俺は暴れまわろうとする体を必死になって抑えている。
お蔭で神ヘルメスの話を冷静に聞くことが出来た。
「俺ガアノ小僧ニ打タレレバイインダロウ。」
「グロス。」
「ドノミチ選択肢ハナイ。タダシ少シ待テ、今ハ体ガマトモニ動カン。」
「承知した。グロスと言ったか、君を敬しよう。」
その後アイテムを渡され細かな指示を受けた。
地下で不審者の発見の一報が有った。ほぼ同時に爆発音がした。
いよいよ始まったかと感覚を研ぎ澄ませた。
だから気が付いたのかもしれない、上空を何かが横切った。
率いている部隊を放り出してそれを追う。レベル5に匹敵するスピードだ。
アイズも気づいた見てえだが、イマイチ追い切れてねえ。
止まったところを見計らい声をかける。
「出て来い。」
獣人の女が出てきた。ザコだ。再度出て来いと言った。
その女は大声で一人だと言った。
後ろの気配は逃げていく、だがその後をアイズが追って行く。
あっちはアイズに任せとけば良い。
俺はこいつから情報を得る事にするぜ。
幸い弱っちい、まずは脅しをかける。
意外にも脅しに屈しねえ。情報を持ってると踏んだ俺はさらに脅しをかける。
すると女は詠唱を始めやがった。
ザコの魔法なんぞ怖かねえ、まともに受け止めて心を折ってやるぜ。
しくじった。ザコと思って舐めていた。裏通りで俺は片膝をつく。
あの魔法でなんと助っ人を呼びやがった。
訳の分からん理屈で俺に襲い掛かってきやがった。
だがあのヒキガエルほどではなかった。
それで俺は助っ人を目の前でぶちのめしてやることにした。
あの女に見せつけるようにじっくりといたぶるつもりだった。
初めに異変に気が付いたのは助っ人が倒れない事だった。
だがそろそろ倒れても良い頃なのに倒れる気配がねえ。
ふとあの女を見ると何かしてやがる。
その時俺は自分の体の異変に気が付く。
一発も攻撃をもらってねえのにごっそり体力が奪われていやがった。
戦いに集中していて気が付かなかった。おそらくカーズの類だ。
速攻でぶちのめして緊急離脱した。
危なかった、あと一歩遅かったら倒されていたかもしれねえ。
あいにく今は月が雲に隠れていやがる。ポーションはサポーターごと置いてきた。
俺は雲を睨みながら空が晴れる時を待った。
漸くウィーネと合流することが出来た。
ベルさんが守ってくれたらしい。
更にうれしい事にアルルとヘルガ達も一緒だ。
フィア達の匂いをヘルガが気付いたらしい。
さあ隠れ家へと思ったが、レットがある事を言い出した。
隠れ家が襲撃されたと。
それにグロス達は隠れ家を未だに動いていないらしい。
このまま隠れ家に戻るのは危険、だけどいつまでもここに居るわけにはいかない。
絶対絶命の危機、またもやベルさんの機転で無事クノッソスへ。
かっこいいベルさんに顔を赤くするのは仕方のない事ですよね。
ダンジョンへ帰る道すがら、ウィーネにこれまでの事を聞く。
要約すると、気が付いたらまた追いかけられていたと。
逃げている途中に人間の子供を助けたら、大きな武器を持った人に助けられたみたいだ。
その後ベルさんに会って、金色の怖い人から二人協力して逃げ出してきたらしい。
そこまで話した時、神ヘスティアから入り口まで戻ってくるように指示があった。
ここまでくると何故アナザーなのか分かったと思います。
そう、11巻の初めと終わりが同じなんですよ。
(そう言えば撲殺天使に似たような別冊が有りましたね。)
ですからこの話は、僕の考えた最強の…という事になりますね。
とこれだけでは何なんで、この話は原作者が見捨てたキャラの救済をテーマにしています。
ただし所詮RPGにおける初期パーティ、主人公が強くなったら解散が原則、できる事には限界があります。
ですがたとえあきらめざるを得なくても、それを正しく認識してあがいてみる事が重要だと思っています。
パルゥムの落ち込んでる闇は晴れるのだろうか?(フィンさんは気付くことが出来るか?)