エイナはククリの事を一通り説明したが、納得させることは出来なかった。
らちが明かないと思い半ば強引に帰る事にした。
家に帰ると、女性の犬人が待っていた。
「あのー、ベル・クラネル氏のアドバイザーに方ですよね。」
「はい、ですがどなたですか?」
「ああ、ヘルメス様の使いです。先ほどクラネル氏のホームに行ったんですが留守だったんですよ。」
「で、何か用なんですか?」
「これを彼に渡してほしいんです。」と言ってブレスレットを渡す。
「???」可愛くエイナは首をかしげる。そのしぐさに犬人は微笑んで再び話し出した。
「ヘルメス様はプレゼントにするって言ってたみたいだよ。」
突然くだけた口調になった。こっちが地なんだろうとエイナは思った。
「そうですか。」
「でもそれ、あんたに似合いそうだね。ちょっと着けてみてよ。」
「え、でも…」
「着けてみるだけだって。ほらほら」
言われて着けてみる。自分の目で見ても似合っている様に思えてきた。
「うん似合ってるね、失くすといけないからそのまま着けておいてよ。」
紫の輝きに魅了されながら何故かエイナはそれを受け入れた。
ホームに帰ったベルを有無を言わさず自室に引っ張り込んだ。
「さあベル君、まずはステータス更新といこうじゃないか。」
ベルはシャツを脱ぎベットに横たわる。
ククリは遅れて部屋に入って来てベルとヘスティアのやってる事を見ている。
ヘスティアは更新用紙を見てにやけて言った。
「やあベル君、今回はあんまり伸びてないねー。久々にのんびり出来たみたいだね。
やっぱりオラリオ外だとこんなモンかな。」
ヘスティアは剣姫と離れた効果が出たことに内心ほくそ笑む。
ベルは、ははっと空笑いをしているが、内心色々あった(撲殺妖精にぼこぼこにされた)なーと思っていた。
だけどあれは実戦ではなく、まして訓練でもないから、ステータスに反映されなかったんだと思った。
ククリが聞いて来た。「何してるの?」と。
「ステータス更新だよ。」
「ステータスって?」
「神様からの贈り物だよ。」
「それならククリにも有る。」
ヘスティアはククリの言葉にヘファイストスの言葉を思い出していた。
『ステータスが発生している、生きている、子供たちと同じ、経験値を糧に進化する。』
何かを掴めそうになった時、リリが外から声をかける。
「ヘスティア様、未だでしょうか?」
「今終わったよ。」と言って部屋を出た。
この後ククリについての話になったが、誰も納得せずナイフ形態になることでようやく落ち着いた。
穿いていたビキニを器用に折りたたんで鞘にして収納する。今日は人型に戻るのは無理そうだった。
その夜、異端児たちの隠れ家では。
「そろそろ時間だ。」とフェルズ。
ここに居る異端児たちはだいぶ少なくなっていた。
はぐれた仲間の捜索がメインになったため、冒険者の目を誤魔化せる飛行できるものがほとんどだ。
後はリヴィラの再建資材に紛れてダンジョンに帰っている。
鍵はリドがクノッソスに残った仲間を救出するため持って行った。
今残っているのは、グロスとその親派(紅鷲、閃燕、巨大蜂)と抑え役のレイそしてフィアとレットのコンビ。
グロスはここの守り、あとは2班に分かれて交互に仲間の捜索をしている。
今日はレイ、フィア、レットの番だ、あちこちに異端児だけしか判らない印がつけて有りそれを見回っている。
残るはアルルとヘルガ、そしてアステリオスだけだ。アルルとヘルガは小さいから生き延びている可能性はある。
そう言ってグロスは捜索を止めようとはしない。そしてウィーネも自分が守ると言い張っている。
ダイダロス通りへの通路を開けていざ出発という時、赤い何かがグロスの尾に飛んできた。
ヘスティアは何に気づきかけたのか。
鍛冶神がナイフとして注文を受け、ナイフと名付けた物、武器としてナイフ以外あり得ないーー。(謎)