ナァーザに回復魔法について聞いてみる。
「んんん、回復魔法なんて無駄。それよりミアハ印のポーションがおすすめ。」
「それですか」リリが脱力して言った。
「後半は軽いジョーク、ホントはこう。回復魔法は云わばボランティア、当然C/Pは全然良くない。
そんなものにリソースを割くのは勿体無い。そこでこのポーションを。」
「それはもう良いです。…昔なら、勿体無いなら盗めば良いと思ったんでしょうが。」とリリ。
「おいおい物騒だな、発想が悪そのものだぜ。」とワザとらしくヴェルフ。
「いやヴェルフ殿、そうとばかりは言いきれません。義賊と言うものが有ります。」と命。
「鼬小僧の事ですね。お金持ちから盗んで、貧乏人に分ける事をしていましたよ。」と春姫。
「「そんな者がいる、んですね」、んだな」リリとヴェルフ。
ナァーザと別れ更に魔法について調べるが、威力が高いと制約が多い(呪文が長い、マインドを多く消費するなど)
と言う当たり前の事を再確認しただけだった。
ただ付随効果としては相手から奪い取る(ドレイン)魔法は存在することが分かった。
ホームに帰り、ヘスティアと春姫の魔法について相談する。
「リリはやっぱり回復魔法を押します。義賊って言うのは良いと思います。」
「攻撃魔法が良かったんだが仕方ねえ、俺もそれでいいぜ。」
「じゃあどんな魔法にするのかイメージは固まったんだね。フェルズ君の話と合わせて
魔道書への想定問答集を作ろう。
問題は最後の言葉だ、『分不相応だ』って言われたらカースになってしまう。条件を見直すんだ。
『欲張りだ』と言われたら少し制約を追加すればいい。これを踏まえて考えよう。」
皆で意見を出し合い、纏めていく。ほぼ決まったところで約束の魔道書が届いた。
「これが魔法書ですか。リリは初めて見ます。」
「俺も近くで見るのは初めてだ。ヘファイストス様は持っていたかもだが。」
「私はこんな高価な物には縁が有りませんでしたから。」
当事者ではない3人は興味津々だ。
「なあヘスティア様、表題、いやせめて1ページだけでも拝ませてもらえねえか?」
「リリも」「私も」
「うーん、フェルズ君の話だと、導入部で魔法の知識を叩き込み、そして発現問答に行く流れらしいから
最初の1ページぐらいは良いんじゃないかな。」
「さすがヘスティア様、話が解るぜ。」と言いながら3人で読み始める。
読み進める内に3人とも微妙な表情になった。
げんなりした表情でリリが本を返しながら言った。「リリ達は明日の準備が有るのでこれで。」
ヘスティアの頭に?が湧きあがる中リリ達は退出した。
ヘスティアは焦りながら春姫に本を渡して言った。
「春姫君、頑張って目的の魔法を発現させてくれ。部屋は客間を使って構わないから。
明日朝ステータスを確認しよう。」
次の早朝、早速春姫のステータス更新を行う。
「ぬおー。」ヘスティアが吼えた。
「何かありましたか?」と少し不安そうに春姫が聞いた。
「…いや問題ない、これがそれだ。」と更新用紙を差し出した。
魔法欄にはこう書いてあった。
<<魔法>>
{義賊}
・強制配当
・周囲から強制的に徴収する。
・発動後、一定期間の要間隔。
・詠唱式{***スチール}
***は対象者名、省略時は本人
「ヘスティア様、スキル欄が無いのは何故ですか?」とリリ。
「…フェルズ君の言った通りだったんで、ビックリして手元が狂ったんだよ。」
「そうですか、ではこの魔法について考えましょうか」
「確かにそれらしく仕上がっている様だが。」とヴェルフ。
「肝心な効果、範囲、間隔などが具体的に分かりませんね。」と命。
「その辺りは今からダンジョンで調べてくれば良いだろう。」とヘスティア。
鼠ではそのまんまなので鼬に変えました。
春姫の魔法、はたしてどんなチート魔法なんでしょうか。
唱えるだけで一発全快、これでベルも安心だったりして。
狐と言うと、『ごんぎつね』を思い浮かべてしまいます。
盗む、恩返しする、こんなワードが浮かんだので
こんな魔法を考えてみました。
後、同じ獣人のベート君の魔法を参考にしてもいます。