次回投稿はまだ未定。
メタルアーマーを装備した男が周囲に気を配りつつタイコンデロガに戻ってくると、レールロードの仲間たちはそれを囲んで迎えた。全員の顔色は悪い。
「それで、なんだった?」
「――思った通り、レイダーだよ。抗争が激しくなってるみたいだ」
建物と地面を揺らす騒ぎは、ボストンコモンが中心地だったのだ。とりあえず人造人間たちには「心配ない」とこれで説明はできる。
最近、ミニッツメンへの手だしが難しくなったとようやく理解したらしいレイダーたちだが。そこにあのB.O.S.の部隊が近づいてきて小競り合いを起こしている。
風の噂だが、なにやらあのB.O.S.は調査をしているという。
何の調査をしに来ているのやら――。
「――ディーコンの奴、大丈夫だろうか?」
「ま、北に行くと言っていたからな。騒ぎがあった南側のボストンじゃ、反対方向だ。心配はないさ」
「そうか。そうだといいけれど」
いまや2人しかいないレールロードのエージェント。そのひとりであるディーコンがここにいつものように前触れなくふらりと姿を現したのが早朝だった。
本部からの指示だと言って、驚いたことに15人もの人造人間を逃がすという。いきなりのことにタイコンデロガが少しばかり騒がしくなったのは無理もない。
そんな大きな計画があることなんて知らされてなかったし。それをディーコンが引き受けたというのも驚きだ。
ディーコンはすぐにも動くというが。
こんな聞いたこともない話なら、本部に問い合わせたほうがいいという意見も多かった。
だが結局、完全な納得はできないものの「急いでいる」と繰り返すディーコンと、現在のレールロードの難しい状況を考え。本部の指示を信じて早急に送り出せる15人を数時間で選び出し、送り出したばかりだった。
列の先頭にディーコンが立ち、その後ろを実に不安そうな集団が付いていく姿は。見送ったほうとしては実に不安で、あんなのをレイダーに見られたらオシマイだと後悔し始めた矢先の騒ぎに動揺してしまったのだ。
「とにかく。とにかく、だ。ディーコンは恐らく無事だ、人造人間たちも。
俺たちは頭を切り替えないと。また新しい受け取りがあるってハナシだっただろ?」
「ああ。バンカーヒルから新しく2人」
「インスティチュート、レイダー、スーパーミュータント。それにB.O.S.もいる。ディーコンの心配ばかりしているわけにはいかないぞ」
レールロードの本部は要求ばかりしてくるが。こちらがのぞむ増員を求める声にまったく反応はない。それどころかレールロードから離脱するメンバーが出てきている噂が巷で広まっている。信じたくない話だ。
それでも――それでも人造人間を助けることは間違っていないという信念は曲げられない。
ディーコンが率いる集団は、この時。なぜか町を出たところにある橋の上で立ち止まっていた。
ここまでは予定通り”あらかじめ掃除”していたこともあって、この集団に近づいてくる存在はない。そしてありがたいことにタイコンデロガを出てからついてくる”レールロード”のメンバーもいなかった。このディーコンはそれを一番心配していたのだが、無事に任務の難しい部分をやり通せたようだ。
彼はいきなり腕を天に向かって突き上げ。指先をくるくるとまわして合図を出す。
すると橋の反対側の草むらから何かが出てくる。
草木をへし折り、ステルス装置を解除するのはあのエイダとローグスと名付けられたアキラのロボット部隊。そしてもうひとり、シルバーシュラウドの姿で顔を隠す女性がひとり。
「追跡はない。任務を仕上げよう。コペナントへ」
「了解、コペナントへ」
ディーコンの言葉に女シュラウドは答え。するとロボットたちは再びステルス装置を発動して姿を消していき、ディーコンは再び先頭に立つと集団を導いていく。
そう、あのコペナントへ。
――――――――――
レオの暗殺、それを目的として動く”小さな宝物”のクロダとキジマの元に。
あのサカモトから短いメッセージが届いた。ただ一言「ファーハーバーに上陸した」とだけ。
他に何もない。
それが気になって2人は顔を見合わせる。
3日前、レオとアキラが仲間を引き連れて島に来ていることはすでに2人にはわかっていた。
だがそれをあのサカモトがわざわざ遅れてしらせてくるのは、何か理由があるからではないのか?
そう思い至ったことで、この島で唯一。人が住める場所となったファー・ハーバーの港へ向かうことになった。
が、近づいて遠くにファー・ハーバーの港が見え始めると2人の足が止まり、進めなくなってしまった――。
それは港の隣にある、小さな小屋がひとつあるだけの小さな島だったと記憶する場所だった。
だがそれはもうここからでは見えない。
そのかわりに砦が港の隣にあるではないか――。
恐怖というものをあまり感じない2人の背中に冷たい汗が流れ、呼吸まで荒く乱れた。
ありえないことがおこってしまった。とりかえしのつかない事が、同じ速さで動いていると思っていたのに。すでに大きな差がうまれてしまっているという現実。
「恐ろしいものでしょう?アキラは」
「……サカモト」
「お前、来ていたのか」
2人の言葉に反応せず。木々の間からいきなり現れたサカモトは、いつものように笑顔を浮かべ。同時に呆れたように遠くに見える砦を顎で指さした。
「無理に近づこうと考えないほうがいい。我々はもう、あそこには近づけませんよ。港もです」
「なぜだ?」
「アキラがあそこにいるからですよ。今の彼は、以前に捕らえた時とは別人ですよ。我々が近づけば恐らく”匂い”で嗅ぎ分けられてしまいますよ」
サカモトの言い方が気に入らず。馬鹿にされていると思った2人は鼻を鳴らす。
「つまらん冗談だな」
「どうでしょう」
クロダはサカモトのほうへ体を向ける。
「俺が。いや、俺たちがあきらめていないことを知っていたか。だが止まるつもりはないぞ」
「ミニッツメンの将軍暗殺。それが叶うなら、コンドウも浮かばれるでしょう。が、彼のそばに今。アキラがいることを忘れないでもらいたいだけですよ」
「つまり、アレにはまだ手を出すなということか」
「キンジョウを喜ばせたいならまとめて始末してみればいいと思いますがね。ただ思うんですが、簡単ではない仕事を、自分でさらに面倒にして失敗してはあなた方の名前が泣きますよ」
『……っ!?』
彼の言葉はすでに2人が失敗するのを見越したもののように思えた。
2種類の冷たい視線が交わされる。が、すぐに穏やかな空気が戻ってくる。
「お前は何でここにいる、サカモト」
「仕事があるからいるのです。あなた方と同じです、忙しくなる前に顔合わせをしようと思いましてね。
これからは簡単には会えないでしょうし。助けてもあげられない」
「そうだな。全てが終わればそういうことになるだろう」
「ちょっと待て!結論を出すのは早いだろう。もしかしたらともに協力ができるかもしれない」
「キジマ――それは虫が良いというものです。
私はね、あのキンジョウをアキラと呼んで拝み奉るような未来には絶対進みたくありません。その危険性を冒してここにいる君らと仕事はできない。
もう止めはしませんが、お互いが邪魔をしないようにはできるでしょう。そこだけ約束しませんか」
「キジマ。結論は出ている。俺の計画は変わらないし、俺ともやれないならお前とはここで別れる。ただそれだけだ」
顔をゆがめて沈黙するしかなくなったキジマにサカモトは苦笑し。「ほらね」というように両手だけ広げ。背中を向けると別れの言葉も口にせずに霧の中へと消えていった。
「たった3日」
クロダもキジマもいつまでもその背を見つめはしなかった。
かわりに遠くに見える、あの海に浮かぶ砦を見てつぶやく。彼らの予想をこえ、足を速くせねば追い付くこともできないままこの島でやれることは何もなくなってしまうかもしれない。そう、初めて感じた。
――――――――――
かつてロングフェロー氏の自宅があっただけの小島は、数日でちょっとした砦に生まれ変わらせることができた。
今では島を囲む壁と、新しく3つの建物が加わっている。
ひとつは宿舎。
今は僕らの寝起きする場所となっているが、将来的には別のものになるはず。新しい住人のための共同宿舎だったり、ホテルってのも悪くないかも。誰が客に来るかはわからないが……。
ひとつはアメリア商会。
ストックトンの娘、アメリアが作るこの島と連邦をつなぐルートを開発する店として用意した。
バラモンを世話する小屋に小さな事務所、本人の部屋に社員のための宿泊施設。彼女は今、こことハーバーを商売しながら繋ぎつつ。そこに新たな社員にならないかと探している。
最後が砦の防衛施設。
敵の接近に反応するサイレン、反撃システムはここで管理される。
そして今日はそのテストをおこなう。
これが成功すれば、僕のこの島に来て最初の大仕事は終わる。
端末機にへばりつき、システムチェックで苦戦する僕の隣に立つレオさんは改めて島を囲む壁を見回し、苦笑いを浮かべた。
「それにしてもたった3日だぞ、アキラ。それでこれは驚くしかないな」
「そうですか?話は聞いてましたからあらかじめ用意してたし、ニックの地図も役に立った。資材も用意してあったから組み立てるだけ、問題ありません」
「本気で言ってるのかい?」
「……大昔の日本では、たった一晩で砦を作り上げ。国を攻め落とした英雄がいましたよ。それに比べりゃ、このこうらい。たいしたことはないです」
「一晩!?それもまたすごいな」
とはいえ、この小島を砦と呼ぶには少し大げさだと自分では思ってる。
確かにファー・ハーバーの港側には壁を隙間なく並べはしたが。その反対側は適度に間をあけて壁を配置してある。この場所へ近づく敵を引き込むためにそうしたのだ。
援軍も補給も心もとないここでは、コベナントのように壁で囲ってもしょうがないという事情もある。
「それじゃ、テストを開始します」
「ああ。楽しみだ」
手動で警告を出すよう命令を下すと、建物の外でサイレンが鳴り始めた。
島の沿岸部、岩場に身を隠していたマクレディたちは後方からの警告音を聞き、これが時間が来たという知らせだと理解した。
これから一発、それで大騒ぎというわけだ。
ライフルの調子を確かめていると、隣に立つ――ディーコンが皮肉めいた笑みを浮かべて愚痴をこぼす。
「まったく、まさかこんな島に来て頼まれた最初の仕事が餌になれ、とはな」
「傭兵ならいつもの話さ。盾になれってね、ついでにそういう時はたいていが使い捨てだ」
「お互いにつらい立場ってわけか。よろしくな、相棒」
「そうあんたを呼ぶにはまだ少しばかり早い気もするが――」
言いながらマクレディはライフルを――新たに渡されたガウスライフルのリコンスコープをのぞきつつ、エネルギーチャージを開始した。
「お友達ってところから始めようぜ」
「わかった。なにごとも最初があるさ」
いつもの使い慣れた308口径弾とは明らかに違う衝撃が全身を走り、スコープの中のマイアラークが一発で粉々になって砕けた。
――なるほど、50口径にも負けないわけだ
それから数発、2人は沿岸にあったマイアラークの巣に向かって発砲すると。背中を向けて脱兎のごとく逃げ出す。これも計画通り、あとはあの島まで行けばいいだけだが――その前に追い付かれたらヤバいことになる。
遠くでサイレン音が聞こえると山の中にいるパラディン・ダンスは思わずライフルを構えてしまう。
かつて連邦で味わったいくつもの苦い記憶がさせる行動だが、今の同行者たちにはそれがないらしい。
ケイトとかいう女傭兵は、さきほどから石を拾い上げると鎖を巻き付けた鋼鉄バットを振り回すことではじいて遊んでいる。あの音が聞こえないのだろうか?どういう頭をしているのだろう?
「おっ、今のを見た?あたしの”ベースボール”、大したものだと思わない?」
「ひとつ聞かせてほしい。あの音は聞こえているだろう?何を考えている」
「あれね、ちゃんと聞こえてる。どうせアキラたちがおっぱじめたってだけのことじゃん。あんたも説明、聞かされてたと思うけど?」
「むろんだ。作戦のチェックは極めた重要だ。作戦中に間違えば、それは笑い話ですむことではない」
「それはわかる。なら余計に心配はいらないんだよ。
どうせ大変なことになるのはこの後なんだから。防衛システムとやらのテストって言ってたじゃん」
「君は自分の上司を信頼している、ということか?」
「どうかな。どっちかというと、この後に待っているパーティにストロングを残してあたしをはずしたってのが気に食わないだけかも」
「ストロング――あのスーパーミュータントのことか」
「まだそれ、言ってるの?別に間違いじゃないけどさ、ストロングが怒ってあんたを八つ裂きにしようとしても。あたしは別に助けてやらないからね」
「――私よりも、君はあのスーパーミュータントを信用するというのか」
「初顔合わせのあんたと違って、あっちは一緒に戦って寝泊まりもした仲だしね。当然でしょ」
「ううむ」
ダンスは自分の頭部に軽いめまいと痛みを感じる。
この旅はいささか刺激の強いことばかりが待っているようだ。
この3日間、小さな島が砦へと変貌する間。
パラディン・ダンスはレオとアキラの頼みでDr.キュリー、このケイト、そして犬と共にこの島の生態調査につきあわされている。
連邦に負けず、ここが危険な島であることは間違いない。
これまで3度マイアラークの群れに出会ったし、見たことのない巨大な生物――ケイトによると地元ではガルパーとよばれているらしい――とも戦った。
だが一番に問題だったのは、トラッパー呼ばれている地元のレイダーもどきだろう。
今までの戦場ではそれほど見ることのない。殺されるために殺しに来る、そんなノリの奴らが群れで襲ってくる光景は最初こそ体を震わせたものだったが。
市民であるはずのケイトと犬は喜んでこれを迎え撃ち、死体に変えていく様には困惑させられたものだ。
というより、レオが紹介したアキラとやらの連れは変な奴らが多すぎる気がする。
まずこのケイトという女性は傭兵とのことだが。仕事ぶりが雑すぎて、兵士というより。騒ぎが始まるのを待って、ただ暴れてるだけにしか見えない。
さらに興味を引くのはもうひとりの女性だ。
「あー、それでDr.キュリー。調査のほうはどうだろうか?」
土地の生態系を観察し、採取を繰り返しているキュリーは集中しているのか。野山に入ると、途端に無口になるので怯えないようにダンスなりに気を使い、こうしてたまに話しかけるようにしている。
同じ部隊として行動したスクライブ・ヘイレンとの関係から学んだことだったが。こちらも少し変わっているようで、あの警告音に気が付かず。怯えた様子などかけらもなく。むしろ興奮気味に何かを語り始めた。
「はい、やはり地元の人たちが言うように。この霧には放射能以外にも人体に影響ある別のものがいろいろと混ざっていることは間違いないようですね。それらの影響を受けた植物、動物から何かわからないかとても――え?」
「いや、すまない。仕事の邪魔をしただけのようだ、続けてくれ」
「すいません。色々と驚きが重なってつい……気をつかってくれたんですね」
「君には余計な気づかいだと学んだよ。正直に言うと、君ならスクライブとしての資格は十分以上にあると思っているんだが。B.O.S.の活動には興味はないかな?」
おそらくダンスはただキュリーの熱意や勇気、好奇心を誉めたかっただけなのだろうが。なぜか最後に勧誘してしまい、お互いの間の空気が妙なものになってしまう。
ダンスは自分の話術の拙さを理解し、あわててとりつくろうように
「いや、その、困らせてすまない。ただ、君に敬意を示したかっただけなんだ。おかしなことを口にして困らせてしまったかもしれない」
「はい」
「だが――とりあえず口にした以上、聞いておきたい。どうだろう?」
「私が、B.O.S.の活動に参加するって話しですか?」
「ああ」
レオという人材のスカウトに自信がついたのか。ダンスは珍しく積極的な姿勢を見せていた。
だがキュリーは悩むことなくダンスにこたえる。
「お誘いは嬉しいのですが、できません。
私には医療学者としての使命があります。それは特定の集団に対して恩恵を与えるわけではなく、より多くの人々に与える利益であることが重要なのです」
「こんな世界であったとしても、か?」
「だからこそ多くの人を助けたいと思っています。それが難しいことはわかっていますが、不可能ではないことを私に教えてくれた人のためにも。考えは変わらないと思います」
「わかった。私も君の強い意思を尊重しよう。そして君の安全を私が保証しよう」
「ふふっ、心配はしていませんよ。ケイトもいますし、カールもいます。あなたまでいるんだから、私は安全です」
「う、うむ」
横目で自分の同僚を見やる。
近くの木の幹に小便をして、座って大あくびする犬。
小石を拾っては黙々とべーすぼーる、とやらをやっているケイト。どうもDr.キュリーからも自分はあれよりも頼りにされてないような気がして、不安を覚える。
遠くから聞こえるサイレン音に交じり、爆発音も聞こえてきた――。
逃げているマクレディとディーコンの背後に怒っているマイアラークたちが迫っていた。
いくら距離をとっていたとはいえ、人の泳ぐスピードでは海中を進むマイアラークを振り切ることは難しい。
へとへとになって砂浜を走りだすころには、マイアラークの体は海中から半分姿を見せていた。
彼らの前方にあるのは視線を遮るように配置されたコンクリートの壁――その隙間を必死になって駆け抜けていくと、逃がさないとばかりに爪を振り上げたマイアラークも追って角を曲がろうとした。
その瞬間。複数のターレットの起動音。複数の光線がマイアラークたちを襲う。
前方を走るマクレディらの頭上を、いくつもの強力なレーザーが集中して放たれていた。
吹っ飛びながら別の壁に叩きつけられ、粉々になっていくマイアラーク達。
それは情け容赦なく、徹底的に破壊しつくしていた。地面には砕かれた脚。顔や殻がばらばらにされ飛び散る。
「おーい、こっちまで頑張ってこいよ。そうすりゃ仕上げを一緒に見れる」
レオ、ストロング、ニックと並び。レーザーに間違っても撃たれたくないと這いつくばって進んでいる2人にのんきにアキラが声をかけた。
「アキラ。あの糞野郎」
「マジでムカつく」
歯を食いしばりつつ、無視して這って行くとアキラが手助けしようと手を差し伸べてきた。2人はそれを思いっきり握りつぶすつもりでつかんだのだが――若者は顔色一つ変えやしない。こういうところが本当にかわいくない。
「お疲れ、テストは成功で終わりそうだよ」
背後ではおびき出されたマイアラークの刈り取りが始まっていた。
壁から出たらレーザーでハチの巣にされる、そう学んだマイアラークは壁の裏でじっとしていたのだが。そこに強烈な炎がふりまかれた。
「火炎放射器ターレット、3門用意してる。火力が強すぎて20秒ほどしかつづかないけど、数分で自動給油するから使えはずだ」
高温であぶられて動かなく仲間から、火から逃れようと砂浜を走って再び海を目指したマイアラークたちだが。
火が消えるとまたもや壁に戻ろうとする。
「やはり戻るか。なら逃がさないよ」
「――マジか」
背後から不穏な機械音に続き、アキラの言葉にディーコンがうめく。
「改造したミサイルターレットにグレネード?どこから用意したんだ」
「ベヒモスをつれたスーパーミュータントを想定したんだ。こんなもんでしょ」
「そんなわけあるか」
壁の向こう側から聞こえる爆発音の数々は、哀れなマイアラークたちへの派手な鎮魂歌だった。
「さて、確かめに行かないとね――ストロング、一緒にどうだい?」
「……タイクツ ハ オワリカ?」
「もちろん。残ってたら全部、君にあげるよ」
「ワカッタ、行ッテヤル」
マクレディらは付き合いきれるかとその場で寝ころび、アキラたちは砂浜へ。
残されたニックは「やれやれ」と口にしながら煙草をくわえる。
「レオ。あとでいいんだが、酒場に行って小屋の住人と話してやってくれないか」
「ロングフェローのことか?」
「ああ、奴さん。こんなひどいことになるとわかってりゃ、俺たちがここで寝泊まりすることを許可しなかったと嘆いて昨日から戻ってきてない。今のデモンストレーションを見せられたら、今度こそ出て行って。俺たちがこの島を盗んだってことにされちまいそうだ」
「それはまずいね」
レオは苦笑いする。
だがニックは笑えなかった。
たった3日だ。
この島で不可能とされることのひとつを、この2人はさっそく実現させて見せたのだ。
――――――――――
「では最後に――連邦の人々になにか訴えたいことなんかはありますか?」
「は?んなもんねーよ。
俺の姿を見えねぇのかよ。昼間っから漁にも出ないで酒飲んでる。それをとがめる馬鹿がどこにいる?どこにもいないさ、あんたぐらいのもんだ」
「別にそんなつもりは――」
「なら、酒場に来てちゃんと酒を飲んで。酔っぱらうんだな、姉ちゃん。素面の言葉はシラけるだけだぜ」
「ありがとうございました」
ファー・ハーバーでのパイパーの取材はこんな感じばっかりだった。
なにか困ったことはないか、と問えば。お前が邪魔だと言われ。
何が必要なのか、と問えば。キャップと酒場で十分だと言われる。
ベットの相手をしろ、などとふざけた答えが返ってこないことが唯一の救いだが、おそらくそれは初日のケイトのKO劇が関係しているのかもしれない。
この島での自分たちの存在があまりに異質すぎて、誰も近づいてくれるなと言われているみたいだ。
こんな経験は久しぶりだ――。
「ああ、ミス・ライトではありませんか」
「コズワース?こんなところでなにしてるのさ」
港に”元の”姿に戻ったコズワースとばったり出会ってしまった。
「ミス・アメリアと合流するためです。彼女との約束が、荷物を持ち帰るという――ああっ」
「なっ、なになに?」
「お願いです。助けてほしいのです」
「どこか壊れてるってこと?私なおせないよ?機械、得意じゃないし」
「違うんです。私、私は悲しいのです。苦しいのです。話を聞いてほしいだけです」
「ハナシ、だけ?」
「はい。それだけ、お願いします」
聞き耳とおしゃべりのパイパーに聞き役を頼むなんてさすがロボットだ。人間なら絶対にしてくれない。
だからこそコズワースの願いはかなえてやることにした。
「いいよ。なんだい?」
「今の私を見て、どう思いますか?」
「どうって……元に戻ったね。小さくはなった」
「そうなんです!元に戻されてしまいました!ガッツィー軍曹ではない私。元の私!」
「それが――それが悲しいってこと?」
「それです!まさにそれなのです!」
島に来る際、大勢が船に乗るとあってアキラは早々に自分のロボットであるエイダを連邦に置いていくと言っていたが。コズワースはかたくなに主人と離れることを拒否した。
意外だったのは2人は早々に説得をやめたこと。その代わりに彼に与えた2本の太い腕と、大きな4脚が奪われ。箱詰めにされてこの島にやってきた。
彼が目を覚ました時、あったのはひとつしかない目と元の3つのアームだけの姿に。
さらにレオからは前線ではなく後方に下がってくれとーー。
今のコズワースはゴミ拾い、お手伝い、荷物持ち。
あまりといえばあんまりなこの仕打ち。あの巨大な太い腕が、あの足があれば自分もアサルトロンのエイダのように戦える。それをとりあげるなんて――。
「うーん、でもブルーは何て言ってるの?」
「――今は助けてくれる人たちが多いので、支える側に回ってほしいのだと」
「それは間違ってないんじゃない?実際、大勢でこの島に押し掛けてるからねぇ」
というより、かつてない大所帯ぶりは肩書を並べると驚くばかりで。おそらくは本人たちはまだしらないこともあるだろうが、B.O.S.だのレールロードだの、人造人間にスーパーミュータントがいるのだ。
この島ではなく、自分たち自身がいつ大きな騒ぎの元凶となってもおかしくない顔ぶれが一ヵ所に集まってる。
「ブルーの言っていることは間違っていないと思う。それにあなた、もうすでに小さな島をとんでもないものにして見せたじゃないの。きっとそれをみてブルーは安心できたんだよ」
「そう、なのでしょうか?」
小さな砦は、コズワースらロボットの手で完成されたものでもあった。
「どうしてもというなら、アキラに相談するしかないね。なにかうまい方法、考えてくれるかもよ」
「わかりました。ご主人様の期待に応えられるよう、今はできることをしたいと思いいます」
素直に返事を返すコズワースに、パイパーは思わず力のない苦笑いをする。
「どうしましたか?なにか、可笑しいことでもありましたか?」
「いいや、違うんだ――人も君のようなロボットくらいに素直であったらなって思ってさ」
パイパーはそう答えると ファー・ハーバーの港の中を見回しそこに住む人々を見回す。
「ブルーの言う通り、ここにいる人たちに助けは必要なんだ。でも、彼ら自身はそうは思ってない。
希望を失ってしまっているんだ。自分の気に入らないことは聞きたくないと思っていて、触れられたくない。ここに住んでいるみんながそうなんだ」
「希望がないのはわかります。ひどい場所ですからね」
「そうだね――こういうことはダイアモンドシティでも見る光景だよ。
でもね、ここは本当に悪いんだ。すぐに何とかしなくちゃならないはずなのに」
誰も何もせず。助けを口にすることもなくなってしまっている。
「どうしましたか?」
「コズワース、ブルーは私たちが考えている以上に難しいことをやろうとしているのかもしれない。ここに来たらそれを強く感じたよ。でも……それならどうしたらいいのか。私には全く思いもつかないんだよ」
希望はない、生きることすら放棄しかけている人々に勇気を与えて奮い立たせる。
おそらくそうするしかないだろうが。言葉だけで彼らを動かすのは難しい。
「どうやら私はつまらないことを悩んでいたのかもしれませんね。考えを切り替えようと思います」
「何ができるかわからないけど。ブルーのために、お互い頑張ろう」
晴れることのない曇り空が、そんな未来への不安をみせるように厚く天を覆っていた。
――――――――――
テストは終わったが、僕はまだ防衛システム――防御壁とターレットの再チェックをしていると。
珍しいことにあのディーコンがヌカ・コーラを手にやってきた。瓶は渡してくれたが、直後の言葉からどうも仕事をねぎらいに来たわけではないらしいとわかる。
「やれやれ、いきなり親友からはっきりと餌をやれと要求され。殺されかけるとは思わなかったんだがな」
「撃って、泳いで、走るだけのお仕事だっただろ?危険はなかった」
「マイアラークの巣にむかってぶっ放つことが危険でないとは初耳だ」
「文句は聞いた。それで本当は何?」
短い間でも友人とお互いが口にできるくらいには信頼関係を築いた者同士。
ディーコンがなにやら話したいことがあるというのを僕はなんとなく察知していた。
「この調子で俺がうっかりこの島でくたばった場合。約束は反故にされるんじゃないかと不安でね」
なるほど、ミニッツメンで引き受ける人造人間たちのことが気になっているわけか。
「それについてはもう解決した。終わった」
「終わった?」
「怒らないと約束してくれるなら話してもいいよ。ダメなら黙って、あと死ななければわかるよ」
「それでも教えろといったらどうする?」
「答えない。その時が来るまではずっと、黙ってる」
「……殴りたくなるような返事だな。わかった、どういうことだ?俺が驚かない程度に話してくれ」
約束したってことだよな?なら、構わないか。
「ミニッツメンが引き受ける人造人間たちはもう、タイコンデロガから移動したから問題ないと言ってるんだよ」
「?」
「ナカノ邸でお前と合流したとき、デズデモーナからの指示書を渡してもらったろ?
実はあれは連邦に置いてきた。計画通りに進めば、アレを持った仲間がタイコンデロガで人造人間たちを引き取っているはず」
「お前の仲間だと?
おい、あそこは誰でも遊びに行ってもらいたくはない場所なんだぞ」
「そんなことはわかってる。それに問題はないよ。だってあそこに向かったのは誰でもない、お前。ディーコン本人が向かってやったことだからね」
「俺だって?意味が分からないんだが」
「――だからさ、言葉の通りだよ。
以前、保護した人造人間がいたろ?その片方の顔と体を変えて、別のディーコンになってもらった」
「なんだと!?」
「一緒に行動したからお前を知ってる。ぼろが出ないように長くは滞在しないはずだから、応対したレールロードのメンバーにはバレなかったはずさ」
「以前の奴らも保護してくれといったはずだがな。おもちゃにしてくれという意味じゃなかったんだがな」
「協力をしてもらっただけだ。危険はないし、ディーコンのためにもそうすべきだった」
「……」
「15人もの人造人間を連れ出すなんて知ったら、デズデモーナもキャリントンも許さないかもしれない。そう考えなかったわけじゃないだろ?」
「俺を守ってやったと言ってるのか?」
不愉快そうなディーコンの声に苛立ち、僕は端末のおかれたテーブルに強めに瓶を叩きつけて抗議の意を示す。
「レールロードのエージェントが馬鹿を始めたと思ったら、どんな反応があるかわかったもんじゃない」
「仲間に裏切られる?この俺が?」
「お前を捕まえたデズデモーナが、優しく質問だけすると思ったらこんな段取りは用意しなかったさ」
わずかな緊張の沈黙は、ディーコンのため息で終わりを告げる。
「まだ
「レールロードのためにしてやることで、つまらない疑心暗鬼で足を引っ張られるのは嫌なんだ」
「もしもキャリントンらが俺の偽物を逮捕したらどうするつもりなんだ?」
「そうはならないことを祈ってる。真面目に答えると、その時は人造人間であることと僕の名前を出すように言ってある。『信用ならないレールロードへの保険だ』とも加えてね。その言葉も信じないなら、レールロードは人造人間を助けられる組織じゃなくなったってことさ」
「わかった――それなら渡されたという人造人間たちはどうなる?」
「コベナントに回収して、集団の中でちゃんとやっていけるかどうかで3つのチームに分けることになってる。そのあと居住地にわけて送り出す」
「悪くはなさそうだ」
「――あとでゴチャゴチャ言われたくないから話すけど、チームのひとつはグールの居住地になる。レオさんがアトム教がいた灯台を手に入れたんだ」
「つまりそこに入るのは、グールにさせられるってことか」
「正確にはグールとして生活してもらう、ただそれだけの話だよ」
「……」
「ミニッツメンはレイダー、スーパーミュータントに並んで人造人間も嫌ってる。居住地の中に人造人間が混じっていたなんて騒ぎは最悪だ。引き受ける以上、危険は避けさせてもらうよ」
「わかってる。ぜいたくを言ってお前やレオを困らせたりはしないさ」
「彼らは守るよ。約束だ」
ヌカ・コーラを口に含む。慣れた刺激が咥内を刺激し、体の中へと流れ落ちていく感覚を楽しむ。
「お前が約束?ふむ」
「なに?」
「おかしなことを聞くんだが――レオはまずい立場にあるのか?ミニッツメンで」
うわっと、嫌なところをつついてきた。
「別に。なんでそんなことを?」
「ただの好奇心だ。そうだ、好奇心と言えばもうひとつ。本当のところ、お前もどうなんだ?」
「だからなに?」
「レールロードに戻るつもりはないんだろう?だからそんな言葉で俺を喜ばせようとしている」
「――エージェントは勘も鋭くさせる必要があるんだっけ?先生からの嫌な教えだったな」
「ああ、だがそのおかげですんなりと話を進めることもできる」
自分は少し気が抜けているのだろうか?仲間の事、キュリーの事、それが僕を弱くしてる?
いや、そうではないか。
このディーコンはそもそも他人を信用してない。だからこそ、気になる部分をつついて大きなものまで嗅ぎつけてくるだけのこと。全てを隠し通せるわけじゃないってことか。
「最初の質問。レオさんは問題ない。でも、レオさん以外のことでこの先トラブルはある、かもね」
「ほう」
「理由のひとつはわかるだろ?
ここにはあの伝説のガ―ビーがいない。それにレオさんがこの島でやろうとしていることが成功すれば、間違いなくミニッツメンから気を悪くする奴が出てくる。『まだ連邦はひどい状況なのに、滅びかけた島なんか放っておけばいい』ってね」
「ふむ、正義の味方も非情な意見をもっているということか。お前はどうなんだ?」
「どうだろうね。立場は悪くなってるかもしれないけれど。僕は今、ミニッツメンをまだ支持してるし。まだガ―ビーも僕を逮捕するとか噂は流れてないみたいだね」
「だがお前はここに来る前に大物2人を怒らせたな。ここにいないのはガ―ビーだけじゃないだろう。ジョン・ハンコックもここにはいない」
「そうなるように仕向けたのは否定しない。でも、偶然だよ」
これは嘘だ。
ガ―ビーにはミニッツメンの仕事を放り出されては困るし。ハンコックは興味があるってだけでこの島に来られても、この島の連中を見たらレオさんがやろうとしていることが気に食わないと言い出しかねない。
なによりグッドネイバーの市長に死なれたら、あの町はどうなると思う?
「それと僕とレールロードの件」
「そいつは特に聞きたいことだった」
「……戻れないかもしれない。レールロードには問題が多すぎる」
視線をあげてまっすぐにディーコンを見ていった。
「例の、お前を怒らせた人造人間達のことか?それともお前を見捨てたボスたちが許せいないか?」
「うーん、そういう話でもなくてさ――」
不確定の状況、推測だけを並べたくはない。
とはいえ抜けている穴は、塞げないし見えるくらいには大きい。それをどう納得してもらおうか。
「ディーコン、今の僕はミニッツメンが主軸になってる」
「ふむ、確かにな」
「
「大物2人を怒らせた本人の言うセリフがそれか?」
「そうじゃないんだって……僕とレオさんはここから連邦に戻ると、おそらく大きな問題が発生するはず」
「何がある?」
「確実なことは言えない。僕はP.A.M.じゃないんだから」
「じゃ、わかることだけでいいさ」
「ミニッツメンと距離をとる。最悪、離脱するかも」
「そりゃ――マズいだろ。マズくないのか?」
「別に。それを理由にレールロードに戻っても良かったんだけどさ」
「できないのか?」
「……例の人造人間たち」「ああ」
「あれの本当の問題は。僕のコベナントを襲撃した後。レイダーとつながりのあるやつらと一緒に姿を消したってことだ。おそらくすでにレイダーとなって連邦で活動してるはず」
「そうかもな」
「そうなんだよ。ところが、だ。あの連中がスーパーミュータントにでも食われてくれたらいいが。最悪なことにB.O.S.かインスティチュートの手に落ちるかもしれない可能性がある」
「おいおい」
「特に情報が盗まれた形跡はなかったけれど、調べなかったとは言い切れない。僕はここにいなかったんだからね。
レールロード本部の情報は残してなかったけれど。ミニッツメンがレールロードとつながってるとか思われても困るんだ」
だがそんな僕の訴えをデズデモーナが気にかけはしないだろう。
せいぜい、レールロードによい盾ができたと喜んでもおかしくはない。
それでもしつこく追跡を続ければ、それはレールロードの考えに逆らっていると糾弾されてしまう。
なんであれ自分たちがインスティチュートから解放した人造人間を追うことで、逆にインスティチュートに彼らの情報を与えるつもりか。などと言い出す奴らを殴り殺さない自信が自分にはない。
「ミニッツメンに迷惑はかけたくない、板挟みか。確かにそれはつらい状況ではあるな。で、本当のところは何だ?」
「……説明しただろ」
「ああ、ひとつだけな。だが他にもあるんだろ?隠さないで話してみろよ」
ああ、このハゲ!
髪の毛を植毛した後で頭皮ごと引っぺがしてやりたくなる!
「確かにある。でも話したくない」
「怖がるなって。俺は優しいだろ?」
「気持ち悪い――わかった。イイよ話す」
聞いてお前も真っ青になっちまえ。
「デズデモーナが話さないからだ」
「なんのことについて?」
「レールロードによるインスティチュート壊滅作戦のことだよ」
期待していた無表情はそのままで、ディーコンの顔色も変わらなかった。
そのかわりに空気が重くなり、饒舌だった男は沈黙した。だがもう遅いぞ、お前が知りたがったんだからな。
「レールロードは――デズデモーナは間違いなくインスティチュート壊滅の算段を進めているはず」
「なんでそれがお前にわかる?」
「ディーコン、薄々は気づいているんだろ?
僕は裏の世界に情報網をもっている。ダイアモンドシティ、グッドネイバー、バンカーヒル」
「そしてミニッツメンにもな。俺が言うセリフじゃないが、フィクサーとは良く名乗ったもんだ」
「最近はレールロードは悪化する一方だ。
状況が悪いってのもあるけど、理想を捨てずに人造人間の安全を何よりも優先しているから。おかげで末端からは求心力を失い、崩壊するのも時間の問題になり始めている」
「厳しい評価だな――だがそれと秘密の計画はどうつながる?」
だから言いたくなかったんだよ。
「それはB.O.S.がいるからさ。彼らは人造人間を否定している。
レールロードは人造人間の存在する社会を理想とする集団で、彼らの考えの真逆そのものだ。人造人間の根絶を願う連中がこのままレールロードを見逃すと思うかい?」
「どうだろうな」
「B.O.S.の調査がボストンにまで及べば、遠からずレールロードの本部もバレる。そして体力のない、今のレールロードは本部を含めて動くこともできない。
しばらくは見て見ぬ振りもしてくれるかもしれないが。インスティチュートとの決戦が近づけば、露払いに襲ってくる可能性が高い。そのためにデズデモーナに何ができるのか?
何もない。
だが、その戦争にはつけいる隙が作れるかもしれない」
「それがインスティチュート壊滅、か」
僕はうなづいた。
「どうせB.O.S.はインスティチュートと一戦企んでる武装組織だ。
そこにレールロードを巻き込んでくるというなら、逆に彼らも利用してインスティチュートを叩くほうがいい。レールロードのある部分で目的もあっている」
「そんな都合のいい方法があるのか?」
「正解はわからないよ。でも聞いても答えないし、今の話を聞いただけで僕を脅威と判断して消してくるかもしれない。そんな場所に戻るれるかって」
「……そんな危険な話を、俺にも聞かせたわけか」
「友達だからね。お前がそう言ったんだろ」
「ふん、なるほど。お前も俺が気が付いているかどうか確かめたかったんだな?反応を見たわけか」
「薄々はわかってたみたいだね。だけどやっぱり全容はわかってない。ボスたちは自分たち以外に話すつもりはないんだな。予想通りだ」
「賢い弟子は師匠をこえていくというわけか。泣けてくるな、息子。ハグでもするか?」
冗談、僕は鼻で笑い飛ばす。
「そうなると新しい疑問がわいてくるな」
「なんだよ」
「お前は今、あのダンスとかいう奴を自分の女につけているな?人造人間をB.O.S.に守らせるのはさすがに問題だろう。それとも皮肉のつもりか?」
「……」
「ケイトとかいうのもつけているが、どうやらお前は彼女にも殺せとは命じてないだろう。いや、そのつもりならお前が自分の手で処理するか。となるとそのつもりはない?どういうわけだ?」
少し話しすぎたみたいだ。
「さ!話は終わり、休憩時間は終了したよ」
「おい、それはないだろう?」
「ヌカ・コーラはここじゃ貴重でも。一本だけでどれだけ高く売りつけるつもりだ。邪魔しないでとっとと次の餌役の出番が来るまで、いつものように怪しい男ですって顔をみんなに見せていろよ」
「ここが潮時かな、しょうがない」
空き瓶を持たせてディーコンを追い出す。
端末に向かいながら、僕は別のことを考えていた。
この島で何であれ結果が出て連邦に戻れば、僕もレオさんも恐らくだが難しい決断を迫られるかもしれない。
ここに来る前、グッドネイバーのメモリー・デンから「もしかしたら解決の糸口が見つかったかもしれない」そうニックに伝えてほしいとの連絡を受けた。
もし、そこでインスティチュートに向かう手掛かりが手に入ればレオさんは迷うことなくすべてを捨ててインスティチュートへ向かうだろう。
だが僕は――恐らく一緒には行動できない。彼を助けることはできない。
いや、もしかしたらここでやる事が僕らの最後の協力ということになるのではないだろうか?
そんな不安が心に浮かんだ。
(設定・人物紹介)
・キンジョウ
だいぶ前の事なのでここで復習。
アキラを回収した組織でキンジョウはアキラの廃棄を提言。これに失敗すると、なぜか廃棄後は調査能力しか持たないのに皆のボスとなる権利を与えられたことで狂乱中。
死んだコンドウやその他が率先して敵に回らない原因となっている。
・砦
実際には容量オーバーするのでこの通りには恐らく作れません(悲しみ)
が、PC版ならMODで可能!かもしれない。
・火炎放射器ターレット
グレネードと合せて原作には存在しない武器である。
ただマシンガン、レーザー、ミサイルがあるし。花火も打ち上げるんだからあってもいいんじゃないか?と思って、ここで登場させてみた。
・コズワース
今の彼はひとつ目のMr.ハンディになっていて、それがまた彼の悲しさを助長させているのかもしれない。
・P.A.M.
未来を予測するアサルトロン。レールロードの本部にいます。