夜、モダーカ様がこっそり荷物を届けてくれた。
中庭にとりあえず積み上げてカーゴを返却する。
さまざまなドロップアイテムが山になっている。
明日分類して換金するものを分ける事にしよう。
大量のモンスターと戦った事を誤魔化すため、魔石を異端児達に分けたからこっちに期待しよう。
ただ中層より下の物がかなり有るのか、見た事が無い物が多いですね。
ですから明日ヴェルフ様と仕分けをしましょうか。
次の日、中庭で仕分けをしていると春姫さんが来て言った。
「椿様が大きな荷物を持っていらっしゃっています。いかか致しましょうか。」
「ではここに案内して下さい。」
しばらくして椿が入ってきた。ただし大型のカーゴを引き連れて。
「約束の報酬だ。何処に置けば良い。」
「とりあえず工房に。」
「とても入りきらんぞ。」
「どれだけ持ってくるつもりだ。」
「ではここに。」とリリは中庭の一画を指差した。
瞬く間に中庭が武器や防具で埋まる。リリとヴェルフはその光景に唖然としている。
「こんな所か。」しばらくして椿が言った。
「そんなに凄かったのかよ。」とヴェルフ。
「まあそうじゃな、あの結晶はなかなか興味深い。おまけに工房もすっきりしたぞ。」
「それがメインか。」
「そんな事は無い、じゃがその言い様なら十分なようだな。ではこれで。」と言って椿は去って行った。
しばらく二人とも固まっていたがやがてヴェルフが言った。
「とりあえずこれは1階の部屋へ仕舞い込もう。リリスケ、この中からお前の訓練用の物を見繕っておく。
明日は千草だったかに稽古をつけてもらえ。こっちは俺がやっとくからドロップアイテムの方は頼む。」
翌日朝早く千草様がが訪れた。なぜか大変はりきっている様だ。
ヴェルフ、命、春姫はダンジョンへ行く前に初めの方だけでも見学しようと中庭に集まっている。
その時リリが工房から山の様に武器を背負って現れた。
千草はその光景にビックリして命に問いかけた。
「な、な、何ですかあの量は。」
「ヴェルフ殿が頑張って作っていましたね。」と命。
「今日もリリ様は大変力持ちですね、正直うらやましいです。」と春姫。
その言葉に気を取り直して千草は言った。
「タケミカヅチ様から武器に関する講義を受けたと聞いています。まずは自分に合いそうなものから始めましょう。」
リリはステータス上で最低となる力の数値を思い浮かべ、軽い短槍を選んだ。
その光景に千草はまたビックリして慌てて言った。
「いやいやいや、講義は受けたんですよね、なぜそんな軽い武器を選んだんですか?」
「ええ、私のステータス中で一番低いのが力です。ですからコレを選んだんですが。」とリリ。
「えーーー、あれだけの力を見せつけておいてそれは無いですよ。」3度ビックリする千草。
「ああ、それは私のスキルで荷物を運ぶときに有効な物ですよ。リリの腕力はそれほどではありません。」
「…はぁー、武器、特に大型のものは腕だけで振るう物ではありません。全身を使用して使う物です。
結局、武器は相手にぶつける事で効果を発揮します。それは運ぶことと何ら変わりありませんよ。」
それを聞いて思い出した。黒のゴライアス戦で、ドロップアイテムの大剣をベル様にお渡した時の事を。
短槍に替えて大槌を手に取る。そして振るうが大槌に振り回される。
「さっきも言いましたが大型武器は腕では無く全身で、腕は添える程度に微調整に使うつもりで考えてください。」
リリは武器を持って体を振るう。今度は振り回されずに使いこなせる。
「そうそうその調子です。まずは腕を動かさずに体を振ってください。」
それを見たヴェルフ達は顔を見合わせにっこり笑ってダンジョンへ向かった。
「それを反復して体に覚え込ませてください。それに慣れたら縦横斜めに動かしてください。」
皆が帰ってくる頃ようやく訓練が終わった。
リリは中庭で仰向けに寝っころがっている。
「千草殿、どうでしたか?」と命。
「スキル?でしたか、それのおかげで大槌もなんとか使いこなせる様になったと思います。」
「リリスケのあのスキルは、単なる荷物持ちに便利なだけだと言ってた記憶が有るな。
こんな使い方が有るとは、まさに目から鱗だ。」とヴェルフ。
「リリ様。」嬉しそうに春姫は呟いた。