その夜、ようやくエルフの男が話せるまで回復した。少し驚いたが男は共通語を話せる。
そこで村長を呼んで事情を聴くことにした。
ただ部屋は狭いので、男の家族と村長、神様とリューが話し合いをする。
その他は部屋の外で待機、ただしドアは空いているので声は聞こえる。
「モンスターに襲われたとの事ですが、詳しい事情をお聞かせ願えませんか?」と村長。
「お前たち、信用、できない。」と言葉を区切って男は言った。
「有益な情報ならともかく、モンスターの情報に信用なんて関係ないじゃろ。
同じ土地に住む者同士じゃ、助け合うべきじゃぞ。」と神。
「もう、娘、やれない。」と男。
「…その件は別途話し合いましょう。モンスターの事はこちらの問題でもあります。
ですからこの件であなた方に情報提供以上の事を求める事は有りません。」とリュー。
「その通りですな、この件であなた方にこれ以上の見返りを要求しない事は、村長の私が保証しましょう。」
「わしが見届けよう。」と神。
「…先日、大雨が止んだ、大きな音で高い山、崩れる。
調べに行った。山から、モンスター、沢山出てきた。
戦ったが、数多い、逃げられない。」
「山からモンスターが来たのか?」とリュー。
「分からない、そこに行く前に襲われた。だがあの山、何かいる。」
小声で何か話しているのが聞こえる、娘たちに通訳しているみたいだ。
「何がいるのか判らないのかい?」とアイシャ。
「見たことない、声だけ。今までも時々聞こえた。聞こえた後モンスター増える。最近よく聞く。」
「村長さん、あの山について何か知りませんか?」とベル。
「残念ながら、黒い谷の向こうはモンスターが時々現れましたからめったにそちらへは行きませんでした。
また我々がここへ来たのは誰もいないはずだからですので以前の話も知りません。」
これ以上情報を得られないと判断して、村長たちは部屋を出てきた。
ただ扉は開けてこちらの話を聞けるようにした。こちらに裏が無いことを示すためだ。
「モンスターが大量に現れた事は見過ごすことはできません。冒険者様、何卒調査をお願いします。」
「何とかすることはできませんか?」とベル。
「お前さんも懲りないねー、だけど範囲が広すぎる。あの高い山が原因らしいけど確証はない。
あのあたりに詳しい奴が居ればいいんだが、あの男はしばらく動けそうにないぞ。」
「時々黒い谷付近のモンスターを掃討すれば良いんではないですか?」とレフィーヤ。
「でもどこかはっきりしないから調査中にこっちを狙われたら大変だわ。」とエイナ。
「いつまでやれば良いんだい?いつまでもここに居られ訳じゃないんだよ私たちはね。
ヘルメス様からは3か月ぐらいと言われているから、そろそろ呼び戻されても不思議はないよ。」とアイシャ。
「そうですか。」落ち込みながら村長が言った。
ベルは考え込んだ。
「やっぱりこのまま放って置けません。調べるだけでもしましょう。」
「だけどあたしとあんた、どっちかがここに残らないと不味いね。で、こっちは抜かれるわけにはいかない。
仕方ない、こっちは私が残るよ。調査は最悪逃げ出せばいいんだから。」
その時、あの子が部屋から出てきてリューに話しかけた。
「この子が道案内したいと言っています。」
「危ないんじゃないですか?それに道案内できるんですか?」とエイナ。
リューが通訳すると立てかけてあった盾を持ってきて何かをしゃべった。
「これに乗れば大丈夫だと、それと『あの辺りは遊び場だから良く知ってる』と言ってます。」とリュー。
「どうする?確かにそれに乗ってりゃあ安全だろうが。」盾を指さしてアイシャが言った。
「それでも危険すぎます、私は反対です。」とレフィーヤ。
「だけど何もしないと危険は無くなりませんよ。」とべる。
「だったらこのあたりのモンスターを倒してしまえば良いんですよ。」
「だが範囲が広すぎる。さっきも言ったがあたしとベルはヘルメス様の命令でここに来ている。
ヘルメス様の帰還命令は今は絶対だ。それにベルはギルドのペナルティで来ているんだ。
へそを曲げられて交換条件のミッションを放棄されるとみんな困ってしまうぞ。」
「私が一緒に行こう。どのみち通訳は必要だ。」とリュー。
「…それしかないかもしれませんね。ただし3日位をめどに一度帰ってきてください。」とエイナ。
「ありがとうございますエイナさん。」エイナに飛びついて手を握り顔を近づけてベルは言った。
エイナはいつものように顔を赤らめ、他の3人はムッとした。