レフィーヤの無事を確認したアイズはベルを目線で追っていた。
リヴェリアから同行を許可された時の条件がベルに絡まない事だった為だ。
ベルに絡むとトンデモナイ事をすると認識されたんだろう。
だがベルの事はしっかりその目でその耳で追っている。
ベルのこれまでの行動は、ティオネ達の話、いわゆるガールズトークによるとハーレムという状態の様だ。
水浴びを覗いたお騒がせな神ヘルメスと話している、どうやらダイダロス通りへ行くらしい。
『都合のいい女』と言う言葉が聞こえてきた。思わずベルを睨んだ。
話によるとこの言葉を投げかけられた男は不良だそうだ。『ベルって不良なの!』
神ヘルメスと付き合っているせいなのかもしれない。
地味にショックを受けているとロキが路地裏から出て来てホームへ帰ると言った。
ベルについていきたい気持ちもあったが言いつけ通りにロキと帰る。
ヘルメスはベルを連れてダイダロス通りへ、所々で解説しながら案内している。
「見ての通り3か月ほども経ったけれど、ほとんど復旧していない。
壊す予定の場所も規制線が張られているままさ。」
「何故です?」
「いろいろ有るが、一番はここの連中に金がない事かな。」
ベルは歩く、時に遠回りするかの様に。神ヘルメスに誘導されているので不思議に思いながらもそのままだ。
視線を感じる、だがそっちを向くと目をそらされる。少なくとも歓迎はされていない。
それでも前を向いて進む。己がやった事だ。さりげなく周囲の状況を観察していく。
その時視界に見知った人影を見つける。
あたりを見回すと丁度近くまで来ていた。ヘルメスにベルは言った。
「あの、僕ちょっと寄りたい所が有るんですが良いですか?」
上手くベル君をダイダロス通りへ誘導できた。ここで俺の目的は2つ。
先ずは現状での彼の評判の確認だ、ペナルティを与えて3か月の間を置いた。
どれだけ評価が挽回できているか、目安としては最低でもニュートラルだ。
あのフレイヤ様に直談判してようやく勝ち取った時間だ、それぐらいでないと割に合わない。
だが結果は想定以下だ、もう少し緩和できると見込んでいたんだがな。
もう一つはフレイヤ様への帰還報告だ。顔見せは順調、こちらは上手く行きそうだ。
ただこっちはもうしばらくかかりそうだ。
少し暇になったんで目の前のこれについて検証してみる。
アイシャからは報告を受けている。こっちでも調べた。
3柱の女神の合作、しかも分担が奇跡のバランスを支え結実している。
ただ3柱ともに知っている俺は微弱な神威でそのバランスを崩している。
目の前でぼーっとしているこれはずっと彼の力になるだろう。
おっと考え込んでいる間に厄介な相手が来たみたいだ、ロキの斥候は避けていたんだが。
核心に触れるタイミングを見計らって声をかけ救い出す。
ベル君に現実を理解させてからホームへ帰す。さて今日の夜にでも。
「フレイヤ様。」と言ってオッタルが部屋に入って来た。
「何かあったの?」
「例の物に動きが有ります。」
「やっぱり戻ってきたことを感じているのね。もう凍らせておく必要は無いわ。」
「承知しました。」
「あとは任せるわ、オッタル。」一礼して出て行った。
「3か月ぶりに見たあの子、変わらない白い光。いや、少し芯が出来たって感じかしら。
これからの事は私にも見通せない。ふふふ、楽しみだわ。」
ホームへ帰ったアイズはロキと共にフィンのもとへ行った。
丁度レフィーヤが部屋から出ていくところだった。
「レフィーヤ。」アイズが声を掛けるが下を向いて足早に立ち去ろうとする。
再度声をかけようとするがリヴェリアから待ったがかかる。
「アイズ、レフィーヤは独房入りで謹慎だ。」レフィーヤは部屋から出ていく。
フィンとリヴェリアはタメ息をつき、やれやれと言った顔をしている。
「アイズ、彼はホームへ帰ったのかい。」とフィン。
「ダイダロス通りへ行くと言っていました。」
「なら彼に会ってくるよ、二人っきりで話してみようと思うんだ。
それと幹部を集めておいてくれないか。」親指を見つめて言った。
ベルとフィンの話、気になった方は原作11巻を。(買ってあげてね。)
これでセーフ(何が)。