ちょうどワイバーンの真正面に落ちたそれは瞬時に殺気を纏う。
それに呼応してワイバーンも戦闘態勢になる。
丁度オーバーハングに取り付いていたベルはその展開についていけない。
天井からの光が地面に反射してディテールがハッキリしない。
人の様だがすっぽりとフードをかぶっているみたいに見える。
声がする、だが洞窟内の反響が酷く辛うじて内容が分かるだけだ。
「翼が折れてますね、時間が有りません、最速で行きます。」
落ちてきた者はまっすぐに突っ込む。それに対しワイバーンはしっぽの一振りで対抗。
真っ向からの激突、結果は痛み分けに終わった。
「この力、原種が。何故こんな所に。」
ワイバーンは岩陰に隠れる。
上から見ていると両者円を描きながら近づいている様だ。
だがワイバーンの方は相手を捉えているが、もう片方はそうではない様。
地の利が効いている。動いている内にようやく相手が判別する。
リューさんだった。この時ワイバーンはリューを射程に捉えていた。
思わずベルは叫んだ。「リューさん危ないー」
だがそれは逆効果だった。リューは声の主を探し、注意をそらしてしまった。
体当たりをまともに受け、地面を何度もバウンドする。。
噛み千切られなかったのは腹が空いていなかったせいだろう。
慌てて飛び降り、大声を出して注意を引く。チラッとリューを見るが動かない。
「待って、止まって、話を聞いて。」
だがさっきとは違い返事を返さない。近づこうとすると威嚇してくる。
何度も呼びかけるがさっきの様な返事を返してこない。
騙されたのかと思ったが、今の動きはでたらめで狡賢さを感じない。
そこで最後の話を思い出した。おそらく意識を失っているんだろう。
理性を失っているせいか何とか躱せる、ただし躱せるだけた。
傷を負わせて強制的に目覚めさせる事も考えたがナイフではリーチが足りない。
そもそも翼や尾が折れているのに目が覚めないんだから相当大きな衝撃が必要だろう。
実際、隙をついて反撃しているがさしたる反応はない。
リューさんの様子も気になる。ちらっと見ると、その隙をついて頭突きをしてくる。
流石にさっき見た攻撃だ、最小の動きで躱し首に飛びつく。
耳の近くで大声で呼びかける。何度も何度も。
だが五月蠅そうに首を激しく振るだけだ。その時ベルは頭に不自然なこぶが有ることに気が付く。
不意に体を大きく振り回した。流石に対処できずに首から手を放してしまう。
ベルは慌てて何かにしがみつこうとする。幸い背中の突起に手が届いた。
今度は振り落とされないようにしっかりしがみつく。
しばらくでたらめに暴れていたが、ベルを見失ったみたいで体の動きを止める。
そして周囲を見渡していたがある一点を見つめて攻撃態勢をとった。
リューを狙っている。そう感じたベルは苦渋の決断をする。
チャージする暇はない。ヘスティアナイフを背中に刺しマインドをありったけ込め叫んだ。
{ファイアボルトーー}ククリの魔力増幅もあり大爆発の後ゆっくりと倒れる。
慌てて飛び降りリューさんへ駆け寄る。状態を確認すると多少弱いながら呼吸している。
しっぽにやられた左側の傷が酷い、特に腕は折れている様だ。
右手は地面を掴み止めようとしたみたいで擦り傷が酷い。
ただ背中は盾で守られて目立つ傷は無いみたいだ。
盾の中にはポーションときれいな布が有った。
おそらく僕が怪我をしている事を想定していたんだろうと思う。
だけどポーションは1本を除きすべて割れて中身は布に浸み込んでいる。
左腕に添え木をし強く固定、全体に擦り傷の多い右手は布でぐるぐる巻きにする。
ここでリューさんの鳩尾に血が滲んでいる事に気が付く。
ベルはそれを見て悩んだ。残ったポーションを振りかけるかどうかを。
最後の頭突きでできた傷だろう、内臓がやられている可能性が有る。
振りかければ外傷は治るが、内臓は治らない。
だが布で治療するには鎧を脱がす必要がある。
悩んだ末、安全策を取り鎧を脱がし治療することにする。
皮の軽装鎧の下は鎧下代わりの分厚いシャツのみだ。
シャツを上に大きくずらし(分厚いためすぐに落ちてくる)、なるべく胸を見ないようにして布を巻く。
一通り治療を終えると声が聞こえてきた。
フィンさん40歳か、という事はゼウスファミリアを追い出した時は15年前で25歳。
おまけにロキの初めてのファミリア。25歳でオラリオNo2に伸し上がるとは凄過ぎます。
このころどのくらいのレベルだったのかな。最速レコードは持っていないみたいだけれど。
レベル2へが2年、レベル3へが3年(レフィーヤが2年で早いとロキに言われていた)
レベル4へは5年ぐらいか?(当然外の世界だとさらに掛かる)
何歳ぐらいで入団したのかな?
この頃すでにガレスやリヴェリアと知り合っているから、それなりに大人のはずなんだけど。
そしてガレス、リヴェリアを差し置いて団長なんだから…
(もしかして鯖……)