攫われてから戻ってきたヘスティアとベルを交えて、前回の会議の続きを行った。
先ず事情を知らないヘスティアとベルに、前回の事を簡単に説明した。
例のスキルを黙っているヘスティアは、腕組みをして考え込み、ベルはその話に呆然としていた。
暫しの沈黙の後、命が言った。「リリ殿、武術を習った事は有りますか?」「いいえ」
「だったら武の神であられるタケミカヅチ様に相談してみてはどうでしょうか?」
「それは考えてみた事が有ります。確かに命様たちのレベル2へのUP期間2年はかなり早い方です。
しかし到底ベル様の成長速度には追いつかないと思いますよ。」
「確かにそうですが、リリ殿に最適な武術が見つかるかもしれません。それにサポータなら同じレベルの必要は無いでしょう。」
「それもそうですね。」とリリは考え込みながら言った。ここでやっとベルが現実復帰し言った。
「武術の訓練ってどんな事をするものなの?それと命さんたちは子供の頃からいたんだよね。
子供の頃からからしないといけない物も有るのかな?」
「基礎的なものはやりますが、本格的には骨格が定まった後ですね。」「何故ですか?」
「先にも言いましたが武術にも適正が有ります。分かりやすい例では、小柄な人が壁役、大柄な人が穏行などは難しい。
無論それだけで適正を決める訳ではないですが、骨格は自由に変えられないですから。
定まらないうちに技を覚えるとそれが癖になり、後々怪我しやすいなどの悪影響が出るそうです。」
今度はヴェルフが発言した。「今度は俺からだ。今までに使った武器は何が有る?」
「ギルド支給のナイフですね。ベル様と違い、まったくと言っていいほどモンスターは倒せませんでした。
それでサポーターをしながら、なんとかお金を貯めてリトル・バリスタを購入しましたが射程が短い、また特注の矢は高価
なので使いどころが限られていて有効な経験値にはつながっていませんでした。後は魔剣ですが……」
ここでヘスティアが口をはさんだ。「魔剣使用は本人の経験値に殆どならないからなー」
「それじゃあ鍛冶師としての提案だ、リリスケお前に会った武器が有る筈だ。それを探そうや。」
「ヴェルフ、具体的にはどうするの?」とベル。
「それなんだが、いろいろ試してみる他ないようだ。ちなみにベル、お前は大剣が合ってるようだな。
最初に欲しがったのもそうだし、ダンジョンで見ていても上手く使いこなしてる。」
ヘスティアが首をかしげて言った。「セオロの森で使ってるのを見たけど、かっこ悪くてとてもそうは見えなかったよ。」
リリはあの時を思い出して頷き、ベルは苦笑して言った。
「それでも今は主に大剣を使ってるね。そうすると適正を見極めるのは難しそうだよ。」
「それも含めてタケミカヅチ様に相談してみては、ついでに桜花殿達の適性も調べることにすれば反対されないでしょう。」と命。
「ただそれには問題が有る。俺の武器ストックにそれだけのバラエティは無え。今から作るにしても時間が足りねえ。
リリスケ、方向性だけでも何とかならねえか?打撃系か斬撃系とか、またリーチはどんなもんとか。」
「そんなこと言われても、サポーターとして運んだ事は有っても、殆どの武器は使った事は有りませんよ。」
「そうか…、そうだ種族としてでも適正は有る。ドワーフの斧、エルフの弓みたいに。パルゥムは如何なんだ?」
「リリはソーマファミリア生まれオラリオ育ちです、パルゥムのコミュニティとは無縁でした。ですから分かりません。」
「そうか何か分かれば良かったんだが。」とヴェルフ。
「フィンさん」とベル。「えっ」とリリ。
「ロキファミリアの団長フィンさん。彼はパルゥムの再興を掲げています。何か知ってるかもしれません。」
「そういえばそんな話が有ったな。でもよくそんなこと知ってたな、英雄譚以外あまり知らなさそうなのに。」とヴェルフ。
ここでヘスティアが口を挿んだ。「そうだ、ベル君は一般常識が少し足りない、僕が教えてあげるよ。」
「ヘスティア様がですか。」リリが胡散臭そうに言った。
「これでも僕は神なんだ。ベル君がこれから団長としてやって行くには、いろんなことを学ぶのは必須だ。
現在ダンジョン攻略は順調だ、今後のためにも是非ともやるべきだよ。それに他の団員も他にやる事が有りそうだしね。」
「神様の誘拐の件で今フィンさんはギルドに居るはずです。何とか会えるようにギルドに行ってきます。」とベル。
「私も行きます。」「俺も。」とリリとヴェルフ。
「私はタケミカヅチ様に相談しに行きます。」と命。
ホームにはヘスティアと春姫が残された。
ちなみにヘスティアは、真っ先に男女二人で踊るダンスを教えるつもりだ。
神会のリベンジである。(教本はアポロンの置き土産)