「いい加減機嫌を直してくれないかな。」ため息をつきそうなタナトス。
「……」何も言わず迷宮を作り続けるバルカ。
「そっちはどうかな。」振り返りレヴィスを見て言った。
「雄牛型の事を忘れたか?頼み事があるなら今度はそっちが誠意を見せろ。」
「だけどスポンサーも居なくなったし、ダンジョンにも入れないんだよ。」
「知った事か。それも含めてやるのが約束を破った事への詫びだろう。」
頼みの綱だったイケロス達もいなくなったし、しばらく様子を見るしかないですかね。
「フィン、調べ物はもう良いのか?」とリヴェリア。
「ああ漸く一段落ついたよ。」とフィン。
「ずいぶん時間が掛かっていたが、ギルドで何を調べていたんだ。」
「ダンジョンでの死亡事故報告と冒険者登録の抹消記録だ。」
「それは彼らとの話が関係しているのか?」
「そうだね、今まで僕はくすぶっている同族たちには目標となる光が必要だと思っていた。
だから僕がその光になろうと決めた。自慢じゃないがその通りになったと思うよ。」
「そうだな、この世界でお前の名を知らぬものはごく少数だろう。」
「だが未だパルゥム全体の名声は高まっていない。僕は時間がまた足りていないんだと考えていたんだ。
人を騙し盗みを働いているのなんかは伝わって来たけどね。」
「で、何か分かったのか?」
「確定的なことは何も。ただいくつかそれらしい事は有るかな。」と少し寂しそうに言った。
「それは私が聞いても構わない事なのか?」
「構わない、というかむしろ誰かに聞いてほしい位だね。
まず、あまりに古いものは統計資料しか残っていなかった。
それを見るとパルゥムの死亡率は冒険者の構成比率を考えると3倍以上他の種族に比べて多い。
冒険者をやめた数にすれば5倍以上だ。これは僕がギルドに登録する時に言われた事だから驚く事じゃあない。
次に事故報告書を調べてみたよ。生き残りがいる事故でパルゥムが殿を務めることが非常に多いんだ。
ドワーフと違い耐久に補正が無いからね、死亡率が高いのも当たり前だ。」
「その位でここまで衰退するとは思えんのだが?」
「これだけでもかなり影響有りそうだけどね。問題は助かってしまった場合だ。
特に他に犠牲が出た場合、冒険者を辞めることが多い。理由を見ると心が折れているみたいだ。」
「辞めると言ってもそう簡単に辞められるのか?」
「当然トラブルになっただろうね。
僕はロキの初めての眷属だから何も言われなかったけど、古参の神なら言いたいことが有るんだろう。」
「とすると入門者は門前払いか。」
「あるいは何か約束させられているかもだね。内容は大体想像できるけれど。」
「なるほどそういう事か。……まだ何かあるのか?」
「分かるのかい、さすがだね。」
「何年の付き合いだと思ってる。…言いたくない事なのか。」
「いや、話しておいたほうが良いんだろう。ここ10年程パルゥムの冒険者登録が激増している。」
「良かったじゃないか。…だが10年も経ったにしては高レベルの者が居ない。…まさか…」
「…想像の通りだ。」しばらく沈黙が続いた。
「フィン、なんというか…」
「今はどうしようもないね。まずは目の前の問題を片付けようか。ダイダロス通りはどうなっている?」
「はぁーー分かった。ダイダロス通りの規制は大分緩和された。ただ出入り口のあったあたりは未だだ。
だが建物の改修工事に参加する名目なら時間はかかるが調査できそうだ。
今まで周辺だけでもマッピングしようとしたが不可能だった。何かしら範囲を絞る必要があるかもしれないぞ。」
「分かった、今までの結果を教えてくれ。何とかしてみようか。」
お詫びの意味で書きましたがもしかすると『俺たちの戦いはこれからだ』の方が良かったのかも。
オラトリア7.2を書いてくれる人はいまだ現れない。(悲)