろ」

「ええ、ええ。先に断っておきますがね。私だって優しくしてくれた若い商人の娘を血祭りにしろー、なんて本気では言いません。それでは発表します、あの計画をさっさと実行してほしいのですよ」

 

 感情は見せなかったが、マクソンもケルズのように表情が消えた。

 

「居住地への略奪か」

「最後の手段、最悪ではありますが必要なことですよ。我々は軍隊であって、それ以外ではないのですから」

「いきなり始めるというのか」

「まだこちらにも余裕がありますからね。申し出るところからやりましょうか。『お前の土地を守ってやるからお互い協力しよう』とね。我々の力を認めさせるだけでいい。それで連邦の奴らもこちらがカモではないと馬鹿でも理解する」

「そんな簡単な話ではないぞ」

 

 キャプテン・ケルズは不愉快さをあらわにして声をあげる。

 

「インスティチュートへの調査は大きな遅れが発生している。プロクター・クインランの言うように人を失い、多くの情報の山で作業が進まないのだ。ここに来てからずっと彼らはほとんど眠らない毎日を過ごしている。

 つまり人的ミスがいつ起こるかわからない状態だ。なのにさらに作業を増やせと?」

「ですがケイドも言っていたでしょ。病人は山のようにいて、治療にはキャップも薬も必要。

 まだ在庫はありますがね。ヤバくなるまでなにもしないなら我々はレイダー共と一緒になって略奪ってやつに励まないといけなくなる」

「兵士の士気の問題もある。今の彼らでは――居住地の住人達とトラブルになるかもしれない」

「小さなことを気にしてどうするんです。せっかくパラディン・ダンスを外に出したのに、このチャンスを無駄にしたいんですか」

 

 ティーガンはイスに深く沈み込みながら両手を振り回して言葉を続ける。

 

「我々はご機嫌伺いをしにここにいるわけじゃない。

 ミニッツメンでしたっけ?あんなのもアトム教のイカレタ連中や寝言を口にする傭兵と変わらない。

 ガンナー?ただのレイダーでしょ、我々が面倒を見てやるんだからどちらもインスティチュートと同じ。必要のないものです、さっさと全部片づけてしまいましょうよ」

「口が過ぎるぞティーガン!もういい、出ていけ」

「はいはい。嫌われ者は動物園の(おり)に戻りますよっと」

 

 足取り軽く部屋からティーガンが退出するまで、ふたりは沈黙していた。

 

「エルダー……」

「ティーガンは間違ってはいない。同じ問題をアレは本人なりに解決しようと考えている。それはわかってる」

 

 物資、人員の補充。

 これは軍隊について回る問題なのだ。彼らの力――暴力を支えてくれる”市民”が絶対に必要になる。

 だが、マクソンはこの連邦に来てからまだその答えを出してはいない。

 

「空輸計画はどうなってる?」

「――キャピタルから特に何の知らせもありません」

 

 キャピタルを発つとき、残してきた仲間には今後の計画としてキャピタルと連邦を繋げられる大規模な輸送機の開発を命じてきていた。1年以内に数回のテスト飛行を行う予定だと自信満々に聞かされていたが、キャピタルからの良い知らせは全く聞こえてこない。

 

「プリドゥエンよりも小型でスピードがある輸送手段は今後の運用には欠かせないもので、実現にはかなり期待できるという話であったが」

「そういうこともあります、エルダー。我々のキャピタルからの道程があまりに順調だったのでそう思えるだけなのでしょう」

「確かに今ならダンスはいない。ブランディスは反対するだろうが、それは大した問題ではない」

「ではその前にミニッツメンとの会談を終わらせなくては、それとも無視しますか」

 

 皆には知らせてないがミニッツメンを吸収するという選択(計画)はまだ残しておきたかった。

 伝説のガ―ビーとやらの会談については裏で話し合いを続けているが、まだ日時の決定はされていない。それを察したのか最近ではガンナーからもそれらしい話が来ているが、あっちは信用ができない。

 

「彼らとの約束は守ろう。チャンスを与えなくては、これまでの努力が無駄になってしまう」

「わかりました」

 

 エルダー・マクソンは目を閉じる。

 そうだ、ずっと自分は決断を先延ばしにしてきてしまっていた。大きなことを成し遂げてもリオンズはそれを後悔し、その弱さが兵士達の失望となっていた。

 

――サラ、あなたたちの成し遂げた偉業は本物であったと私のB.O.S.でも証明する

 

 マクソンの心にも怒りがある。

 リオンズの偉業の多くはサラの死と共に貶められてしまった。

 

 その原因となったのが市井の英雄”Vault101のアイツ”とスリー・ドッグが軽快に叫ぶ女。

 あの女は多くをキャピタルB.O.S.にもたらせはしたが、リオンズとリオンズのB.O.S.の友人ではあっても仲間にはならなかった。

 リオンズはその友諠を大切におもっていたがそれではまったく足りなかったというのに。

 

 マクソンがリオンズの後を継いで、あの女はさらにこちらから距離をとるようになった。支持もしなかった。

 サラの死とリオンズの凋落に何もしなかった。

 

 許せないとは言わない。

 だが表には出せない不快感と怒りは確実にまだこの体に残されている。

 

 

――――――――――

 

 

 ミニッツメンに残ったガ―ビーの毎日は、よりストレスに満ちたものになってしまった。

 

 例の一件以降、彼の方針転換は復帰してきた旧ミニッツメンたちを刺激した。

 ロニーは毎日の事やってきてはガ―ビーにあの手この手で懐柔を試みている。褒め、嘆き、皮肉、笑うなどしながら『昔のやり方のなにが不満だ』が叩きつけられてくる。

 

――正しいミニッツメンであり続けるためだ

 

 そのたびにガ―ビーはそう答える。禅問答のようだが、それが真実だ。

 そして思い出される。ミニッツメン復活後に自分がかつての仲間達も呼び戻したいといった時に見せたあのアキラの馬鹿にした顔を。今なら彼の考えがガ―ビーにもわかる。

 

 結局、ロニーたちは理由をつけてミニッツメンを捨てた人々でしかないのだと。

 彼らは口では志は同じだと言うが。野心や嘘、怒りから「このミニッツメンでは正義は不可能だ」と吐き捨てて出ていったのも彼らだった。

 

 レオもアキラもそれを理解していた。

 旧ミニッツメンの肩書をつけて戻ってきても、彼らは新しい変化を受け入れることはほとんどないのだということを。彼らはかつてのミニッツメンでやっていたこと、主張していたことを少しだけアレンジして同じようなことをやっている。そう、自分の言うことが正しいやり方なのだ、と。

 

――ミスター・レジェンド。いいですか?

 

 誰かに呼ばれたことに気が付いて机から顔をあげる。

 入口にオバーランド駅の代表である彼女たち――夫婦が心配そうにして立っていた。

 

「もちろん。なにか?」

「あっ、約束の時間だったので来たんですが……」

 

 驚いて壁にかかった時計を確認してしまう。

 確かに時間だ。というか、少し過ぎていたことに気が付かなかった。

 

「すいません。いろいろやっていて気が付かなかった。さ、入ってください」

「はい」

 

 ミニッツメンの居住地に入れる人々はまずここで共に生活をし。準備ができたと判断されるとここを立ち去り、また新しい人々が入ってくるシステムになっていた。

 そのためガ―ビーはおりをみて代表者の夫婦と定期的にこうやって話し合いの場をもうけ。近々予定されている行動についてなどを中心に意見交換をしてきた。

 

「話していた通り、最後の班は数日中に部隊をつけて送り出すことになっています。彼らにはすぐに動けるように言ってありますから問題はないでしょう。

 ですがひとつ問題がおこってまして、対岸にあるグレイガーデンに次に入るはずの居住者候補たちが集まってきてしまっているのです」

「はい、噂で耳にしていました」

「そうですか。実は今回は応募者が殺到していたようで、選考のペースがいつもよりもはやくなってしまったらしいのです。

 本当なら間を開けてから受け入れたかったのですが。出来ることならば明日から始められないかと考えているのです」

「……急な話ですね」

「わかります。ですが将来に居住者となることを約束しておきながら、不安定な客人の立場に長く置いておくのはいいことにはならない。全員を呼ぶわけではなく、スタートを前倒しにして進めるだけです。どうでしょう?」

 

 2人は不安そうに顔を見合わせる。

 

「ミスター・レジェンド。あなたたちの活動を支持すると誓った以上、拒否はしません」

「感謝します」

「ですが――こういう大勢の住人が定期的に入れ替わるという環境に負担を感じているということをわかってほしいと思います」

「お互いに、それを学んできました。わかっているつもりではいますが、なにかあるのなら言ってください」

「とにかくその人達を受け入れることには同意します。全員が来るのでないのなら」

「約束します。スタートを前倒しにするだけ。これまで通り少しづつ入れていきます。困らせるようなことにはしません」

「これも噂ですが。彼らはグールたちの前で殺気立っていると聞きました」

「明日、自分が直接彼らに会って説明します。必ず理解してもらいますので、おふたりにはいつも通りにやっていってもらえたらと期待しています」

「そういうことなら――」

「よかった」

 

 ガ―ビーは肩をなでおろした。久しぶりのいいニュースだ。

 だが喜んでばかりはいられなかったようだ。

 

「それとは別に、今日は私たちからもお話があります」

「なんでしょうか?」

「これも噂なんですが。ミニッツメンは連邦の北部を掌握したというのは本当なんでしょうか?」

「……巷で流れている噂ですね。それは正確ではありません。

 我々が進めていたのは連邦北東部でまだ使えそうな居住地の調査を行ってきました。実際、東部に残されていた居住地との取引などはまだはじまって数カ月しかたっていません。まだまだこれからです」

 

 これでもガ―ビーも経験は積んでいる。

 微妙に話題をそらそうと試みつつ、相手の意図を探ろうとしていく。

 

「私たち夫婦の今の生活はあなたからの説明があって受け入れたものです。話を聞くと、この先もこのオバーランド駅はこの生活が続くということなのでしょうか?」

「んん、確かにこれはいつもよりも未来の話になりそうだ。なにか、気になることがあるのならはっきりとお願いします」

 

 ガ―ビーの問いかけにこれまで黙っていた方が口を開いた。

 

「最初の約束だと、この生活は東部に人をいれるまでってハナシだっただろ。

 でも噂を聞く限りじゃ。ミニッツメンは南に行ってガンナーどもと戦争するってハナシがある。戦争があるってことは人が死ぬし、居住地とやらも攻撃を受けるだろ。レイダーとか、スーパーミュータント。それにB.O.S.!」

「私たちは不安なんです。ここでの生活はこの先もずっとこんなことが続くんじゃないかって」

 

 ガ―ビーの顔は真っ蒼になり、表情がかたまった。

 痛いところを突かれてしまった。そう思ってしまったのだ。

 

 ガンナーとの対決については、将軍やアキラとはっきりと口に出して計画を相談したことはない。

 あくまでも北部に人々が安全に暮らしていける場所を作る。それが今の目標であって、連邦全土をミニッツメンが制覇し。平和を維持するなんて考えはまだまだ現実味がないというか、妄想に近い。

 

 とはいえ、ガ―ビーには密かな野心。いや、報復心がある。

 連邦の南部にはミニッツメンの名を地におとしてみせたあのクインシーがある。あの町を人々の手に取り戻し、自分や仲間達。ホリス大佐を裏切った、あの裏切り者たちの首を吹っ飛ばしてやりたいと願っている――。

 

 だがこれだって現実的な話じゃない。

 

「参ったな。その、調査についてはほとんど終了している。

 調査に携わった部隊は戻ってきていますが。そこに人が入るのはこれからの話だ」

「……」

「戦争、でしたか。巷では勝手にそう噂されているのでしょうが、事実じゃない」

「ミスター・レジェンドはミニッツメンの裏切り者クリントを街灯(がいとう)につるして――」

 

 ガ―ビーは答える気力もなくして首を横に振るしかない。

 この会話を続ける自信がなくなってきそうだ。

 

「その疑問には答えたと思う。これで納得してもらえただろうか?」

「できないね。正直に言うけどさ、あたしたちはここを出ていこうかって考えてるんだよ」

「えっ!?」

「人の出入りが激しくてつらいってのもあるけどさ。あんたはここを本当はミニッツメンの砦にしたいんじゃないのかい?」

「まさか。なんでそうなる」

「だってさ、あんた達はダイアモンドシティの近くにある居住地を自分たちの施設として使っているじゃないか」

「確かに機能を分けて配置してはいる。だが、それだけだ」

「でもダイアモンドシティを占拠するつもりはないんだろ?」

「当たり前だ!」

 

 この話し合いで、初めて声を荒げて叫んでしまった。

 そのことにショックを受けるが、同時に自分たちがレイダーたちのようにダイアモンドシティを狙っていると考えられていたことにも驚いた。

 

「ミスター・レジェンド。私たちはあなたたちに嘘をつかれているのではないかと思ってるんです」

「待ってほしい。なんでそうなる。

 確かにすべての情報を明らかにはしていないが。今だって調査については情報を伝えたばかりじゃないか。それが俺たちをレイダーのように言うなんて、ひどすぎる。

 だいたいなぜここを出ていくとか、占拠するなんて考えるんだ」

「そりゃね、あんたの話が”できすぎている”からに決まってる。

 人が入れば北部はあんた達が掌握するってことだろ?なら、ここはどうなるんだい。あんたたちは”どこに行く”んだい?」

「どこに、行くだって?」

 

 なにかヤバイものが飛び出してきそうだ。

 

「だってそうだろ?

 あんたらはミニッツメンだ。昔はあちこち移動してたけど、今はそうじゃない。なのにダイアモンドシティはいらないし、ここだっていらないっていう。まさか解散する?」

「馬鹿な!」

「最近、傭兵共がバンカーヒルからこっちに流れてきてるってハナシさ。ダイアモンドシティじゃ、マクドナウ市長がグリーンウォールの金持ち共相手にミニッツメン対策に秘密の部隊を作らないかって相談してるそうだよ」

「信じられない話だ」

「じゃ、答えておくれよ。あんただけは本当のところをさぁ」

 

 目を閉じながら宙を仰ぎ、冷静さを取り戻そうとする。

 噂話だと鼻で笑うことができなかった。自分はまだまだ未熟なのだ。だからこの”嘘”はつきとおさなくてはならない。

 

「まず――信じてもらいたい。約束はまだ残っている。

 まだ先の話になるが。東部に人を送り出すまでは、この駅では今の役目を続けてほしい。代表者を追い出すような真似はしない」

「それはいつまでだい?」

「長くても今年中、予定ではそうなっている。今はこれしか言えない」

「どうだか」

「ミニッツメンの――我々のこれからの活動についてはレオ将軍の考えもある」

 

 好きなやり方ではなかったが、ここにいないレオを利用させてもらうならこの時だろう。

 

「それはまだ未来の話で、準備すら始まっていないことだから何も話せないが。あなたたちの不安については将軍に伝えるし、考えがまとまれば改めて情報を伝えよう」

「……」

「これは新しい約束だ。それで納得してほしい」

 

 話はそこで終わり、数日後に再び集まることを確認してから解散した。

 去っていく夫婦の背中からは不安は完全には取り去ることはできなかったが。なんとか出ていくことはとどまってくれそうだとなんとなく感じることができた。

 

――これからのミニッツメンの活動、か

 

 確かにこれは先送りにしてきた問題だ。

 

 しかしグレイガーデンやコベナントなどを奇抜な形で短期間に作り上げたアキラは、オバーランド駅の役目は東部で終了と言ったし。

 将軍もそれに同意していた。ガ―ビーもそれは変わらない。この場所は人々のためにある場所だ。

 

 だがミニッツメンの活動については――3人の考えは恐らくバラバラではないかと思ってる。

 将軍はミニッツメンの機能をダイアモンドシティと周辺の居住地に分散することで配置した。彼の考えではこの先にそれらを捨てるという選択肢は恐らくないだろう。ではどうするのか。それはわからない。

 ガ―ビー自身には名案は最初からない。必要だというなら昔のように旅をしながら続けていくのもいいと思っている。

 

 問題はアキラだろう。

 彼には多くを助けられてきたが。同時に何を考えているのかわからない不気味さがあって。それが無視できないレベルに成長してきてしまっている。

 彼があの夫婦の言う通り。いきなり「ダイアモンドシティを占拠する」などと口にしたら、自分はそれを止められるだろうか?その時、レオにアキラの意見を採用させないようにする方法がるとすれば。それは今、自分が押さえつけている旧ミニッツメンたちを焚きつけて反対の声をあげるしかないのではないか。

 

――なんてこった。こんなバカな考えを俺がするなんてな

 

 最悪だった。

 かつて将軍を失ってから派閥同士の争いから自滅していったミニッツメンを、今度は自分がやろうとしているんじゃなかろうか。わかっていてもそれしかない、まさしく自分は愚か者だ。

 

 だが自分はミニッツメン。

 ずっとそうだったし、これからもそうありたい。

 野心を抑え、嘘をつかず、信念に沿って正義を成し遂げる。あの日に誓った約束はまだ破られてはいない。それが一番重要なことなのだ。

 

 

――――――――――

 

 

 ヌカ・ワールドに砂嵐が来ている。

 これでもう10日間だ、身動きが取れず。レイダーたちはそれぞれが不満を抱えて、園内でうさばらしをしてはトラブルをおこし。騒ぎの裏ではこっそり死体を隠しているはずだ。

 

 ポーター・ゲイジはフィズトップ・マウンテンの頂上から砂に覆われた世界を見ている。

 

 オーバーボスが”2度目の家出”から彼は動くのを控えてきている。

 以前ならあの若者を戻すために必要だからと自らが赴くことで信用を得ようと思ったが。後から振り返るとそれは彼の怒りを大きく買っただけのことで、彼の連邦でのビジネスを難しくしたと恨まれているかもしれないと考えているからだ。

 

 信じる、なんて陳腐で臭いセリフはどうかと思うが。

 今はそれでなんとか時間を稼いでいくしかないだろう。あのコルター(死んだボス)と比べても、今のボスはさらに邪悪で悪魔のような存在なのは間違いない。その証拠にディサイプルズやオペレーターズからは不満を感じるが、一番扱いずらかったパックスはしつけられた犬のように従順になっている。

 

 もちろん本当になんでも大人しくなっているわけではないし。好き勝手なことをして好き勝手なことを言うが、ボスを怒らせないというところで自制を見せてくれている。これは想像以上に面白い現象だと思ってる。

 

 それでもボスの不在は組織に不安定さを招く。

 レイダーたちの不満の根源はそこにあるが。だからといってゲイジはもう焦る必要を感じないということをアピールしないといけない。

 

 なぜならばオーバーボス……アキラはもう、こちらの価値を知り。様子を探っているに違いないのだから。

 答え合わせはその瞬間が来ればわかるだろう――だがその瞬間はまだ来そうにないが。

 

 オペレーターズはハンコックに接触しようと努力しているが、いまだに結果は出ていない。

 相手はオペレーターズの言葉が届く前に逃げ回っているそうでマグスは度々ヒステリーをおこしている。最近は得意の商売を利用することでなんとか舞台を整えようとしているらしい。

 

 パックスはいつものパックスだ。

 群れのアルファであるメイソンの下で今日も愉快に楽しくやっている。ゲイジの見るところ安定しているのはここだろう。だがディサイプルズは――。

 

 ゲイジ!

 いつもながらニシャの怒鳴り声は砂塵の舞う風にも負けていない。またか、なだめてやらないといけない。

 

 

 閉じ込められるとストレスになるというのは本当らしい。

 身動きが取れないことにニシャは腹を立て、八つ当たり気味にオーバーボスへの不満にすりかえてやってきたように見えた。

 

「ニシャ、冷静になれよ。カッカしてもオーバーボスは戻ってこない」

「なんだいそりゃ?それじゃ、あんたの約束とやらはもう無意味ってことかい」

「言っていることが滅茶苦茶だぞ。

 ボスは戻る条件を出していただろ。俺たちはまだ準備を終えていない」

「犯人役なんて誰だっていいだろうがっ」

「ハンコックはまだだ。マグズは苦しんでいるようだが、手は打っている」

「あのクソ〇売女っ、〇×〇×〇×――」

「おいやめろ。冗談でもそんなことを言ったと噂になったら騒ぎになるぞ」

「そんな度胸がオペレーターズにあるっていうのかい?そりゃ楽しくなるじゃないのさ」

 

 さすがにこれは良くない。

 不安定になっているのかもしれないにしても、身内で争いを始められては意味がない。

 

「トラブルは良い結果になるとは思えない、ニシャ」

「なんだって?」

「トラブルだ――オーバーボスがいないことが不満なんだろ。そりゃわかるけどな、今は自分ごとすべての手綱を引き締める時だ。それがわからないのか?」

「あたしはもう十分に待った!」

「ああ、それで手に入れただろ。望みの土地を」

「全部はまだだ!」

「だがコルターの時とは違う。それを思い出せ!」

 

 低いテンションのゲイジが怒鳴るのは本当に珍しい。

 ニシャも仮面の下から睨むのはやめてないだろうが声をあげるのは止めた。

 

「まず落ち着くんだ、ニシャ」

「……」

「あんたは恐れられているディサイプルズのボスじゃないか。それがビビっているように見られる」

 

 隠されていた感情を見せるように、近づくとニシャの片手をとって握りしめてやる。

 

 ゲイジはマグスと違い、ニシャとは個人的に深い関係を持っていた。

 別に愛なんてなかったし、お互いに利用しあえる相手だとわかっての都合のいい関係からでた行為だった。人肉に欲望を持つ狂気の集団ディサイプルズではニシャは暴力以外の欲望を満たす相手は得られなかった。

 ゲイジは頭は切れるし口もたつ、要領だっていいし外見も悪くない。

 このディサイプルズのニシャと対等に話すことを許す立場を与えてやる恩恵に見合うものがそれだったのだ。

 

 だがそれはお互いがパートナーであるという状態でなければ意味がない。

 ニシャもそれはわかっている。だからずっと不満があってもゲイジの言葉に従っていた時期があったのだ。

 

「新しいボスはコルターとは比べ物にならないほどよくわかってる。正直に言えばもう少し馬鹿でいてほしくらいに頭は回る。

 彼はここの様子がわかっているはずだ。マグズがハンコックと話ができるようになれば解決する」

「やっと商売が回るかと思ったのに、この嵐だよ。

 パックスの獣どもや泣き虫のオペレーターズとちがってうちの奴らは商売はうまくないんだ」

「動きたいのはわかるが、今は我慢することが得策だ」

「ああ、それはわかってるさ」

 

 目に見えて落ち着いてきたのはわかるが、これで返したら元の木阿弥だろう。

 

 ニシャのような女の扱い方はゲイジは知っている。

 すぐそばに見えるオーバーボスの寝床に目を走らせるところを彼女に見させながら

 

「少し話していくといい。砂嵐もそう悪くないとわかるだろうしな」

「へェ。怒鳴っても誰にも聞こえないって?」

「それに近いかな。いつもとは違うやり方で楽しむなら、今がその時だって感じだ」

 

 ディサイプルズ特有の頑丈で重いアーマーの一部分を片手でさっと触れるだけで簡単に脱がして見せた。いつもならやらない手だ。そもそも服は脱がないままでヤるのだから必要ない。

 だが、学んでおくことも悪くない。

 その技術からニシャは想像を刺激され、早くもノってくる気まんまんだ。彼女が裸にひん剥かれてヤられるってのはいつ以来なのだろう。そこのところだけは興味がある。

 

「ゲイジ、あの若いボスは本当にあたしらの計画に最後まで付き合うと思ってるのかい」

「大丈夫だ。ヌカ・ワールドはいい場所だが、誰にだって我が家は大きい方がいいものさ」

「ああ」

「ここが始まりだとするなら、連邦への帰還は次のステップにはちょうどいい。なにせ、今はあのキャピタルのB.O.S.まで出張ってきているらしいからな。ミニッツメン、ガンナーに続いて叩き潰せば。キャピタルが向こうから俺たちのところにやってくることにもなるさ」

 

 数時間後にはまた不満そうな顔をしてニシャは戻っていくだろう。

 だが次に相手にするのは恐らくしばらく先のことになるはずだ。こんな女でも可愛いところがあるってのは、人間の面白いところなのかもしれない。

 

 

 確かにニシャは不機嫌顔で仲間の元へ戻ってきた。

 だが、出てきた言葉はゲイジの考えていたものとはまるで違ったものだった。

 

「クソッ、あいつ。オーバーボスの居場所を言わなかった」

「まさかゲイジの奴も知らないって意味か、ボス?」

「そうじゃないだろうね。前回はあいつが戻ってきてからすぐにオーバーボスも帰ってきた。お互いに連絡を取り合っているって可能性は捨てきれない」

 

 ゲイジの言い分もそれなりに筋は通って入る。

 今、オーバーボスに戻られてもマグズは結果を出せていない。それはオペレーターズが口で言うほど商売がうまくできていないという気味の良い話ではあるが。まだできていないのかと怒りのとばっちりを受けることになっては困るといえば困る。

 

 だが、わずかなエリアを与えられただけで我慢をしろと言われるのはもうご免なのだ。

 

「マグズの〇売が。いつになったらハンコックと渡りをつけるんだい」

「さぁ?だけどボス。自分を殺そうとした相手とは会いたいとは思わないでしょうよ」

「確かにね。ナイフと火薬を用意する必要はある。なるほど」

「邪魔しますか?俺達でハンコックを追って、首を……」

 

 舌でカッと鳴らし、首を掻き切るポーズを部下が見せる。馬鹿が、そういう意味じゃない。

 

「それができるならもう誰かがとっくにあのグールの首を旗と並べて掲げているさ……オーバーボスを追える?今どこにいるか」

 

 ディキシーとサヴォイ。ニシャはディサイプルズの幹部である2人の考えを聞いてみる。

 

「……方法はある。難しくはない」

「でも簡単じゃない。グッドネイバーやダイアモンドシティ、バンカーヒルなんかにはハンコックの手が回ってるはず。ってことはオペレーターズもいるわけで、気づかれる」

「ゲイジにもわかるか」

「オーバーボスの腕を見る限り、怪しいのはミニッツメンかガンナーズだろう。

 だがあれほどの凄腕ならガンナーズなら名が知られていないのはおかしい。だがミニッツメンなら手を出してもごまかせるし、情報が出てくるかも」

「どっちにしても連邦。どっちにしてもゲイジの計画の先とぶつかり合うってわけだね――」

 

 パックスのメイソンはどう考えているのかわからないが。オペレーターズのマグズはハンコック相手に苦戦をしながらも、どさくさに紛れて連邦の下調べを同時に進めてもいるはずだ。

 なら、自分達だって――。

 

「獲物をミニッツメンに広げるとして、何ができる?」

「襲撃、誘拐、略奪ぐらいだろう」

「お楽しみわー?それだけだとつまらなーい」

 

 デイジーがキャッキャッとにぎやかすが、無表情でサヴォイがいさめる。

 

「今のミニッツメンはガンナーズほどではないが油断はできない。

 殺しでいくなら人も武器も多くいることになる。襲撃に略奪からの誘拐、解放の取引をするのが一番いい。死体や血を出し過ぎると目立ってしまうからな」

「ディキシーの言う通りつまらないやり方だけど、それなら確かに言い訳もできるし。捕まえた奴からも情報を聞き出せるね」

「それじゃ、それで決まりねっ」

 

 あえて誰も口にしていないが、このヌカ・ワールドにいるすべてのレイダーが不安に思っていることがひとつあった。それがマグズをいら立たせ、ニシャを落ち着かなくさせている。

 

 あのハンコックだ。

 最初はグッドネイバーを離れたハンコックはこのヌカ・ワールドの偵察に来たのだとばかり思っていたが。考え方を変えると、ハンコックが来るのに”あわせたように”して戻ってきたのがオーバーボスではなかったか。

 あのオーバーボスはすでにハンコックとつながり、ゲイジを取り込んで自分たちを操ろうと考えいているのではないだろうか?

 

 コルターで散々に懲りたはずのあのゲイジは、新しいボスを評価するどころか行為を抱いているかのような余裕を見せ始め。本気で信頼している風であることも不安を助長させてくる。

 

 

 出し抜かれてはいけない。負け犬にはならない。

 ここは無法と狂気で支配するユートピアなのだ。

 

 

――――――――――

 

 

 第3回を終えると法廷ショーは賭けで生み出される利益は大きなもので、もっと成長の見込みがあることがわかってきた。

 ショーマンの美学としてはこういった賭けの胴元をやるのは好きではなかったのだが。新しい挑戦のもたらす恩恵を素直に受け入れてやっていくしかない。

 

 とはいえ、すでに手ごたえは十分感じている。

 最初の興行のスペシャルマッチ。あの本物か偽物かわからぬシルバーシュラウドとデスクローの決闘。

 どちらも接近戦で、お互いを切り裂く作業で勝負し。人であるシュラウドにデスクローは倒された。あの試合はちょっとした伝説となってこのショーに箔をつけてくれたし。次のショーの開催を待ち望む声はあんな戦いが再び目に出来ると信じての事だった。

 

 だがそれには準備が必要だ。

 ショーには必要な悪党がいる。なのにその数は早くも足りなくなっていた……。

 

 悪人が消えたという話じゃない。キャップの匂いにつられてやってくる奴らがろくな奴を連れてきてくれないのだけだ。

 今日の最初の持ち込み相手は、グッドネイバーのトリガーマンのようにおそろいの帽子をかぶり。手にはバットやスパナを持った普段着姿の男達。彼らの中心では縛られ、ボコボコにされて虫の息となったレイダーらしき若者が寝かされていた。

 

 対面した暗い納屋の中でトミーはすぐにピンときた。こりゃ最悪の相手(取り引き)だ、と。

 

「トミー、彼らの持ち込みだそうで。居住地近くにいたのをとらえたんだそうですよ」

 

 傭兵の言葉に返事をせず。トミーはしゃがむと虫の息となっているレイダーに話しかけた。

 

「おい、おいっ。声が聞こえるか?名前は言えるか?」

「……ガッ……ぁあっ」

「言えないとな。お前、死ぬことになるけどいいか?」

「じ、ジョン。泥船のジョンってすっ――」

(元はスカベンジャーか)

 

 本名ではなく、2つ名をいってきたところでそう考えた。

 なるほど間違いはないだろう。この素人からは薬に酒、暴力と血に飢えたクソったれのレイダー共の気配が匂ってこない。

 

「話すのはもういいだろ、こいつをやる。俺たちの希望は100キャップだ」

(冗談だろ。間抜けが)

 

 無言で立ち上がるが、皮肉は口に出さない。

 こんな奴らでも大切なお客様ではあるのだから、丁寧に応対しないといけない。

 

「選択肢は2つ。こいつをここに置いて10キャップを受け取って帰るか」

「おいっ。安すぎるだろ」

「でしたらこいつをもって帰りな。わるいがこいつは見たまま最悪の状態で、ショーには出せない。それにだいたいこいつはどんな悪名があるんだ?」

「レイダーだ。それで十分じゃないのか」

「うちの客が喜ぶのは悪党。殺し屋なんかなんですよ。レイダーの格好をした死にかけの小僧じゃない。そんなのが出てきても客は盛り上がらないでしょうよ」

 

 答えながらトミーの脳内では彼らがなぜここにいるのか想像していた。

 ”たまたま”手に入ったレイダーの雑魚をボコボコにして、死刑の仕上げをしようとしたところで誰かが思い出したようにこいつをキャップに変えようと言い出したか。

 

「俺たちがこんな奴を連れ帰ってどうするんだよ」

「さぁ?こいつにしっかりと何をやったのかを吐かせて、それが間違いなさそうだって証拠でもあれば。また改めて話し合いますがね。邪魔ならそのへんで殺せばいいんじゃないですか」

「……くそっ」

 

 よしよし、そろそろいいだろうか。

 

「まぁ、わかりました。皆さんとは初めてですから。今日は特別に15キャップだします、それでどうです?」

「最悪だっ」

「でもゼロではない。それとこれは忠告なんですがね。次は代理人を用意するか、皆さんの正装でお願いしたいですね」

「?」

「皆さんミニッツメン、でしょ?

 ああ、顔は誰も見たことはありませんがね。こういうのは雰囲気で分かる。変装なんてするから、かえって怪しく思うんですよ」

「……そうか」

「持ち帰りますか?」

「いや、おいていくよ。値段もそれでいい」

「では外でお待ちを」

 

 この町のショーにあの伝説のガ―ビーは激怒していたとは有名な話だ。

 そのせいだろうか。持ち込みに来るミニッツメンの大半が、ああやって下手な変装で誤魔化そうとするか。家族や知り合いを代理人としてやってくる。そのたびにトミーはこうやって諭してやっていた。

 

「おい、泥船のジョン。お前な、今から病院で傷を見てもらえ。そのあとで飯も食わしてやる」

「あっ、あっ」

「その代わりにな。お前とまた話すまでは首に奴隷用の爆弾首輪をつけるから。間違ってもはずそうとするなよ、自殺したくてもはずすな。その時は相談に乗ってやるからな」

 

 近くに立つ傭兵たちにこいつを病院に放り込んできてくれと頼み。支払いは自分がすることも伝える。

 彼らが立ち去る中、今度は入れ替わるようにメールマンのひとりが入ってきた。

 

「ひどいやられ方してましたね。ショーに使えるんですか?」

「あれは違う。ところであんたは確かグッドネイバーで傭兵やってただろ。泥船って名前のスカベンジャーに心当たりはないか?」

「ああ、あります。泥船兄弟。でも名前を聞くのはブタ鼻って兄貴の方の奴です。本当の兄弟でもなかったはず」

「ブタ鼻?たしかそれって顔が崩れてるって奴じゃないか?よくトラブルを起こしたと聞いたことがある」

「それですね。数年前にその兄貴のトラブルで兄弟一緒にグッドネイバーから叩き出された。バンカーヒルで一旗揚げると騒いでたらしいですが、あそこの商人はグッドネイバーの悪党に負けない悪魔たちだ。名前はそれから聞いたことがない」

「レイダーに職を変えたようだな」

「不思議じゃないですね。ブタ鼻のオヤジはガンナーでしたし」

「不細工な傭兵か」

「いえ、逆ですよ。女殺しの傭兵って奴で。あちこちに女を作ってましたが、嫁と子供は大事にしてたみたいですよ。ある時期まではね」

「ある時期?」

「ピッグマンってヤバイのが、そいつの女と仲間を斬り刻んでから頭がおかしくなったんですよ。

 ブタ顔も元はいい顔だったらしいですけど。親父が酔っ払って母親を殺した際、息子の顔を薬で焼いたとか」

「ひでェな」

「ま、そんな話ばっかりですよ」

 

 そんな事情があるとは知らなかったが、トミーはトラブルメイカーの弟らしい若者を助けたことを後悔はしていなかった。

 自分が解放したリトルバード(ケイト)が小さくないチャンスを運んできてくれて今の自分があるように、あの不幸な小僧にもそれがあってもいいような気がしたのだ。そう、ただの気まぐれってやつだ。

 

「ジャンク屋に新しいスカベンジャーを紹介することになるかもな」

「優しいんですね」

「そうでもない。あいつとあいつにかかったキャップは全部借金に回す。自由は当面アイツにはない」

 

 そう答えながらなんとなくトミーはリトルバードことケイトのことを思った。

 アイツはちゃんと今もやっていけているんだろうか。

 

 

――――――――――

 

 

 青空の下、ジョン・ハンコックは不運なメールマンを助け。

 彼の相棒であった犬とバラモンの葬儀に参加していた。

 

 木々の間に作られた細い道を器用に駆け抜けてきたデス・クローは、ついにその爪をメールマンへと振りかざした時。ハンコックはちょうど岩場から見下ろす形で枯れ木の森の中の衝撃的なシーンを冷静に見つめたあと。旧式の長大なライフルを構えて火を噴かせた。

 

 不運なメールマンを救ったのはハンコックと彼の秘蔵のライフルだったが。

 ハンコックにそんな気を起こさせたのは、凶悪なデス・クローに倒されたメールマンの相棒である犬とバラモンの悲痛な声だった。

 

――急ぎの仕事で、どうしてもって言われて引き受けたんですよ

 

 苦しませないよう。ハンコックから受け取ったナイフを手に、相棒たちの頭を膝に乗せたメールマンは。静かになっていく彼らを見送りながら、悔しさをにじませそう口にした。

 

 連邦最北端に位置するジモンヤ前哨基地跡、そこにある居住地がレイダーに包囲され。

 至急武器と食料、医薬品を贈ってほしいとの連絡がグレーガーデンに届けられたのが始まりらしい。 兵士が足りないならミニッツメンに救援をもとめるべきだし、食料ならジモンヤなら近くにテンパインズの農場に頼めばいい。

 

 だが武器と医薬品も、ということならなるほど。

 グレーガーデンは黒い取引もしているから揃えるのに苦労はない。あとは誰が届けるのかだけだった。

 

「自分はアパナシーの農園とグレーガーデンの間を歩いてましたが、ちょうど配置替えもかねて戻るようにと指示を受けたばかりだったんです」

「貧乏くじかもしれないとわかって、引き受けたわけか」

「メールマンは兵士じゃない。死ぬことを許さない、サバイバーとなることだ、うちのボスと将軍の言葉です。怪しげな話だからって断ってたら仕事にならない」

「相棒たちは残念だったな」

「彼らのおかげで生き延びることができた……感謝しかないです」

 

 ジモンヤ前哨基地跡の居住地が包囲したレイダーとは会わなかったが、デスクローが腹を空かせてメールマン一行を待ち構えていた。

 

 ハンコックとメールマンが道を戻ると、死にかけた犬とバラモンのそばには大勢の人の足跡が残され。運んできた武器、食料、薬物は消えていた。

 どうやらメールマンとデスクローが姿を消したのを確認してから盗んでいった奴らがいたようだ。追っかけることもできるだろうが――。

 

「追うかい?」

「いいえ。最悪ですけど、預かっている手紙がまだ残ってますし。こいつらの肉も食料として使ってもらわないと無駄死にになってしまう」

「――それも『お前たちを獲物と考える奴らにとって狡猾でタフなサバイバーであれ』ってやつか」

「よく知ってますね、ハンコック。うちのおっかないボスの口癖です。生きて荷物を届けろ、なにより自分の体も含めてって。滅茶苦茶ですけどね」

「いや、悪くないと思うぜ」

 

 レオとアキラの顔が思い出される。

 彼らが時折見せる常軌を逸した行動、表情はまさにその言葉を実践する人間たちだった。ただメールマンたちと彼らの違いは正気を失いかけていて、ブレーキを踏むことができないというだけだ。そのせいで多くを殺す。だけどもう引き下がれない。

 

 

 バラモンと犬の肉をそれぞれ古布に包んでバックにつめるとメールマンは再び立ち上がった。

 

「墓は立てないのか?」

「安らかに眠るように逝ったし、肉はもらいましたから。それにどうせ俺が死んでもこいつらと同じように墓には入らないでしょう」

「その考え方は気にいらないな。

 そこは意地を張って無理やりにでも老衰でくたばって墓で眠ってやると言った方がいい」

「そうですかね?」

「ああ、ひねくれてるくらいじゃないとすぐに死ぬもんだ」

 

 並んで歩きだす2人。

 メールマンはようやくハンコックが担いでいる異形のライフルの存在に気が付いた。

 

「自分は詳しくないですけど。面白いライフルを使ってるんですね」

「ん?」

「長い銃身が4つも合わさっていて、一回ですべての弾丸を発射させる」

「発射音が独特だっただろ?」

「ええ、またおかしな化け物が餌にされかけてるこっちを見て喜んで叫んでるのかと思いましたよ」

「伝説の化け物の声だと言われてたらしい。南から流れてきた一品だったんだが、威力は凄いがでたらめな銃だってことでずっと飾ってた銃だ」

「デスクロー狩りでも始めたんですか?」

「いや……若い相棒に老人扱いされたのがショックでね。舐めるなってつもりでこいつを思い出して持ち出してきた。本当に使えるとわかったのはさっきが初めてだったけどな」

 

 ハンコックは面白そうに肩をすくめていうが、メールマンの顔はひきつっていた。

 つまり彼がハンコックに助けてもらえたのは皮肉なことに彼の運がよかったから、というわけらしい。

 

 グッドネイバーの市長は時間がたつにつれ、自分は島に行かないという選択肢が。実はアキラの望んだことではという可能性に触れてしまい。少し落ち込んでいた。

 危険なファーハーバー島でこのジョン・ハンコックは若造に死ぬと思われてしまったわけだ。ヌカ・ワールドではそうは思わなかったのに、今度は違った。何が違うっていうのか。

 

「――畜生」

「あ?」

「ジョン・ハンコック。どうもあんたには忘れられてたみたいだから言いますけど。俺、あんたをしってるんですよ。元はグッドネイバーにいた餓鬼だったんで」

「そうか」

「覚えて、ませんよね?」

「名前はな。顔は知ってる、それで十分だ」

「本当ですか?」

「――無謀にも俺に自分で使わなかったジェットを持ってきて売りつけようとしたのは、とんでもない馬鹿か頭のすっからかんのアホ、そして餓鬼だったお前だ」

「げっ、覚えてる」

「俺のような立派なグールになれるように、その場で楽しみ方を教えてやった。どうやらまだ肌はすべすべのようだな。(ジェット)はやってるか?」

「教えてもらった通り薬は今も使って楽しんでますが、羽目ははずしてません」

「つまらんな」

「これもあなたが言ったんですよ。『せっかくの商品を誰に売りつけたらいいのかわからないなんて、お前は商売には向いてない』って」

「それは覚えてないな」

「それからは傭兵を目指しました。17で独り立ちして、あちこちの傭兵団に」

「ほう、珍しい。傭兵団を移るのは簡単じゃないだろ」

「ええ、まぁ。殺しには熱心じゃなかったから、厄介払いされてたんでしょう」

 

 それだけではないだろう。

 こいつなら敵に回っても自分たちを殺しに誰かを連れて戻って来たりはしないと信じさせることができたのだろう。

 傭兵家業はレイダー業と紙一重だ。なのにうまくやってきた、それは才能だろう。

 

「で、傭兵からメールマン?」

「いえ、ミニッツメンを経てます。知り合いの何人かが同じように誘われてて、こっちの方が楽しいからって」

「そうか」

「ついでに聞いていいですかね?グッドネイバーにはまだ戻らないんですか?」

「戻るさ。ただ、なかなか休暇をやめる理由もなくてな」

「帰れずに困ってる?」

「そんなところだな」

「勘なんですけどいいですかね?」

「おう」

「シンジンってレイダーは知ってますよね?なかなかの大物ですから」

「んん、それがなんだ?」

「レイダー同士の小突きあいにカリカリして、そろそろ限界じゃないかって噂が流れてますよ」

「そういうのはもう、散々聞かされたがな。まだアイツはピクリとも動いてない」

「それがちょっと違うんですよ――シュラウド騒ぎのことは知ってますか?」

 

 おや?

 

「闇のヒーローの襲撃か?」

「ええ、あれで倒された連中の多くがシンジンの手下だったんですが。そのシュラウドがシンジンの首を狙ってるって噂が流れてまして」

 

 それは聞いたことがなかった。

 だが、本当とは思えない。シュラウドを演じるあのアキラにとってはシンジンはレイダーというだけで殺す理由はあっても、自分から奴の首を取りに行く理由はない。

 

「シンジンをシュラウドが、ね」

「どうも面白くなかったみたいですね、スイマセン」

 

 遠くに前哨基地のある通信塔が見えてきた。

 

「レイダーに包囲はされてないみたいだ」

「だまされたな。いや、誰がだましたのやら」

「どうでもいいですよ。ボスには報告しますし、相棒たちの敵討ちはできないからクソ共には仲間割れでもしてくたばってくれって今夜から祈ります」

「――ああ、それは安心していいと思うぞ」

「え?」

「そういうくだらないことをする奴は俺も嫌いだが。俺達以上にそういう奴らを嫌う奴がこの連邦にはいるからな」

「それは嬉しいですね」

「俺のように不運な今日のお前を救うような奴が、そいつらにもいればいいが。でないとデスクローに追われるよりも怖い目にあうだろうよ、確実に」

 

 自分がグッドネイバーから離れているように。

 レオもアキラも今は連邦から離れているが、帰ってこないわけじゃない。その時は必ずやってくる。

 

 このくだらない騒ぎで自分たちはミニッツメンや居住地からひと財産奪ったと喜んでいる馬鹿共よ。その計画がちゃんと逃げるところまでしっかりしているか確かめるべきだったな。

 今夜はいい夢が見れるだろう。

 しばらくは天国のような生活を過ごせるかもしれない。だが恐れたほうがいい奴らは必ず自分の住処に戻ってくるものだ。

 

 その時まではハンコックは大人しくしていればいい。

 レオもアキラも、好きにどこかの小島でなにか好きなことをやっておけばいいのだ。 




(設定・人物紹介)
・パラディン・レーン
オリジナルキャラ。
この女性、前回の登場を覚えている人がいるといいのだが。

・缶詰工場
原作ではクエスト「Mystery Meat」で登場する。

・セオドア・コリンズ
缶詰工場のオーナー。
原作ではB.O.S.ではなく、主人公と対面し。最悪、戦うことにもなる。

・状況はより深刻なもの
皮肉なことにこのエピソードは書き始める前から予定されていたものだったので、今の世情をみると躊躇われるものがあった。

・空輸計画
以前にキャピタルの様子に触れた際、キャピタルB.O.S.に触れたがったが削除した。当時はB.O.S.とミニッツメンを敵対させるわけにはいかなかったが。
今回、復活させた。

・サラ・リオンズ
前エルダー、リオンズの娘。死亡している。

・個人的に深い関係
ちなみに原作にニシャとゲイジの関係について、はっきりとした証拠はない。
でもあの仮面の下を見るとね。そう思わない人がいるだろうか?いない!(断言)

・泥船のジョン
元スカベンジャー。義兄弟のブタ鼻に引っ張られてレイダーとなってしまった。
ちなみにブタ鼻はミニッツメンとの戦闘で死んでいる。

本当はこの後、トミーが彼の生い立ちを聞いてやるシーンがあったのだが。あまり楽しい話でもないのでカット。もしかしたら後で取り上げることもあるかもしれない。

・秘蔵のライフル
ハンコックが以前にグッドネイバーの自室で飾り物にしていたライフル。

Fallout76に登場したライフル、ドラゴンである。
単発での攻撃力がアパラチア最高峰、4つの銃身なのに消費する弾丸がなぜか1発という壊れ武器にしか思えないが。一発で倒せないと絶望、壊れやすさもマックスと嫌われる要素しかない。

そしてハンコックのこのライフルもあの一発だけで壊れている、かもしれない。

・墓は立てないのか?
メールマンは結局、放っておいた模様。
ハンコックの助言もおそらくだが聞くつもりはないのだろう。

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