ベルは不意に目を覚ました。少しの間気絶していたらしい。
慌ててあたりを見渡すと、すぐ近くにククリが倒れていた。
その時リューさんの声に気が付いた。慌てて大声で叫び返した。
「リューさん、僕は無事です。」
その声に触発されたか洞窟がまた崩落し始めた。
慌ててククリを抱えて奥に逃げ込む。
幸いなことに小規模の崩落にとどまった。
僕は怪我一つしていない、どうやらまたククリに助けられたみたいだ。
ククリには休養も兼ねてナイフ形態に戻ってもらう。
こちら側からの脱出は不可能と判断して洞窟の奥に進む。
流石にダンジョンで慣れているので戸惑いは少ない。
壁にナイフで傷をつけ迷わないように慎重に進む。
少しの間下り坂だったがすぐに上り坂になっている。
しばらく上ると崖にたどり着いた。レベル3なので何とか登れる。
支道はいくつかあるが基本一本道の様だ。(メタ視点だと溶岩洞窟)
その間にさっきの事を考えていた。
ブラットサウルスはこちらの言葉に反応していない。(声には反応している。)
だから言葉に反応しないのは異端児ではない。
だから「うおーー、死にたくない奴は逃げろー」とでも叫べば判別できる事になる。
うおーーで音の反応を引き出して後の言葉の反応と区別する。
ただ問題は叫ぶことが出来るか、例えばモンスターを呼び込む事にならないか?
言葉で逃げてくれれば問題ないが、某エルフの様に激昂する場合はどうするのか?
またリドさんたちの様に引けない事情があった場合は?
また考えることは多い。
探索しながら進む。崖を超えたころから支道の長さが長くなった。
そして行き止まりにはモンスターがいた。ただ何かに怯えている様に思えた。
言葉には反応していないので仕方なく倒してしまう。
後ろからやられる訳にはいかないから。
考えながら歩いているといきなり視界が開けた。
どうやらかなりの距離を進んで広い空間にたどり着いたようだ。
入り口付近でその内部を慎重に観察する。
高い天井には穴が有り光が差し込んできている。
あれが外に通じているようだが上るのは骨が折れそうだ。
仕方なく周囲を見渡した。
部分的に光が入っているのでコントラストが大きく、影の部分ははっきりしない。
まずは光が当たっている所を調べる。
慎重に見ていてそれを見つける。
モンスターの爪や牙が所々に有る。何かの巣かもしれないな。
ただ今の所、気配は特に感じない。だが油断せずに慎重に調べる。
よく見ると影になっている所は崩れているようだ。
慎重に影の領域に近づいていく。
だんだん目が闇に慣れていき、ついにそれを見つけた。
少し短いですがキリがいいのでここまでにします。
原作を読んでいますが、ヴェルフ君はベルのリクエストに応えていませんね。
今までベルが自身で要求したのは、初めて工房を訪れた時の売れ残りの大剣のみ。
魔剣をリクエストされるかもと思っていたのにまさか売れ残りを、非常に強い印象があったはず。
ミノたんも8巻の小太刀も12巻の短剣も、言うなればヴェルフの勝手だ。
初めてのダンジョンからあの18階層への逃避行まで売れ残りの大剣を上手に使いこなしていた。
真直で見ていた黒のゴライアス、アステリオスは出所不明の大剣でやり合っていた。
これらは強烈な印象をヴェルフに与えたはず。ベルは大剣使いとの刷り込みが有っただろうに。
なのに何故か大剣を作らない。不思議ですね。