次の日、実戦で試すべくダンジョンへ向かう。
3階層、ゴブリンやコボルト相手に大槌を使う。
振るうでは無く運ぶ感覚にするとスキルが働く。そのまま慣性で粉砕。
紙ほどにも抵抗を感じない。モンスターの所まで大槌を最速で運ぶだけでバタバタと倒れる感じだ。
春姫さんの魔法も必要ないぐらいです。今までの苦労は何だったんだろうとまたしても思いました。
ヴェルフ様達はその光景を唖然として見ていた。
あの重い大槌を素早く、まるでナイフかのごとく振り回し、モンスターを文字通り粉砕して行く。
結局モンスターから傷を負う事も無く、それどころか近寄らせることもなかった。
その為魔法で体力の回復が出来なかった。魔石も溜まってきたのでダンジョンを出ることにする。
ギルドで魔石を換金し、ポーションを求めてミアハ様の所へ。
何時もいるはずのナァーザ様はおられず、ダフネ様が店番をしていた。
ポーションを買うついでにナァーザ様について聞いてみる。
「ダフネ様、ナァーザ様は如何なさったのですか?」
すると店の奥からこんな声が聞こえてきた。
「ハハハ、ミアハ様ぁ、特需ですよ特需。これで借金を少しは返せますぅ。」
「…わが薬が重宝されるにはうれしい限りだが、さすがにもう限界…」
「何を言っているんですか、まだまだ後2徹は余裕です。」
「お待たせしました、頼まれた薬の原料です。」
「さあミアハ様、まだまだ頑張っていきましょう。」
「…助けてくれ…」
……
「そう言った訳よ、あたしたちそっちのけで調合してるわ。
一カ月分前金で貰ったから最低後一カ月はあの調子でしょうね。」
目が点になりながらも、取引用のポーションを注文して店を出た。
その後再びダンジョンに戻り今度は春姫さんが行う。
春姫さんもメキメキ腕を上げている。ベル様を彷彿とさせるほどだ。
器用に立ち回り確実に仕留めている。
ホームに帰って今日の出来事を皆さんと話し合う。
「リリ様凄かったです。」と春姫。
「本当にそうです。ですが申し訳ありませんでした。」と命。
「えっ、何がですか?」とリリ。
「タケミカヅチファミリアで武を学んだのに、リリ殿の悩みに応えてあげられませんでしたから。」
「それを言ったら俺もだ。わりい、鍛冶師として失格だ。」と言って頭を下げた。
「そんなことないです。皆さんこんなリリのために一生懸命になってくれましたよ。」と言い頭を下げた。
しばらく頭を下げあっていたが、やがてヴェルフが聞いてきた。
「で大槌の使い勝手はどうだ。」
「こんな大きな武器は初めてですから、まだよく判りませんね。」
「それもそうか、だけど意外なほど大型武器を使いこなしているな。」、
「リリもこのスキルが荷物運び以外の使い方が有るなんて思いもよりませんでしたから。」
「ですが小さいリリ殿が大きな武器を持つのは違和感が有りますね。」
「わたくしは、リリ様が大きな荷物を運ぶ姿を真近で見ていましたからそれ程でも。」
「そうだな、では今後は大型武器を中心にしていこうか。そういやー椿の武器の中に大戦斧がかなり有ったな。」
「それより腕力をつけるために刀はどうでしょう。それなら私も教えられます。」
「わ、わたくしは、もっと大型な物の方が…」
久ぶりに明るく和気あいあいと話し合った。
「椿様から武器や防具を沢山戴きました。必要なものが有ればどうぞ使ってください。」
「おっ、いつもはがめついリリスケが何の風の吹きまわした。」
「ドロップアイテムが高く売れましたから。それに怪我でもされたらその方が高くつきます。」
「では私は防具を。」と命。
「なら私は武器を。」と春姫。
「ヴェルフ様、異端児達にもお願いします。」
「おぅ、わかった、 なら残りは俺な。」
「さすがにそれは。」と命。
「人の事は言えませんよ。欲張り過ぎです。」
「勘違いするんじゃねえ、俺はあれらを研究したいんだよ。悔しいが椿はオラリオ1の鍛冶師だ。
その椿が試行錯誤した品だ、是非とも調べたいんだよ。」
「そう言う事でしたらどうぞ。ファミリアの為でもありますから。」そこで言葉を切り少し考え込んだ。
「おい、リリスケどうした。」
「いえ、ドロップアイテムの換金の件でチョッと。ギルドの換金所で到達階層を誤魔化していると疑われてしまいました。
今後は少し考えないといけませんね。」
良かったねリリちゃん。
でももう少し続きます。
ここでも残念なお知らせが、この後予定していたヘファイストスと椿の話はカットする事にしました。
お気に入りに入れている人も少ないですが、なんとか最後まで頑張るつもりです。
(前作も再開させました。週1ぐらいのペースで考えてます。パッチワークは少々汚いですが。)