アナザー11   作:諸々

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レフィーヤは部屋の前でうろうろしているアイズを見つけた。アイズも、部屋から出てきたレフィーヤに気付き、声をかけてきた。

「レフィーヤ、フィン達は?」「団長たちはお戻りになられましたよ、この後みんなに話が有るそうです。」

「レフィーヤは呼ばれたの?」「いえ私はリヴェリア様の指導を受けに。」「そう、頑張っているんだね。」

そう言って食堂の方へ歩いて行った。

 

ファミリア全員による朝食時に、フィンは早朝のギルドの話をした。

オラリオ内に散らばったモンスターたちはガネーシャ達が担当、他のファミリアは手出し無用になったこと。

ベル・クラネルはギルドの監視役とその護衛を連れてオラリオ外へ出ること。

護衛はロキファミリアが請け負う。前回の遠征でのペナルティも兼ねてラウルに担当させること。

ラウルにはベルに対して2つの事を調べる様に命令した。1つは先の行動の理由、もう1つは彼の成長の秘密。

主要メンバーはさりげなくアイズを観察していた。ただその中でレフィーヤはずっと考えこんでいた。

食事が終わるとレフィーヤはすぐギルドへ行った。アイズが行動を起こすとすれば、必ずここに来る必要があると考えての事。

 

ギルド受付を見渡せる場所でレフィーヤは待ち伏せしていた。昼前の一番受付が空いている時間に、

ダンジョンに行く格好でアイズはハーフエルフの受付嬢と少し話をしてから出て行った。

しばらく待ってアイズが戻ってこないことを確認してそのハーフエルフに声をかけた。

「あのこちらにアイズさんは来ていませんか?」「アイズ・ヴァレンシュタイン氏ですか?先ほど来られましたが。」

ほっとした表情を作ってレフィーヤは言った。「申し遅れましたが、ロキファミリアのレフィーヤ・ウィリディスです。

それでアイズさんは何と?」「クラネル氏の出発を早められないかとのことでした。

午後1時のところ午前10時ぐらいならできるのではないかと返事をしましたが。」

「やっぱり。話の途中で出て行ったから心配して来てみたんです。何とか明日早朝に出来ないでしょうか?」とレフィーヤ。

エイナは時計を見てもうすぐ昼なのを確認して言った。「わかりました。先方と交渉してきます。」

「帰られるまで私ここにいます。なにせ『面倒事は早く終わらせるに限るで』だそうですから。」

エイナは神ロキを思い浮かべて頷くと、近くの同僚に声をかけてギルドを出た。地図を見ながら歩いているとヘルメスを見つけた。

「神ヘルメス、神ヘスティアの館は知っていますか?」「エイナちゃん、俺もそこに用が有るんだ、一緒に行こう。」

知った相手に会ったこともありエイナはベルの事をヘルメスに愚痴った。

曰く、ベル君があんなことするなんて思わなかった。何で頼ってくれないの。etcヘルメスは黙って聞いていた。

館に近づくにつれて人通りが疎らになり、館の前には誰もいなかった。ここでやっとヘルメスが口を開いた。

「エイナちゃん、君はベル君の何を知ってるんだい?俺は君より彼の事を知ってると思うよ、なんせ18階層まで行ってきたし、

あのイレギュラーも真近で見てる。それと知ってるかい、ベル君はああ見えて甘いものが苦手なんだぜ。」

エイナは食の好みも知らなかったんだとショックを受けた。

「それに君は、俺たちファミリアの監視役のギルドの人間だ。ベル君のファミリアでもなければ、恋人でも無いんだろう?」

恋人と聞いてあのボディガードの件を思い出してわずかに頬を染めたが、ヘルメスの言いたいことは理解できた。

その様子を確認したヘルメスは玄関の鉄輪を鳴らした。程なくしてヘスティアが出てきて中庭に通された。

「要件を聞こうじゃないか。」とヘスティア。「出発を早めてほしいんです。」とエイナ。

「難しいね、今ギルドからの資料をあたっているが、思った以上に範囲が広い。ちゃんと計画を立てないと。」

「ちょっといいかい」ヘルメスが割り込んだ。「その調査俺たちが引き受けよう。その代り彼にある仕事を頼みたい。」

「その仕事ってなんだい?」

「ある神の要望に応えてやってくれ。ベル君に興味が有るらしい、前に借りがあって断れないんだよ。」

「ベル君に変なことさせないでくれよ。」

「ギルドの監視員が付くんだろう、あまりむちゃな要求はされないと思うぜ。」

「うーんどうしようかなー」

「俺に任せてくれれば3か月以内に結果を出せるぜ。」

ヘスティアが脱力して言った。

「仕方がない頼むよ。なんせ外国の王族まで対象だ、ベル君一人じゃ何年かかるか分からない。でベル君の相手はどこの神だい。」

「それは言えない。ただオラリオ外とだけは言っておこう。オラリオの残るよりその方がベル君のためにも良いだろう?」

「まさかアレスの馬鹿じゃないだろうな。」「おいおいこれでも俺はベル君を買ってるんだぜ。そんなことはしやしないさ。」

「何かこちらで用意することがあるかい。」「特にはないよ、それとこちらからも連絡役を出すから。」

「準備が不要?それはそれで不安だなー。」「神友の俺を信用してくれよ。それに先にも言ったがギルドの監視も有るんだ。」

「分かった、君を信用するよ。ギルドのええっとエイナ君だったか、聞いての通りだ何時でもいいぜ。」

「助かります。警備の人は早い方が良いと言ってましたから。」

「だったら北門に朝一の午前6時でどうだい、余計なのか付いてこないぜ。」

「ぼくはそれでかまわないよ。」「先方へ連絡しておきます。」

「それじゃあ俺は門番に渡りをつけておくよ。」と言ってヘルメスは出て行った。

ヘスティアはギルドによろしくと言ってエイナを送り出した。

エイナは交渉がとんとん拍子纏まりほっとした。それと共にさっきのヘルメスの言葉が圧し掛かってきた。

ベルの秘密、ステイタスやアビリティを知っているから、私が一番知っている、一番仲が良いと思ってしまっていたと。

だけどギルド職員と冒険者、つまり一定の隔たりが有ったんだと思い知らされた。同時にそれを超えて知りたいとも思った。

ある決意と共にギルドに戻って、レフィーヤに待ち合わせ時間と場所の変更を告げた。

 

ギルドの資料を前にベル達は厳しい顔をしていた。

「一番問題なのは各都市へ着いてからです。誰も土地勘が有りません、これでは方針も立てられません。」とリリ。

そこへヘスティアが駆け込んできた。「喜べみんな、ヘルメスが協力してくれるぞ。」

「信用できるんですか?」水浴びをのぞかれたリリが聞いた。

「そこは気になるが、ベル君一人ではどうにもならない、背に腹は代えられないよ。」

リリはがっくりとうなだれた。そこでヘスティアは詳しい話をした。

「その仕事にベルの装備は何かいるのか?」とヴェルフが聞いた。

「特に必要とは聞いてないが、オラリオ外だからあんまり整備に手間がかからないのが良いだろうね。」

その時玄関から声が聞こえてきた。「おーいヴェル吉いるかー。」

「椿だ、この忙しいのに。」怒りながらヴェルフは玄関に向かった。

ベルとヘスティアがあわてて後を追った。リリ達は今までの緊張が解け、また鍛冶師の事だとその場を動かなかった。

「何しに来た。こっちは今忙しいんだ。」ベルとヘスティアが駆け込むとヴェルフが吼えているところだった。

「なんだヴェル吉、せっかく良いものを持ってきてやったと言うのに。」と椿。「良いもの?頼んだ覚えはないぞ。」

「前に弁償するといったであろう。これだ。」と言って片手剣と大きな盾を差し出した。

それを見たヘスティアがはしゃいで言った。「大きな盾だね。僕ならすっぽり入りそうだよ。」

ヴェルフは胡散臭そうに言った。「剣とのバランスが悪いな、大方失敗作の類だろう。」

「そうだ、だがこれは不壊属性付きだぞ。期限が決まっていない旅にぴったりだろう。」と椿。

「これ少し大き過ぎないですか、持っていくのが大変だと思いますけど。」と盾を指差してベルが言った。

「そこは考えてある。移動の時は背中に背負えるようにしておいた。おまけに裏に荷物も装着できる様にしてある。」と椿。

背負ってみたベルが言った。「ほんとだ、大きいけれど細長いから背負うと意外に邪魔にならないですね。」

背中を覗き込んでヘスティアが言った。「確かにこれなら大きな荷物も入るね。」

ただヘスティアの目がキラッと光ったのをだれも見なかった。

「ベル君、今度の旅の装備はこれにすれば良いじゃないか。僕はこれを勧めるぜ。」とヘスティア。

ヴェルフもしぶしぶ同意した。「しょうがないか、俺には不壊属性はまだ作れないからな。」

それを受けてベルは言った。「ありがとうございます、椿さん。助かります。」

「侘びの品だ、気にするな。それより頑張って早く帰って来い。」そう言って椿は帰っていった。

「ベル君、ぼくはヴェルフ君と打ち合わせが有るから、明日の準備をしてしておいで。」とヘスティア。

「わかりました、神様。」そう言ってベルは自室に向かった。




エイナ、レフィーヤ、ヘスティアの動きが変です。(読者視点ではバレバレ?)
ここでザッピングします。

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