フェルズ様が魔道書を寄贈して下さった。
豪邸一軒と同じ価値が有るものだが、ご自身で作れるので気楽なのだろう。ありがたい事だ。
だがヴェルフ様が空気を読まず中が見たいと言い出した。思わずリリも、と言った。
高価で希少な本、どんなことが書いてあるのか非常に興味が有ります。
ヘスティア様が許可してくださり拝見できることに。……
げんなりして3人は部屋を出る。命は言葉が出ない様だ。
「何ですかあれは、胡散臭さ満載です。」
「俺に聞くな、その意見には大いに同意するが。」
「まず題名からしてきわめて怪しいです。
『弱小ファミリアのサポータが、賢者の魔道書を読んだなら』
ピンポイントすぎます。」
「……俺に聞くな、以下同文だ。」
「次のページが読者の声、みんなも先輩に続け、とありましたが
魔道書は、一回読むと効果がなくなるのではなかったですか。」
ヴェルフも、もはや何も言わない。
「一人目、『俺はこれを読んで世界一に。猪人のOさん』これが一番マシなんですよね。」
「二人目、『僕はこれで、仕事は順調、可愛い彼女も出来ました。少人のF.Dさん』あの人に可愛い彼女?」
「三人目、『ワシはこれで長年いがみ合っていたエルフと恋仲に、そして愛に結晶も。ドワーフのG.Lさん』
何から突っ込んで良いのやら。胡散臭さMAXです。」
「……リリスケお前、ほんとに頭が良いんだな。」
「今言われたくは有りませんでしたよ。……明日効果を確認してからクエスト頑張りましょう。」
「そうだな」「そうですね」
あんな胡散臭い物でも無事魔法は発動した様です。気になる事は有りますが、テスト結果で考えましょう。
しかしヘスティア様も判りやすい。追加で何らかのスキルが発現した様ですね。
ですがベル様の件を考えると突っ込むのは躊躇しますね。皆さんも同じ意見のようですが。
ある意味危機なこの状況では、有用なスキルであってほしいんですが。
テスト結果はいささか想定外、マインド消費は少ないが効果も少ない。積極的に使いパワーアップするしかないだろう。
この魔法を押した手前、もう少し効果が高い方が良かったですが、今後の成長に期待しましょう。
それより今はクエストです。19階層には、時間はかかるが確実に手に入る場所が有るらしいので。
フェルズ様の手配により問題なく19階層へ来た。当然この階層から冒険者が極端に少ない。
慎重に進み目的地に着いた。入口に命と春姫を警護に残し、曲がりくねったルームの奥へ進む。
最奥の岩肌に小型鶴嘴を打ち込み採掘を始めた。黙々とだだ掘り進める。
「確かに確実に手に入るが…」ヴェルフが息を切らしながら言った。
「口を動かすより手を動かしてください、予定量にはまだまだですよ。」
しばらくして崩した岩を選別に入る。
「おっ、これだ」ヴェルフが親指の先ほどの欠片を取り上げた。
「一時間で10個、やはりこの階層ではこの位ですか。」
「しかしよくこんな場所が分かったな。」
「リリの魔法をフル活用しましたから。しょせんリリにはこんな事しか出来ませんから。」
「…なあリリスケ、お前は十分役に立ってるじゃねえか。」
「……ここはパンドリーに近いです、あまり時間はかけられません。さあ始めますよ。」
採掘を再開する、ヴェルフは前より少し早く、乱暴に鶴嘴を動かす。
「ヴェルフ様。もう少し静かにお願いします。」リリは小さく言った。
だがヴェルフは気付かない、何回か注意したが駄目だった。仕方が無く背中をたたく。
「何だ、リリスケ。」手を止めてヴェルフが答えた。
「ちょっとうるさい……」リリは途中で言葉を失った。
それは入口方向から音が聞こえてきたからだ。
「やべえ、命だいじょぶか?」そう叫んでヴェルフは大剣を担いで駆け出した。
リリも慌てて後に続く。すると入り口が見える所にヴェルフが立っていた。
「ヴェルフ様何を…」と言いつつヴェルフの見ている方を見たリリは、その光景に絶句した。
余っていた理由が判明しましたね。原作よりひどい?
リリちゃんはダンジョン外で活きるのかな?